第十話 納言さんと遠足準備
「遠足の班決めするぞー」
先生がそう言った瞬間、ワッと教室中が沸いた。
四月下旬、平安学園中等部全体で近くの公園へ行くことになった。
今は一週間前なので、どんどん準備を進めていく。
「じゃあ、学級委員にバトンタッチしまーす」
学級委員のお二人、我らが定子さまと一条さんが前に進み出てきた。
「班は男女混合、六人で組みます。まずは男子同士、女子同士で三人ずつに別れてください」
「では、スタート!」
一条さんの声で、私たちは各々席を立ち始めた。
私は、ジリジリと定子さまに近づいていった。
「あの、定子さま……」
「納言さん! 一緒に組む?」
「いいのですか⁉︎」
ぱあっと定子さまが輝いて見える。
定子さまはフフフと笑った。
「さあ、もう一人探さないとね。誰を誘おうかしら……」
私たちは周りを見渡した。
すると、四人組になってしまっているグループがあった。
いつも四人で固まって話している、女子グループだ。
その中に、少し仲がいい子が一人いる。
「定子さま、誘ってもいいでしょうか」
「いいわよ」
定子さまの許可を得たので、私は彼女たちに話しかけた。
「あの、誰か私たちと組まない?」
こちらを見た四人は、お互いをチラチラと見合う。
どうする? といった空気感だ。
数秒後、その中の一人が進み出た。
「じゃあ、あたしが入ってもいい?」
「もちろん!」
おしゃれに前髪をシースルーバングにした彼女は、大江和泉。
和泉とは、少し仲良くなった。
「よろしくね、和泉」
「よろしくー、納言さん! って、あー。なんて呼んだらいいかな?」
「ええ? 納言でも、諾でも、なんでも」
「ナゴンってかわいくない? ナゴンって呼ぶね〜」
こんな風に、和泉はめちゃくちゃハイテンションなんだ。
その様子をウフフと笑って見ていた定子さまは、
「女子は決まったわ」
と男子の方に話しかけた。
男子は、まだ話し合い中のようだ。
「まだかかりそうね」
「じゃあさ、話して待ってよ! 定子ちゃんって呼ぶね」
「いいよ」
さ、定子ちゃん……?
私でさえ、ちゃん付けはしたことがないのに!
でも、ちゃん付けなんて畏れ多い……。
定子さま、で十分だ。
そうこうしているうちに男子側も決まったようで、女子は男子グループと、男子は女子グループと合体していいと一条さんから伝えられた。
「どこのグループとくっつく?」
和泉が私たちを見ながら尋ねる。
でも、私は知っているんだ。
定子さまが、一条さんと組みたいってことを。
ならば、さりげなく誘導してみよう。
「ねえ、定子さま。あの、一条さんがいるグループはどうでしょう。学級委員同士ですし、よいのでは?」
「うーん、でも。学級委員って、散らばっていた方がいいんじゃないかしら」
確かに、定子さまの意見はごもっともだ。
だけど、それで定子さまが楽しめなくなってしまうのも、私は嫌だ。
定子さまのお気持ちに、従いたいのだ。
「大丈夫ですよ。それに、学級委員は固まっておいた方が連携もできるでしょう?」
「確かにね……。わかった、誘ってみましょう」
私は一条さんたちの班に近づきながら、気づいていた。
みんなが、一条さんの班を誘っていないということに。
きっと、一条さんの彼女である定子さまに遠慮してのこと。
せっかくのみんなの厚意を無下にしてはよくないだろうし、自分の判断はきっと正しい。
「あの、懐仁。一緒に組まない?」
「定子。もちろんだよ。僕も、誘おうと思っていたんだよ」
チラリと一条さんの後ろを見て、私はゲッと声を漏らした。
班のメンバーに、世尊寺と秋月がいたのだ。
私に気づいたのか、世尊寺はペコリと会釈して少し口の端を緩めた。
「どしたのー、ナゴン」
「い、いや、なんでも」
かくして、班のメンバーが決まった。
定子さま、一条さん、和泉、世尊寺、秋月、そして私・納言諾。
さあ、どんな遠足が待っているだろうか……。




