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妖精に愛された亡国の王女、少年として軍に潜む  作者: 月焔 レイ
第一章(2)【士官学校編】
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第十四話 学友との出会い


「それでは!はじめ!」


 教官の声が校庭に響く。


 微かな風に舞う砂埃、ポタポタと頬を伝う汗。それを拭う余裕はない。


 ルークたち士官学校一年生は、現在、校庭で腕立て伏せ100回を行っている最中だった。

 腕が震え、あと数回がやけに遠い。


 事の発端は、戦術授業に遡る。一人、宿題を忘れた奴がいたのだ。何度もいうが、たった一人だ。

 その結果が、何故か全員校庭で腕立て伏せ100回なのは納得いかなかった。が、やれと言われるなら、せざるを得ない。

 これが士官学校の理不尽か…とルークは士官学校の洗礼を噛み締めていた。


 ルークのクラスは、比較的真面目な奴が多いのか、トラブルは少ない方らしい。たいてい、どのクラスにも数人はやんちゃな連中がいるらしい。そいつのせいで、大量の連帯責任を負わされるらしいが、幸いルークたちのクラスではそんなことはなかった。

 まぁ、だから忘れ物による腕立てに繋がったのかもしれないが。


 要するに、理由は何でも良かったのだろう。


 あれから、アッシュはことあるごとに絡んでくる。一度、あまりにも面倒で軽くぶっ飛ばしたら、ますます絡んでくるようになった。ルークには理解不能な男だった。


 そして、魔術基礎の授業の際、教官から呼ばれて魔術を披露するように言われたため、近くの石をウォーターカッターで木っ端微塵に刻んだ。すると、よりキラキラした目で見られるようになったのだ。

 

「ルーク〜。お疲れ〜。立てない。立たせて」

「早く立てよ、目つけられるぞ」

「皆へばってるから大丈夫だって。それにしても、お前ら兄弟なんでそんな元気な訳?」

「鍛え方が違うんだよ。ばーか。」


 最初に絡んできたアッシュは、本当にルークと仲良くなりたかっただけだったらしい。


 中佐に目を掛けられ、平民でありながら入学試験は免除。

 さらに気だるげな雰囲気を出しながらも、入学直前の実力試験をほぼ満点で通過。

 それが相当衝撃的だったらしい。


 ただの単純な奴だった。

 

 ちなみにルークは、別に気だるげな雰囲気を出した訳ではない。

 試験前日、双子の馬鹿騒ぎに巻き込まれて寝不足だっただけだ。なんだか申し訳ないが、アッシュだからいいか。


「ノ、ノエル、ぼく、しぬかも…」

「ほら、水飲み行こ。手掴んで」


 そして、あの日アッシュのフォローに回っていたリオは、ノエルと仲がいい。元々大人しい二人だ。そして、リオは本が好きらしく、植物図鑑で意気投合してからは一緒にいることが多くなった。


 リオとアッシュはもともと近所の友達であったため、四人でつるむことが自然と多くなり、行動を共にすることが増えている。


「次なんだっけ?」

「次は〜。校外授業の説明会」

「校外授業か…場所は?」

「少し離れた森まで行って、野営演習と、魔獣討伐らしいよ。」

「へー。本格的。」


 ルークたちがわいわいと話しながら教室に向かっていると、向こうからクラウディオ・ヴァルレイが歩いてきた。


「君たち平民と野営なんて信じられないな」


 彼は、事あるごとにルークへ絡んでくる。高官の息子らしいが、ルークは興味がなかった。


 今も、偉そうに踏ん反り返っている癖に、腕立て伏せのせいで埃まみれになっている。

 態度と服装が釣り合っていなくて笑いを誘った。


 「おい、お前が言えよ。汚れてますよって教えてやれ」とルークとアッシュが突き合っていると、「失礼な奴だな。これだから低俗な奴らは」とぶつぶつ言いながら去っていった。

 いつも中途半端に絡んでくる。謎な奴である。


 ⸻⸻

 

「えー。それでは、校外授業の説明を行う。一度しか言わないからよく聞くように。

 校外授業は、一泊二日の泊まりだ。

 途中で何かあっても学校は責任を負わない。各自、気を引き締めるように。

 過去に勝手に森の奥に入り、魔獣に遭遇し、重傷を負った先輩がいた。

 君たちはそんな事にならないように。」


 教官の説明に皆の背筋が伸びる。誰でも怪我をするのは勘弁なのだ。

 背筋が伸びた生徒たちを満足気に見回し、教官が指示を出す。


「それでは、移動班と宿泊班を兼ねて四人組を作るように。作ったものから報告に来い」


「俺らは決まりだな。」

 

 ルーク、ノエル、アッシュ、リオの名前を配布された紙に記入する。


「それでは、準備物はこちらに書いてあるので、各自週末に準備するように。では、解散!」


 帰ろうと腰を上げたルークに、アッシュが声をかけた。


「おい、ルーク。お前、週末暇?」

「あー、中佐に魔術教えてもらうかもだけど、多分大丈夫。なに?」

「は?お前、中佐に魔術習ってんの!?ずりー!」

「ずりーってお前魔術使えねーじゃん。」


「それはそれ、これはこれ。中佐に教えてもらえるのがずるい。」とアッシュはぐだぐだ言っている。

なかなか本題を切り出さないアッシュに、ルークは本題を要求する。

 

「んで、なに?」

「んぁー。いや、四人で買い出し行かないかなって。食料とかも各自だろ?お前、リア先輩達にオススメ聞いてきてくれよ」


 リア先輩は、士官学校連中からの人気が高い。

 気さくな性格に加え、抜群のスタイル。それでいて戦場では華麗に舞い、【戦場の天使】の異名を持つほどの活躍をするらしい。

 そのギャップがたまらないのだという。


 もっとも、家でだらしなくひっくり返ってるリア先輩を知ってしまっているルークとしては、少々複雑だ。


「あー、だってよ。ノエル」

「兄さん…めんどくさくなったでしょ」

「んなことねーよ。どーする?」

「いいんじゃない?そうしようよ。四人で行こ」

「んじゃ!11時に士官学校の校門前な!」


 途端に元気になったアッシュは、リオの手を引きぶんぶん手を振って帰っていった。

「元気な奴…」とルークも帰る準備をする。

「兄さんも変わんないよ。」と笑うノエルに、あそこまで元気ではないと反論を返した。


 友達と約束して、外で遊ぶのは初めてだな。

 それはノエルも同じだろう。

 口ではあぁ言いながらも、楽しみにしている自分がおかしい。


 士官学校の生活も悪くない。そう思いながら、官舎へ向けて一歩を踏み出した。

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