眠れる森のホムンクルス 4
ユイトは剣に着いた血を振り落として分解して彼らに手を合わせる。
そして、頭が落とされてた黒龍へと歩き出す、黒竜はピクリとも動かずユイトはその元へ辿り着く。
「やっぱり、この材質は師匠が作ったやつか。」
黒竜の切り落とされた頭を触れた瞬間に分解を使い黒龍の頭部が粉塵となり消えていく。
「せっかくの魔力を無効化する物質でできてるのに作り方ではなく分解の仕方だけしか教えてくれなかったもんな。」
黒竜が今までかつて倒せなかった理由がここにある。この黒竜には魔法に対して無敵の力を持っており幾度となく来た討伐隊は魔法攻撃が効かないことで全滅しそれに気づいた者は全員灰となっていた。
「まぁ何にせよ、師匠の置き土産でもさっさと見るか。」
ユイトは次に黒龍の胴体に触れまた分解する。すると、分解した胴体の中から何かが落ちて地面に落下した。
ユイトはそれが何かか確認のため近寄る。
「うげっ!人骨だ。うわ〜嫌なもん見ちゃった。」
ユイトは驚き後ろに後退りし目を逸らす。
しかし、興味があるためゆっくりと視線を戻してしまう。とりあえず手を合わせ目を閉じて成仏を願う。
するとーー
「あれ?何で涙が出るんだ?」
ユイトの瞳からは雫が落ちる。
ユイト自身なぜなのかは分からないが、とても胸が締め付けられる物だった。
その涙は少し経つと収まる。予想外の出来事になったがユイトはゆっくりと歩きその人骨に近づく。
「これは指輪?」
人骨の近くにあった指輪を拾い上げると人骨は劣化し砂へと変わり粉々となってしまった。追い討ちをかけるように突然風が吹いて砂となった人骨はどこかへ飛んでいってしまった。
ユイトはそれを見送り再び歩き始める。向かう場所は、黒竜が守っていた黒荊の森の最奥。黒竜が現れてから誰1人として辿り着いた者が存在しなかった全く未知の場所である。
「師匠が残した最後の言葉、戻ったら荊の森の最奥へ向かえ。もうちょいなんか言葉あっただろ、これだとせいぜい上司のメモ書きだぞ。」
文句を言いながらも進む。その景色は黒荊に囲まれたアーチを進み続け全く変わらない景色に嫌気がさしてきた。
ドドドドドッ
「ん?水の音?この先に滝でもありそうだな。」
聞こえてきた滝の音で最悪がもう少しだということがすぐにわかった。歩き続けた結果、また開けた場所に辿り着く。
その場所は太陽の光が差し花畑が広がり奥には見た通りの滝が流れていた。
そして1番注目を集めたのは広い花畑の真ん中に曇ったガラスの棺が置いてあった。
中には人の形をした影があったので人がいるというのがわかった。
「マジか、また人骨だったら腰抜かすぞ。」
そう思ってユイトは棺に手をかけて蓋を開けようとする。
「ぬおおおおッ!…開かない。……スーツの出力を上げるか。」
ユイトはスーツの手首を自分の前にやると映像が投影される。その投影されたディスプレイには出力100馬力と書かれていた。
「まぁ少しずつ上げてくか。まずは200と。」
出力を上げてまた持ち上げるも全くもってビクともせず、さらに出力を上げる。それでも開かなかった。その後色々と試す、持ち上げるのではなく押すのか、それとも蓋ではなく棺そのものを動かすのか、最終手段として蓋を殴っても全く開かなかった。
「ハァ…ハァ…全然開かない。」
殴った右手は腫れて氷で冷やしながらゆっくりと棺を見ていると、小さな窪みがあることに気づいた。
「ん?これは……さっきの指輪と同じマークだ。」
ユイトはポケットから指輪を取り出し窪みにはめた。すると棺から解錠する音が聞こえ棺がゆっくりと動き出した。
動いた棺は中から煙を出しゆっくりと開く。その煙の中には人影が見えゆっくりと上半身を起こす。まるでスモークを焚いて選手入場みたいなことをやっていた。効果音としてデデンデンデデンとなっても不思議ではなかった。
しかし、思っていた以上に長いスモークは中の人影を露にしない。
スモークの中の人影も多少慌てだして上半身を再び倒して仰向けで倒れ仕切り直し今度は勢いよく飛び上がり土曜日の夜なフィーバーな決めポーズを決めるがスモークはまだ切れない。
人影はこのポーズは流石にないと思ったのか顔を覆ってしゃがみ込んだ。
その瞬間でスモークが切れた。
徐々に姿が現れて2人は初めて顔を合わせる。
スモークがなくなって現れたその顔は
干からびて今にも崩れ落ちそうな顔で100%その日の夢に出るであろうほどのトラウマを与えるには十分な迫力だった。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「キャアァァァァ!!」
2人揃って叫び声をあげる。
ユイトはその顔の迫力で、相手の声からして女性は自分の手を見て干からびてる姿を見て。
「あ!やばいこの時代の空気に肌が合ってない!!お願い!ユイトさん!早く治して!!」
「いやいや無理無理無理!!怖いもん!!」
「お願い!早くしないと死んじゃうの!」
「ぎゃぁぁぁ!こっち来んなぁぁ!!」
阿鼻叫喚で盛り上がる2人だが女性は徐々に体が朽ち始めていた。
「お願い!!助けて!!じゃないと貴方に錬金術師さんの伝言が伝えられない!!」
「!!……師匠の!?……ううっ…わかった。」
ユイトは女性の言葉により取り敢えず立ち上がりそろりとゆっくり近づく。
そしてユイトが女性の手を掴み錬金術を発動させようとした瞬間に手が朽ち果てた。
「ぎゃぁぁぁ!!朽ち果てたぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁ!!私の腕がぁぁぁぁ!!」
再び2人揃って阿鼻叫喚。
「マジでまずいって!!ほんとに死んじゃう初回でヒロインが死ぬのはまずいって!」
「え?ヒロインなの?」
「急に落ち着かないで!緩急死んでんの!?」
「と…とりあえず治すけど治すにあたっていくつか注意事項があってーー」
「こんな時に注意事項!?」
この緊急事態にユイトは黒板を出して説明を始めた。
「本来は体の細胞を調べて構造を調べてってやらなきゃいけないことが沢山あるんだけど。今回これらを全て省略します。このことによりより複雑な構造のものには多少なり支障がきたす可能性があります。」
「えッ!?じゃ…じゃあもしかすると脳とか記憶に関してなんらかに影響しちゃうかもしれないの!?」
「可能性は否定できません。ですのでもしもの場合今この場で伝えることがありましたらご連絡ください。ちなみに成功率は50%です。」
「ちょおッ…急に言われても色々あるし…でも!成功率は50%なのよね?…ってことは成功するわ!!昔読んだ本にはこんな時の確率論で90%を切った作戦成功率は100%って書いてあったわ!!」
「その根拠どこにあるのか不思議だよ。…まぁヨシっ!早速始めます。」
「お願いします!!」
ユイトは肩掛けの女性に触れて錬金術が発動し始めた。
朽ち果てていた身体の進行が止まり徐々に身体に綺麗な肌が再構築されていった。少しずつ身体は復活し綺麗な肌に整っていた顔で彼女の体の構造された。元の顔なのかは分からないがとりあえず直した。ユイトが最初に見た顔は朽ちた顔なので直そうにも元の顔がわからないので朽ちた時の顔の構造だけで直したのだ。
その構築は時間にして5分くらいですぐに終わった。
治された彼女は現在地面に仰向けで寝ている。
大事なのは、彼女が目覚めてその記憶を引き継いでいるかどうかなのだ。
とりあえずユイトは祈った。
「……うっ…ここはいったい。」
「目が覚めた!」
女性はゆっくりとだが目を見開き起きあがろうとした。
その時に
ぐうぅぅぅぅ!!
女性のものすごい腹の虫も同時になった。
「…ううう………お……」
「お?なになにどうしーー」
「おなかへったぁぁぁぁぁ!!!!」
女性の咆哮とも言える大声にユイトは体を震わしてそのままゆっくりと倒れた。
「お・な・か・へったぁぁぁぁ!!めしよこせぇぇぇ!!」
女性は倒れるユイトを掴みブンブンと振り回して催促する。
「ちょちょちょ…ちょっと待って!今飯出すから!振り回さないで!!ちょっと吐きそう!」
振り回されるユイトは口を押さえながらも、とりあえず突然現れた巨大バックから缶詰を大量に出した。
女性は、素手で缶詰を引きちぎると中身を貪り食う。
「あのーとりあえずなんですけど、師匠からの伝言ってやつは一体なんでしょうかね?」
「…ムシャ…ムシャ…ムシャ…?」
女性は貪り食う事をやめずゆっくりと首を傾げた。
ユイトは恐る恐る質問を続ける。まだ決まったわけではないと思いながら。
「あのーお名前は…?」
「ムシャムシャムシャムシャ?」
それでも女性は貪り食う事をやめない。
「ゴクンッ!……そこまで美味しくはないです。」
会話のキャッチボールは全くもってうまくいってない。まさかストレートに対して魔球が帰ってくるとは誰も思わないだろう。
「名前は分からないのであなたが付けてください。後、伝言ってなんの話ですか?」
女性は完全に分からないといった顔をしながら答える。そしてユイトはーー
「50%のハズレ引いたぁぁぁぁぁー!!」
全力で地面を全力で叩きつけ地面にヒビを入れる。
どう考えても脳に支障がきたしている上に一部破損ではなく完全な記憶喪失となっている。
「まぁまぁそう落胆しなさんな。この完璧美少女でも見て癒されなさいな♪」
彼女のテンションは明らかに変わっている。記憶どころか人格や性格まで変わってしまっている。完全にハズレのハズレの失敗である。
「あ!でも、なんかさっきから頭の中でキーワード的な?やつが浮かんでます。」
「マジで!もうこの際なんでもいいや!教えて!!」
「えーと、転生者・宝玉・7つ集めて・なんか復活!」
「色々と危ないワードだな。まぁ、それだけでやることはわかったよ。…用は転生者7人ぶっ倒して宝玉集めて魔王復活だな。」
「魔王?何言ってんだこいつ。頭いかれてんのか?ゲームは1日3時間までって決めてるでしょ!」
「お前こそ何言ってんだ。…ってお前ってのもいい加減失礼だし名前…名前…」
ユイトは彼女の名前を真剣に悩み考え込む。それに比べて彼女は奥の滝に突然走り出し飛び込み巨大な水飛沫を撒き散らし巨大な魚を捕獲していた。
「…ホムンクルス…ホムンクルス……ホムだな。」
「ふーむ…ムシャ…安直ではありますが…ムシャ…ムシャ…ひとまずその名前でいいでしょう。…ムシャ」
彼女ことホムは魚を生で食べながらもとりあえず納得してくれた。
「よし、私の名前も決まりましたし旅に出ましょうユイト!!」
「ああ、そうだな……ってなんで名前知ってんの!?」
「さあ?なんか知ってました。とりあえず忘れた記憶は旅をしていればそのうち思い出すでしょう。なんかの本で読みました。」
「さぁって…まぁいいやどうせ師匠が教えたんだろ。記憶に関しても俺も賛成だ。他にも色々と師匠が残しているはずだ。」
「そんなことよりも!お腹空きました!!沢山ご飯が食べれるところへ案内してください!」
「わかったわかった、安心しろこれからいく国はこれでもかってうまいもん沢山食えるぞ。」
その言葉と同時にユイトは錬金術を発動させ鉄の塊を作り出した。その鉄は集まり形成されて出来上がったのは。
ブォォォン
「さぁ乗りなホム!楽しい旅の始まりだ。」
巨大なキャンピングカーに乗り込み手を差し伸べるユイト。
「美味しいご飯が私を待ってますね!!」
ホムは手を取り勢いよく飛び乗る。
キャンピングカーはエンジン音を鳴らしながら走り出す。
走り出すキャンピングカーが通る道の後は黒荊が分解してどんよりしていた雲が晴れる。そこら一帯の呪いが解けたかのように晴れやかな姿が現れた。
「ちなみに私の目的は美味しいものを食べる事と世界を見たいと言う事なのですが、ユイトは?」
「ん?まぁちょいと長くなるから次回に歴史を帰る新事実とともに語るよ。」




