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眠れる森のホムンクルス  作者: 鼻眼鏡26号
2/19

眠れる森のホムンクルス 2


翌日


一同パーティは昨日のギルド前に集まる。

リーダー以外それぞれは欠伸をしたり目に隈を作ったりと眠そうにしていた。


「それでは黒竜狩りに行くぞ。」


リーダーの男は前を歩き進むが残りのメンバーの足取りは重くフラフラしていた。

魔法使いの格好をした男は二日酔いで顔色悪く今にも吐きそうであった。

女性陣二人組は昨晩のお楽しみで盛り上がりすぎてものすごい寝不足で今にも眠りそうだった。

唯一健康なリーダーは、昨晩は21時より前に夕食を取り風呂を済ませスキンケアとして化粧水をつけ風呂上がりの柔軟なストレッチを欠かさず、食事より2時間以上空けてからベットに横になり睡眠につく。

朝はしっかりと起きて顔を洗いうがいして多少水分を取り朝のランニング、汗を流して朝食を食べる。そして装備の手入れをしっかりしてこの場に立っている。


どう考えたって黒竜に挑むメンバーでない事は分かりきっているが、実力は確かであった。


森に入った途端に獣型魔獣が現れた。

魔獣とは、体内に存在する魔力貯蔵器官が破損、又は貯蔵量より超過した場合、魔力が体全身に回り身体機能を奪い脳に影響を及ぼす。思考回路はその者の本能に従い人に害を及ぼす。

魔獣も同様で彼らの本能は生存本能で基本自分に仇なす敵を見境なく襲うのだ。


魔力とは善にも悪にもなりうる存在でもある。


魔獣は全方位に囲み自身らの餌を見つけ一斉に飛び上がった。

そんな襲いくる敵に対してリーダーは、


「全員伏せろ…”スラッシュ”」


腰につけていたロングソードを全方位に振るい魔物を両断する。

しかし、威力があまり更にその奥の木々を薙ぎ倒しついさっき出た村の1番高い建物であるギルドすらも斬ってしまった。

しかし、これがS級三つ星ハンターの実力。

ギルド内にも階級は存在する。

階級を表すタグには色と星が描かれその色と星の数でその実力がわかる。

1番下からB級タグの色はブロンズ、S級タグの色はシルバー、G級タグの色はゴールド。

星の数は一つ星から三つ星まで星の数が多ければ実力が高い証である。


B級はギルド内では見習いからパーティリーダーまでの権限である。

S級は一つ星から兵士100人分、二つ星は兵士1000人分、三つ星は兵士10000人分と大まかに分かれている。

その上であるG級は、一つ星についてはS級三つ星と変わらない。G級はギルド所属ではなく国家所属のハンターである。主に防衛の意味合いを担っている。

二つ星は、国家において名を残す業績を挙げることでほぼ最高戦力としての扱いである。

三つ星、世界に数人しか存在しない人類の守り手、1人で国と同等の力を持つとされる。

そして、強さだけならその上は王である転生者が存在する。


故にこのパーティリーダーは自由に動けるハンターの中では最高峰である。


「さぁ、進むぞ」


リーダーはそう一言言うと再び歩みを進める。

進む森の中様々な魔獣が集まるも武道家の女や聖職者の女も加わり難なく倒す。

武道家の女は、魔力を腕に纏わせそこから炎を出し迫り来る魔獣に


「燃えちまえ!!」


拳を叩き込み燃え上がらせる。

彼女はS級二つ星の実力者。

聖職者の女の周りには魔獣が囲み一斉に飛びかかるも聖職者の周りに光の壁が出現し魔獣を一切寄せ付けず


「光よ」


その一言で天空より降り注ぐ光の矢が突き刺さり魔獣を絶命させる。

そして彼女もS級二つ星の実力者である。


「うおおおお!!助けてぇぇぇ!!」


ものすごい形相で走り回り魔獣から逃げる荷物持ちこと、魔法使いの格好をした男。

彼は先ほどから自分の体以上にあるバックを持ちながら魔獣の追跡を逃げていた。


コケッ


「ああああぁぁぁ!」


走り回っていたら木の根に足を引っ掛け顔面から全力で地面に倒れる。

木を背にして魔獣の方を見るとジリジリと寄ってくる。


「ええっと、お昼食べて「ガウッ」うそうそ冗談冗談!!」


魔獣にさらに詰め寄られるも他の誰からも助けてもらえそうにない。

それは当然、彼らは彼の実力を知っているからだ。


「じゃあ、あったかい温泉でも入ってよ。」


魔法使いの格好をした男が両手の人差し指と中指を伸ばして右手は魔獣に向けて左手は地面に向けた瞬間。指から四角形の魔法陣が現れ、そしてそれは魔獣の足元に2つ同じものも現れた。

上の魔法陣からは水が現れ魔獣を捕らえしたの魔法陣からは炎が現れた。炎は水を包みもがき苦しむ魔獣は徐々に動きが悪くなり最期には動かなくなった。


ここで魔力の話をしよう。

魔力は人の体の中にある貯蔵器官にて空気中やあらゆる物体に宿る魔力を少しずつ吸収し希釈して自身の魔力へと変換して魔力を回復する。使った魔力は人によって回復の速度は変わるが基本は休み瞑想すれば完全回復する。

そして、魔力は属性付与を行える。

火、水、風などを付与できるのだがそれは一度きり、よって力は十人十色で沢山ある。

世界には稀に二重属性使いも存在する。


そのため、この上位パーティにハンター見習いである魔法使いの格好をした男が参加しているのである。


「………」


リーダーの男は後方に気配を感じるが特に作家も感じられないため放っておいた。

一行は、魔獣を退き森の奥深くへと進む。

木々で生い茂る森の中も少しずつくらい雰囲気になり霧がでる。そして、周りの木々がいつの間にか黒の荊に変わっていた。しかし、その荊は道を塞ぐわけではなくアーチを作り道ができていた。

その道を進み奥深くまでくると荊で囲まれた広い空間に出た。荊はドーム状になっていて頂点だけ大きく円で黒い雲で覆われた空が見える。


「なんだか嫌な予感がしますわね。」


聖職者の女は見るからに怪しい場所に息を呑む。

数々の修羅場を潜ってきた彼女であるがここまで異様な空気を感じたことがなかった。

しかし、リーダーは前に歩き出す。


「進むぞ…何があっても斬り伏せるだけだ。」


リーダーは背中に背負うロングソードを取り出し前を進む。

その歩みとともに武道家の女が聖職者の女の手を握り唇に口づけを落とす。


「大丈夫だよ。私も一緒に居る、そして一緒に帰ろ。」


「…ありがとう。」


聖職者の女は手を握り返し笑顔で答えたまにゆっくりと歩み出す。

ちなみに魔法使いの格好をした男はバッグからカメラを持ち出しずっと撮影していた。

魔法使いの格好をした男の脳天に拳骨を叩き落としそのまま2人は前に進む。


「!…来るぞ!構えろ!!」


リーダーは気配を悟りロングソードを構える。

その瞬間その場には信じられないほどの突風が立ち上がる。リーダーはそれを切り裂くが魔法使いの格好をした男だけが多少吹き飛んだ。


突風が止み目の前には高さは人間が10人分はありそうで体長もそれ以上の大きさをした四足歩行の巨大な黒竜が現れた。

その場の緊張が高まった。


「な…んて威圧だ。」


リーダーは初めて遭遇する黒竜に圧倒されるがそれでも気合を入れ直した。


「俺は全開の一撃を奴にぶち込む!武道家は奴の注意を引け!聖職者と魔法使いは遠距離で攻撃だ!」


「「「了解!」」」


リーダーの素早い判断にそれぞれが反応し動き出す。


「炎よ!水よ!」


「光よ!」


魔法使いの炎と水は槍へと変化し降り注ぎ水は地面に炎は黒竜の体に突き刺さる。

聖職者の光は黒竜への目眩しで、その光に包まれ距離を詰める武道家は黒竜の横顔を炎を纏った拳を叩きつける。

黒竜はその衝撃に顔を揺らすが、すぐさま顔を振り顔面を武道家に叩きつけようとするが


「滑って地面の味を噛みしめな!」


魔法使いの格好をした男が、水の槍を刺した地面を液状化させ滑らして黒竜は体勢を崩し頭を地面につけた。


「鎖よ!」


聖職者は光の鎖を黒竜の身体中に巻きつけ動きを止める。


「んじゃ、俺も…鎖よ…槍よ!」


魔法使いの格好をした男は炎の鎖を黒竜の身体中に巻きつけ水の槍は両前足と両後脚に釘打ちのように叩きつけた。

完全に動きを封じる技に魔法使いの格好をした男と聖職者の後ろで特大の魔力が集まり天高く伸びた。

その魔力は空を覆う雲を突き抜ける。膨大な魔力を操作してそれを剣に纏わせる。

纏った魔力は空気をピリつかせ振動が起き究極の一撃が用意されていた。


「極(アルテマ)スラッシュ」


その一閃は空を裂いた。

その一閃は山をも裂き海をも裂いたことのある一撃。

その一閃は大地を割き黒竜に当たる。

衝撃であたり一面に砂塵が飛び交い黒竜の姿は隠された。

大抵の生物や建物は今の一撃で断面を見せるそれくらいの一撃。


砂塵が収まり黒竜はその姿を現す。

その姿は、断面を見せるわけでもなく元の姿のまま黒竜はその場には立っていた。


「な!?…俺の最高の技が…」


リーダーも他のメンバーも想定外であり衝撃を受けていた。なによりもリーダーにとっては衝撃的であり動き出しが遅かった。


「危ない!!」


武道家が1番に反応してリーダーを抱えて飛んだ。

その次の瞬間には黒竜の爪がリーダーのいた場所を引き裂いていた。そしてその爪には赤色の液体もついていた。


「ぐっ…うう…痛い。」


「お…お前!」


リーダーは武道家を抱える。その視線の先には片足が無くなり血液が流れ出していた。

魔力を扱う者には身体中に魔力が巡っているためそれを鎧として扱うことができるため本人の魔力量によるが多ければより強固な鎧となる。


「まずい!…光で目を眩ませろ!!」


魔法使いの格好をした男が叫び聖職者の女は急いで魔法を発動させるが、彼女の負傷に焦り発動が遅い。

痺れを切らした魔法使いの格好をした男が、大量の水を出現させそれを具現化で巨大な腕を作る。それは男の腕と連動して握り拳を作り黒竜の頭を殴る。

黒竜に傷はみられないが、おかげで黒竜の追撃を防いだ。


「もういい!今は俺が殿を務める!君は彼女を連れて行け!!」


魔法使いの格好をした男は女聖職者に武道家を連れて行くように命じる。明らかに戦力として下がるが足を引っ張る人間が減るだけで動きやすくはなる。


「ご…ごめんなさい。」


女聖職者は言われるがまま動き出す。彼女は恥じた、本来なら全員を守る役目は自分なのにそれすら果たせていないことに。それどころか先輩として自分がしっかりとしないといけないのに。

だから同時に感謝した。自分より後輩の彼に精一杯の感謝を込めて伝える。


「ごめんなさい!ありがーーー」


再度振り返り彼を見て感謝を伝えようとしたがそれは止まってしまった。

彼はもうその場にはおらず、地面には彼の足だけが残っていた。

恐る恐る黒竜の頭を見ると


バキバキボキッ


骨が砕ける音が聞こえた。

同時に彼女の心も完全に砕けた。

数多の仲間の死を見てきた彼女にとっては精神的にもかなり強靭であった。特に彼女は回復魔法も使えるため人の死を何度も見てきた。しかし、今回は今までの戦場とは全く違い彼女の目の前には明確な死が見えていた。

それは同じ光景を見ていた女武道家やリーダーの男も同じ感想を持った。

絶望はS級に上がる際に何度も見てきた。しかし、今回は違った。自身らが磨いてきた技が一つも通じない。

それこそ100マスステージの1から6までのサイコロの双六で全マススタートに戻るなんてレベルで一生辿り着かない。

投げ出すには十分だった。


黒竜はそんな止まった人間を逃すほど甘くは無い。明らかに口からブレスを吐き出す直前であるのは見てわかった。

走馬灯が頭に浮かぶが、絶望によりそれを機にする余裕はなかった。

黒竜の口に溜め込んだブレスは限界が来てそこから吐き出される。渾身の一撃を見舞うかの如くそのブレスは彼らにとって見たこともないほどの威力で普通の魔導士では不可能なレベルのブレスであった。


「………」


死ぬとわかってから嘆くことも喚き散らすこともしなかった。ただただ受け入れた。

徐々に暑くなっていく皮膚に張り付く感じを覚えながらブレスは迫り彼らに当たると思ったその刹那。

黒い影が目の前を通り過ぎた。


「”焔斬り”!」


その言葉と同時に目の前のブレスは縦一閃に斬られた。

それを斬った張本人は、白い刀を持ち和服を着込む。黒い髪に幼い顔立ち年齢として17歳くらいだろう。そんな少年に彼らは助けられた。


「すみません皆さん。もう少し早く来ていればよかったのですが道に迷ってました。…本当なら一緒に行きたかったのですが出るに出れなくて。」


少年は申し訳なさそうに3人に頭を下げる。

突如現れた少年に全員驚くが命を救ってくれたことから絶望から希望へと変わりリーダーは立ち上がる。


「すまない君のおかげで助かった。S級の三つ星ハンターをやっている。無礼かもしれないが名前は伏せさせてくれ。」


「いいですよ。ちなみに僕はB級三つ星ハンターでカズって名前です。よろしく。」


現れたカズは短く自己紹介をして再び刀を構える。

カズの刀の構えは見たところ我流のようで不思議な持ち方をしていた。

しかし、彼のおかげでこの窮地を脱出出来そうなため、不思議と体も軽く今なら普段通りのコンディションだった。


「カズ、ここからどうする。正直なところ奴を倒すのはもう難しい。負傷者がいるため庇いきれない。」


「ええ、分かってます。ですが、ここで奴を倒します。」


リーダーの提案とは真反対の意見のカズに流石のリーダーも憤りを覚えるが策が有ると思い口は開かなかった。


「馬鹿げていると思っておいでですが、決して無理ということではありませんッ!」


黒竜の2度目のブレスを再び一閃で切り裂く。

そして彼は続ける。


「僕の魔力は無効化。あらゆる魔力攻撃を無効化または消失させることができます。ですので奴の体を守る魔力を消失させそこに一撃を叩き込めば。」


「奴を倒せるというわけか…しかし、それをやるにしても人数が足りないッ!」


黒竜の前足の振り下ろしを軌道だけずらして怪我をしている武道家と動けない聖職者の女を助ける。自身は退けた瞬間の横に飛び回避する。


「ごめんなさい!時間がかかりましたが復帰できます!」


女聖職者が応急処置を終えて立ち上がる。


「よし、僕が囮を引き受けますお二人は攻撃に専念を!」


カズは飛び出し囮の動きを始める。

リーダーは再び魔力を溜め構える。女聖職者は時折り目眩しで黒竜の動きを封じた。

3人の動きは今回初めて会ったがそれでもしっかりとした連携であり、カズのその場の適応力の高さを理解させられる。


「光の粒よ!爆裂!」


女聖職者の魔力は小さな細かい粒をたくさん出しその一つ一つが爆発し小さな爆発で黒竜の動きを再現させる。


「消〜失!!」


カズは黒竜の頭に飛び乗り刀を突き刺し無効化の力を働かせて黒竜の魔力を消失させる。


「衝撃に備えろ!!」


またも膨大な魔力を溜め込んだリーダーのロングソードに空気が大地が揺れる。


「”究極(アルテマ)…スラッシュ!!」


再び放たれる一閃はさらに雲を裂きゆっくりと振り下ろされる。大地を裂き岩をも切り裂く一撃は再び砂塵を巻き上げる。

そしてその後に大きな衝撃音が聞こえた。

まるで黒竜の大きな頭が地面に落ちる音であるかのようだった。


「と…通った…やった、やったぞ!!」


リーダー確認出来てはいないが、現状に確証を得て喜んだ。


「こ…これで後は証拠を持って帰ればーー」


「そうすれば恩恵で罪は帳消しだもんなお前ら。」


黒竜から聞こえる声はリーダーにとっては衝撃だった、その声は先程の黒竜との戦いに敗れ無惨にも散った者の声だった。


「俺の本来の目的とは離れてしまうが、まぁいい…ついでだ。」


彼らの前に立ちはだかるのは、魔法使いの格好をした男だった。

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