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第七話 小悪魔、舐められる


 さて。

 助けたはいいが、このイビルバットをどうするか。

 さすがに殺すわけにはいかないから、放置が妥当かな。

 昏睡から覚めれば、勝手に逃げていくだろう。

 むろん、襲いかかってきたら即討伐だが。


「キィ……」


 って、あらら。

 既に目覚めていたか。


 イビルバットがもそもそと動き、体をこちらに向ける。

 お、やる気?


 警戒するが、イビルバットに襲いかかってくる気配はない。

 敵意も感じない。

 それどころか、つぶらな瞳でジッと俺を見つめてくる。

 安全上の理由から目を背けるわけにもいかず、自然と睨み合い(見つめ合い?)の形になった。


 そうして十秒ほどが過ぎた頃、イビルバットがゆっくりと動き出す。

 羽についている前肢を使い、這うようにずりずりとこちらに近づいてくる。


 コイツいったい、何をする気だ?

 まさか俺を油断させつつ、近づいた所でガブリといくつもりじゃ……。

 念のため、【聖気治癒】でHPを回復させておこう。


 ちょうどHPが全快した所で、イビルバットが俺の目の前まで辿りついた。


 ……く、来るならこい!

 俺が内心で身構えていると、イビルバットは前に倒れ込むように姿勢を低くする。

 それでイビルバットの頭部が俺の足元に密着した。


 さては足に噛み付いて、俺の機動力を奪うつもりか!?

 そう危惧したのも束の間、足の甲あたりにぞわっとした感触を受ける。


キュオッ(ふおっ)!?」


 思わず変な声が出てしまった。

 これはまさか……足を舐められた?


 しかも一度では終わらず、イビルバットの頭部が上下する度にくすぐったい刺激が背筋を走る。


 コイツの意図は何だ?

 足を舐めるという行為は、服従の証とも取れるが……

 まさか懐かれた?


 狼狽気味にあれこれ考えていると、


《魔物の眷属化に成功しました》

《イビルバット【名称未定】が血族(クラン)に加わります》

《特殊スキル【以心伝心:Lv1】を習得しました》

《特殊スキル【血の契約・眷属化:Lv1】を習得しました》

《新たな称号【小魔の主】を取得しました》


 立て続けにアナウンスが脳内に流れた。

 そして同時に、足元のイビルバットと精神的な繋がりが発生したのが判った。

 たぶん、今覚えたスキル【以心伝心:Lv1】の効果だろう。

 イビルバットからは、俺に対する僅かな恐怖と、強い親愛が伝わってくる。


 うぅむ……まさかこんな展開になるとは。

 やっぱアレか。インプ()イビルバット(コイツ)が微妙に似ているせいか。

 近縁種ぽいから服従すれば殺されない、とか考えたのかもしれないな。


 元勇者としては、魔物に懐かれるというのは複雑な気分だが……。

 これからの事を考えるなら、仲間が増えるのは悪くない。

 戦力2倍、とまでは言わないが、安全度はグッと上がるだろう。


 なお魔物とはいえ肉盾だとか使い捨てにする気はない。

 成り行きとはいえ仲間(というか仲魔?)にした以上、コイツの面倒はしっかり見るつもりだ。

 光如みたいに悪さや下克上をしないよう、特に情操面はきちんと教育してやらないと。


 その第一歩として、コイツに名前を付けてやるか。

 いつまでも名無しじゃ不便だしな。

 もっとも、その言葉は俺にも当てはまるのだが。


 転生した事で、この世界のシステムに登録された名前もリセットされたのだろう。

 とはいえ記憶は引き継いだのだから、自分では前世の名前をそのまま使いたいと思っている。

 なのに【状態確認】や【事象の声】で表示される俺の名前は空白状態のまま。

 たぶん、生みの親などの上位者に付けられた名前じゃないとダメとか、何らかのルールがあるのだろう。

 その仮説が正しいかどうかは、眷属にしたこのイビルバットに命名する事で確かめられるはずだ。


 というわけで、コイツの名前は……うーん……


 ……よし、決めた。

 イビルバットのイビルをもじって、【イリル】にするか。

 やや安直だけどまぁ、解りやすくていいだろ。


 【以心伝心:Lv1】で命名の件をイリルに伝える。

 するとすぐにイリルから了解の意思と歓喜の感情が伝わってきた。


《眷属個体・イビルバット【名称未定】に名前が設定されました》

《眷属個体・イビルバット【イリル】はネームド登録されました》


 おっ、アナウンス来た。

 どうやら俺の仮説は正しかったらしい。

 しかしそうなると、俺は誰に命名してもらえばいいんだ?


 まぁそれはさておき、ネームド登録って何だ。

 ゲーム的な知識からすると、特別な個体って事になるが。

 まぁ悪い事ではないだろう。

 良かったな、イリル。


「キッ!」


 返事をするようにイリルが鳴いた直後、異変が起きた。

 イリルの体がいきなり成長し始めたのだ。

 唐突な出来事に、俺は唖然としつつその様子を見守る。


 数秒ほどでそれは終わった。

 変貌したイリルの姿は、それなりに変わっていた。

 全体的なシルエットはそのままだが、体格が一回り大きくなり。

 そして顔つきが決定的に変わっていた。


 変化前は潰れた豚鼻と大きな縦長耳が特徴なぶちゃいく顔だった。

 それが今では、猫とネズミを足して2で割ったような可愛い系の顔になっている。

 おかげで愛らしさと親しみがグンと増した。

 驚きのビフォーアフターである。


《ネームド登録により、眷属個体・イビルバット【イリル】はデモニックバット【イリル】へと変化しました》


 おっと、またアナウンスが。


 なるほど、変化(・・)か……〝進化〟ではないんだな。

 推測するに、ランク据え置きのマイナーチェンジってとこか。

 とはいえ種族が変わったようだから、ちゃんと確認しておこう。


=====================================

《種族》半悪魔種・デモニックバット

《名称》イリル

《性別》♀

《年齢》1

《状態》良好

《能力》

Lv:4/17

HP:90/90

MP:140/180

筋力:11

耐久:9

敏捷:26

精神:12

魔力:18

カルマ:-4

ランク:☆☆


固有スキル:


派生スキル:


種族スキル:

【超聴覚】【翼飛行(普)】【吸血回復(小)】

【反響定位】【悪魔の目】【魔翼加速(小)】


技能スキル:


攻撃スキル:

【噛みつき:Lv2】【ダイブアタック:Lv2】


防御スキル:

【反射回避:Lv3】


特殊スキル:

【超音波:Lv3】【以心伝心:Lv1】


魔法スキル:

【シャドゥーム:Lv1】


耐性スキル:

【闇耐性:Lv1】【魔耐性:Lv1】


一般スキル:

【天井接地:Lv3】


称号:

【闇夜の捕食者】【悪魔の眷属】


説明:悪魔の血を飲み、その眷属となった蝙蝠が変異したユニーク個体。半悪魔。

優れた飛翔能力を有し、高い知能と魔力で魔法を操る。

低ランクでは一等強力で狡猾な魔物だが、主に対しては従順である。

=====================================


 うっわ、マイナーチェンジどころじゃなかった。

 能力値の微上昇はともかく、スキルがかなり強化されてる。

 【魔翼加速(小)】で飛行速度向上に、【シャドゥーム:Lv1】で遠距離攻撃手段入手とか。


 ともあれ現状唯一の味方がより強くなったのは頼もしい。

 これからよろしくな、イリル。


「キー!」


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