エッセイ『骨延長手術した知人』
『骨延長手術した知人』
学生時代。まだ私が役者を目指す前の話。
私よりも先に「声優になる!」といって大学を辞めて専門学校に行った知人。それから行方不明だったが、ある時、秋葉原でばったり遭遇した。
「あ、山田(仮名)く~ん!」
「……え?どなたですか?」
「俺だよ俺!田中(仮名)だよ!」
「……えっ!?田中君!?」
「久し振り~!元気だった~!?」
「いや、まぁ、そこそこだけど……何かデカくなってない?」
「骨延長手術したんだよね~!」
「へ、へ~……」
その後ちょっと話を聞いたところによると、某声優事務所で声優として使われる為には今はビジュアルも重要との事で、身長を185cm必要と言われ、自腹で骨延長手術をさせられたらしい。その額約60万円越え大学を辞めた当時は大体175cmくらいだったので約8cm伸ばしていた。結局、身長も足りない(185cm必要なところ183cmが限界だったらしいが)、ビジュアルも良くない、声質も特徴が無い、演技は下手、特技も無いという事でその事務所を追い出されたらしい。詰まる所、その事務所と某整形外科の経営の餌食になったとの事。なのだが、本人は「格好良くなったでしょ~!?」と得意気だった。
だが正直なところ、無理矢理な骨延長手術で体のバランスはガタガタで全然格好良くないとかいうレベルではなく、歪な姿になっていた。何か気を付けをしろと言うとバイオハザードのタイラントみたいな立ち姿だった。
コイツとはもう関わらないでおこうと思い、その場を去った。
芸能界の闇の一部を見てしまい、怖くなった日だった。




