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眠れる森のホムンクルス  作者: 鼻眼鏡26号
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グルス王国 2


前回のあらすじ


ホムが捕まった。



「捕まってたまるかぁぁ!!」


ホムは大声をあげて両腕に付けられた手錠を力で破壊し走り出す。

流石に騎士団も破壊された事に驚き目を見開き動揺して動きが止まる。しかし、動揺も一瞬だったためすぐさまホムを捕らえようと動き出す。


「周りを固めろ絶対に逃すな!」


超人的な筋力で走り出すホムの速度は魔力のない人間からしてかなり早いのだが、魔力を使う騎士団は余裕でその速度に追いつく。


「うそん!こいつらめっちゃ早い!」


あっという間に周りを囲まれるホムは咄嗟に構えるも、騎士団は盾を前に出し地面に刺しホムを流さないように囲む。盾からは魔力も放出しており一見空いている見える上も魔力がドーム状となっていて空から脱出は出来なかった。


「ウラッ!……いった〜」


ホムは盾を結構本気で殴るが逆にホムの拳から血が流れていた。

ジリジリと近づいてくる盾を様々な方法で攻撃するがホムの攻撃よりも盾の方が硬かった。

狭くなった囲みでホムは段々と動きづらくなって絶体絶命だった。

しかし、そこに救いの手が降りる。


「”ブレイク”」


たった一言その声が聞こえた瞬間に囲んでいた騎士団の1人が前に倒れて魔力が消える。


「しめたっ!」


その穴からホムは脱出しダメ押しのように騎士団の1人の背中を蹴り飛ばし他の騎士団員にぶつけて動きを封じた。


「走れ!」


「え?…う…うん!」


ホムの目の前を走るトレンチコートを着た男性の後をホムは追いかける。男はグルス王国市内を知り尽くしたかのように何度も細道を通り追っ手から撒いたのだ。


「ハァ…ここまで来りゃ流石に追っては来ねえだろ。」


トレンチコートを着たおじさんは息を整えながら止まりこちらへ向く。


「いやぁ…助かったよおじさん。」


ホムも事情はどうあれ助けてもらった事に感謝した。


「んで?…どうして私を助けたのかな?」


ホムは構えて謎のおじさんに問う。ホムは助けるメリットが無いと自負していてそれでも助ける人に疑いをかけていた。


「そりぁそうだな。安心したぜ疑いを知らない奴じゃなくてよ。」


そう言っておじさんは胸ポケットに手を突っ込む。

ホムは武器が出るのかと構えるが、おじさんは証明書的な者を取り出す。


「この国の警備団団長のバルザックだ。よろしく頼むぜ。」


濃い髭にボサボサの頭で悪人ヅラして笑うバルザック。

ホムも思ってたよりヤバそうな奴だとすぐにわかったがそれでも目を見て信頼できそうだと思えた。


「でだ、あんたを助けたってのは俺がこれからやろうとしている事に手伝ってもらいたかったんだ。その力を見越してってわけだ。」


「まぁ、そうでしょうね。」


「ずいぶん察しがいいな。さっきとは別人みたいだぜ。」


「さっきは油断してたが私は本来こんな感じだっぜ!」


しっかりと決めポーズをとり壁にもたれかかろうとしたが、そのもたれかかる先はいかにも悪そうな悪人ヅラの男だった。


「よくわかったぜ、あんたは天然系のバカだな。」


バルザックの言葉には何も返せなかった。

とりあえずホムは悪人ヅラの男を殴り気絶させその報復に来た男達も沈める。


「で?目的は?」


山積みにした男たちの上に座りバルザックに問う。


「俺の仕事を手伝うにはいくつか条件があってな。まず、腕っ節が強い奴。この国の人間じゃあない奴。多少の無法者。そして、俺に貸がある奴ってわけだ。」


「全部そろっちゃってる。」


「まぁ、心配しなくてもそんなに大変な仕事じゃない。ちょっととある盗賊団を壊滅させるだけだ。」


「結構な大仕事じゃない?」


バルザックのサラッと言われる難題に流石のホムも突っ込む。さらにーー


「ちなみにメンバーは俺ら2人だけだ。」


「マジで頭沸いてんのか?無茶でしょ。」


「待て待て、流石に作戦くらいは考えてある。じゃなきゃこんな人数でやるわけねぇだろ。」


当然の文句を言うホムとそれを宥めるバルザック。彼の言う作戦はーー


「壊滅させるってのは、何も正面からぶっ壊すだけじゃ無い。奴らの持つ違法についての証拠を見つければ検挙だってできる。その証拠を探すのが俺の役目で要は忍び込むってわけだ。」


「だから少数の方がいいのね。」


「で、あんたの役目は単純明快で…囮だ。」


囮と聞いた瞬間にホムはすごい嫌そうな顔をした。


「そんな顔になるのも分かるがまずは話を聞け。…あんたの役目は単純明快で分かりやすいが1番重要でもある。俺が忍び込み証拠を見つけるまで時間はかなりかかる。」


「私の囮が作戦の要ね。で?目的は?」


「目的は街に流れる違法食材の輸出の取り締まりだ。」


バルザックのその言葉の奥に目の奥が燃えるような怒りを感じ取れた。それは並々ならぬ思いもあった。


「違法食材って?」


「さっきあんたが沈めた男が食った食材だ。あれは中毒性の強い食材だったな。他にも食った後に幻覚見るやつや味覚が狂う食材だってある。どれもこれも最初の一口は美味いらしいぞ。」


「それはそれで食べてみたいような。」


「やめとけ速攻で廃人だ。…俺はこの国出身じゃなくてな元は密航者でな、生まれてすぐに親に捨てられ自分の身一つで生きてきた。ここじゃ食うメシは困らないからな…俺が今生きてるのもこの国のおかげって訳だ。」


「なるほど恩返しってわけね。ただ、今までそう思う人達はたくさん居そうだけど。出回ってる時点でそうゆう事よね?」


このグルス王国が建国してから千年近く経っているが密輸が無くなっていない事は、ことごとく失敗に終わっているか。成功しても新たな密輸が再開する事でホムにとってこの仕事は意味のない時間の無駄だと思っていた。


「まぁ、それを言い出しちまったらお終いだが。だからってやってみなきゃわからないだろ?もしかしたら今回の一件で今後2度と出回らない可能性だってある。やる前から決めつけるのは、やる勇気のない腰抜け共だけだろ。未来のことなんて誰も分からないんだからな。」


「おお〜名演説!今の感動した!!やろう平和のために!!」


「……お前の将来が心配だよ。」


ホムは絶対に詐欺に合うタイプだとバルザックは確信した。

その後2人は場所を変える。盗賊団へ仕掛けるのは夜になってからの方が良いと言うためそれまでバルザックおすすめの料亭に入る。

たった数十分前にあれだけ食べてたホムは再び腹を鳴らしていた。


「ここは腹空かし娘にはもってこいの場所だ。何故かって?ここは安い値段で量が多く赤字覚悟のイカれた店だ。味の保証も心配すんな。」


机の端まで並べられた料理に目を輝かせるホム。

焼き魚やピラフやチャーハンなどのご飯ものにミートボールが乗ったどっかでみたことあるスパゲティ。ホットドッグなどのパンなど様々な美味しそうな料理が並ぶ。


「おおお!…いただきます!!」


目を輝かせるホムは料理に手を伸ばし次々と口に運ぶ。

焼き具合が良いパンを噛むとサクサクと音を鳴らし挟まっているソーセージはパリッと音を鳴らす。

焼き魚も割いた所からゆっくりと湯気が少し上がる。口の中ではホクホクで柔らかい。

チャーハンもピラフも米の一つ一つに味があって一噛みするごとに口内で味が広がる。

ミートボールが乗ったどっかでみたことあるスパゲティは、ミートボールの肉汁が口の中で広がり、肉を噛んだ時の柔らかさと濃い味付けの旨味がスパゲティと混ざり合い噛めばとろけるような柔らかさを持っていた。


「サクサク…もぐもぐ…もぐもぐ…ふっごい、おふぃいでふ。(すっごい、美味しいです)」


「口の中のもんを無くしてから喋ろよ。行儀が悪いぞ。」


「もぐもぐ…ゴクンッ…はい!!」


「そういえばあんたのまだ名前を書いてなかったな。」


「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ…ゴクン。ホムって名前です。よろしく。…もぐもぐもぐもぐ」


「悪かったよ…食い終わってから聞けばよかったな。」


机の上に並べられた料理は次々と無くなりあっという間に完食し終えた。


「ごちそうさまでした!」


「すげえ食いっぷりだったな。」


ささっと会計を済ませて店を出るホムとバルザックは目の前の異様な光景に目を奪われた。

それは明らかな貴族のようなデブでブサイクな男が鎖で繋がれた女性と男性をまるで犬の散歩のように歩き、その歩く先の人々は関わらないように道を開けて行く。


「ったく…見せつけのためだけに平民街を歩くんじゃねえよ。」


バルザックはホムにギリギリ聞こえる声で呟く。

デブでブサイクな男が立ち去ると人々はいつもの賑わいを取り戻した。


「今のは貴族ってのであの崖の上にある国王の住んでる城の崖の下に連なる貴族領の奴らだな。そしてここはその貴族領のさらに外側を連ねている平民街だ。貴族領には基本、平民は入らないが貴族どもはいつでも平民街に来ることができる。よって何を勘違いしたのかたまにあんな馬鹿が見せつけ優越感を浸るために来るんだ。」


「………」


「この国は奴隷制度があるからな。昔は捕まえた悪人どもを社会奉仕のために使っていたんだが、いつのまにか貴族どもが金を出してそいつらを労力として使い始め国王の直属大臣まで出てきてあっという間に奴隷制度が出来上がったってわけだ。今じゃ7国の内6国が奴隷制度を取り入れちまったってわけだ。」


「この国の国王はどうしてるの?」


「……500年前あたりから姿を現してないって噂だ。政治に無関心なのか、昔っから大臣に政治を任せっきりらしい。」


「かなり無責任な野郎ね。で?その悪代官が今は牛耳ってるってわけね。相当恨み買ってそうね。」


ホムは国王の城を見ながら拳を握りしめる。先程のことを思い出し人の醜い部分を見てどうしてそんなことができるのかを考えた。


「バルザック…奴隷制度を無くすためににはどうすればいいと思う?」


「………まずは大前提として国王を殺せるだけの力を持つ事だな。影響力を身につけることだ、それがなきゃ誰も従わない。そして人の意識を変える必要もあるな、例え俺らが奴隷制度を無くしても俺らが死んだ後にまた奴隷制度を復活させるやつが出てくる。だからこそ、奴隷制度=間違いと認識を植え付ける洗脳も必要だと思うぜ。……何話してんだか。」


「そっか、根幹から変えなきゃね。」


「まぁ何にせよ生きてくにはあまりあんなのとは関わらない事だな。」


ホムは先程の貴族が歩いた先を見ていた。

ホムは何も語らず静かに立っていた。バルザックはそんなホムに何も話しかけず、ホムが何を考えているのかを考えていた。多少なり話していると親子心のようなものを感じるが、これから俺はこの子供を囮に使うと考えてそんな考えはすぐに捨てた。こいつはどうせここだけの関係なのだからと。


「バルザック…奇襲は夜だったよね?」


「ああ、それがどうした。」


「じゃあ、それまでは自由時間ね。さっき教えてもらった集合場所に時間通りに行くわ。」


「わかった。準備は怠るなよ。」


「うん。」


そう話すとホムはゆっくりと歩き出し人混みの中に消えていった。

彼女がどこに行ったのかは俺には知るよしもない。



一方その頃ギルドにて情報収集をしている。

ユイトは酒をハンター達に奢ったりして話の輪の中に入り酒の勢いを使って探りを入れたりとしていた。


「そういや、近いうちにこの国の下水道の相当作戦があるらしいぜ。月に一度のこの国の下水道に溜まった魔獣を掃討するらしい。」


「?下水道に魔獣が溜まってる?月に一回のペースで出てるってのに発症原因は調べらんないのか?そうゆうの調査とかするだろ。」


わざわざ国が自身の国の危険スポットを放置してある事が既におかしい。


「ここだけの話だ。王国は奴隷に魔力水を使って何らかの実験を行なってるって話だ。だが奴隷たちはそれに耐えきれず肉体を散らしその血液が下水道に流れそこにいる鼠や蝙蝠が魔獣となる。この研究がどんなものかは知らないが、それほど重要なものだと言うのは月一で掃討作戦を必ず行うことから見えてくるだろ。」


ハンターはなるべくホラー風に聞こえるよう暗くゆっくりと話す。


「それってあの都市伝説系雑誌にあった都市伝説だろ。それにその掲載した会社潰れた挙句何人か行方不明になっただろ。誰が聞いてるか分からないんだ気をつけろよ。」


「いやいや大丈夫、大丈夫だって!俺はそんな簡単には死なねえって!」


他のハンター達もこの噂は知っているようで物騒だが、これを利用すれば侵入も可能だ。

大変有力な情報に満足しユイトは金を机に置く。


「いやはや面白い話をありがとう。ここは俺が奢るよたくさん飲むといい。」


「「「おおー!!」」」


集め掃討作戦についての情報も手に入れたのは大きい。これから宿に戻り作戦を練らなくてはならない。

そう思ってギルドの扉を開けて外に出ようとしたその時。外から大急ぎで走り扉を開けた冒険者がーー


「緊急事態だ!貴族領で襲撃が起きた!緊急で冒険者にも鎮圧の依頼がきた!」


その一報でギルド内の全てが騒然とし冒険者は急いで装備を整えて外に走り出す。

俺は報告した冒険者に話しかける。


「その襲撃者の目撃談や特徴はあるか?」


「ああ、若い女の子ですごいパワーで素手で壁や奴隷達の鎖を引きちぎっているらしい。死者はいるかどうか分からないが、逃げてきた貴族の男の証言だ。」


「そうか。ありがとう。」


ユイトは肩をポンと叩いて相手を労うが、歩いて進む時周りがユイトを避ける。



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