↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
* 第2章 挑戦者、ラスベガスへ向かう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/80

第5話 新しいスタート

LEGACY開幕まで三週間。


ORBIT加入発表から数日が経ち、天野湊の生活は以前とは少しずつ変わり始めていた。


チーム練習。


配信活動。


LEXの研究。


景虎の調整。


神楽シンの対策確認。


やるべきことは山ほどある。


それでも湊は毎日コントローラーを握り続けていた。


そしてその日。


コンビニのバックヤードで最後の着替えを終える。


見慣れた制服。


見慣れたロッカー。


何度も繰り返してきた日常だったが、今日で終わりだった。


「お疲れ様でした。」


退勤前、湊は店長へ頭を下げる。


店長も穏やかに笑った。


「プロになっても身体だけは壊すなよ。」


「はい。」


「世界行けよ。」


「頑張ります。」


短いやり取りだった。


だがそれだけで十分だった。


レジ打ちも、品出しも、清掃も、ここで過ごした時間の全てが今の自分へ繋がっている気がした。


バックヤードを出ようとした時、佐藤がやって来る。


「本当に辞めるんだな。」


「そうですね。」


「なんか実感ないわ。」


佐藤は苦笑した。


「数か月前まで普通に一緒にレジ入ってたのに。」


「自分もですよ。」


「今度世界大会とか出るんだろ?」


「まずはLEGACYです。」


「十分すげぇよ。」


少し沈黙が流れる。


そして佐藤は真面目な顔になった。


「応援してる。」


冗談ではなかった。


からかう時とは違う声だった。


湊も自然と頭を下げる。


「ありがとうございます。」


「有名になってもサインくらい書いてくれよ。」


「まだ言ってるんですか。」


二人は最後に笑った。


こうして天野湊のフリーター生活は終わる。


これからはORBIT所属選手として生きていく。


期待もある。


不安もある。


だが後悔はなかった。


夜。


自宅へ戻った湊は配信ソフトを立ち上げる。


今日の配信タイトルは一つ。


【大事なお知らせ】


配信開始と同時に視聴者が集まる。


同時接続は五千を超え、七千、八千と増え続けていく。


コメント欄も普段以上の勢いだった。


『なんだなんだ』

『重大発表?』

『LEGACY関係?』

『気になる』


湊は深呼吸してマイクへ向かった。


「こんばんは。」


『こんばんは!』

『きた!』

『MINATO!』


少し笑ってから本題へ入る。


「今日は報告があります。」


コメント欄の流れが少し落ち着く。


「今日でアルバイトを辞めました。」


一瞬だけ静かになった。


次の瞬間、コメント欄が一気に流れ始める。


『おおおおお』

『マジか』

『決断したな』

『頑張れ!』

『応援する!』


湊は続けた。


「ORBITにも入りましたし、これからはもっと本気で競技へ集中しようと思います。」


『いい決断だと思う』

『世界目指そう』

『応援してる』


コメントを見ながら少しだけ笑う。


そしてもう一つの報告を口にした。


「あと、これから配信頻度を増やします。」


今度は本当にコメント欄が爆発した。


『うおおおおおお』

『待ってた!』

『最高!』

『毎日見たい!』

『助かる!』


「今までは不定期だったんですけど、これからはちゃんと配信しようと思います。」


『LEX見たい』

『景虎講座やって』

『ランク配信頼む』


流れるコメントを眺めながら湊は改めて実感する。


応援してくれる人がいる。


期待してくれる人がいる。


数か月前まで誰にも知られていなかった自分を、今は多くの人が見てくれている。


不思議な感覚だった。


「世界を目指します。」


自然と口から出た言葉だった。


コメント欄がさらに流れる。


『行ける!』

『応援する!』

『LEGACY頑張れ!』

『世界王者になれ!』


湊は笑った。


REVOLT JAPANではベスト4だった。


KNIGHTにも負けた。


まだ足りないものばかりだ。


それでも前へ進むしかない。


世界へ行くために。


もっと強くなるために。


「じゃあ今日はランクマッチやります。」


『待ってました!』

『きたあああ!』

『LEX出して!』

『景虎見たい!』


配信の空気が一気に明るくなる。


湊はコントローラーを握り、CHRONOS STRIKEを起動した。


プロとしての生活。


配信者としての活動。


そして世界最高峰の舞台、LEGACY。


新しい日常はもう始まっている。


天野湊はモニターの向こうを見据えながら、静かにマッチングボタンを押した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。