破綻型
遅くなってしまってすみません!次回の更新は23時頃を予定していますが、また遅れるかもしれません、申し訳ありません。
エントロピー。聞きなれないワードに、男は首を傾げる。
「エントロピー増大の法則ってのは知ってやすかい?」
「名前だけは、聞いたことがある。物理学の用語か?」
「まぁそんな感じでさぁ。要するに、この世に存在するありとあらゆる物質は、この法則に従って死に向かっていく……エントロピーが高ければ高いほど、壊れかけ、って判断できるんです。何もしなくても、エントロピーってのは増えていきやがります」
「詳しいな」
「さすが検証勢エビね 」
「……どっかのアンポンタンの受け売りでやがります」
少女は少し気恥しそうに呟く。なるほど、ソウルスキルが現実世界の物理法則で説明がつくものであるなら、当然、それを調べる側にも知識が要求される。シャーロックは、そのようなものに精通していたのだろう。
「それで、俺のスキルはそのエントロピーってやつを使っていると?」
「使ってるわけじゃねぇと思いやす。ただ、見える、触れる。それだけの事でさぁ」
「俺の目に見える黒い軌跡は……」
男は思考する。全ての者が終わりに向かう。その過程にあるもの。エントロピー、つまり男は、これから起こる、エントロピーの増大を見ている、ということだ。
いや、違う
「エントロピーの……“許容量”、か?」
「何がエビ?」
「物の死にも、人の死にも、順序がある。普通に考えれば、エントロピーが高い物、というのは、傷を受けているものだ。耐久値が削られ、“死にかけ”の状態にある」
「一概には言えねぇですけど……」
「仮説だ。しかし、そう考えるなら、その許容量をオーバーするような攻撃、つまり、与えるエントロピーの増量が多い攻撃が見える……ってことなんじゃないのか」
男は言いながら自信が無くなったのか、俯いて黙ってしまう。
「いやいや!そこは言い切りやがれです。おっさんのスキルのことでしょうが。使ってる本人が分からないものは分からねぇですよ」
「ま、お前のこれ迄の話が本当なら、いい線いってるかもしれないエビね」
「……もう一つの方は、既にエントロピーの影響を大きく受けているものに触れることで、それを促進させる……ってことか?」
「知らないエビ」
女は冷たかった。自分で考えろ、と言わんばかりの態度。だが、ゲームへの理解が男よりも深い女は、何かを掴んだようで。
「実際お前のスキルは制約が多いように見えるエビ。つまり、ユニークカテゴリーのスキルではないエビね」
「ちょ!どういうことでやがりますかエビちゃん」
「……?」
女の言葉に、少女が反応する
「知らなかったエビか?ユニークカテゴリーのスキルにはほぼ制約が無いエビ。魂力の消費は激しいエビけど」
「し、知らなかった……なにそれ……」
「割と有名な話エビよ」
少女はガックリと項垂れたまま動かなくなってしまった。ユニークカテゴリーはサンプル数が少ないらしいし、調べきれてなくても不思議ではないと思うが。
「というか、お前、分類は何型エビか」
女の言葉に、自分のステータスウィンドを開くと、内容を確認することに。
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NAME:《カラスマ》
SOUL SKILL:《Lv1.十三の瞳 Lv2.十三の指》
CLASS:《ERROR》
CATEGORY:《??????》
TYPE:《破綻型》
TOTAL SOUL:68
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「破綻型……って書いてあるな」
「え」
「は」
少女と女の声が、綺麗に重なった。
男は二人の顔を交互に見比べるが、どちらも、まるで信じられないものを見たような表情を浮かべていた。
「……そんなに珍しいのか?」
「いや、だっておっさん……」
先ほどまで不貞腐れていた少女は、引き攣った笑みを浮かべている。
「破綻型って……」
「聞いたことないエビ。やっぱりバグってるエビよ、それ」
「だが実際、俺のステータスウィンドにはそう記載されてる」
何度閉じても、表示は変わらない。この世界でも、検証勢とユニークカテゴリーという二人が知らないのであれば、本当に特殊なものなのだろう、ということは理解できた。
「ちゃんと検証した方がいいんじゃないかエビ?」
「けど名前からしてきな臭すぎやせんか?……おっさんだってこのゲームの特性は知ってるでしょう」
分類。人の人格をラベリングするそれ。分類が出来なかったユニークカテゴリーではない、もっと別の何か。
「おっさん、ほんとに何者なんですか?」
その問いの答えを、男は未だに探している。




