09 夢現の中で、君を知る①
短い期間で、互いを知っていく二人です
屯所を出たあとは、自然とミラ嬢から手を離して横並びになりながら歩く
調査を付き合ってくれと言いつつも、本当はこの後の予定にはないのだが、せっかく仕事仲間として仲良くなるには、話をすることを俺の生業にしている
他の部下にも、悩みや進路のことなども仲良くなっているからこそ言える
最初はローズ宰相からの提案に、渋々だったものの、何だか気が置けない仲になれるような不思議な感覚が、話を歩きながらしていくなかで感じていた。
話題などは、主に俺はクロードやルーヴェンスの友人の話になるが、ミラ嬢はどちらかと言えば、自分の主人のことやメリア嬢のこと
そして双子の奔放さに呆れつつも、しっかりしているだの色々と賛美していて少々面白くはないが、ミラ嬢が話す内容には興味のあるものも多く、聞いているぶんには楽しく聞くことが出来た
話しが区切りある感じになったころ
昼時の鐘が鳴りだし、休憩がてら何処かで食事をとることになった。
ならば俺が行き着けにしている喫茶店では? と提案し、一緒に店に行くことにした。
歩くこと2分、喫茶店【ヘラクレス】に着くと、中に入り、店員に窓際の席を勧められた
テーブル席の感じは綺麗なシックな物で、ソファーにある所は柔らかく落ち着ける雰囲気を出している
そこが俺が一番に気に入った点ではある。
俺とミラ嬢は互いに対面の席に座るなり、店員がお冷やを出してメニュー表を渡たされた。
メニュー欄には、最近出たばかりの料理やデザート類が写真付きで書かれてあった。
この案は、一人の女性によるアドバイスによるものらしく、お客のニーズに合わせての料理、書かれているメニューの作り方、店内の内装などを教えて貰ったと、顔馴染みになった店員に教えて貰った
よく出来る女性だな~とか思うため、一度ぐらい会話してみたいものだと、常々思っている
それにしても、今日はどうするかな?
じ~っと考えながらメニュー表とにらめっこしていれば、ミラ嬢がメニュー表を置く音に視線を向けると目が合ってしまう
「┄何ですか?」
「いや、料理決まったのかと思ってね」
「まあ一応は、シリウス様こそ決まったのですか?」
「まだかな、どうにも┄今回に限っていつもの料理を頼むのも、気が引けてさ」
「気が引けるとは┄何か私の前では取ることの出来ないもののようですね。とても面白そうなので頼んで下さい」
「へ?┄なんで、この会話の流れで、そうなるんだ?」
「う~ん、そうですね。ただの興味と、面白ければ、笑うか、辛辣に毒を吐いてさしあげようかと」
「ミラ嬢が笑う姿は見たいが、辛辣と毒は勘弁して欲しいよ。でも、そこまで言われたら、食べたくなったし、頼もうかな?」
「半分冗談だったのですが、頼むのでしたらご希望どおりに、辛辣と毒を吐かせていただきますね」
あれ? 笑うの言葉がなくないか?
と思うものの、下手に突っ込みを入れていたら話が進まないため、突っ込みを諦めて店員を呼び、それぞれに料理を告げて頼んだ
10分ぐらいたった頃、店員が俺とミラ嬢に料理を運ぶなり、伝票を置いて立ち去った
ミラ嬢は料理である、野菜サラダとハムに目玉焼ハンバーグステーキがある
俺は和食セット定食を頼んだ、メニューは鮭の焼き魚に漬物、ご飯に味噌汁だ。
最近の業務で疲れたストレスを、この和食セット定食は癒してくれ、ホッとするんだよな
まあ、この喫茶店がリニューアルしてからのメニューになるけど、中々にはまってしまい、良く食べに来ていたりするのだ
思考を運ばれた料理に、視線が行って思い出していたとき、何故かミラ嬢がえらく静かだと気づいて顔を向ければ
またもや、バッチリと視線が絡むなり、複雑そうな表情をされてしまう
「どうかしたのかい?」
「┄┄和食があったので、私も同じにすれば良かったと後悔していました」
「え? ミラ嬢は和食が好きなのかい?」
意外だと思う、和食よりも洋食を好んで食べてる感じがしていたからだ
俺の言葉にミラ嬢は、珍しくムッとしている表情があり、気に触ったようで
「┄いけませんか、和食が好きでは」
と刺々しい言い方をされた。
別に好きならば、それを咎める必要などない、俺だっていまじゃ和食にはまってるのだから
「いや、いいんじゃないか? でも、一言、言わせて貰うなら、俺に遠慮せずにメニューをきちんと見て、好きなのを頼んでくれて良かったんだがな?」
ちょっと意地悪くミラ嬢に、言い返してみれば
何だか悔しそうな表情で、睨まれてしまう
そんなやり取りに、俺はいつの間にか気を許していることに、気づいていなかったせいで
「┄ミラ嬢って、可愛いよな」
とボソリとにこやかな笑顔でミラ嬢に向かって呟いたとき、思いっきり驚かれてしまう
「┄な、何を、言ってるんですか?」
「うん? ミラ嬢が可愛いって言ったんだけど、どうして驚かれるのかな?」
「シリウス様らしくないからです!」
う~ん、俺らしいか? よくわからんけど
何だか動揺するミラ嬢も新鮮で、可愛いとか思うんだよな。
珍しく無表情を崩せたようで、ちょっと楽しい
ニマニマとミラ嬢を見つめ、何となく触れたいなあ~とか思うなり、俺らしくもなく手を出しそうな衝動にかられたとき
「へえ~、隊長も喫茶店に来ることもあるんすね?」
向いのテーブル席から、にょきっとロイが楽しげな表情で笑い、いい場面に遭遇したような表情をしていた。
◆◇◆◇◆◇
ロイの唐突な登場に、俺はもの凄く自分がいまやろうとしていたことにハッと思い出し
羞恥心と後悔に苛まれた
俺は何をミラ嬢にしようとしていたんだ?
可愛いからと思うのはいいが、触れたいはないよな、いや、でも┄┄┄
ブンブンと首を振り、先程の邪な欲求を心の奥に無理矢理、仕舞い込んでおいた。
このことは後で考えるべき課題だと、妙な鼓動を落ち着かせた。
「ここには昼前によく来ていたからな」
「┄ほう~、そうなんすね。ところで┄メリア嬢のメイドと、いま秘密の逢瀬中っすか?」
「┄┄殴るぞロイ!」
「ハハハ、冗談じゃないっすか、真剣にとらないで、下さいよ。それより俺っちも同席したらいけないですか?」
「は? 何でだ?」
「喫茶店に用なんか俺っちはないんで、飲みものしか頼まず、隊長が来るのを待ってたのですが、いや~隊長ってば、ミラ嬢に甘い笑顔で口説いてるんですから、声かけずらくて困りましたよ」
「┄それに可愛いですか、いやはや、隊長もすみに置けないほどの」
「あ~もう黙れ┄同席していい」
事細かくイジられるのは、癪に触るために同席を断りたい気分だったが
俺を待つだけに重要な用件を持ってきた可能性もあるため同席に許可を出した
一応、ミラ嬢にも同席を承諾してもらったあと、隣のテーブル席から移動し、ロイがシレッとミラ嬢の横の席に座ろうとしていた
「┄ロイの席は、俺の横だ‼」
ジロッと睨みながら声をかける俺の様子にロイは、ニヤニヤとして見ていたことに気づき
声音を強めに名前を呼べば
ハイハイと言わんばかりに俺の横に座る
そして次に話をする前に、目の前の料理を片付けるため、食事を取ることにした。
しかし俺とミラ嬢だけ食事をとるのも憚られ、ロイにも食事するように勧めるが、どうにも金欠気味なため断るロイに、しょうがないから、驕ってやると提案すれば嬉々として、礼を言ってきたのだった