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第二十二話 脅威との遭遇(4)

第二十二話です。よろしくお願いします。


GW中に出来ました。

ようやく戦闘回です。

区切りがいいところで切ったら少し短くなりました。(3400字程)

 零は森の中を走る。

 距離的には約70mとすぐに着く距離だが、反応があったのは出発時でその位置から約50mだった。現在は零の速度の方が早いが、危険を伝えるには時間がなかった。

 少ししてセアラ達の姿が見え始める。零は大声で叫んだ。

「サラ! 森から出て! 次が来てる!」

 セアラは零の言葉に驚き、一瞬動きを止めてしまう。その時、セアラに向けてホーンラビットが突進してきた。

 零は走りながら黒い球体を出現させる。すると、そこから目にも留まらぬ早さで石が射出された。

 これは単にウィルスで取り込んでいた石に強めのベクトルを発生させて飛ばしただけである。レーザーでは突進等の勢いは殺せない為、咄嗟(とっさ)に使える物理的な遠距離攻撃の手段として作ったものだ。しかし、取り込んだ物を減らしてしまうためコスト的には非常に割高であった。

 飛んでいった石はホーンラビットに当たり、その体を吹き飛ばす。

 石はかけらを散らしながらもホーンラビットの体内までめり込み、ホーンラビットを絶命させていた。

 零はその光景を目の当たりにしていたものの、嫌なものを見たと思い顔をしかめる程度で済んでいた。

 その理由は零の身体強化にある。身体強化で体中の粒子を制御しているが、その影響は脳内にも及んでいる。その影響で脳の神経伝達も正常から外れることが無くなり、結果として忌避感や恐怖等を感じなくすることが出来る。しかし、全く感じないのは自滅に繋がりかえって危険なため、わざとある程度は感じるようにしてあった。

「どうして来たのよ!」

 驚きから立ち直ったセアラは、零に向かって怒鳴った。

 零はもう一度言い直す。

「次が来たんだ! 数は15程! 時間がない、一緒に森から出て!」

 先ほど零がホーンラビットを言い当てたのを知っているセアラはその数を聞いて焦りの表情を浮かべ、ギルド員に撤退を促す。

「聞いて、ここのホーンラビットもこの子が言い当てたの! 森を出たほうがいいわ!」

「本当か!? だとしたら――」

 ギルド員が言い終わる前に、森の奥からガサガサと複数の音が聞こえ始めた。

「急いで!」

 零は二人に向かって叫ぶ。二人はそれぞれ対峙しているホーンラビットの攻撃を捌くと、外に向かって駆け出した。

 零を先頭に逃げる三人だったが、道のない森の中であり木が邪魔になっていた。そのうえ、ホーンラビットは早い上に木々をすり抜けるため、後ろの二人が最初の残り三匹に追いつかれそうになった。

 零は後ろを向きレーザーを連射し、それぞれに命中させる。森の中のため火事を警戒して威力を上げることは出来なかったが、ホーンラビットの動きは十分鈍らせることが出来た。

 しかし、その時にはガサガサと鳴り出していた。後から来た方も距離は近づいている。

 迎撃で遅れた零は二人に追い付くため更に速度を上げて走りだす。

 二人はもうすぐ森から出る所だった。零もわずかに遅れて外にでる。

 だが、少し遅かったようでホーンラビットもそれからすぐに森から飛び出す。障害物が無くなったせいでホーンラビットは更に加速し、零達三人の周りに散会した。

 零は周囲のホーンラビットを見渡す。その時他の場所からはホーンラビットに混じり普通の動物も一緒に飛び出し散り散りに走り去っていくのが見えた。

「合わせて十九羽か。普通は群れても五羽程なんだが……。隠れられるよりはマシだが厳しいな」

「レイ、こうなったらあなたも戦って。こいつらの足からは逃げられないわ」

「危険は承知で二人を呼びに行ったんだ。今更逃げないよ」

 言葉を交わしながらギルド員は短槍を、セアラは大剣を、零は太刀をかまえる。

「話は終わりだ。来るぞ!」

 ホーンラビットが一斉に動き出した。ホーンラビット達はあっという間にトップスピードになり、その速度はチーターに並ぶ程であった。

 ホーンラビットたちは跳びかかり、零達に頭の角を突き立てようとしてくる。

 だが、零は斜め前に出ながら半身になることでそれらの間に入り回避する。棒人間の不意打ちに対処してきた恩恵だ。

(想像以上に早い! でも、僕だって――)

 零は半身からホーンラビットの背後が見えるまで更に体を回転させる。そして、地面を蹴りホーンラビットのすぐ後ろまで追いついた。

 零は太刀を横一文字に振るい、跳びかかる格好のままのホーンラビットの脚を全て切り飛ばす。そして、レーザーを放ちその近くに居た一匹の頭部に命中させる。森から出た今、連射ではなく威力を大きく上げた一撃は、ホーンラビットを貫き脳を焼いていった。

 ホーンラビット達はそのまま走りぬけて一度距離をとった。

 残りは十五羽、ギルド員とセアラはそれぞれ一羽ずつ仕留めたようだ。

「オイオイ、レイだったか? 初級とは思えない強さだが、無理に魔力を使うな」

「レイ、無茶はしないで! 魔力が切れたらお終いよ!」

 セアラ達に心配されるものの零が使うのは魔力ではなくマナであり、その元となる物も量には相当の余裕があった。

「量は平気! それより、来るよ!」

 ホーンラビット達は再び突進を開始する。しかし、今度は零に向かってくる相手が一羽も居なかった。

「こっちを先にってか?」

「冗談じゃないわよ!」

 ホーンラビット達は自分達以上の動きをした零を避け、セアラ達に迫っていく。しかし、それは悪手であった。

 フリーとなった零は身体強化を一時的にやめてリソースを確保する。そして、レーザーを十五個同時に起動した。

 零の周囲から十五条の光が放たれホーンラビット達に命中していく。ホーンラビット達は皆、体を光に貫かれて倒れていった。

「え?」「はぁ?」

 セアラ達は間の抜けた声をもらした。自分達に向かってきた相手が突然全て倒れたのだ。呆然としてしまうのも無理は無い。

 セアラ達は原因と思われる零に目を向ける。

 零はというと身体強化無しであったために気分が悪くなり、青い顔をしてその場で屈んでいた。すぐに身体強化をし直したため今は少しずつ回復している。

 セアラ達は零に詰め寄った。

「レイ、今のは何なのよ!?」

「何って、単に一度に複数使っただけだよ」

「数がおかしすぎる! それを『単に』かよ!」

「あと、無茶はしないでって言ったわよね! 倒れるまで使って、倒せなかったらどうするつもりだったのよ!」

「あー、これは血を見て気分が悪くなっただけだから。そっちももう治ってきたし」

「休まずあれだけ放って平気なのか? 魔力量はどうなってるんだ?」

「えっと、それは――ん? 何か聞こえない?」

 零がセアラ達の質問攻めにあっていると、不意に森の方から低い音が響きだした。

「本当だ、何だこの音は?」

「どんどん大きくなってるわね」

 音は大小様々で不規則な連続音だった。そしてその内にその音の正体が姿を表した。

 そこには、おびただしい種類と量の動物・魔物の混ざった群れが走り寄ってくる光景があった。群れは横にも大きく広がり回避は出来そうにない。

「なっ!」「えぇっ!」「ちょっ!」

 このままでは押し潰されると思い、零は咄嗟に自分達の正面の群れに向かって、レーザーをとにかく乱射した。

 一発の威力は弱かったが、当たった相手は(ひる)んで射線から左右へそれていく。一部はそのまま向かってきたが、その時は一撃だけ強力なレーザーに変えて倒していった。

 群れはそのまま通り過ぎて行く。時間にして一分にも満たなかったが三人共生きた心地はしなかった。

「……何だったの、今のは?」

「……私も初めてよ。森に何が起こってるのよ?」

「完全にこっちを無視して走っていたな。まるで、恐ろしい物にでも――」

 その時、森からまた低い音が鳴り始めた。音は軽快なテンポで鳴り響きつつ零達の方に向かいつつあり、時折破砕音が混ざっていた。

「……何か音が大きいわね?」

「……余計なことを言うからこうなったんじゃないの?」

「そんなことを言ってる場合か!」

 そして、それは木をへし折りながら姿を表した。見た目はゴリラのようだが大きさは4m近くもある。毛は赤銅色で、太さ20cm程の木を折って枝をむしりとった様な棍棒を持ち、額には丸い石のような物があった。

 零は石のような物から違和感を感じていた。

「あれは、まさかラヴァコング……なのか?」

「ラヴァコング!? なんで森にいるのよ!?」

「そんなの知るか! くそっ、さっきからの異変はこいつのせいか!」

 ラヴァコングは辺りを見渡す。

 そして、零達を見つけると雄叫びを上げ、棍棒を振りかぶり走り寄った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


野うさぎって早いんです。最高で約80km/hは出るとか。

そんな奴に刺さるような角着けたら、それだけで十分危険生物だと思います。

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