大魔女の工房 その1
「カップ出すから、とりあえず、そこらへんに座っといて〜」
私はユーシィさんに言われた通り、座れそうな場所が無いか目前を見回してみたけれど・・・
そこらへんと言っても・・・・・・
目の前にある椅子には、テーブルの上によくわからない液体が入ったフラスコが何本も散乱して置いてあり
もう一つ近くの椅子の前には、埃まみれの大判図鑑並みに大きい本がテーブルの上に山積みで置いてある。
私はテーブルにフラスコが散乱している方の椅子に座った。
椅子に座ると私はなんとなく目の前に置いてあるフラスコの中の液体を見つめてみた。
この液体はやはりファンタジーの世界らしく魔女が作る魔法薬なのだろうか?
ユーシィさん、ここ魔女の工房って言ってたよね。
フラスコの液体を見つめてる内に好奇心が湧いて触ろうとした瞬間....。
「それ、揺らしたら爆発するよー」
「えっ?」
フラスコに伸びていた私の手は、触れる寸前で止まった。
私はユーシィさんの方を恐る恐る見る。
「す・・・すみません・・・つい気になって・・・」
「まぁ、好奇心には敵わないよねぇ見ての通り私も好奇心旺盛な魔女だからわかるよ〜?はいっミルクティー砂糖控え目」
「ありがとうございます」
「いやねぇ〜私も好奇心で火山を噴火させたり、嵐を起こしてみたりした事あるからさ〜」
「ぶはっ!!!」
「えっ?だ・・・大丈夫??」
私はユーシィさんの発言に驚いたあまりミルクティーが喉の変な所に入って噎せこんでしまった。
咄嗟に横を向いたから幸いにもフラスコにミルクティーが入って大爆笑!なんて言う、最悪の事態は一旦避けれた。
「けほっけほっ・・・か・・・火山を噴火させるって何の好奇心ですか・・・?」
「あー、んー?・・・自然現象を魔法で何処までコントロール出来るのか試したくなっちゃってね、ついついその噴火で周りの国を二つぐらい壊滅させちゃったけど」
「く・・・国二つ・・・?」
好奇心だけで・・・そこまでの規模を犠牲にしてしまうなんて・・・この人、結構とんでもない人なのでは?
まぁ、初対面の人間の頭をいきなり魔法で消し飛ばすくらいの人だから倫理観とか皆無だと察してはいたけれど・・・
「そういえば君、何処から来たの?」
「え?」
「いやね、さっきキミが立ってた湖とその周りの森に部外者が侵入しないように多重結界を貼っていてさ〜並の人間じゃ通れない筈なんだけどー」
「えぇーと・・・」
こういう場合って正直に別世界から来たって言った方が良いのかな?
でも、それを言った所で…こんな突拍子もないことを信じてくれる人なのだろうか?
「つか、ぶっちゃけ転生者っしょ」
「えっ!?」
「何でわかるの?って顔してるね〜この世界では別 に【転生者の自然召喚】なんてのは珍しくないんだよね」
ユーリェさんはカップを持ちながら私に歩み寄り、 そのまま私の頬に手を触れた。
ユーリィさんは私の頬に手を当てたまま首を傾げる
「キミの身体、ホント不思議だねー」
「へっ?な、なんですか急に!?」
「・・・その反応、もっと早い段階でするべきタイミングあったと思うんだけど・・・」
「もっと早い段階・・・あぁ・・・もしかして・・・私の顔を魔法で吹き飛ばした時ですか?」
「うん、普通あそこで怒るでしょ、まぁ、怒られた所で私はお詫びにお菓子ぐらいしかお出し出来ないんだけど」
「まぁ、そっちは私もご馳走様でしたって感じでし たので・・・あと、快感過多でボーッとしちゃってまともな思考回路じゃなかったし・・・」
「ふふっやっぱり君おもしろいね、もしかして転生の前に、その 【不死】に加えて【感覚が逆転する能力】でも獲得したのかな?」
「実を言うと、これは生前から持っていた私の【異常性癖】というか・・・」
「【異常性癖】・・・前世からそうなんだ!やっぱりキミっておもしろいね!」
ユーシィさんは私にニマッと笑みを見せると
次はもう片方の手で私の頬に手を触れた。
私の頬に触れた指で肌を押したり、抓ったりして観察している。
「あのー・・・何の為に私の顔を弄ってるんですか?」
「キミの身体、""私が今まで見た事のない不死の体""だからさ」
「そ、そうなんですか」
「いや、不死の人間や魔族は今までに私も何人か見てきたからいいんだけど、私が気になってるのは、君の体の構造、こうやって触れるのに魔力も精気も一切感じ取れないんだよね―――――まるで・・・まるで、""触れられないはずの透明人間""に触れてる様な不思議な感覚で、なんつーかめっちゃ好奇心擽られるーって感じで!!」
目の前のユーシィさんの口から吐かれる息がどんどん荒く、そして、生暖かくなり、その息の余波が彼女の視線の先にいる私に触れて、消える。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「ち、近いです・・・ユーシィさん・・・」
「ねぇ、はぁ・・・はぁ・・・お願いがあるんだけど」
「い・・・一応聞きます・・・」
「キミの体を研究資料として色々と試してみても良いかなぁ?」
やっぱりそう来ましたか。
でも、研究資料に使うって事は解剖したり、どんな攻撃でどのくらいのスピードで再生するのか試したりするんじゃない?
もしかして、これに頷けば、私にとって楽園パラダイス…が待ってるんじゃない?
「はぁー・・・はぁー・・・ぜっ・・・是非っひひっ!」
「な、なんで急に息が荒く?」
「はぁ・・・はぁ・・・ふふっ、さっきから私の頬を弄りながら吐息荒くしてる変態に言われたくないです」
「キミ・・・大魔女になんて口を聞くんだい?」
「聞いたらどうするんですかぁ?」
「生意気な奴は普通に殺す」
「こわ・・・」
「でも、キミは面白いし""特別""だから許してあげよう!」
「有り難き幸せ・・・」
私は頭を下げながらユーシィさんに拝むポーズを見せた
「ぷっ!なにそれ!ウケるんですけど!ぶふっ!はははははっ」
ユーシィさんが大笑いすると、私もそれにつられてしまい、しばらく二人、工房の中で笑い続けた。
「キミ・・・ひひっ結構大人しそうな見た目なのに笑うんだね」
「つ・・・つられ笑いしやすいタイプなので・・・」
「愉快な女はこの魔女、嫌いでは無いぞ?」
「たまに見せる魔女っぽいムーヴなんなんですか」
「ムーヴつーか私正真正銘の魔女なんだけど」
「それなら、私を研究資料として使っていい代わりにご褒美とか、お願いしたいんですけど〜(チラッ)」
私は生前の頃、友達にジュース奢って欲しい時に繰り出した必殺の""両手人差し指重ねおねだりポーズ""
をして見せた。
「きゅーーーん!!勿論!何でも言って!なんてったって私は世界有数の大魔女!おおよその事なら何でも叶えてあげられるぞよ〜!おーほっほっほっほーーー!!」
よし!魔法の世界でもおねだりポーズは通用するら
しい!てっきりゲームの状態異常無効のパッシブが 備わってチャーム系は効かないのかと・・・
いや・・・そもそもこれはチャームですらないか・・・
なんか、初対面の人にするポーズじゃないし
冷静になったらちょっと恥ずかしくなってきた。
「じゃ・・・じゃあ・・・報酬として拷問魔法を私に掛けて下さい!」
「あっ、それは嫌ですぅ(てか、なんで顔赤い?笑いすぎたんかな?)」
ユーシィさんは私が『拷問魔法』と言う単語を言い終わると同時に後から続く言葉に重ねて断った。




