第17話 反省会
試合が終わった頃には、外はすっかり暗くなっていた。
ORBITのメンバーが入ったのは会場近くの焼肉店だった。開幕節の勝利を祝うためというより、ようやく全員でご飯を食べる時間ができたという方が近い。
席へ着くなりACEがメニューを開く。
「腹減った……」
「ずっと言ってますね」
MINATOは笑った。
「減ってるんですから仕方ないじゃないですか」
「会場でも食べてませんでした?」
「足りません」
即答だった。
REIGNが水を飲みながら呟く。
「元気だな」
「元気じゃないですよ。先鋒負けたんですから」
そう言いながらも肉はしっかり注文していた。
料理が運ばれてくる。網の上で肉が焼ける音が響き始めると、ようやく試合が終わった実感が少しずつ湧いてきた。最初はどうでもいい話だった。会場近くのコンビニが混んでいたこと、配信のコメント欄のこと、ホテルの話。そんな話をしていたはずなのに、気付けば今日の試合へ戻っている。
「朝陽強かったですね」
肉をひっくり返しながらACEが言う。悔しそうというより、試合を思い返している顔だった。
「強かったな」
REIGNも頷く。
「途中までは悪くなかったと思うんですけど」
ACEはそこで言葉を切った。どこで流れが変わったのか、何を焦ったのか。それは自分が一番分かっている。
「行ったな」
ZEROの一言にACEは苦笑した。
「行きましたね」
否定はしない。
「今見たら待てば良かったんですけど」
そう言ってから首を振る。
「いや、今だからそう思うだけなんですよね。あの時は行けると思ってました」
流れを取り返したかった。そのまま終わるのも嫌だった。だから前へ出た。結果は負けだったが、何が悪かったのかは見えている。
「まあ、次ですね」
ACEがそう言うと、ZEROもREIGNもそれ以上は何も言わなかった。説教する必要がないからだ。本人が一番理解している。
話題は自然と中堅戦へ移る。
「REIGNさんの方が危なかった気もしますけど」
ACEが笑う。
「終盤ですか?」
MINATOも聞く。
REIGNは少し考えた。
「まあな」
否定しない。あの試合を見ていた全員が分かっていた。勝った。だがずっと余裕だった訳ではない。少し流れが傾けば結果も変わっていたかもしれない。
「でも勝ちましたし」
「勝ったからな」
「それだけですか」
「それだけで十分だろ」
ACEが吹き出した。
MINATOも少し笑う。REIGNらしい返事だった。必要以上に語らない。だが試合を軽く見ている訳でもない。だからこそ余計なことを言わない。
肉が減り始めた頃、今度は自然と大将戦の話になった。というより、全員の視線がMINATOへ向く。
「何ですか」
「何ですかじゃないだろ」
ACEが笑う。
「初リーグ戦だったじゃないですか」
そう言われると少し考える。試合内容ならいくらでも話せる。LEXを選んだ理由もある。読み合いの話もある。だが一番印象に残っているのは別だった。
「変な感じでした」
「変?」
「上手く言えないんですけど」
MINATOは少し考える。個人戦は何度も経験してきたし、大きな大会も戦ってきた。それでも今日は少し違った。試合中は目の前の相手しか見ていなかったはずなのに、終わってから振り返ると妙な感覚が残っている。
「一人でやるのと全然違いますね」
それが一番近かった。
ACEが負けた。
REIGNが取り返した。
その後に自分の試合があった。
当たり前のことなのに、実際に経験すると重さが違う。
ZEROは小さく頷いた。
「そんなもんだ」
短い一言だったが、MINATOには妙に納得できた。
「まあ、そのうち助けられる側にもなりますよ」
ACEが笑う。
「嫌ですね」
「全員通る道です」
「説得力ありますね」
「負けたばっかりなんで」
その返しにテーブルの空気が少し和んだ。
反省もした。試合の話もした。次節の話もした。気付けば網の上の肉はなくなり、話題も自然と次の対戦相手へ変わっている。
開幕節は終わった。だがリーグはまだ始まったばかりだった。




