ラストエピローグ リア先輩の初恋
部屋に戻ったルシアは、ベッドでくつろいでいたリア先輩に、大佐とのことを報告した。
以前心配かけたことを、扉を開いたときに思い出したのだ。
「えー!おめでとう!」
「ありがとうございます……?」
「なんで疑問形?」
「あんまり実感がわかなくて……」
「それはそうかー」とベッドに寝転んだリア先輩は、自分のことのようにニヤニヤしていた。
「詳しく聞きたいような、聞きたくないような……」
「聞かないでください……」
「えー。気になるー」
ゴロゴロと転がり、足をバタバタさせるリア先輩は可愛い。本当に女の子だ。
リア先輩に比べたら自分なんて可愛げもないし、スタイルだって微妙だ。
……自信がなくなってきた。
あれは――夢だったのかもしれない。
「夢だったらどうしよう……」
「なにそんな乙女みたいなこと言ってんの?いや、乙女か」
「恋せよ乙女っていうもんね」と軽い調子で言うリア先輩は、幸せそうに微笑んだ。
「初恋、叶ってよかったね」
「初恋は叶わないって言いますけどね」
「そう?そんなの気合じゃない?私だって叶ってるし」
「……はい?」
衝撃的な言葉が聞こえた気がする。
「え……リア先輩、お付き合いされてる方いらっしゃるんですか?」
「えーいるよ?」
「聞いてません!」
「言ってないもーん」
けらけらと笑うリア先輩が今だけは憎い。人のことは散々からかっておいて、なんて人だ。
「え?誰ですか……?もしかして……ウィル先輩とか言わないですよね?」
「……気持ちの悪いこと言わないでくれる?」
心底嫌そうな言葉に、少しほっとした。だってリア先輩と一番わかりあっていそうで、いつも一緒にいる人といったらウィル先輩である。手放しに喜べないところだった。……危なかった。いや、そうだとしても否定はしたいけれど。
「えー、ヴァイスさん?」
「真面目過ぎて無理。その様子じゃ、本当に気づいてなかったんだね」
リア先輩は再びニヤニヤし始める。その様子に、いい加減イライラし始めた。
「ほか……ってグレインさんしかいないですよ?」
「せいかーい」
「うそ!?」
「嘘言ってどうするの?」
「いつから!?」
「んーいつ?いつだっけ?」
宙をにらみながら、リア先輩は記憶を探る。
「ルシアと会ってからだから……ルシアが士官学校の二年生くらい……かな?」
「そんな前から!?」
「全然気づかなかった」と愕然とするルシアに、「そりゃ気づかれないようにしてたからね」とリア先輩はベッドに倒れ込んだ。
「……言ってもよかったんですか?」
「大佐の夢が叶うまでは、隠しておこうって決めてたからね」
「そうなんですね……」
「そうなのよ」
「色々あったねぇ」と目を細めるリア先輩は、珍しく感慨深い表情をしていた。
そういえば、グレインさんの剣がアイゼンシュタットで折れてしまったとき、グレインさんに近寄っていったのはミア先輩だけだった。
二人は、二人にしかわからない想いを抱えていたんだろう。きっと。
「これからは、ゆっくり話せますね。きっと」
「そうかな?ルシアたちと一緒にいたらそんなことないよ。きっと」
「どういう意味ですか?」
「そういう意味。退屈しないってことだよ」
そういってほほ笑んだリア先輩は、いつになく大人っぽい表情を浮かべていた。なんだか遠くに行ってしまいそうで、少しだけ寂しくなった。
「リア先輩は、これからも一緒……ですよね?」
「当たり前でしょ。私の居場所はずっとここだよ」
「死ぬまでね」当たり前のように言ったリア先輩は、初めてアルグレイ隊と会った夜にヴァイスさんが言った「中佐のためなら死ねるよ」と言っているのを隣で聞いたときと、同じ顔をしていた。
変わるものもある。
変わってしまうものもある。
――それでも、自分たちの関係だけは、ずっと一緒だ。
七人と、二人と、一匹。
増えることはあるかもしれない。
けれど、減ることは――きっとない。
変わらない関係。
それは、きっと――ずっと。
死が分かつ時まで――
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
楽しんでいただけたらどうか★に色付けをお願います!作者のモチベアップにより、次回作の執筆速度がきっと上がります。
亡国から始まり、名も身分も隠して生きてきた彼女が、自分の名前で、自分の足で立つところまで辿り着きました。
途中、数字に気持ちを引っ張られてしまった時期もありました。それでも書ききれたのは、更新のたびに読みに来てくださる皆様がいたからです。
本当に、ありがとうございました。
そして――
この物語には、もうひとつの可能性があります。
すべてを取り戻したその先で、
もし、あの日に戻ることになったとしたら。
現在、「やり直し」をテーマにした新たな“亡国”の物語を投稿しております。
本編とは異なり、やや恋愛主軸の物語として新たな亡国を楽しめます。
違う展開を見せる亡国物語も楽しんでいただけたら嬉しいです。
またお会いできますように。
お読みいただきありがとうございました!




