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【外伝・高校三年生編】 第5話『記憶の終わりに、私は立っている』


 春野澪は、ノートを閉じた。


 あの世界の記録を読み漁り、追いかけ続けた日々は、今静かに終わろうとしていた。


 けれど、そこにあるのは喪失ではなく、**“確かな繋がり”**だった。


 私が帰ってきた後も、あの世界は続いていた。

 リアムも、フィリアも、アリアも、兵士たちも――そして、その子どもたちと孫たちも。


 私の知らない未来を、ちゃんと生きていた。



 卒業まであと少しというある日、澪は県外の大学図書館で、最後の一冊を見つけた。


 


 『記憶継承文書:白き記録帳・終巻』


 


 最終章、そこに記されていたのは――**“アリア王妃から、澪へ宛てた言葉”**だった。


 


 > 「澪へ。

 > あなたがこの世界を離れてから、どれほどの時が経っただろう。

 > 私は母になり、妻になり、そして女王としてこの国を守りました。

 > でも、何よりも――私は、あなたの“妹”として在り続けたいと思っていました」


 


 澪の目が、ページに吸い込まれるように動く。


 


 > 「あなたの名前は、私の娘に託しました。

 > そのまた子へ、そして孫へと。

 > あなたの優しさも、勇気も、私たちの中で生きています」

 >

 > 「ありがとう、澪。

 > あなたがこの世界にいたことを、誰も忘れてなんかいません。

 > たとえ記録に名前が残らなくても――私たちの心に、あなたはずっと生きています」


 


 涙が、音もなくこぼれ落ちた。


 画面の中でも、本の中でもない。


 “心の奥”にある澪という存在が、確かに誰かに届いていた。



 その日、澪は夜の公園にひとりで出かけた。


 空は、どこまでも澄んでいて。

 星が、言葉のように瞬いていた。


 


 「私、こっちの世界でも……もう一度、生きていく」


 


 もう、記憶にしがみつかない。


 “記憶を胸に抱いて”、この世界で歩いていく。


 図書館司書になる夢を持って、歴史を継ぐ人になるために。


 


 あの世界で誰かの人生に触れたように――

 今度は、私が誰かに“記録を届ける人”になりたい。



 その夜、澪は机にノートを広げた。


 タイトルは、まだ決まっていない。


 でも一行目だけは、すぐに決まった。


 


 「これは、私がもう一つの世界で“生きた証”の物語」



◆【記録の向こうで、君は生きていた 高校三年生編】完結


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