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第六話 悪魔の善行


 イビルバット最後の一体は、既に空中へと上がっていた。

 しかしその動きは精彩に欠け、ふらふらと覚束なく飛んでいる。


 あ、岩壁に激突した。墜落……は、しないか。残念。

 てかあれ、明らかにまともな状態じゃないよな?

 視てみるか。


======================================

《種族》魔獣種・イビルバット

《名称》-

《状態》混乱・感覚鈍化

《能力》

Lv:7/13

HP:148/180

MP:190/190

======================================


 Lvからして、最初に確認した個体か。

 《状態》は……混乱と感覚鈍化になってる。

 これじゃあ壁にぶつかるのも納得だ。


 いやはや、咄嗟の思いつきが大成功である。

 もうダメかと思われた先の窮地で使ったのは、特殊スキル【金切り声:Lv1】。

 それが俺を救ってくれた。


 蝙蝠だけあって聴覚が鋭かったのと、魔力差が開いていたために状態異常攻撃が成功したのだろう。

 そう考えると、このスキル持ちの俺ってイビルバットの天敵じゃないか?

 次にまた遭遇した時は、出会い頭に使ってやろう。


 ――って、何を終わった気でいるんだ。

 まだ敵は生きている。油断するんじゃない。


 俺は気を取り直し、魔力を練る。

 使う魔法はもちろん【イグニスフィア:Lv1】。

 前後不覚状態な今のイビルバットなら、当てるのは容易なはず。


 魔法完成後、即発射。

 そして命中。

 最初に避けられたのが嘘のようにあっさりだった。


 一瞬で燃え上がり、火達磨と化したイビルバットは断末魔の声すらなく地に落ちた。


《敵対者を討伐しました。経験値53を獲得しました》

《インプ【名称未定】はLvアップしました。Lv3⇒Lv5》


 ふぅ。

 ようやく終わっ……て、ないか。


 アナウンスがないという事は、最初に倒したイビルバットがまだ生きている。

 止めを刺さねば。


 正真正銘、最後の一体となった個体が倒れている方に目を向ける。

 するとそこには大きな血だまりがあり、イビルバットの姿は消えていた。


 ――といっても、逃げられたわけじゃない。

 逃げようとはしているようだが。


 最後のイビルバットは、血だまりから少し離れた所で地を這いながら動いていた。

 移動方向的に見て、俺から遠ざかろうとしているのだろう。

 完全に強者弱者の立場が入れ替わった今では、涙ぐましい生存努力だなと同情さえ誘う哀れな姿である。


 もちろん、だからといって見逃したりはしない。

 というか、仮に俺が止めを刺さずとも、あれほどの重傷では遠からず力尽きる。

 あるいは他の魔物の餌食になるかだ。

 偽善かもしれないが、一思いに(介錯)してやるのが情けだろう。


 俺はイビルバットへと近づき、翼を踏みつけて動きを止める。

 それから貫手にした爪の切っ先を、その背中へと向けた。


「キ……キィ……」


 そのとき、弱々しい鳴き声が下から聞こえた。

 断末魔とも、命乞いとも取れる声だ。

 振り下ろそうとしていた俺の手が止まる。


 まったく、やりづらいな……。

 しかし生かしておく理由も義理もない。

 やはり殺すしかないか。


 再び腕に力を込めたところで、ある思いつきが頭に閃く。


 ――コイツを【聖気治癒】で治療すれば、善行って事でカルマ値上がるかな?


 それはまさに悪魔の囁き。

 というのは大げさだが、試してみる価値はあるだろう。

 仮に回復したイビルバットが再び襲いかかってきても、今度は容易に返り討ちにできるし。


 ――よし。

 俺は貫手にした手を下ろし、イビルバットの背に触れる。

 踏みつけていた足もどけた。

 

 あれ、体が冷たい……

 もはやピクリとも動かないし、もう死んでる?

 でもアナウンスがないしな。

 まぁ視てみるのが早いか。


======================================

《種族》魔獣種・イビルバット

《名称》-

《性別》♀

《年齢》1

《状態》出血(中)・昏睡・衰弱

《能力》

Lv:4/15

HP:2/90

MP:100/100

筋力:9

耐久:9

敏捷:24

精神:8

魔力:10

カルマ:-4

ランク:☆☆


固有スキル:


派生スキル:


種族スキル:

【超聴覚】【翼飛行(普)】【吸血回復(微)】

【反響定位】


技能スキル:


攻撃スキル:

【噛みつき:Lv2】【ダイブアタック:Lv2】


防御スキル:

【反射回避:Lv2】


特殊スキル:

【超音波:Lv2】


魔法スキル:


耐性スキル:

【闇耐性:Lv1】


一般スキル:

【天井接地:Lv2】


称号:

【闇夜の捕食者】

======================================


 残りHP2か。

 生きてたのはいいが虫の息だな。

 治療するなら急がないと。

 カルマ値マイナスによる反動ダメージが入りそうだが、-4程度なら大丈夫だろう。

 もしそれで死んでしまったなら、それがコイツの運命だ。


 そう見切りをつけ、デビルバットの体に聖気を流す。

 その途端、体がビクンと痙攣したが、死んだわけではない。

 【悪魔の目】で状態をモニターしているから、HPが回復している事実を確認できている。

 同時に体温も戻ってきているようだ。

 触れている手のひらが温かい。


 HP20……40……60……80……よし、全快したな。


《善行【己を害した敵対者を許し、命を救う】を確認しました》

《善行により、功徳が上昇しました。カルマ値+8》

《新たな称号【慈悲の体現者】を取得しました》


 よおっし、狙い通り!

 しかもカルマ値だけでなく、称号まで手に入った。

 これ、どんな効果があるんだろう?


======================================

【慈悲の体現者】称号/パッシブ効果

説明:善なる心を持つ者が、深い慈悲をもって敵対者の命を救った際に得られる称号。

・回復系スキル効果上昇(小)

・カルマ値上昇補正(中)

======================================


 おおっ、これは素晴らしい。

 回復効果向上って事は、今後の生存率を大きく上げてくれるな。

 カルマ値上昇補正は解りづらいが、たぶんカルマを増えやすくしてくれる効果だろう。

 良かった良かった。


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