出汁ガラ
「良太さん。お別れをする前に、最後にもう一つ差し上げたい物があります」
「まだ何かあるのですか? もう十分以上に頂いているんですけど……」
フレイヤ様からは既に、おそらくは世界一強固な鎧であるブリジンガメンを借り受け、ドラウプニールの新たな機能を教えて貰ったのだ。
この上まだ何か……という気がしてならない。
「そ、そんなに大した物では無いのです! わかり易く言いますと……出汁ガラ? みたいな物でして」
「だ、出汁ガラですか?」
出汁ガラといえば、出汁を取った後の鰹節や昆布などを思い浮かべるが、ここまでのフレイヤ様とのやり取りの中に、それっぽい物があったとは思えない。
「あの、私やワルキューレは地上に顕現する際に、人と行動を共にする為に受肉する事があるのです」
「ああ。そういう伝承は聞いた事がありますね」
日本の羽衣伝説のように、空を飛ぶ為のアイテムを隠されて、人間の男性と暮らしたワルキューレのエピソードは知っている。
「受肉した身体の機能は、少し強度が高かったり老化し難い以外は、概ね普通の人間と変わらないのですが、肉体を構成している素材に関しては、人体とは大きく違っているのです」
神様よりは下位なのだろうけど、それでも人間と比べれば気の量も多いワルキューレが受肉するには、普通の人間の肉体のような構成素材では耐えきれない、という事なのかもしれない。
(ワルキューレどころか女神であるフレイヤ様ともなれば、尚更か……)
肌に触れた感じは、柔らかな女性の身体そのものだったので、その辺は構成素材とやらがいい仕事をしているのだろう。
「私は良太さんのお傍にいる為に受肉していたのですけど、先程お話しましたように、気の本体が抜けると、出汁ガラと呼ぶに相応しい構成素材が残るのです」
「もしかして、その構成素材を俺にくれるという事ですか?」
「はい」
「それを俺にどうしろと……」
魂の抜けた後のフレイヤ様の死体を頭に思い浮かべてしまうが、当然だけど活用法なんか考えられる訳が無い。
(普通の人間とは違うって言っても、フレイヤ様の亡骸だよな……人胆にでも使えって事なのかな? それとも荼毘に付せと?)
人胆という、人の各部位を生薬として用いたり、ミイラを煎じて薬用にしたりという事は、昔は世界中で行われていた。
しかしヒト由来の生薬の実際の薬効に関してはかなり疑問で、医学的というよりは呪術的な方向へ傾倒した考え方だと言える。
(そういえばこっちの世界にも、人斬り浅右衛門はいるのかな?)
元の世界の江戸時代に、死刑執行人と御様御用と称された刀剣類の試し切り役を務めていた山田浅右衛門という人物が実在した。
山田浅右衛門は刑を執行した後の罪人の亡骸を自由にする権利を与えられていて、受領した亡骸の身体各部から生薬を製造し、販売して富を得ていたと言われる。
(将軍家と幕府が無いんだから、公儀の御様御用がいる訳が無いか……でも、処刑人と試し切り役はいそうだな)
こっちの世界にも刑罰があるので、当然のように処刑人も存在するだろう。
同じように刀剣類の格を決める役職などもあるという事は、十分に考えられる。
(薬になんかする気は無いけど、フレイヤ様やワルキューレの亡骸だったら、効果はありそうな気がするな……)
神の使いである熊を食べて、その力を自らの内に取り込もうとするという信仰形態は古代に存在したようなので、もしもフレイヤ様の亡骸が目の前にあったら、食べようとする人間は少なくないかもしれない。
「あっ! も、もしかしなくても勘違いなさっていると思いますが、私の亡骸をお引取り下さいという事では無いですからね!?」
「違うんですか?」
(でも……だとすると、どういう事なんだろう?)
もしかしなくてもと前置きをしたという事は、フレイヤ様も俺がそういう解釈をすると思ったのだろう。
「原理は私にも良くわからないのですが、中身が抜け出した後には、受肉した身体の形の塩の塊が残るのです」
「塩、ですか?」
「ええ」
亡骸を頂くのも困るが、材質が塩のフレイヤ様の等身大フィギュアをというのも、かなり扱いに困る気がする。
「中身が抜けると、すぐに元の形は崩れますので」
「あ、はい……」
考えを見透かされたのか、フレイヤ様がすかさず追加情報をくれた。
「私やワルキューレの受肉していた素材だからかはわかりませんが、その塩には強力な清めの作用があります。ちょっとした悪霊程度でしたら、昇天させてしまうくらいには」
「そ、それは凄いですね」
元々、塩には浄化作用があるとされて古来から儀式などに用いられてきたが、フレイヤ様印の塩は、ひと味もふた味も違うようだ。
「清めの効果だけでは無く、味も良いと言われていますので、是非ともお役立て下さい」
「はぁ……」
人の亡骸とは意味合いが違うのだろうけど、フレイヤ様だった塩を料理なんかに使うのは、ちょっと気が引けてしまう。
「塩は人に不可欠な物です。それが良太さんのお口に入って、いずれ血肉となると思うと……私にとって、こんなに幸せな事はございませんわ!」
「は、はぁ……」
俺に食べられる事の喜びを、ぱああっと輝くような笑顔でフレイヤ様に力説されてしまったが、目の前の女神様が塩の原産地と考えるとどうにも複雑な心境になって、さっきよりも気の無い返事しか出来なかった。
「お使い下さいね! 絶対ですよ!」
「わ、わかりました……」
俺が躊躇しているのを感じ取ったのか、フレイヤ様が必死の形相で詰め寄ってきたので、勢いに屈して承諾してしまった。
(うーん……とりあえずは、盛り塩用かな?)
フレイヤ様の身体と同じ量の塩となるとかなりの物だが、別に一度に消費する必要は無いので、当面は四方に配置する祠の盛り塩用にしておこうと考えた。
「ではお手数をお掛けしますが、布を御用意頂けますか」
「わかりました」
俺は手早く一メートル四方くらいの布を、蜘蛛の糸で織り上げた。
「それでは良太さん、ごきげんよう。またお会いしましょうね」
「はい。また」
布の上に立ち、笑顔で手を振りながら別れの挨拶をしてくるフレイヤ様に、俺も手を振り返した。
「っ!?」
予め聞いてはいたが、目の前のフレイヤ様が手を振るポーズのままで動きを停め、柔らかな肌が唐突に無機質な白に変化した事に驚かされた。
「フレイヤ様……あっ」
本当に塩になってしまったフレイヤ様は、足の細さが自重に耐えきれなくなったのか、下半身の方から崩れ始め、やがて身体の形が全て崩壊し、布の上で小山の形に積もっていく。
塩が積もった布に近づいて、飛び散ってしまわないように縁を少しずつ持ち上げて、真ん中に集めていく。
「凄く細かいな……」
布の中心に集められた塩は、粒状では無くさらさらとした粉状になっていて、塩だと聞いていなければ灰だと思ったかもしれない。
「これでいいかな……」
中心に集めた塩を包み込んだ布の縁を束ね、中から漏れ出ないように厳重に縛った。持った感じだと四十キロ以上はありそうだ。
「ん……本当に塩だな」
まとめる時に少し手についた塩を舐めてみると、確かに灰では無く塩だと味で確認出来た。
刺々しい感じは無く、非常にまろやかな味なので、ミネラル分が豊富なのではないかと思う。神様の身体だった塩に、ミネラルが配合されているのかは不明だが……。
「有り難く使わせて頂きます……」
もしかしたらその辺で見ているかもしれないフレイヤ様に礼を言いながら、俺は頭を下げた。
「さて、もう少し整備をしようかな……」
フレイヤ様の塩を包んだ布ごとドラウプニールに仕舞って、俺は独り言ちた。
天沼矛を使っての里の施設の設置や神様達とのやり取りには、体感的にはそれなりに時間を取られているのだが、それは隔絶された空間内での出来事である。
実際の世界では黒ちゃんと白ちゃんと夕霧さんを送り出してから、殆ど時間は経過していないのだ。
「先ずは石の追加だな」
鍛冶の作業場と食堂、そして祠の材料の調達をする為に、俺は再び石を切り出してきた断崖へと向かった。
「さて、やりますか……」
数刻前に作業をした断崖の上に登った俺は、どれくらいの大きさの石を切り出すかの見当をつけてから巴を抜いた。
「……ん?」
普通に目に見えている景色とは別に、ぼんやりと巴を差し込めば良さそうに思える場所が、視界に浮かび上がっている。
(さっきの作業で、なんかスキルでも身についたのかな? それとも天沼矛を使った影響か?)
真相はわからないが、何か作業の補助をする為の作用が働いているのは間違い無さそうだ。
「よっ……と」
石の「目」とかいう奴なのか、然程抵抗も無く、巴の刀身が石の中に根本まで沈んだ。
巴を差し込んだ場所と同様に、ガイドラインみたいな物がぼんやりと見えるので、それに従って刃を動かすと、実に楽に石が切れていく。手応え的には粘土を切っているみたいだ。
「これでよし、と」
最初の時のように強引な手段を使う事無く、ガイドラインと思われるヴィジョンのお蔭で、スムーズに石を切り出す作業が完了した。石のサイズがさっきよりも小さいのと、少しだが慣れたからかもしれないが。
石をドラウプニールに仕舞った俺は、里へ脚を向けた。
「……ん? 天沼矛が無くても、コンストラクトモードは有効なのか?」
里に戻った俺が、鍛冶の作業場を建てようと考えている場所の前で考え込んでいると、天沼矛を使って施設を作った時と同じ、コンストラクトモードと呼んでいる指示画面が浮かび上がった。
(ここから先は手作業になるかと思っていたけど……こりゃあ助かるな)
天沼矛は天照坐皇大御神様が持ち帰ってしまったので、既に出来上がっている施設以外は手作業で建設する覚悟だったが、里の中限定ではあるが、管理者である俺にはコンストラクトモードが使用可能なようだ。
「ならば有り難く使わせて貰うか……」
俺は早速、鍛冶の作業場の素材を指定する。
「えーっと……壁と火床と水槽の部分を石で造って、屋根と窓と扉は木だな」
石造りの基本的な建物に、必要な施設を増設して鍛冶場になるように構築していく。
藤沢の正恒さんの家のような、鍛冶場と住居兼用では無いので、非常に簡素な造りになっている。
「井戸もあった方がいいよな……」
焼入れ用の水は水場から運んでもいいのだが、飲料用と鍛冶用は分けた方が衛生的だろう。
という事で、作業場内に井戸を設置した。水を汲み上げるのには釣瓶を使う事になるが、鎌倉での増産が上手く行っているようなら、ポンプを買い付けてこようと考える。
鍛冶場が完成したので、次は食堂に取り掛かる。
「厨房と隣接した間取りでいいよな……」
料理を運ぶ手間を考えて、厨房と食堂は壁一枚隔てて隣接し、扉を開ければ行き来出来るようにした。これで壁の枚数を少なくして、建材を節約出来る。
「中身が何も無いけど……今の段階では仕方無いな」
石と土で壁はなんとか出来たが、食堂の屋根まで造ったところで木材が無くなってしまった。里の外で新たに伐採してこなければ、石造りの施設以外はこれ以上は設置出来ない。
厨房の方は作業台もあるので十分に機能するが、テーブルも椅子も無いので、食堂を利用するとしたら現状では地面に座るしか無い。
(寮を造るのに、かなり木材を使ったからなぁ……)
後々必要になると思ったので、各人の個室がある寮を先に造ってしまったが、さすがに三階建てともなると木材の消費量が凄かった。
その寮の方も、個人用の収納庫や棚などはまだ無いので、後から作らなければならない物は多い。
(祠の屋根と扉は、後回しにするしかないなぁ……)
祠の土台になる部分と壁は最初から石で造るつもりだったのだが、ピラミッドみたいに総石造りにすると不格好だと思ったので、新たに木材を調達するまでは作業を中断するしか無いだろう。
(まあ、今日だけでここまで出来ているだけでも、異常な事態なんだけどな)
神様の手助けがあったので少し感覚が麻痺しているのだが、最も規模の小さな祠の基礎部分だけでも、本来なら一日で出来上がるかどうかは疑問なのだ。
「さて、他に出来る事は……」
コンストラクトモードを含めて里の整備が楽しくなってきて、次に出来る作業を探してしまう。
(……果樹を植林出来るんだったな)
桃に柿に栗にビワに蜜柑。どれを何本植えようか……俺の作業の手は、まだ止まらない。
「ええーっ!? ど、どうなってるの!?」
「……ここは本当に蜘蛛達の里なのか?」
二時間程経ってから戻ってきた黒ちゃんと白ちゃんが、すっかり様変わりした里の風景を眺めながら呆然としている。
「おかえり。早かったね」
帰りは界渡りを使ったのだろうけど、行きだけでも約八キロの距離だ。この時間で戻ってこれたのは、夕霧さんを含めた三人の健脚の賜物だろう。
「おかえりはいいのだが……また随分色々と造ったものだな」
「すげー! おっきいお風呂に果物の木まで植わってる!」
白ちゃんは里全体の変貌に驚いているが、黒ちゃんの方は風呂や果樹など、より実用的な部分と食欲を満たしてくれる物に関心が行っている。
「とりあえず見てくれは整えたけど、中身の方は空っぽなんだよね」
風呂には壁が無いし、鍛冶小屋には道具類が無い。食堂に至ってはテーブルも椅子も無い状況だ。
貯蔵庫の冷凍庫の方には、手元に数頭分だけ残して猪と鹿の枝肉を入れ、壁の石組みの間に金貨を埋め込んで、そこへ権能を付与して気を込め、マイナス五十度くらいを維持して冷却してある。
冷却源は一箇所しか無いが、測ってはいないが多分、庫内の温度はマイナス三十度くらいで保たれているだろう。
冷凍庫の手前側の冷蔵庫の方には、みんなに手分けして買い集めて貰った米や麦や豆や野菜、味噌や醤油や漬物の壺などを置いてある。
「そうは言うが、普通なら資金も人数も必要なのだろう? やはり我が主は恐ろしい方だ」
言葉とは裏腹に、俺を見る白ちゃんはニヤニヤしている。
「そんな大袈裟な……実はちょっと、からくりがあるんだよ」
「からくりって、どんな!?」
興味深そうに瞳を輝かせて黒ちゃんが訊いてきたので、二人に簡単に状況を説明した。
「ふむ……神仏からのテコ入れがあったのか。ならばこの状況も納得だな」
「すぐに納得出来るの?」
話の内容的には眉唾に思われても仕方が無いと思っていたが、白ちゃんはあっさりと神仏による助力があったという俺の説明を受け入れた。
「実際に加護や権能というのが役に立っている世界だからな。主殿も活用しているだろう?」
「それはそうなんだけどさ……」
鵺だった白ちゃんと黒ちゃんは、神様や人間とは対立していた過去があるので、俺の話には抵抗感があるかと考えていた。
「御主人の役に立つんなら、神様だって悪魔だって構わないと思うよ!」
「そ、そうかな?」
屈託無く黒ちゃんが言い放った。実にシンプルなこういう考え方は、彼女の魅力だ。
「ところで、戻ったばかりで悪いんだけど、二人にお願いがあるんだ」
「なぁに?」
「何でも言ってくれ」
二人共俺の申し出に一切の不平不満を言わず、次の言葉を待ってくれている。
「日用品は大分揃ったから、農機具と鍛冶に使う道具を買い付けて欲しいんだ。後は木炭かな」
レンノールが鉄と木炭は供給してくれるらしいが、原料があっても道具が無ければ農機具も調理用具も作ったり直したり出来ないので、調達が必要だ。
「わかった。黒と手分けして買ってこよう」
「お願いね」
「おう!」
白ちゃんと黒ちゃんに、とりあえずの資金として金貨を二枚ずつ預けておく。
「それと……買い物の方は明日以降で構わないから、二人にはおりょうさんと頼華ちゃんと入れ替わって、池田屋で子供達の面倒を見て欲しいんだ」
「む? それはおりょう姐さんと頼華を休ませるという事か?」
「うん。風呂も出来たし、こっちに来てのんびりして貰おうかなって」
風呂好きのおりょうさんに気の毒だと思って、里から出て京で過ごして貰っていたが、四六時中子供の相手では、気が休まる時が無いだろう。これは頼華ちゃんも同様だ。
「えー……あたいも御主人と一緒にいたいな」
(まあ、こう言われるとは思ってたけど……)
不平を表情に表す黒ちゃんが、自分も一緒にと言ってくるのは予想済みだ。
「流れ的にだけど、昨日の夜は黒ちゃんと白ちゃんと一緒に過ごしてあげたでしょ? 今度はおりょうさんと頼華ちゃんの番って事なんだけど」
「うっ!」
自分の行いに非があった事をわかっているのだろう、昨日の夜の件を持ち出すと黒ちゃんが言葉に詰まった。
「さすがに夕霧さんと紬と玄だけじゃ、子供達を持て余しちゃうと思うんだ。だから二人にお願いしたいんだよね」
紬と玄は子供達に対して司令塔として機能するとは思うのだが、その二人が町中で適切な行動が取れるのかと言うと、常識に疎く人を見下す考え方をするので、まだまだ不安が大きいのだ。
そんな状況でおりょうさんと頼華ちゃんが抜けて、面倒を見るのが夕霧さんだけになるというのは、流石に不安が大き過ぎる。
「うー……わ、わかった。昨日の夜はみんなにも迷惑掛けちゃったし、言われてみればおりょう姐さんも頼華も、御主人と離れて過ごしてるよね」
多少は表情に不満が残っているが、黒ちゃんは俺の言う事に大筋では納得したようだ。
「俺の方も了解だ。主殿は姐さんと頼華を、今夜は思いっきり甘えさせてやれ」
「甘えさせるって……」
年下の頼華ちゃんはともかく、おりょうさんを甘えさせる方法なんて、俺にわかる訳が無い。
「ははは。俺は御免だが、久々に咖喱でも作ってやってはどうだ?」
「おう! 猪の揚げたのも付けてやればいいよ!」
「まあ、それくらいなら……」
二人の言う通り、おりょうさんも頼華ちゃんも咖喱好きだし、特にカツカレーは大好物だ。久し振りなので作れば喜んでくれるだろう。
「それと主殿」
「ん?」
「姐さんにも、とびっきりのぱんつを作ってやれよ?」
「あー……」
おりょうさんが積極的にパンツを履きたがるかはわからないが、黒ちゃんと白ちゃんと頼華ちゃん、今日になって池田屋に合流した夕霧さんまでが履いているのだから、とりあえずは作ってあげないと差別になってしまう。
(作るの自体は簡単なんだけど、デザインから深読みされそうなんだよな……)
おりょうさんからこういう風にという注文をしてくれて、その通りに作るのが一番なのだが、お任せの場合は色やデザインの部分で、俺の趣味を疑われてしまう可能性がある。
(まあ、色とか模様とかに、遊びを入れちゃったのは俺なんだが……)
女性用の下着に特別な拘りは無いが、こういうのが似合いそうだな、くらいの事は考えるので、そこを突っ込まれるとキツイ物がある。
(おりょうさんはアダルトなのとか似合いそうだよな。ガーターベルトとか……って、そうじゃ無いだろ! いかんいかん……)
突っ込まれると困るとか思ったのに、つい、おりょうさんに似合いそうな物とかに考えが及んでしまった。
「では俺達は行くとしよう。御主人も少しのんびりしていろ」
「行ってくるねー!」
「行ってらっしゃい」
(……白ちゃんには、すっかり見透かされちゃってるな)
里の整備をやり始めたらつい楽しくなっちゃって、二人が返ってくるまであーだこーだ考えながらずっと作業を続けていたのだが、白ちゃんにはお見通しだったようだ。
「……夕食の支度でもするか」
のんびりした方がいいのかとも思うが、夕食と風呂と寝る為の準備は必要だ、と、自分に言い訳をしながら、俺は出来たての厨房へ向かった。




