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竹諸兄弟・アンド・ファミリー・ハッピー・ドリンク・パーティー

ハチオウジギアの世界観で起きる短編です。

凶分組の竹諸兄弟とファミリーたち。


隔週日曜日20時に更新。作成状況によっては不定期になります。


※ハチオウジギア、ハチオウジ鬼譚と同じ世界観で起きる出来事です。独立して読めます。

ページ下部にも関連作品リンクあります。





 町田駅の周辺は高層ビル群からの青白い光と繁華街で溢れるネオンの光によって夜にも関わらず毒々しく輝いていた。


 繁華街の雑踏の中を二人の男が歩いている。一人は金髪の坊主で無精髭を生やし筋肉質の身体を誇示するように歩き、もう一人は銀髪の坊主で三白眼で睨みを効かせながら歩いている。周囲の人々は彼らを避けるようにして道を譲った。


「兄貴、ほんまむかつくなぁ」


 金髪が銀髪に目を剥いて言った。


「ああ」と銀髪が吐き捨てるように言った。


 彼らは周囲を威圧しながら繁華街を進んでいき複数のネオン看板が掲げられたビルへと入った。エレベーターに乗り二階で降りると廊下の突き当たり、「キャバクラ ハヤサニダイ」とネオン表札の書かれた店に入った。扉を開けると薄暗い店内では大勢の客とホステスがひしめいて座っていた。すぐに男が近づいて金髪、銀髪を出迎えた。


「タツ兄、フトウ兄、おはようございます」


 腫れぼったい細い眼をした男がしゃがれ声で言うと頭を下げた。銀髪は竹諸たけもろタツ、金髪はタツの弟で竹諸たけもろフトウ、この二人は暴力団「凶分組きょうぶんぐみ」で幹部の地位にいる。

絵川えがわ、はやっとるのぉ、にゃははははは」


 フトウが細い眼の男、絵川ジベツの肩に手を置いた。絵川が卑屈な笑みを浮かべた。


「それじゃ、兄貴たち、今日はゆっくり楽しんでください」


 絵川は二人を奥にあるVIPルームへと促した。VIPルームは十五坪程の広さで中では複数の男女が立っていた。フトウとタツは奥にある広いソファに腰を下ろした。すると四人のホステスが二人の間と周りを取り囲むようにして座った。彼女たちは各々教師やCA、カフェ店員、ワキダネラテのコスプレ衣裳を着ており、一様に黒髪であった。


「さすが絵川や、わかっとるのー」


「ありがとうございます!」


 絵川が頭を下げた。絵川の後ろには黒服に身を包んだ組員が三人立っていた。タツが三人の組員に視線を移した。


「今日、お前たちを呼んだのは慰労の為だ。座れ」


 三人は頭を下げてフトウたちが座るソファに各々腰を下ろした。女性がウイスキーの水割りを人数分作っており、各々に手渡していく。


「それでは、乾杯」


 タツが声を上げると各々がグラスを合わせた。フトウはグラスのウイスキーを飲み干すと笑顔で三人を見渡した。


古畑ふるはた北山きたやま函館はこだて、お前たちとの付き合いも長なったな、俺たちが下っ端の頃からやろ」


「俺たちがここまで来れたのもタツ兄とフトウ兄のお陰です」


 三人の中にいた鼻筋の高い、函館ダイキョウがしみじみと言うと皆が頷いた。


「そうやろ、そうやろ、にゃはははは、お! ねーちゃん、良い乳しとんなー」


 フトウは隣に座る教師姿をしたホステスの胸を両手で揉みしだいた。


「どうやー、気持ちええやろー、俺のガキ産んでみーへんか、にゃはははははは」


「さすがフトウ兄、やることがワイルドですねー」


 古畑ドウロが囃し立てた。


「そうやろ、そうやろ、せや、皆聞いてーや」


 フトウが胸から手を離してウイスキーを飲んだ。タツは何も言わずにグラスを手にしてじっとしている。


「こないだ車でたまたま信号待ちで停まったらほら、横断歩道の中で停まってしまうときあるやろ」


「はいはい、真ん中へんでね」と北山スイドウが愛想笑いを浮かべて言った。


「で、ちょうど交差点を渡ろうとしてた奴がおってな。俺の車に向かって何やってんだ! ゴラっ言うて蹴り入れてな、顔見てわかったわ、そいつ、ヤクザなんや」


「あちゃー、あかんなそら」


 眼を剥いて古畑がリアクションを取った。


「ちょっとかましたろ思て、俺、車から降りたんや、そうしたら、にゃはははは」


「どうなったんですかー?」


「気になるー」


 ホステスたちが口々にフトウに詰め寄る。フトウは笑顔で両脇に座る教師とCA姿のホステスの肩に腕をかけて胸を触った。


「でなー、俺が出た瞬間や、ヤクザのそいつ顔がひきつって青ざめてなー、お前どこのもんやー、ワシを誰だと思っとんじゃー言うたら、そいつ、にゃはははははは、凶分組下の白瀬組の半久です言うて、ぶるぶる震えてな」


「ダサーい」ホステスが笑いながら言った。


「そうやろ? 俺も優しいからそいつに土下座したら許したる言ったんや」


「優しいー」ホステスが囃し立てるように言った。


「でな、そいつがその場で土下座しようとするから、待て待てと、ここでしてどないすんねん、誠意を見せい言うて、あそこでやれて、車がびゅんびゅん通る車道を指差したんや、そしたら半久がぶるぶる震えながら、車道に向かったんや。そして、車道でがばっと土下座したんや」


 ホステスの悲鳴と北山たちのニヤニヤとした忍び笑いの声が響いた。


「そしたらな、土下座したままのそいつを、スポーツカーがズバーンとひきよって、土下座したまんまの姿勢で吹っ飛んだんや、にゃははははははは、で前を走ってたダンプの荷台にスポーン入って、思わずナイスショットて叫んでもうたわ、にゃははははははは」


 三人の男とホステスから爆笑が巻き起こった。タツもニヤリと笑った。


「ハハハハ、その半久どうなったんですか?」


 函館が聞くとフトウは笑ながら周りを見渡した。


「安心せい、ちゃーんと生きとるわ、半久も凶分組のファミリーや、だからワシが助けたってん、複雑骨折だけど命に別状はない、にゃはははははは、優しいやろ? なっ?」


 フトウはそう言いながら教師姿のホステスに強引にキスをした。キスを続けて満足したのかフトウはグラスを持って立ち上がり、ソファの前へと移動した。


「ワシらはファミリーやからなー、にゃははははははははは」


 フトウに向けて全員が拍手をした。フトウは手で制すると座っている北山の肩に手を置いた。


「こんなファミリーに囲まれておっさん嬉しいわー、思えば長かったなー、両親にチーギュウ街に捨てられて俺と兄貴だけが唯一の信頼できる家族やった。そん中で俺らは生きる為に必死に盗みと殺しを覚えた。何度死にかけたことか、なー? 兄貴」


「ああ」


「そんで、チーギュウ街で暴れてた俺らを新酢のオヤジが拾ってくれたんや」


 フトウは次に古畑の肩に手を置いた。


「その時に一緒に凶分組に入ったんがお前ら三人やったな。お前らとはよー喧嘩したが切磋琢磨して新酢のオヤジを盛り立てる為に一緒に頑張ったなー、おかげでオヤジが跡目を継げたんや」


 皆がしみじみと頷いた。フトウはウイスキーを呷ると神妙に頷いている函館の肩に手を置いた。


「俺らは本当の家族、ファミリーや、おっさん嬉しいわ、こんな信頼できるファミリーが作れるなんてほんま、思わんかったわー、こんな素晴らしいことないでー、なぁ」


 フトウは函館の肩に手を置いたまま、全員を見渡した。


「これからも宜しく頼むわ! ファミリーは常に一つでないとなぁ、にゃはははははははは」


 フトウは函館の肩に置いた手に力を込めた。函館が見上げるとフトウは満面の笑みを浮かべた。


「でもなー函館、お前はあかんわ、うん、あかんな」


 叫びと同時に破裂音が室内に響き渡った。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 函館の左肩がフトウのサイボーグ化された手により握り潰され血飛沫が飛び散った。ホステスと古畑、北山の叫び声が谺した。その中でタツは表情を変えずにウイスキーを呷った。


「ひぃ、ひぃ、な……何を」


「ファミリーやと思っとったんやけどなぁ、函館、馬人組ばじんぐみに情報流したんはお前やな」


「い……やってない、俺は」


「なんや覚悟ないなー、戦いまーすぐらい言わんかい! そんな、弱々しい態度だと俺が弱いもんイジメしてるみたいやんかー、なぁ?」


 フトウはそう言うや否やサイボーグ化された拳を軽く振りかぶると函館の後頭部に振り下ろした。


「あぎゃあ!?」


 函館は後頭部を殴られてテーブルに頭を打ち付けた。


「あぎゃあってなんやねん、おもろいこと言ってーな、さぶいわー、ほんま……」


 さらにフトウは拳を振り上げた。


「嫌いやわ〜、腹立つ」


 バキッ、拳が函館の後頭部にぶつかり血が飛び散った。


「これはアカンぞ!」


 バキッ、バキッ、打撃音が響いた。


「あひぃ」


 バキッ、バキッ、打撃音が響いた。


「アカーン」


 バキッ、バキッ、打撃音が響いた。


「あひぃ」


「アカーン」


 バキッ、グチャ、湿った音がした。


「……」


 函館の頭は原型を留めない程に潰されていた。血溜まりのテーブルの上で白い脳漿と肉片がピクピクと動いている。フトウは近くにあったおしぼりを手に取ると血塗れの右手を拭った。フトウとタツ以外の全員が顔面蒼白になり固まっていた。


「函館はファミリーを裏切った。裏切った者はどれだけ深い仲だろうが……終わりだから、いいか?」


 タツが北山と古畑を見て言った。二人は震えながら頷いた。フトウは部屋の隅に立っていた絵川に振り向いた。


「絵川、これ片付けといてーや、皆、何固まっとんねん、にゃははははははは、お土産話できたやろ! にゃははははははは、飲み直そーや」


 皆が函館だったものから視線を外す。フトウの笑い声だけが室内に響き渡った。



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