第4話 組合規定についてだそうです
なあんだ、と、樹は気が抜けた。うちの家系にそこまでその能力というか、力とやらが出ていないなら、もうその組合に入ってる必要もないんじゃない?脱退自由なんでしょ?
樹がそういうと、両親はそれとなく視線を合わせてから、父親のほうが話を続ける。
「まあ、まあ」と、一旦樹の言葉を受け止めてから、「去る者は追わずだから、いつ抜けてもいい。でも、まさか、と、もしも、の保険だと思うと、そう気軽に抜けることもできないんだ。」
なによ、その、まさかともしもって、と樹の頭に疑問が浮かぶ。
「ただ残りたくとも組合に残れない条件というのがあってね。」
樹の心に浮かんだ疑問はそのままに、父親は説明を続ける。
「今日は、あまりあれこれ話しても頭にないらないだ思うから、樹に住み込みの話をするようになったところまで話しとこうかな。」
そうだった、なんか、ちょっと理解し難い話がいたって常識的な両親の口から飛び出てきたので、肝心のそこを聞くのを樹自身忘れていた。
「組合員資格を失うのは、能力者から数えて3代目、うちで言うと樹の代だね、そこまで力を持つ人間が現れなかった場合だ。
ちなみにだけど、目印になる苗字に関しては、とりあえず力を持った者から生まれた子どもについては継承を勧められる。もちろん選択は自由だ。そして、その子ども、2代目に力を持った者が出ないときには、組合に在籍していても継承を勧められることもない。どうぞご自由に、となる。」
なるほど、母は結婚して父の姓を名乗っている。だから私も父方の姓になってるし、と樹は納得した。
「組合としては2代も出なければ、もう大丈夫、ということなんだろうね。でも、まあ、念のためもう一代様子見ってことかな。
それで3代目に力が見受けられなければ退会となる。」
「ねえ、あたしが、その本家とやらのバイト先不動産屋さんに行くのは、あたしに退会の手続きをしろってことなの?」
違う違う、と父は笑った。
「組合からの退会の話と、住み込みとバイトの話しはまた別だ。
退会については手続きは要らなんだよ。今なら、グループラインでうちの枝は3代目で枯れました、とでも送ってお終いだ。その3代目本人については、家族が何も伝えなきゃいいんだ。」
父親に言われて、樹は、あ、なるほど、と思う。
「そうすれば3代目は、組合についても知らず、血脈にあった力についても知らず、だろ?」
じゃあ、なんで、わたしに話すのよ。首を傾げる樹に向かって
「力がある無しに関わらず、だね、」と、父は語り続ける。「組合には他にも特殊な規約がある。
もし、組合員がその本家、うちはクロデ家だが、その居住地に住むことがあれば、組合員は本家の手伝いをしなければならない。」
ハイハイ、それで、なのね、と、ここでようやく樹は、両親が住み込みバイトの話を持ち出したことを納得した。