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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
* 第2章 挑戦者、ラスベガスへ向かう

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第3話 ORBITからのスカウト

REVOLT JAPAN終了から数週間。


LEGACY開幕まで残り三週間となった夜、天野湊はいつものように自室でLEXの研究を続けていた。


トレーニングモード。


コンボ。


崩し。


起き攻め。


連係。


何度も同じ動きを繰り返しながら、一つずつ理解を深めていく。


LEXは面白い。


だが難しい。


今まで使ってきた景虎や神楽シンとはまるで違う。


操作量も多い。


判断も難しい。


少しミスするだけで火力が落ちる。


それでも湊はLEXに可能性を感じていた。


LEGACYで世界の強豪たちと戦うなら、新しい武器はあった方がいい。


そう考えていた。


だが最近、別のことも考えるようになっていた。


限界だった。


もちろん今も強くなっている。


REVOLT JAPANではベスト4まで進んだ。


ランクマッチでも結果を出した。


配信も始めた。


少しずつ世界は広がっている。


それでも。


一人だった。


分からないことは自分で調べる。


負けた試合は自分で見返す。


キャラ対策も自分で考える。


相談相手もいない。


コーチもいない。


チームもない。


大会ではたくさんの人に囲まれていても、家へ帰ればまた一人で画面に向かう。


それが当たり前だった。


「プロってこういうの違うんだろうな。」


思わず独り言が漏れる。


その時だった。


スマホが震える。


Nexの通知だった。


湊はLEXのコンボ練習を止めて画面を見る。


DM。


企業案件か何かだろうと思いながら開く。


そして動きが止まった。


差出人。


【ORBIT公式】


「ん?」


DMを開く。


そこには短い文章が並んでいた。


『初めまして。』

『CHRONOS STRIKE PRO LEAGUE参戦予定のORBITです。』

『天野湊選手へお話したいことがあります。』

『一度お時間をいただけないでしょうか。』


数秒。


画面を見つめる。


意味はすぐ理解できた。


「……スカウト?」


思わず呟く。


プロチーム。


自分にはまだ早いと思っていた世界だった。


数日後。


東京都内。


高層ビルの前で湊は立ち止まっていた。


ORBIT本社。


ガラス張りの巨大なオフィスビルだった。


正直緊張している。


大会より緊張しているかもしれない。


受付を済ませ、案内された会議室の前へ立つ。


深呼吸。


そして扉が開いた。


「失礼します。」


中へ入った瞬間。


湊の動きが止まる。


知っている顔ばかりだった。


いや。


知っているどころではない。


何度も配信で見てきた人たちだ。


テーブルの奥で笑っている男。


REIGN。


世界大会優勝経験を持つ日本最高峰プレイヤー。


その隣にはACE。


理論派として知られるトッププロ。


さらに韓国出身の若手トッププレイヤーZERO。


全員がORBIT所属選手だった。


「どうも。」


REIGNが軽く手を上げる。


「初めまして。」


湊は慌てて頭を下げた。


「よろしくお願いします。」


空気は思ったより柔らかかった。


もっと堅苦しい場所を想像していた。


だが違う。


歓迎されている。


そんな雰囲気があった。


そして会議室の奥に座る男性が口を開く。


ORBITヘッドコーチ。


SAGE。


リーグ優勝経験を持つ名将だった。


「本日はお越しいただきありがとうございます。」


落ち着いた声だった。


「単刀直入にお話しします。」


会議室が静かになる。


SAGEは真っ直ぐ湊を見た。


「ORBITへ加入していただきたい。」


予想していた言葉。


それでも実際に聞くと重みが違った。


SAGEは続ける。


「REVOLT JAPANベスト4。」


「ランクマッチ一位。」


「年齢。」


「将来性。」


「人気。」


「全て高く評価しています。」


REIGNが笑う。


「普通に欲しい。」


あまりにも率直だった。


ACEも頷く。


「戦力として必要です。」


ZEROも短く言う。


「強くなれる。」


三人とも本気だった。


お世辞ではない。


そのことだけは伝わってきた。


湊は少し黙る。


プロチーム。


仲間。


リーグ。


少し前までは考えたこともなかった世界だ。


だが最近感じていた。


一人では限界があることを。


もっと強い人と練習したい。


もっと深くゲームを知りたい。


もっと上へ行きたい。


そしてORBITは新しいチームだった。


歴史はまだない。


実績も少ない。


だからこそ惹かれる。


完成された場所ではなく、一緒に作る側になれる気がした。


しばらく考えた後、湊は顔を上げる。


「一つだけ聞いてもいいですか。」


SAGEが頷く。


「もちろんです。」


湊は正直に言った。


「自分、まだ世界大会も出たことないです。」


「プロ経験もありません。」


「本当にいいんですか。」


その瞬間。


REIGNが吹き出した。


ACEも笑う。


ZEROも少しだけ口元を緩める。


そしてSAGEが静かに答えた。


「だからです。」


湊は目を瞬く。


SAGEは続けた。


「完成された選手なら他にもいます。」


「ですが私たちが欲しいのは今のあなたです。」


会議室が静かになる。


「世界を目指している選手。」


「成長し続ける選手。」


「それが天野湊選手です。」


その言葉は不思議と胸に響いた。


REVOLT JAPANで感じた悔しさ。


届かなかった世界大会本戦。


KNIGHTとの差。


BLADEとの差。


もっと強くなりたい。


もっと上へ行きたい。


その気持ちを認めてくれる人たちが目の前にいた。


答えは決まった。


湊は小さく笑う。


そして頭を下げた。


「よろしくお願いします。」


一瞬だけ静寂が生まれる。


次の瞬間。


REIGNが立ち上がった。


「よし。」


ACEも頷く。


「歓迎します。」


ZEROも短く言った。


「一緒に勝とう。」


SAGEも微笑む。


こうして天野湊はCHRONOS STRIKE PRO LEAGUE参戦予定の新規チーム、ORBITへの加入を決めた。


一人で戦ってきた挑戦者は、初めて仲間を得る。


世界への道はまだ遠い。


LEGACYもある。


プロリーグもある。


越えなければならない壁は数え切れない。


それでも。


確かに一歩前へ進んだ。


天野湊の新たな挑戦が、今始まろうとしていた。

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