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元・狂戦士のオッサン案内人。〜俺の指す先を斬るだけで最強。最短の矢印に従う異世界女騎士とメイドが、特級ダンジョンを蹂躙する〜  作者: くるまAB
第1章:再起の矢印と霧晴れる迷宮

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9. 信じるということ

「おい、予備の耳栓は持ったか? あそこは雷撃そのものより、音にやられて耳をイカれるからな」

「絶縁装備もガチガチに固めねえと、4階層まで持たねえぞ」

 そんな声を背中で聞きながら、悠馬はアリスとノーラを連れてホテルへと引き返した。


「……よし。アリスリア、ノーラ。装備を整えるぞ。ジャージじゃ絶縁どころか静電気で髪が逆立つ」

「なるほど、敵を知ってから鎧を纏う……。悠馬お兄さん、流石の戦略ですね!」

「あのアイスクリーム屋に寄るための時間稼ぎかと思いましたが……失礼いたしました、悠馬様」

 現地に到着したオグリ家騎士団を待っていたのは、文字通り白銀の暴力だった。

 空は重く垂れこめ、数秒おきに鼓膜を震わせる轟音が響く。他の探索者たちが絶縁装備に身を固め、1歩ずつ慎重に進む中、悠馬のパーティだけは異質な速度で突き進んでいた。


「アリス、左へ2歩! ノーラ、3秒後に右へ2メートル跳べ!」


 悠馬の瞳には、落雷の予兆である青いノイズが視覚化されている。

 彼が指し示す【青い矢印】をなぞるだけで、アリスとノーラは至近距離で炸裂する雷撃を、まるで雨粒を避けるかのように軽やかにかわしていく。

 音があとから追いかけてくるレベルの神速の雷。

 周囲の探索者が唖然とする中、オグリ家騎士団は一気に最終階層――その主の間、別名『雷帝の玉座』へと辿り着いた。


 そこに鎮座していたのは、全身を青白い放電で包んだ巨大な獅子。

 中級ダンジョンボス『雷帝』。その速度と手数だけは上級に匹敵すると言われる魔物だ。


「……っ、速い! 悠馬様、これでは……正解ルート(答え)など存在しないのではありませんか!?」

 ノーラが氷の防壁を次々と展開するが、雷帝はそれを紙細工のように食い破り、アリスの背後へ回り込む。


「アリスリア、後ろだ!」 「……っ! くっ、間に合いません!」

 アリスが剣を振るうコンマ数秒、それすらも雷帝は嘲笑うかのように超えてくる。

 悠馬の瞳に、焦燥が走る。言葉という「情報伝達」の限界。

 脳裏に過るのは、あの日、自分の言葉が届かずに命を散らせた若者の影だ。

 

(……また、繰り返すのか? いや、そんなことはさせねえ。俺が、信じるんだ)


 悠馬は回避行動を続けながら、決死の覚悟で叫んだ。

 「アリスリア! ノーラ! そのまま聞け! 今から俺の見てる景色を、直接お前たちに共有する!」

 2人が激しい雷撃をいなしながら、耳を澄ます。

 

 「だが、これを使ってる間、俺の5感は完全に消える! 俺はただの案山子かかしだ。……だから、俺を守れ。俺を信じろ!」


 悠馬が目を閉じ、深く、深く、自身の意識の深淵へと潜り込んでいく。

 瞑想段階へと入るその刹那、アリスとノーラの視界に、鋭くも細い「光の筋」が徐々に顕現する。


「……悠馬様、あなたは……この棒切れのような光を信じろと言うのですか?」

 ノーラが不安げに問いかける。それはあまりに細く、頼りない光だった。

 だが、悠馬の意識が完全に世界から切り離された瞬間――その「棒切れ」は、爆発的な黄金の輝きを放ち始めた。


「……信じろ。この矢印の先に、あんた達の求める答え(正解ルート)がある。……俺も、お前たちを信じる」


 悠馬の言葉が、音ではなく魂に響いた。

 それもそのはず悠馬は声を発することが出来ない……ただ、その音は確実に2人に届いた。

 細い光の筋は、瞬く間に大地を割り、雷を裂く**【黄金の最適解】**へと変貌を遂げた。

 それはもはや「予測」ではない。雷帝の未来を固定する「絶対的な勝機」の道標、正に『最適解』。


「……見えます。悠馬お兄さんが引いてくれた、――道が!」

「アリスお嬢様、私は悠馬様を死守します……! とどめをお願いします!」


 5感を失い、その場に棒立ちとなった悠馬。

 その鼻先数センチを、雷帝の鋭い爪が通り過ぎる――だが、そこにノーラが滑り込んだ。

 黄金の矢印の指示通り、氷の壁を「爪を逸らす角度」で設置し、最小限の魔力で攻撃を無効化する。


 「アリスお嬢様、今です!」

 「はああああああっ!!――『純白色の断罪アルバス・ジャッジメント』」


 アリスが黄金の線をなぞるように、虚空を跳ねた。

 雷帝が放つ音速の放電を、まるで最初から知っていたかのように首を傾けて回避し、その懐へと飛び込み剣を振るう。

 そこには、悠馬が示した「答え」――雷帝の核へと至る、唯一の隙があった。


 閃光が奔り、雷帝の巨体が2つに分かたれる。

 轟音と共に素材へと変化するボス。同時に、悠馬の意識が現実へと引き戻された。


「……がはっ、……あ、ぁ……っ!」

 膝をつき、激しい眩暈に襲われる悠馬。そんな彼を、2人が誇らしげな、そして少しだけ泣きそうな顔で支えた。


「お見事です、悠馬お兄さん! 完璧に『正解』に辿り着きました!エッヘン!」

「……悠馬様。信じてよかった。……あの棒切れは、最高に眩しい光でした」


 悠馬は震える足で立ち上がり、2人の肩に体重を預けて苦笑した。

「……そうかよ。じゃ、約束通り……本命、行くか」




 夕闇の静岡。

 オグリ家騎士団が辿り着いたのは、駐車場に漂う香ばしい肉の匂いだけで理性が飛びそうになる、あの有名な看板の下だった。


『炭焼きレストランさ〇やか』。


「悠馬様、ついに……ついにこの地獄の如き香りの源へと辿り着きましたね」

「悠馬お兄さん、見てください! あの看板! あの牛さんのマークが、私には聖紋のように見えます!」


 極限の戦いを経て、本当の意味で絆を深めた3人の前に、店内の活気と肉を焼く力強い音が広がっていた。

 この先に待ち受ける「暴力的な肉の塊」が、どれほどの戦慄(と歓喜)を彼女たちに与えるのか、今の2人にはまだ知る由もない。


「いらっしゃいませ! 3名様ですね、ご案内します!」


 活気ある店員の案内で、3人はテーブルへと向かう。

 悠馬は、これから起きるであろう「第2の戦場」を予感しながら、静かにメニューを開くのだった。

お読みいただきありがとうございます!


中級ボス『雷帝』との死闘を乗り越え、ついに辿り着いた静岡の聖地……。

極限まで研ぎ澄まされた五感が次に捉えるのは、暴力的なまでの肉の香りと、あの「げんこつ」のようなハンバーグです。

果たして騎士たちの胃袋は、この第2の戦場を生き残れるのか。


「さ〇やか展開にワクワクする!」「ご褒美回が楽しみ!」と思って頂けましたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】からポイントを頂けると励みになります!

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