オシリアスの海近辺 その3
地面に倒れた褐色の女性はそのまま血を大量に流しながら動かない。
「よっし!それじゃあ
泳ぎに行こっか!久々の海水浴!」
「ちょっと待ってください!」
「ん?どした?」
「この人・・・」
「ああ、死んだよー」
「じゃあ、何でユーシィさんは生きてるんですか・・・魔法、受けましたよね?穴ボコボコ空いてるし・・・・・・」
「あぁ、これはね」
ユーシィさんの穴だらけの身体が急に人型の液体の様な水色の物体に変わったかと思えば元のユーシィさんの身体のカタチに戻ったものだから私は驚いて口をポッカリと開けて唖然としている。
「自己付与型魔法でも特殊な魔法、自変粒然で私の体を肉体から水に変化させたの身体の中身が"水"になれば攻撃を受けても貫通するだけで肉体は傷つかないから」
「な、なるほど・・・」
「まっ、世界有数の大魔女である私にしか出来ないんだぜ〜」
実際の所、どれくらい凄い魔法なのか、この世界に来たばかりの私にはわからないけれど
これだけは分かる、この人は相当強い魔法使いなのだと
そんな人が使う魔法を実験という名目で何回も受けられるなんて・・・あぁ、ここに来て良かった・・・
ん?
「あれ?」
「ん?どした?」
「いや、心地良い灼熱と気持ちの良い凍てつきを全く感じなくなったと思って」
私は気づいた。さっきまで高速で交互に感じていた灼熱の痛みと凍る痛みを感じくなり、空を見ると綺麗な白い雲が泳ぐ青々とした空に変わっている事に
「あぁ…って・・・それを気持ちいいって言うのは君だけだと思うけど・・・オシリアスが死んで展開していた魔法が消えたからだよ」
「えっ?それってつまり、もうあの天国を味わえないって事・・・ですか?」
「それは大丈夫!こいつも一応魔王だから、一度絶命しても時が経てば復活するよ」
私はホッと胸を撫で下ろした。魔王だからという理屈はよく分からないけど、また生き返るのなら良かった・・・
「あと、どれくらいで復活するんですか?」
「ん?50年だよ」
「はは、おもしろいおもしろい」
「いや、マジだよ」
「ん?」
「だから、マジだって」
「そんなに待てません!!ユーシィさん!今すぐこの人を生き返らして下さい!なんか蘇生の魔法とかで!!」
「ごめん、私他人に蘇生魔法使えないんだ」
「この魔女使えな・・・」
上記の言葉を発した瞬間私の身体に痺れと激痛が走った
「うわわわわきゅっきゅうににににやめめめめてててててくだささささいいいいいききききももももちちちちちよよよすすすぎますすすすすッ!!!」
数秒間その状態が続くと、ユーシィさんがパチンと指を鳴らしたら止まった。
「ぜぇ・・・はぁ…ふぅ・・・い、いきなり何するんですか・・・一応私にも気持ち良くなる準備させてくださいよ」
「しまった、キミに"こういうの"通用しないんだった」
「あの・・・もしかして、怒りました?」
「別に!ふーんだ蘇生魔法使えないけど、もうやってあーげない」
「ええ!?・・・さっさすが!大魔女ユーシィ様!よっ!天才!」
「思ってもないって顔に書いてあるって」
「お願いしますよユーシィさん!」
まずい、このままじゃ本当にあの天国を体感するまで50年も待たなきゃ行けなくなってしまう
痛みならユーシィさんの魔法をいくらでも味わえるけど、オシリアスさんの魔法はまた違った味わいの激痛で良いから、暫くお預けなんて嫌だ!
せっかくいくら激痛を愉しんでも死なない不死の体を転生して手に入れたのに・・・っ!!
「あ、あの!被験体の他にも、ご、ご飯とか作りますから!夕食とか!」
って・・・何を言ってるんだ私・・・料理を作るなんて、大魔女のユーシィさんなら手を上げただけでミートパイとかグラタンとか熱々の状態で生み出せるに決まってる。だから、振り向いてくれる訳・・・
「それ、本当?」
「え!?(食いついた・・・)ほ、本当です!私、元の世界では親がいない時間が多かったので自炊殆ど自分でしてたんです、まぁ、面倒な時はコンビニでお弁当買ったりしてましたけ・・・ど・・・?」
ユーシィさんは数歩歩いた所からスタスタと私の方に戻って来ると、私の顔を真っ直ぐ見つめて
「約束だよ?」
「はい・・・勿論・・・」
「じゃあ、ほいっ」
ユーシィさんはサッとローブの中から杖を取り出すと杖の先端に透明のキューブを生み出した。
ユーシィさんが杖を振ると、先端のキューブが横たわるオシリアスさんの死体の上まで飛び、ピタリとオシリアスさんの真上で静止したかと思えば巨大化してキューブの中にオシリアスさんの死体を被った
「この四角いのは?」
「時空魔法の一つ、定めた範囲の箇所だけ時間の流れを変えられる魔法で、オッシーの周りの空間だけ一気に50年経過させれば、直ぐに復活できるっしょ〜?」
「てことは!50年待たなくても生き返るんですね!」
「勿論!」
「良かったぁ・・・」
パッとキューブに覆われる死体を見ると、死体がモヤモヤの雲に変わっていた
「って死体じゃなくなってる!?」
「そりゃ、そうでしょ、もう10年経ってるんだから」
「これって生き返るんですよね?本当にもう完全に元の形無くなっちゃってますけど・・・」
「"大魔女"を信じろって」
キューブの中でブクブクとオシリアスさんだった雲の様な目視できる"気体"が泡立つと、みるみるうちにオシリアスの身体の形に変系して行き、頭から元のユーシィさんの身体の色に戻り、体感2分程で元の身体の形に戻った
横たわるオシリアスさんの瞼がゆっくり開いた。
「ね、ちゃんと、生き返ったでしょ」
「さすが!ありがとうございます!ありがとうございます!」
私はユーシィさんに向かって合掌しながらペコペコと何度も頭を下げた
「寝覚めはどう?オッシー」
ユーシィさんが杖をくるっと円を描くように振ると
オシリアスさんを覆っていたキューブが消えた。
続けてユーシィさんが縦に振ると、オシリアスの上に赤いローブが現れ、瞼を擦っているオシリアスさんの胴体に重なるカタチで落ちた。
「とりあえず、それ着な」
「ん・・・」
オシリアスさんが上半身を起こすと重なっていた赤いローブが腰に落ちて、生まれたままの姿の上半身が再び露わになった。
同性ではあるけど、少し気まずいと思い私は目を逸らしている。
「ん・・・んん・・・??」
少しの間、寝起きのお嬢様の様にゆったりとしていたオシリアスさんだったけど、目が覚めて、自分の格好と周りの状況を自覚した途端、青々としていた空が真っ赤に代わり黒い稲妻が降り注ぎ、オシリアスさんの頬が真っ赤に変わった。
「き、貴様!み、見たな!!」
「ちょ!ちょっとだけです!」
キタキタキタ!この灼熱地獄!全身を業火で焼かれてる様な灼熱の痛み!
体感何度かわからない、灼熱空間の痛みでニヤけてしまいそうになるが、ある程度の快感を受けても平静を保てるように表情をコントロール出来るようになった私は表情を抑えてオシリアスさんに話す
「へ・・・へへっ・・・本当に一瞬だけですから・・・」
「顔に出てるよ」
「えっ?お、抑えられてないですか?」
「まぁ、ほろ酔いぐらいの顔に・・・」
「そのニヤけた顔、私の裸を見たのだろう」
「いや、彼女はお前が展開している灼熱空間の痛みでニヤついてるだけで!」
「そ、そうです!あと、私はアヤノです!」
「黙れ!!!不死だろうが、跡形も無く一瞬で消し飛ばしてやる!!」
オシリアスさんが激昂しながら片手を天に掲げた瞬間
「この魔力量!貴様が魔王だな!!」
背後から初めて耳にする人の声が聞こえた。




