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【外伝・高校三年生編】 第3話『白き継承者の、その子供たち』


 春野澪は、大学の附属図書館まで足を運ぶようになっていた。


 公共の図書館ではもう見つからない深層文献が、この先にある気がした。

 その“確信”は、理屈ではなく、まるで心が導いているかのようだった。


 


 この日、彼女が見つけたのは──

 《王家血脈資料集:第六編──アリア王妃とその末裔》。


 


 白き継承者アリア。

 澪が“あちらの世界”で育て、名を贈った少女。


 自分にとって、妹のような存在だった。


 


 そのアリアがどう生き、誰と共に歩み、どんな未来を託したのか。

 知るのが、こわかった。


 けれど、それ以上に……知りたかった。



 ページをめくる。


 そこに記されていたのは、アリアが王妃となり、二人の子を授かったという事実だった。


 


 > 「長男は“ルーク”と名付けられ、王家を支える魔導士に。

 > 長女“ミレナ”は、王国南部にて大図書館の総長となる」


 


 ミレナ。

 その名を読んだ瞬間、澪の胸がずきんと痛んだ。


 記憶の中に、淡く、確かに──小さな子が“澪、あそんで”と笑いかけていた姿があった気がした。


 それが、ミレナだったのだろうか。


 


 そしてさらに──


 


 > 「ミレナの娘、“リィル”と、“アレン”の双子は、百年後の王国にて“再継承の火種”となる。

 > 特にリィルは、母ミレナと共に“過去の記録”を再構築し、“白き記録帳”を完成させた」


 


 白き記録帳。

 それは、澪が一度も見たことのない──だが、彼女が始まりにいた“記憶”の書。


 


 「……私が残せなかったものを、ちゃんと……“彼女たち”が残してくれたんだね……」


 


 何度も涙が込み上げた。


 澪の名前は、その記録にはもう出てこない。


 だけど、彼女の記憶や思い出は、確かにアリアと、その子孫たちの中に“受け継がれていた”。


 


 私のしたことは、消えなかった。


 そして彼らは、ちゃんと未来へ進んでくれていた。



 その夜、澪は久しぶりに夢を見た。


 雪のように白い回廊の中、少女が微笑みながら澪に手を差し伸べていた。


 


 “ありがとう、澪。あなたが私のはじまりだった”――


 


 目が覚めたあと、澪は涙を拭いながら、静かにノートに書いた。


 


 アリア、ルーク、ミレナ、リィル、アレン。

 名前はもう知らなくても、きっと私は……君たちを愛していた。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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