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元・狂戦士のオッサン案内人。〜俺の指す先を斬るだけで最強。最短の矢印に従う異世界女騎士とメイドが、特級ダンジョンを蹂躙する〜  作者: くるまAB
第2章:重なり合う異世界

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34. 【帝国】届かぬ刃と、泥まみれの撤退

 洞窟の最奥に満ちる空気は、もはや酸素ではなく、濃密な「死」そのものだった。

 

 青黒いオーラを纏い、感情を排した瞳でこちらを見据える死神。

 その一振りが放たれた瞬間、帝国の誇る精鋭騎士団は文字通りゴミのように吹き飛ばされた。


「ぐ、ああああッ!?」

「ひ、怯むな!大盾を噛み合わせろ!」


 マグノリアの怒号が響く。だが、騎士たちの盾は紙細工のように容易く砕け散る。

 圧倒的――数多の戦場を潜り抜けてきたドレイヴンでさえ、その身に浴びる魔圧に喉が鳴った。


「アリスたちは……この化け物にやられてしまったというのか……!」


 ドレイヴンは愛用の大剣を正眼に構え、死神へと突っ込んだ。

 一撃。重厚な剣筋が死神の短剣とぶつかり、火花が洞窟を白く照らす。


「貴様ぁぁッ!娘をどこへやった!答えろ、死神ッ!!」


 咆哮と共に繰り出される、辺境伯の剛剣。

 それに合わせるように、マグノリアもまた巨大な剣を振るい、側面から斬り込む。


「総員、散れ!御屋形様の背を支えよ!魔法兵、牽制を絶やすな!」


 マグノリアの的確な指示により、辛うじて戦線が形を成す。

 

 ドレイヴンの破壊的な重撃とマグノリアの鋭い斬撃が、交互に死神を襲う。

 だが、死神は最小限の動きでそれを捌き、冷徹なカウンターを繰り出してきた。


「クッ……バケモノめ、中々やるではないかっ……!」


 ドレイヴンが吐き捨てる。

 

 数分間の攻防、帝国最強クラスの2人がかりで、ようやく均衡を保つのが精一杯だった。

 とどめを刺すどころか、1傷負わせることすら叶わない。


「ドレイヴン、マグノリア! 一度引きなさい!」


 後方で戦況を見守っていたヴァレンタインが叫んだ。彼女の顔は、これまでにないほど青ざめている。


「何を言うか! 目の前に娘の手がかりがあるのだぞ!」

「死んでは意味がないと言っているのよ! このままでは全滅は免れないわ。2人を救うんでしょ!死んでどうするのよ!」


 ドレイヴンの動きが一瞬、止まった。ヴァレンタインの言葉は、熱くなった彼の頭に冷や水を浴びせかける。


「……ぐ、ぬぅッ!」

「2人とも!3分だけ時間を稼ぎなさい!特級の魔道具を起動させるわ!」

 

「御意!総員、ヴァレンタイン殿を守れ!」

「アイリ!散らばった魔石をかき集めなさい!あんた達が集めた大量の魔石が、こいつの一撃で吹き飛んでるわ、急いで!」


 ヴァレンタインに指示されたアイリは、腰が抜けそうなのを必死に堪えて叫んだ。


「は、はい!すぐにっ!」


 アイリは、死神の衝撃波が吹き荒れる戦場を、四つん這いになるようにして駆け出した。

 すぐ傍を死神の斬撃が通り過ぎ、爆風で体が浮き上がる。


 彼女は涙目になりながら、地面に散乱した大小様々の魔石を必死に抱え込んだ。


「ひぃ、ひぃっ……!こ、これ、3桁近くありますよぉ!あ、あった、これも!もう、なんでこんな時に限って散らばるんですかぁ……っ!」


 近くの団員の手を借りつつ、震える手で重い魔石をかき集め、アイリは転びそうになりながらもヴァレンタインの元へ走り寄る。


「ヴァ、ヴァレンタイン様!かき集められるだけ持ってきました!もう、もう無理ですぅ……!」

「よくやったわ、アイリ!……さあ、いくわよっ!」

 

 ヴァレンタインが魔石を触媒に、銀色の球体へ膨大な魔力を注ぎ込む。

 

 ――だが、それを察知した死神が、一気に加速してこちらへ肉薄してきた。


「邪魔はさせん……ッ!」

 ドレイヴンが前に出る。その全身から、これまでにない濃密な闘気が噴き上がった。


「ガードルドの誇り……我が魂を持って、不浄を断たん!」


 大剣が黄金色の輝きを放ち、洞窟全体が激しく震動する。

 アリスが放つ『純白色の断罪アルバス・ジャッジメント』を遥かに凌ぐ、圧倒的な威圧感。


「――『剛勇王の断頭台レガリア・ギロチン』ッ!!」


 ――ズドォォォォォォォォンッ!!


 振り下ろされた一撃は、物理的な破壊を超えて、空間そのものを叩き潰すような重圧力となって死神を直撃した。

 流石の死神も、その絶対的な処刑宣告の如き重圧を受け、10数メートル後方へと押し戻される。


「今よ!」

 ヴァレンタインが叫ぶのと同時に、眩いばかりの光の壁が展開され、一行と死神を完全に分断した。


「今のうちに離脱するわよ! 急いで!」


 一行は、背後に響く死神の虚しい打撃音を聞きながら、全力で洞窟を駆け抜けた。

 ようやく外の光が見えた頃、追撃の気配が止まる。


「……追ってこないのか?」

 

 ドレイヴンが肩で息をしながら振り返る。

 

 そこには、不気味なほどに静かな洞窟の入り口があるだけだった。

 結界に阻まれているのか、あるいは最奥のあの場所から出られない理由があるのか。


「……どうやら、もう大丈夫みたいね」

 

 ヴァレンタインがその場に座り込んだ。

 漆黒のローブは泥と汗で汚れ、額には大粒の汗が浮かんでいる。


「ドレイヴン、申し訳ないわ。手がかりを目前にして……」

「……いや、いい。お前の言う通りだ。私がここで果てれば、アリスたちの行方は闇の中だった」


 ドレイヴンは悔しげに拳を握りしめたが、その瞳には再び理性の光が宿っていた。

 隣では、アイリが過呼吸気味に肩を揺らしている。


「……も、もう、絶対に死んだと思いましたぁ……。マグノリア団長、さっき仰っていた『数は正義』ってやつ……確かに、正解でしたねぇ。私一人じゃ、石1個持つのも怖くて無理でしたぁ……」

 

 マグノリアはボロボロになった大剣を鞘に収め、小さく頷いた。


「左様。いかに個が強かろうと、連携を欠けば死を招くのみ。ヴァレンタイン殿、我が進言、いかがでしたかな?」

 ヴァレンタインは汗を拭い、自嘲気味に微笑んだ。


「ええ……確かに正解ね。癪だけど、あなたの言う通りだったわ。あれを相手にするには、まだ少しばかり『準備』が足りなかったみたい」


 一行は、いつか必ずあの死神を打倒し、アリスたちを取り戻すことを誓い、重い足取りで撤退を開始した。

お読みいただきありがとうございます!


ついにベールを脱いだドレイヴン辺境伯の奥義「剛勇王の断頭台」。

死神を押し戻すほどの圧倒的なパワーを見せつけながらも、娘のために「生きて引く」ことを選んだパパの決断に痺れる回でした。

泥まみれの撤退……しかし、その瞳の炎はまだ消えていません!


毎日18時に更新しております!


「パパの奥義がカッコ良すぎる!」「ドレイヴン頑張れ!」と思っていただけたら、作品フォローやブックマーク、星(★★★★★)での応援をよろしくお願いします!

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