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第五十八話 交差する道の果てに


 ユリウス王子たちとは明け方、森で別れた。

 

 これからユリウス王子たちは帝国の王都へ戻り、今後の方針を固め、第一王子との後継者争いに本腰を入れるとのことだった。

 

 第一王子は過激派に近く、攻撃的らしい。

 隣国である王国としてはユリウス王子が王太子になってもらいたい。というのがルシアの気持ちだった。


 少なくとも、国民のことを真摯に考えて向き合っているように見える。

 今回の視察も、魔獣の発生が近頃増えていると言う嘆願を汲んで行なわれたものだそうだ。


 力になることは出来ないが、ユリウス王子には頑張ってもらいたいたかった。


「それじゃ、頑張って。応援してる」

「ありがとう。そちらも気をつけてな。健闘を祈る」


 背を向け逆方向へ足を進める二人。


 違う道を歩く二人だけど、描く未来は似ている──と、ルシアはユリウス王子の話を聞きながら感じていた。

 交わるはずのない道が、いつか交わればいい。

 

 そんな夢物語のような未来を期待し、ルシアは別れる二人を眺めていた。


 少しだけ緩んだ大佐の顔に、ユリウス王子とここで出会えて良かったと思う。

 旧友との再会は、大佐にとっていい心の休息となったようだった。


 街道に出たルシアたちは、近くの街へと足を向けた。


 ユリウス王子からは王国側の国境沿いで、帝国と密かに親しくしており、現在の王国へ疑念を抱いている高官の情報も得ることができた。

 帝国側の旧ルミナリア王国領を回り、そちらの街に様子を見に行くことになった。


 明るい太陽がルシアたちを照らしていた。

 季節は秋。周囲の木々が色づき、賑やかな季節だ。

 やがて、葉を落とす冬が来る。


 ルシアは優しく輝く太陽を、目を細めて見上げた。


──また、頑張ろう。

 王国の未来のために。

 自分たちの、未来のために。


 自分たちの足で一歩ずつ進むしかないのだ。

 それがどんなに辛い道となったとしても。


 ⸻⸻


 季節は巡り、春となった。

 花々が咲き誇り、芽生えの季節がやってきた。


 ルシアたちは旧ルミナリア王国の中を巡り終え、そろそろ王国へ戻ろうかと検討しているところであった。


 旧ルミナリア王国である帝国領は、どうやら帝国となってから作物の収量が下がり、魔獣の活動が活発になっているようだ。

 行く先々でも暗い顔をしている人が目立ち、特に冬の間はどんよりとした雰囲気をどことなく漂わせている街が多かった。


 そんな状況のため、王国奪還のために力になってくれる人はなかなか見つからず、進捗も芳しくないことから帰国を検討していたのだ。

 

 王都での件があるまでは順調に進んでいたアルグレイ隊にとっては、逃亡生活ということもあり、非常に苦しい時期を過ごした。


 ユリウス王子から得た情報をもとに、少しでも力になってくれそうな高官のもとを訪れることにした。


 王国に戻ると、相変わらず大佐を中心としたアルグレイ隊の捜索は行なわれているものの、流石に一年近く経過したことで検問等は収まりを見せたらしい。

 逆に一年近く経っても未だ警戒されている状況に、アルグレイ隊は驚いた。


 高官の名前は"ヴァルレイ准将"というらしい。

 その名前を聞いたとき、ルシアはかすかに引っ掛かりを覚えた。しかし、ノエルも同じような反応を示したため、「似た名前の人物が過去にいたのだろう」程度にしか思わず、特に気に留めなかった。


 ヴァルレイ准将が収める街は、フェルンベルクから程近い、少し小さめの軍が駐屯している街だった。


 久しぶりに足を踏み入れる王都の軍事街に、ルシアは少しドキドキしながら足を動かす。

 ひとまず、宿を確保しようと冒険者ギルドを経由して宿を紹介してもらう。


 宿へ向かおうとした──そのときだった。


「ルーク……?」


 呆然とした声が、背後から聞こえた。

 その声にアルグレイ隊一行の足が止まる。


「ルーク……だよな?」


 信じられない。というような声色。

 だが、敵意はまるで感じられない。

 

 大佐の様子を窺うと、「確認しろ」と小さく指示が飛んだ。声を掛けられただけで切り捨てるわけにもいかない。


 ましてや、ここには数少ない味方を求めてリスクを承知で足を運んだのだ。問題を起こす訳にはいかなかった。

 

 緊迫した空気は崩さないまま、ルシアは恐る恐る振り返った。


 そこにいたのは、

 かつての士官学校でのクラスメイト


 "クラウディオ・ヴァルレイ"の姿があった。

 

 彼は、信じられないという表情を浮かべたまま、呆然と立ち尽くしていた。


 ──なぜ、ここに。


 お互いの心境が重なった瞬間だった。

 

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