完全なる終幕… 最後の記録『おばあちゃんになった私と、魔王様のさようなら』
──王都ルヴィエールという国が、どこか遠い空の下にあったという記録は、もう歴史書にも載っていない。
けれど、それは“春野澪”という女性の中では、いつまでも色鮮やかに残り続けていた。
春の日の午後。
縁側に座り、白髪をやさしくまとめた澪は、子どもや孫、そしてその先のひ孫たちに囲まれていた。
「ねえ、おばあちゃん。また聞きたい! “魔王様”の話!」
「うん! “王都ルヴィエール”ってほんとにあったの!?」
澪は微笑んで、静かに頷く。
「ええ。あったのよ。遠い世界にね。私、そこで“魔王様”と出会って、交際0日で結婚して……大変だったけど、楽しかった」
孫たちはきゃあきゃあと笑いながらも、目を輝かせて澪の話を聞く。
──“黒き魔王”との出会い、“記録の祭壇”での使命、双月の丘での別れ。
澪は何度も話してきた。でも、何度でも話してあげたいと思えるほど、それは確かな“想い出”だった。
「魔王様は、怖いけど優しかったの。意地悪だけど、私のこと、誰よりも大事にしてくれた」
子どもたちはうっとりとした表情で聞いていたが、その時だった。
澪の背後から、ゆっくりと部屋に入ってきた白髪の男性がいた。
「おいおい……“怖いけど優しい”とはずいぶんな言われようだな」
みんなが振り返ると、そこにはかつて“魔王”と呼ばれた男、
──グラディウスの姿があった。
かつての威厳はやや薄れたものの、凛とした眼差しと静かな笑みは今も変わらない。
「……魔王様!」
澪は照れたように笑い、そっと彼の手を握った。
「やっぱり、今でも言うのね。怖かったって」
「そりゃあもう、圧倒的な存在感だったから。最初は私、震えてたもの」
「ふっ……でも、最後までお前だけには勝てなかったな、我が花嫁」
◆
その日の夜。
月明かりの下、澪はグラディウスの寝室を訪ねた。
彼はベッドに横たわり、静かに目を閉じていた。
「……お前は、本当に強くなったな。……記録を継ぎ、未来を渡して……立派だった」
「あなたがいたからよ。私に“残すべき物語”をくれた」
グラディウスは、ふと微笑む。
「……やっぱり、あの異世界は楽しかったよな」
澪は手をそっと重ね、優しく頷いた。
「ええ。……おばあちゃんになっても、私は思うの。
やっぱり“魔王グラディウスとの異世界”は、人生で一番、楽しかったって」
ふたりはしばらく、言葉もなく手を繋いでいた。
やがて、グラディウスは深く息を吐き、静かに言った。
「じゃあ……そろそろ、記録の最後の一行を閉じるとするか」
それは、別れの言葉だった。
けれど、悲しみではなかった。
◆
家族たちが集う中、グラディウスは澪に手を握られながら、
その生涯を終えた。
──世界を救った魔王。
──記録者を愛したただ一人の男。
その顔には、最期まで穏やかな笑みが浮かんでいた。
澪は涙を流さなかった。
その代わり、そっと彼の耳元で囁いた。
「ありがとう、魔王様。……これで、物語は本当に、終わりね」
月がふたつ、夜空に寄り添うように並んでいた。
まるで、ふたりの“魂”が再び双月の丘へ帰っていったように。
◆【そして、記録は永遠になる】──完。
これにてこのシリーズである…
『交際0日で魔王と結婚したら、ただの契約婚のはずが世界の命運を握ることになりました!?──私、ただ嫁いだだけなのに』の**《澪の外伝編:完全終幕》**
──“おばあちゃんになった澪と、最後の魔王様の物語”──
完全完結です。
本当に最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
あと、勿論… レビューやリアクションにコメントや感想を下さると嬉しい限りです。
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、他の小説も評価やいいねに★5などをお願いします。




