表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】追放騎士は冒険者に転職する 〜元騎士隊長のおっさん、実力隠して異国の田舎で自由気ままなスローライフを送りたい〜  作者: 犬斗
第十章 秋の雷光

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

328/328

第320話 皇帝陛下のクエスト13

 大角に亀裂が入ったことで、悲鳴にも似た咆哮を上げるコル・アビリム。


「ティアーヌ! 俺が空中に上がったら大角を折れ!」

「はい!」


 俺はティアーヌに指示を出し、シャルクナの両断剣(ツヴァイヘンダー)を拾った。

 そして、大角の先端に向かって糸巻き(ラフィール)を発射。


 大角の真上に差し掛かったところで、両断剣(ツヴァイヘンダー)を地上に向けて構える。


「っしょっおおおお!」


 すかさずティアーヌが、悪魔の重撃(ヴォル・トール)の一撃を大角に放つ。

 コル・アビリムには抵抗する術がない。

 ここで大角を振動させれば、自らの能力で折れるからだ。


「よくやった、ティアーヌ!」


 ティアーヌの一撃によって、耳をつんざく破裂音とともに大角がへし折れた。

 斧で伐採した大木のように、唸りを上げながら地面に向かって倒れていく。


 あらわになった大角の根本に向かって、俺は落下しながら両断剣(ツヴァイヘンダー)を突き刺した。


「グゴアァァァァアアァァァァ!」


 両断剣(ツヴァイヘンダー)の剣身が全て埋まった。

 頭蓋骨を貫き、脳に届いただろう。

 首を大きく回し咆哮を上げるコル・アビリム。


 その勢いで、俺の身体は大きく投げ飛ばされた。


「ぐはっ!」


 地面に身体を打ちつけたが、砂地によって衝撃は吸収されている。

 擦り傷だけだ。

 俺はすぐに身体を起こした。


「マルディン、でかしたぞ!」


 キルスが俺に向かって叫びながら、コル・アビリムに接近していた。

 もう大角の振動はない。

 接近戦も可能だ。


 コル・アビリムの首元に雷光を放つキルス。

 先程よりもさらに鋭さを増している雷光。

 八つの閃光が見えた。


「は、八連撃かよ。あいつ、とんでもねーな」


 キルスの雷光によって、コル・アビリムの強固な鱗に深い傷が発生。

 ついにコル・アビリムの動きが鈍り、頭の位置が下がった。


「さすがキルスさん!」


 ティアーヌが突進し、大きくジャンプしてコル・アビリムの頭部に悪魔の重撃(ヴォル・トール)を振り下ろす。


「シャルクナさん! 両断剣(ツヴァイヘンダー)はマルディンさんが弁償します!」


 コル・アビリムの頭部に埋まった両断剣(ツヴァイヘンダー)の柄に向かって、強烈な一撃を放つティアーヌ。


「グゴアァァ!」


 苦痛に歪みながら、咆哮を上げるコル・アビリム。


 俺は砂地に落ちていた悪魔の爪(ヴォル・ディル)を拾い上げる。

 そして、コル・アビリムの首に向かって糸巻き(ラフィール)を発射。


「これで終わりだぁぁぁぁ!」


 即座に巻き取り、悪魔の爪(ヴォル・ディル)を振り抜いた。


「グゴアァァァァアアァァァァ」


 天を仰ぎ、咆哮を上げるコル・アビリム。

 だが、その声は空気が漏れたようにかすれていた。


 俺の腕には完璧な手応えが残っている。

 悪魔の爪(ヴォル・ディル)の一撃は気道まで達し、完全に喉を切り裂いていた。


「……ゴハァァ……ガハァァ」


 声にならない悲鳴にも似た咆哮を上げたコル・アビリムが、雪の砂漠(セラ・ストゥム)にのめり込むように倒れる。


 その衝撃で白い砂塵が舞う。

 まるで雪原の吹雪のようだ。

 そして、白い砂がコル・アビリムの血によって赤く染まると、純白から真紅の砂塵へと変わっていった。


「思い出すな……」


 雪原を赤く染め、流氷を血の海に変えた『セーム港の赤い海事件』。

 思い出したくない記憶が脳裏をよぎった。


「はっ! シャルクナ!」


 俺はすぐに我に返り、シャルクナに向かって走る。

 シャルクナの献身によって、コル・アビリムを討伐できたことは間違いない。


 キルスがシャルクナの様子を診ている。


「シャルクナ! 大丈夫か!」

「はい……陛下」

「すぐに帰還するぞ! もう少しの辛抱だ!」

「問題……ありません」


 保護眼鏡(ゴーグル)越しにも、シャルクナの瞳は焦点が合っていないことが分かる。

 だが、俺に視線を向けていた。


「はあ、はあ。マルディン様」

「なんだ!」

両断剣(ツヴァイヘンダー)を……弁償して……ください」

「してやる! 百本でも千本でもな!」

「嬉しい……です。うふふ」


 すでにティアーヌが狼煙を上げており、翠玉の翼(ルーディア)を呼び寄せていた。


 ――


 到着した翠玉の翼(ルーディア)にシャルクナを乗せ、俺たちはすぐに離陸。

 シャルクナを自室に寝かせて、アリーシャに診てもらった。


「全身の骨に亀裂が入っています。動かしてはいけません」


 痛み止めと鎮静作用のある薬草を煎じて、シャルクナに飲ませた。

 そのため、今の容態は落ち着いているように見える。


「アリーシャ。シャルクナの命に危険はあるか?」


 キルスはいつもと同じ表情で、アリーシャを見つめていた。

 皇帝たるもの、常に冷静さが必要だ。

 だが、内心はそうではないだろう。

 その証拠に、握りしめた拳が小刻みに震えていた。


「すみません、ここではこれ以上のことが分かりません。脳のダメージがどれほどなのか……。とにかく安静にして、レイリアさんに診てもらいましょう」


 アリーシャが深く頭を下げた。

 そもそもアリーシャは解体師で医師ではない。

 生物の身体に精通しているだけだ。


 俺はアリーシャの肩に手を乗せた。


「アリーシャ、お前が責任を感じる必要はない」

「でも……」

「お前の性格では、気にするなと言っても無理なのは分かっている。だが、今はできることだけをやろう」

「はい……」


 瞳に涙を浮かべるアリーシャ。

 本当に優しい娘だ。


 俺たちは帰還の間、寝ずにシャルクナの看病を行った。


 コル・アビリムの死骸は放置している。

 後日回収予定だ。


 ラミトワの最速の飛行によって、予定よりも早くティルコアに到着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ