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戦闘スキル無しの元・狂戦士 ~案内人は最短の矢印で最強の異世界騎士団を導き現代ダンジョンを無双する~  作者: くるまAB
第1章:再起の矢印と霧晴れる迷宮

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16. 虚飾の揺り籠

「……あいつは、双剣使いだった」

 

 深夜のフェリー、その甲板に悠馬の低い声が溶ける。

 

 アリスとノーラは、夜の海を見つめる悠馬の横顔を静かに見守っていた。


「2本の刃を、まるで自分の手足みたいに振り回してな。俺の出す『理論上の最適解』に、一秒の遅れもなくついてくる……。あんなに息が合ったのは、後にも先にもあいつだけだった」

 

「悠馬お兄さんの指示に、寸分の狂いもなく……。よほどの実力者だったのですね」

 

 アリスの言葉に、悠馬は小さく頷いた。


「ああ。……今から思えば、あの時の俺は、独りでいるより2人でいる方が効率がいいと……。 そう、思い始めていたんだ」

 

 悠馬が目を閉じると、潮風は一瞬にして、あの場所の血の臭いへと変わった。


 ――――

 

 特級ダンジョン『虚飾の揺り籠』。


 下層へと続く道中で、2人の男女が魔物の群れを蹂躙していた。


「――花、3時方向。3体、まとめて首を跳ねろ」

「了解です!」


 悠馬の鋭い指示が飛ぶ。


 その直後、悠馬自身は正面の巨大な岩ゴーレムの懐に潜り込み、その重い一撃を紙一重でかわすと、禍々しい短剣を一閃させた。


 力任せではない。

 急所を的確に、最短距離で断つ。


 その荒々しくも精密な戦いぶりは、まさに「狂戦士」の名に相応しい殲滅速度だった。


 悠馬は己の身体能力と、視界に描かれる【青い矢印】を同期させ、戦場を支配していた。


 もともと連携の確認のために潜った中層だったが、それは完全な杞憂だった。


 何年もコンビを組んでいたかのように、不思議と息が合う。


 悠馬が口にする「予言」に近いアドバイスを、花は天性の勘と俊敏性で完璧に実行してみせた。


「……ふぅ。悠馬さん、本当に凄いですね」


 戦闘の合間、剣の血を振り払いながら花が微笑む。


「あなたの言う通りに動くと、まるでダンジョン全体が私の味方をしてくれているみたいです」


「……お前の反応が速いだけだ。無駄口を叩くな」


 ぶっきらぼうに返す悠馬。

 最初は利用してやろうと思い、一時的に組んだだけだった。

 

 だが、その胸中にはかつてパーティーを組んでいた頃のような、心地よい感覚が蘇っていた。


 

 

 2人はやがて、あの『真実への道』へと辿り着いた。

 入り口は左右に分かれ、一度入ればお互いの姿も声も届かない。


「いいか、花。左のルートは通常の攻略通りにいかない箇所がある。3つ目の曲がり角、床のタイルの色が微妙に違う場所だ。そこを、わざと踏んでから左に2歩。 そうすれば、重力トラップを無効化できる。……いいな、他はさっき言った通りにやれば大丈夫だ」


「はい。悠馬さんのアドバイス通りに。……信じてますから」


 迷いのない瞳と優しい笑顔。


 悠馬はわずかに視線を逸らし、短く「……行くぞ」と告げた。


 2人は左右の通路へと分かれ、それぞれの迷宮を駆け抜ける。

 悠馬は己の力で、花は悠馬が授けた「正解」を武器に。


 そして――。


 主の間の巨大な扉の前で、2人は再び顔を合わせた。


 その手には、それぞれのルートを突破した証である、鍵が握られている。


「――ぴったり、同時ですね」


 花が少し誇らしげに笑う。


「……ああ。開けるぞ」


 2つの鍵が鍵穴に差し込まれ、同時に回される。

 重厚な石の音が響き、主の間への扉がゆっくりと開き始めた。


 その先に待つものが、救いなどではないとも知らずに。

お読みいただきありがとうございます!


「悠馬さんのアドバイス通りに。……信じてますから」

花のその純粋な信頼こそが、孤独だった悠馬を救い、そして彼を変えてしまったのかもしれません。

最短ルートのその先に、救いはあったのか。

その核心へと物語は加速していきます。


「花さんの笑顔が眩しすぎる!」「悠馬の過去が切ない……」と思って頂けましたら、ぜひ下の評価欄(★)とブックマークで応援をよろしくお願いします!

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