第二十一話 脅威との遭遇(3)
第二十一話です。よろしくお願いします。
GWになってようやく修正出来ました。
もう一話あげられるかなぁ?
一話から二十話までを改稿しました。
話の内容が変わっている訳ではありませんが、気づいた部分の誤字修正や表現の変更を主に行いました。
そして、修正予定だったエリン・アビー・アリスン・イーディスの名前の追加をしました。
また、ウィルスで使用するエネルギーをマナに、人名のキャスリンをセアラに変えています。ご了承願います。
リリアンをギルド員に引き渡して、零とセアラは森に向かっている。
「レイは今日が初めてなの? 依頼内容はシモンの実の採取よね? いくつ必要なの?」
「30個だね」
「じゃあ、私とレイで半分ずつね」
二人は森のすぐ前に来た。先を歩くセアラが立ち止まり、零の方に振り返る。
「さて、これから森の中に入ります。平原よりも危険が増えるわけですが、準備はいいですかー?」
セアラはまるで遊園地のアトラクションの係員のような言い回しで零へ話しかける。
零はセアラの突然の豹変に思わず吹き出して笑ってしまった。
「あ、ちょっと。なんで笑うのよ」
「ププッ。あはは、ゴメンゴメン。でも、あれはちょっとやり過ぎじゃない?」
「うーん、せっかくだから盛り上げようと思ったんだけど、レイには合わなかったみたいね」
セアラは若干顔を赤らめて呟くと、一回咳をして今度は普通の口調で言い直す。
「これから森に入るわ。浅いとはいえ森の中では野生動物や魔物が潜む可能性が出るのよ。心の準備はいいかしら?」
「あ、ゴメン。少しだけ待ってて」
再度準備を問われたことで、零はやり忘れていたことを思い出す。記憶がいくら鮮明で消えないとしても、思い出そうとしなければ埋もれたままなのだ。
零はセンサーを起動する。その途端に零の周りで不可視の4つのセンサーが正四面体の各頂点の位置に出現した。
このセンサーが感知するのは多岐にわたり、光・音・熱等の人にも分かる物から自然内の電波・放射線・重力等の遮断されづらいまで含まれ、多彩な相手を検知することが出来るようになっている。さらに各部センサー間の感知時間の差から、両目で物を見る要領で形や距離を立体的に把握することも可能だった。
また、何故レーダーではなくセンサーかといえば、レーダーは自ら観測波を出し反響を見る都合上、相手に自分の位置が感知される可能性があることを嫌ったためである。
現状は明確な範囲が約100mで限界が約150mだ。まだまだ狭いものの、障害物の多い森では役には立つ。
零は周囲を見渡して視界と検知結果に差が無いことを確認した。
「準備出来たよ」
「分かったわ。行きましょう」
二人は森の中に足を踏み入れた。
すると手前数本を除いてシモンの実の生る木が目の前一面に生えているのが確認できた。リリアンの言っていたことは嘘ではなかったようだ。
「おお、本当にシモンの実がいっぱいだぁ」
「そういえば、レイはここをどうやって知ったの? 初めてでここに居るなんて珍しいのよ?」
「依頼を受けた時間が皆から遅れてて、走って追いついたのがあのリリアンだったんだ。場所はその時に教えてくれることになったんだけど……」
「あの子も私以外には普通に接してるみたいなのよね。私への暴走はやめて、皆と同じ様に出来ないのかしら? 私にその趣味はないのよ?」
セアラは盛大に溜息を付いた。そして、頭を振って気を取り直す。
「……話がそれたわね。なるほど、それでここを知ったのね。実はギルドの地図はわざと別の場所が書いてあって、自分で情報を得る練習にもなってるのよ。運が良かったわね」
初級の依頼も単に過保護なだけではなかった。今回偶然にここを知っただけの零はこれからは下調べをすることに決めた。
「この場所はみんなに内緒よ? 聞かれるまでは答えないでね?」
「分かった。ねえ、そろそろ始めようよ」
「そうね、始めましょうか。でも、どうせなら競争しましょう?」
しかし、セアラからの提案に零は難色を示す。
「競争って、どっちが早く15個取れるかってこと? 僕はそのままじゃ手が届かないしどう考えたって不利でしょ?」
「たしかにそうね。でも、もしレイが勝ったら屋台で食べ物を一つ奢ってもいいわよ。レイが負けても何もしないから安心してね」
「それならいいけど、ルールは?」
零には損がないので付き合うことにして、セアラに話を促した。
「レイはその袋へ、私はスカートへ先に15個入れた方が勝ち。レイは魔法もありよ」
「魔法あり? いいの?」
零は勝てる見込みが出来てセアラにいい笑顔を見せる。
「……周りに迷惑が掛かるものはだめよ?」
反対にセアラは魔法の許可は早まったかと考え始めていた。
「この石が地面に着いたら開始よ」
セアラが小石を拾い、投げ上げる。そして、小石が地面に着いたと同時にセアラは走りだし、零は前に大きく跳んだ。
零は身体強化のプログラムまでは使ってないが、上昇した力と軽い体重のお陰で1m近く上に跳び上がった。低い位置の実のヘタが確認できた零は、落下中に短く五回レーザーを連射する。
出力を調整したレーザーがシモンの実を枝から切り離し、落下させる。零は一緒に落下しながらそれらの実を袋に回収した。
「なにそれ、予想外すぎるわよ!」
セアラも急いで実を取っていくが一度に取れる数に差がありすぎ、同じことを繰り返した零の勝ちとなった。
「負けちゃった。まさか、そんなにも魔法が使えるとは思わなかったわよ」
セアラはシモンの実を零の持つ袋に入れていく。
スカートをめくって袋の代わりにしているのでセアラの脚が見え、零は少し目を泳がせた。
「でも、強化系魔法と放出系魔法を併用するのはオススメしないわよ?」
「どうして?」
使ったのは魔法ではないし身体強化も使ってはいないが、その組み合わせはよく使うパターンだと思っていた零は首を傾げる。
「どっちも中途半端になるからよ。しばらく休めば回復するとはいえ、強化系は持続できる時間が減っちゃうし、放出系は回数がこなせなくなっちゃうわよ」
タンクの中の水を一つの蛇口から出せばそれなりに保つが、複数から出せばその分枯渇が早くなるのと同じようだ。
「それに制御も難しくなるから、下手をするとどっちも失敗なんてこともあり得るわよ。だから、ほとんどの人はどちらかを選んでつかうのよ」
「なるほど。でも、する人が居ないわけじゃないんだよね?」
「そうだけど……いい話は聞かないわよ?」
「まあ、忠告はありがとう。ちょっと考えてみるよ」
実際問題で零の作った身体強化は補充さえ気をつければマナの量は問題ないが、リソースを使いすぎて他のプログラムと併用しづらいのは確かだった。もっと別の手を考えるか、リソースが増えるかを確かめる必要はあった。
「さて、シモンの実も採れたことだし街へ帰りましょう? 約束通り奢ってあげるわよ」
「ご馳走になります」
二人は森の外に歩き出した。
しかし、森から出る直前に零のセンサーに新たに何かの反応がでる。零は立ち止まって反応を確認した。
(何かが近づいてる? 人ほど大きくはない。数は多分5つ)
「レイ? どうしたのよ?」
突然止まった零にセアラが声をかける。零はセンサーの情報を教える事にするが、まだ不鮮明な範囲のため自信はない。
「何かがこっちに近づいてる気がするんだ。複数いると思う」
零は森の奥を指さしながら答えた。しかし、セアラは特に慌てる様子はない。
「多分無害な動物よ。外周部でもたまに見かけることがあるわね」
「そう? だといいんだけど……」
零も確信がないので強くは言えず、二人はそのまま森を出た。
だが、対象が近づくに連れセンサーは形を鮮明に映しだし始める。それは零の読んだ図鑑にある姿と一致していた。
「ホーンラビット?」
零はつい名前を口に出していた。
「今度は何なのよ?」
セアラが若干呆れた様子で零に問いかけた。
「さっき言った近づいてくるもの、それがホーンラビットなんだ。数は六羽。もうすぐで誰かと接触する」
零は明確になった情報をセアラに伝えた。しかし、セアラの表情は呆れが強くなるだけだった。さらには、セアラからの小言が始まってしまう。
「あのねえ、さすがにそういう冗談はよしてちょうだい。見えもしないのにそこまでハッキリ分かるわけがないでしょう?」
「いや、本当に――」
反論しようとした零の頭上にゲンコツが落とされた。力は入れられてないもののガントレットがあるせいでとても痛いものだった。
頭を抱える零をよそに、セアラの小言は続いた。
「言い訳しないの。そんな事ばかり言ってると将来――」
「キャアァァァァァァアァッ!!」
セアラの小言は森からの悲鳴によって中断された。
悲鳴を聞いたギルド員がリリアンをその場に残して駆けつけていき、森からは初級と思われる人達が逃げ出し始める。
セアラはその光景を呆然として見ていた。
「……まさか、本当にいるの?」
「そう言ったじゃないか!」
零は涙目でセアラを見上げて睨みつけた。セアラは零の頭を撫でながら謝る。
「レイ、ごめんね。唐突過ぎて信じられなかったのよ……」
「分かってくれたならいいよ。ところで、向かって行ったのは一人しかいないけど大丈夫なの?」
零の質問でセアラは固い表情になる。
「ホーンラビットは意外と強いのよ。レイ、数は確かなの?」
「間違いなく六羽だよ」
「普段は一・二羽なのに、一人じゃ苦戦する数ね。……レイ、私も森へ向かうわ。あなたは先に街へ戻っててね」
「分かった、サラも気をつけて」
セアラは森の中に走っていく。零はセアラを見送ると後ろを振り返った。
すると、こちらに走ってくる人影が見える。いつの間にか回復したリリアンだった。
「ちょっと、みんな一斉に街に向かってるけど一体何があったのよ! お姉さまも森に向かって行っちゃったし!」
リリアンは状況が分かっていないらしく零を問いただす。
「ホーンラビットが現れたんだ。ギルド員の人もいるけど数が多かったから手伝いに行ったんだよ」
「そう、さすがはお姉さまね。それなら私達も街へいそぐわよ」
「あれ? 追いかけないんだ」
「私じゃまだ足手まといになるのは解ってるわ。お姉さまを危険に晒したくないの」
零は無言のまま以外なものを見る目でリリアンを見つめた。
「失礼ね! いいから早く行くわよ!」
再度センサーの確認をすると、戦いの中でホーンラビットが二匹倒れているのが分かる。零は安心してリリアンに急かされるまま動き出そうとした。
しかし、その時センサーに新たな反応が現れ始める。
先程より反応する範囲が広く、数は数十に登っている。そしてその内の十数余りがセアラ達の付近へ向かっていた。
一人六羽で苦戦するのだ、もし合流されたら二十羽近くになり二人が危険に陥る事になる。
「ごめん、リリアン! 先に行って!」
零はリリアンの返事を聞く前に森の中に入り、センサーを切り身体強化に替えてセアラ達の元へ向かった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
読んでわかると思いますが、零は完全に子供扱いされています。
魔物は最弱の部類ですら、一般の子供では多対一でも命の危険があると思って下さい。
次はようやく零がまともに戦闘へ参加します。
描写を頑張らないと……。




