奇襲攻撃を受ける
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「下がれ!」
ターケシの怒声が砦跡に響く。
床を突き破って現れる者が味方であるはずがない。
そして――弱いはずもない。
盾を構え、剣を突き出す。
牽制。
しかし切っ先は空を裂くだけだった。
(速い。)
巨人ほどではない。
だが十分に大きい。
紫色に輝く双眸は、自分より高い位置からこちらを見下ろしていた。
床下に足をついているはずなのに。
近くへ転がった床板の破片を掴む。
思い切り投げつけた。
一瞬でも視界を奪えばいい。
距離を――
そう思った瞬間。
割れた床へ踵を取られ、体勢が崩れる。
しまった。
巨体の腕が無造作に振り下ろされた。
盾で受け――
ドンッ!
灰色の影が砲弾のように飛び込んだ。
シフォンだった。
オーガの体勢がわずかに揺らぐ。
その隙を逃さない。
ターケシはさらに床板の破片を掴み、巨体の顔へ投げつけた。
月明かりが、その姿を照らす。
(オーガ……!)
食人鬼。
今では滅多に姿を見せない大型魔物。
地下闘技場で見たことがある。
だが――
(目が紫じゃない。)
こんな個体は知らない。
誰かに操られている。
あるいは。
何者かに暴れさせられている。
「フィリア!」
ターケシの声が飛ぶ。
「高所を取れ! 狙撃だ!」
「了解!」
緑の影が崩れた石段を駆け上がる。
「ロザリア!」
「魔力を溜めろ! 距離を取れ!」
「分かりました!」
ロザリアはすぐさま後方へ跳び、レイピアを構えながら魔力を練り始める。
「シフォン!」
灰色の獣耳がぴくりと動く。
「おれとお前で引きつける!」
「はい!」
ターケシは周囲を一瞥した。
割れた床。
崩れた柱。
足場が悪い。
ここでは剣も盾もシフォンの速度も十分に生かせない。
「建物から出るぞ!」
「広い場所へ誘導する!」
四人はほぼ同時に動き出した。
◇
ターケシとシフォンは砦跡入口の広場までオーガを誘導する。
「こっちだ!」
オーガは咆哮を上げながら追ってくる。
その時だった。
不意に、その巨体が止まった。
一歩。
二歩。
前へ出ようとする。
だが、見えない何かに引かれるように、足がそれ以上進まない。
首輪か。
あるいは足枷か。
まるで鎖に繋がれた獣のようだった。
(……縄張りから出られないのか?)
「ロザリア!」
「撃て!」
「はい!」
「水の槍よ!」
圧縮された水塊が一筋の青い閃光となって走る。
銃弾のような速度で、オーガの胸を穿つ。
グオオオオオ…
おびただしい血を流しながら、オーガは暴れ、砦跡を破壊したが、やがて静かになる。
双眸の紫色の光が、ふっと消えた。
オーガは崩れ落ちる。
静寂。
荒い息だけが砦跡に響く。
「……終わった、のか。」
「ターケシ!」
フィリアの鋭い声が静寂を切り裂く。
「床下に魔法陣が……!」
「それと!」
「紫の光が、近づいてきています!」




