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番外編その後 第3話(最終話)『そして、私の名前は物語になった』


 春野澪が“記録者”として筆を置いてから、十年が経った。


 市立図書館の司書として働きながら、静かに日々を紡いできた澪は、ある日、図書館の一角で思わぬ光景に出会う。


 子どもたちが、小さな朗読会のあと、口々に話していた。


 


 「ねえ、“ルヴィエール”って本当にあった国なの?」

 「“魔王様”って、なんかかっこよすぎじゃない?」

 「“ミオさん”って、なんで帰っちゃったんだろ……ちょっと悲しい」


 


 澪はその声に、足を止めた。


 彼らが手にしていたのは、自身の代表作『王都ルヴィエール物語』。


 あれから何度も重版され、教科書の資料欄にも引用され、いまや“幻想記録文学”というジャンルの古典として扱われていた。


 だが、澪はそれを“誇り”というよりも、どこか“照れ”に近い想いで見つめていた。



 帰宅後。


 澪は久しぶりに自分の本棚を開いた。

 初版の『王都ルヴィエール物語』。

 読者から届いた手紙の束。

 そして、一冊の“記録ノート”。


 最後のページには、娘・燈の筆跡でこう記されていた。


 


 ──“私があなたの物語を継ぎ、そして“私の物語”を始められたことに、心から感謝しています”


 


 “記録”は、娘へ、そして次の世代へ。

 今やもう、澪の知らない誰かが、“あの世界”を信じてくれている。


 それはもう、単なる個人の記録ではない。


 


 ──物語となったのだ。


 



 数日後。


 とある高校の国語授業で、教師が語る。


 


 「この作品『王都ルヴィエール物語』は、記録という言葉の重みを描いた小説です。

  作者は“春野澪”という元司書であり、記録者でもありました」


 


 生徒の一人が手を挙げる。


 「先生、それってフィクションじゃないんですか?」


 教師は笑う。


 「それはね、読み手次第だ。

  でもね、この物語の最後にこう書かれている。“この物語を読んだあなたが、次の記録者です”って」


 


 教室に沈黙が流れる。


 だが、そこには確かな“継がれた火”があった。


 



 その日の午後。


 書店の片隅に、春野澪の名前がまた一冊、静かに並べられた。


 


 ──『記録と、想い出のあいだに』


 


 誰が手に取るかはわからない。

 けれど、澪はもう焦らない。


 なぜなら自分の“名前”は、もう“物語”になったから。


 世界のどこかで、“澪”という響きが、だれかの心を照らすのなら。


 


 それだけで、記録者としての人生は、十分に幸せだった。


 


◆【そして、物語は静かに幕を下ろす】


 


 ──記録は続く。

 たとえページが閉じられても、

 誰かがそれを思い出すかぎり、

 それはきっと“生きている”。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

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