【外伝・大学生編】第2話『誰かの物語を、私が継ぐ日』
月曜の午後。
澪は、大学図書館の地下書庫で静かに本を読み込んでいた。
この場所には、ごく一部の学生しか立ち入ることができない。
書架の奥、誰も来ない空間。
けれど、澪はこの“静寂”が好きだった。
机の上に広げたのは、『ルヴィエール王国の魔導史』。
著者不明。古語混じり。だが、そこに綴られる名――
《魔王グラディウス》
「やっぱり……あの世界は、本当に存在したんだ」
本の中では、彼はこう記されていた。
“深き影の玉座に立ち、神の加護を拒絶しながらも、人々を守ろうとした《黒王》”
かつて、澪が見た彼の姿と重なっていた。
「でも、私の知ってる彼は――もっと、不器用で優しかったよ」
ぽつりと呟きながら、澪は胸に手を当てる。
あの日のキス。
最後に交わした、彼の言葉。
『お前と交際0日婚して良かった』
その声が、今も鼓動に重なるように残っている。
◆
授業が終わったあと、澪は指導教官・天海准教授に呼び出された。
「如月さん、君の“記録引き継ぎ帳”を読ませてもらったよ」
「……!」
「創作かと思った。でも、あまりにも“熱”がこもっていてね。これは何か、君の中に確かな“記憶”があるとしか思えなかった」
澪は何も言えなかった。
けれど天海准教授は続けた。
「この世界には、時折、歴史に“記録されない者”がいる。だけど、それを“綴る者”がいたなら、その物語は残されるんだ」
「……私、それになりたいんです。記録を……誰かの物語を、残す人に」
「なら、僕が君を推薦しよう。来月から、附属図書館の実地実習が始まる。そこに“特別枠”で参加してくれ」
澪は目を見開いた。
それは、彼女が一番望んでいたチャンスだった。
「……はい! やらせてください!」
◆
春風の吹く帰り道。
澪は、自分の大学ノートにまた一行を書き加えた。
《記録者・澪、第2章:学び、継ぐ》
「いつか、この“記録帳”が誰かの手に届いて――
また、あの世界の誰かに繋がったら、嬉しいな」
そう、願いながら。
──次回、第3話『継がれた声、図書館の奥で』
大学附属図書館での実習が始まり、澪は“見覚えのある紋章”に出会う。
それは、かつて王都ルヴィエールで見た“あの紋章”だった――
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