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完全なる終幕… 最後の記録『おばあちゃんになった私と、魔王様のさようなら』


 ──王都ルヴィエールという国が、どこか遠い空の下にあったという記録は、もう歴史書にも載っていない。


 けれど、それは“春野澪”という女性の中では、いつまでも色鮮やかに残り続けていた。


 


 春の日の午後。

 縁側に座り、白髪をやさしくまとめた澪は、子どもや孫、そしてその先のひ孫たちに囲まれていた。


 「ねえ、おばあちゃん。また聞きたい! “魔王様”の話!」


 「うん! “王都ルヴィエール”ってほんとにあったの!?」


 


 澪は微笑んで、静かに頷く。


 「ええ。あったのよ。遠い世界にね。私、そこで“魔王様”と出会って、交際0日で結婚して……大変だったけど、楽しかった」


 


 孫たちはきゃあきゃあと笑いながらも、目を輝かせて澪の話を聞く。


 ──“黒き魔王”との出会い、“記録の祭壇”での使命、双月の丘での別れ。

 澪は何度も話してきた。でも、何度でも話してあげたいと思えるほど、それは確かな“想い出”だった。


 


 「魔王様は、怖いけど優しかったの。意地悪だけど、私のこと、誰よりも大事にしてくれた」


 


 子どもたちはうっとりとした表情で聞いていたが、その時だった。


 澪の背後から、ゆっくりと部屋に入ってきた白髪の男性がいた。


 


 「おいおい……“怖いけど優しい”とはずいぶんな言われようだな」


 


 みんなが振り返ると、そこにはかつて“魔王”と呼ばれた男、

 ──グラディウスの姿があった。


 


 かつての威厳はやや薄れたものの、凛とした眼差しと静かな笑みは今も変わらない。


 「……魔王様!」


 澪は照れたように笑い、そっと彼の手を握った。


 


 「やっぱり、今でも言うのね。怖かったって」


 「そりゃあもう、圧倒的な存在感だったから。最初は私、震えてたもの」


 「ふっ……でも、最後までお前だけには勝てなかったな、我が花嫁」


 



 その日の夜。


 月明かりの下、澪はグラディウスの寝室を訪ねた。


 彼はベッドに横たわり、静かに目を閉じていた。


 


 「……お前は、本当に強くなったな。……記録を継ぎ、未来を渡して……立派だった」


 「あなたがいたからよ。私に“残すべき物語”をくれた」


 


 グラディウスは、ふと微笑む。


 「……やっぱり、あの異世界は楽しかったよな」


 


 澪は手をそっと重ね、優しく頷いた。


 


 「ええ。……おばあちゃんになっても、私は思うの。

  やっぱり“魔王グラディウスとの異世界”は、人生で一番、楽しかったって」


 


 ふたりはしばらく、言葉もなく手を繋いでいた。


 やがて、グラディウスは深く息を吐き、静かに言った。


 


 「じゃあ……そろそろ、記録の最後の一行を閉じるとするか」


 


 それは、別れの言葉だった。


 けれど、悲しみではなかった。


 



 家族たちが集う中、グラディウスは澪に手を握られながら、

 その生涯を終えた。


 ──世界を救った魔王。

 ──記録者を愛したただ一人の男。


 その顔には、最期まで穏やかな笑みが浮かんでいた。


 


 澪は涙を流さなかった。

 その代わり、そっと彼の耳元で囁いた。


 


 「ありがとう、魔王様。……これで、物語は本当に、終わりね」


 


 


 月がふたつ、夜空に寄り添うように並んでいた。


 まるで、ふたりの“魂”が再び双月の丘へ帰っていったように。


 


 


 ◆【そして、記録は永遠になる】──完。



これにてこのシリーズである…

『交際0日で魔王と結婚したら、ただの契約婚のはずが世界の命運を握ることになりました!?──私、ただ嫁いだだけなのに』の**《澪の外伝編:完全終幕》**

──“おばあちゃんになった澪と、最後の魔王様の物語”──

完全完結です。



本当に最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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