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元・狂戦士のオッサン案内人。〜俺の指す先を斬るだけで最強。最短の矢印に従う異世界女騎士とメイドが、特級ダンジョンを蹂躙する〜  作者: くるまAB
第1章:再起の矢印と霧晴れる迷宮

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12. 黄金の虚飾

 東名高速を西へひた走る車内。

 アスファルトがタイヤを切りつける音が響く。

 

 不快なはずのその音が、悠馬の思考を繋ぎ止めていた。


(……有村、茜)


 望海から告げられた名前が、澱のように胸に沈んでいる。


 バックミラーを覗けば、後部座席ではアリスとノーラの姿がある。

 ハンバーグの余韻に浸りながら、2人は深い眠りについていた。

 

 この2人がいれば、たいていの困難はねじ伏せられるだろう。


 だが、過去の因縁だけは、物理的な力では解決できない。


(……考えすぎだな。今は最短を指すだけだ)


 悠馬は意識を切り替え、目的地へと車を走らせた。


 ――愛知県、名古屋市。


 名古屋市 中級ダンジョン 通称「鉱石ダンジョン」


 「……ううっ、悠馬お兄さん!ここは、神殿なのですか?」


 翌朝、ダンジョンに足を踏み入れたアリスが、目をしばたかせながら声を上げた。


 壁一面を覆い尽くす金箔、天井から垂れ下がる巨大なシャンデリアのような鉱石。

 アリスとノーラは、その眩さに目を細めていた。


「なんという贅沢な装飾。 この壁を削り取れば、悠馬様のご自宅を買い替えられるのでは?」


「そいつは無理な話だ。 なにしろ全部『メッキ』だからな、立派なのは見た目だけ。 鑑定にかけりゃ2級品以下の石ころだよ。 ――ここはそういう場所だ、騙されるな」


 悠馬は気怠げに、自分にしか見えない「最短の矢印」を空中に描いた。

 現れる魔物たちは、どれもが「本物」を装っていた。

 

 全身を宝石でデコレーションしただけのゴーレム。

 豪華な角をこれ見よがしに突き出すバイコーン。


 アリスとノーラは、その輝きに「何か特別な力があるのでは?」と警戒し、踏み出すのを躊躇う。


「……悠馬お兄さん、あの角!禍々しい魔力を放っています!迂闊に近づけば呪われる可能性が……!」

「ただの蛍光塗料だ。アリス、右三歩。そこから裏拳一発で沈む」


 悠馬は一瞥しただけで、その「虚飾」の正体を看破する。


「えっ?あ、はい!」


 アリスが言われるがままに動くと、背後に回り込んできた、豪華な魔物はプラスチック細工のように呆気なく砕け散った。


「……悠馬様、あちらのゴーレムは!?核がダイヤモンドのように硬質です。私の魔力では……」

「あれはジルコニアだ、ノーラ。コアを蹴れ。それで全壊する」


「……あ、本当です。なんという脆さ……」


 彼女たちが惑わされる虚飾を、悠馬は「矢印」という名の冷徹な事実で切り捨てていく。


 だが、最下層主の間――天守閣を模した巨大な広間で、その「見栄」は最大風速に達した。


 屋根の上に鎮座する、2体の「金色鯱きんしゃち

 

 全身を眩い黄金に包んだその巨体は、中級とは思えない圧倒的な威圧感を放っていた。


「今度こそ本物ですね……。 悠馬お兄さん、この圧力、2倍に膨れ上がっています!」


「……ふうん、つがいか。 まあ、見栄っ張りもここまで来れば大したもんだな」


 悠馬はポリポリと頭を掻きながら、その二重のプレッシャーを冷ややかに観察する。


 アリスとノーラは、2体の金色鯱が放つ黄金の光彩に目が眩み、どちらが本隊でどちらが囮か判断できない。


 ゆえに、防戦一方へと追い込まれた。


「……くっ、光が乱れて、踏み込みのタイミングが掴めません!」

「悠馬様、指示を!このままでは押し潰されます!」


 焦る2人。


 だが、悠馬はあくびを噛み殺しながら、足元に落ちていた小さな小石を爪先で跳ね上げた。


「アリス、構えろ。 ノーラは、小石が当たった方の左目だけを撃て。……アリスが軽く斬撃を飛ばせば、それで終わりだ」

 

 悠馬が指先で小石を弾く。


 石は、黄金の乱反射を縫うように飛び、一方の金色鯱の眉間に命中した。


「――そこだ」


 悠馬の短い声。


 アリスは大上段に構え待機、ノーラは小石の当たった、対象の左目を氷柱で打ち抜く。


 怯んだ隙にアリスの剣が斬撃を飛ばす、その刹那――金色鯱の黄金の体は真っ二つわかれた。


 黄金の輝きが、ガラスの割れるような音と共に霧散する。

 2体の鯱は、もがき苦しむ暇もなく、ただの真鍮の塊へと成り果てた。


「……終わったのですか?」


 アリスがおずおずと目を開ける。

 そこには、山のような「金の破片」が転がっていた。


「悠馬お兄さん、やりました!見てください、このお宝!これで当分の路銀は心配ありませんね! これでお兄さんを楽にさせてあげられます!」


「……まあ、そう思うよな。」


 悠馬は苦笑しながら、ボス部屋の隅に落ちていた、たった1つだけの「本物の金貨」を拾い上げた。

 

 ――数十分後。 ダンジョン併設の換金窓口。


 アリスは「どうだ!」と言わんばかりのエッヘン顔で、大量の黄金をトレイに乗せた。


  隣ではノーラが、誇らしげに悠馬の方を振り返る。


「……はい、査定終わりましたー」


 窓口の職員が、欠伸をしながらレシートを差し出した。

 アリスはそれをひったくるように受け取り、声を弾ませる。


 「ふふん、さあ見てください! ええと、本日の買取合計額は……っ!?」


  アリスの動きが止まった。


「……アリス、いくらだった?」


 悠馬が後ろから覗き込むと、そこには【合計:480円 税込】という無慈悲な数字が印字されていた。


「……よ、480円?」

 

 アリスの顔から血の気が引いていく。


「アリスお嬢様、何かの間違いでは!? あんなに輝いていたのに、この価格は……!?」


「ああ、それ全部真鍮だから。 1個1円にもならねーよ」


  悠馬が冷たく言い放つと、2人はまるで石像のように固まった。


「……私の……私の頑張りとは……」


「私の氷柱が、最低額硬貨の価値以下……」


 窓口の横で膝をつき、絶望の淵に沈む2人。

 アリスは今にも泣き出しそうな顔で、悠馬のジャージの袖を掴んだ。


「……悠馬お兄さん、ごめんなさい。 私、全然お役に立てなくて……」


「……ったく。 飯代くらいにはなるだろ」


  悠馬は苦笑しながら、ボス部屋の隅でこっそり拾っておいた「本物の金貨」を窓口に放った。


「……これは別だ。 ちゃんと査定しろよ」


「えっ!? ……お、お客様、これは……本物の特級純金! この大きさならば120万円は固いかと!」


  職員の声に、アリスとノーラがガタッと音を立てて立ち上がった。


「「ひゃ、120万!!??」」


 2人の絶叫が、静かな管理局窓口に木霊した。


 アリスは驚愕のあまり、持っていた「480円」のレシートを床に落とし、ノーラは計算でもしているのか、指を激しく動かしている。


「……ゆ、悠馬お兄さん。 120万……120万円、ですよね? それがあれば、あの香ばしい肉が乗った魔法の白米……ギュウドンが、一体何杯食べられるのですか!?」


 アリスが目を輝かせ、悠馬のジャージを激しく揺さぶる。


「……落ち着け。 並盛がだいたい400円くらいだろ。 えーと……3000杯だ」


 「「さん、3000杯……!!」」


 アリスとノーラが、同時に天を仰いだ。

 

「……3000杯。 毎日3食食べても、1000日。 約3年間、牛丼の加護が約束されるというのですか……」


 ノーラが震える声で呟き、膝をついた。

 

「なんという宝物ほうもつ。  あの金貨1枚に、3年分の天国が封じられていたとは……」


「アリスお嬢様……! これで、もうひもじい思いをさせることはありません! 3000杯のギュウドンが、私たちの背後に控えているのです!」


「はい、ノーラ! 私、一生悠馬お兄さんに付いていきます!」


 2人は窓口の前で手を取り合い、まるで救世主でも拝むかのような目で見詰めてくる。


「……拝むな。 あと、3年間牛丼しか食わせないつもりもねえよ。 ほら、早く行くぞ。 美味いもん食いにな!」


 そう言って、悠馬は観覧車がある方角へと向かう。

お読みいただきありがとうございます!


無事に軍資金(牛丼3000杯分)を手に入れたオグリ家騎士団。

悠馬が次に向かったのは、名古屋の象徴的な観覧車が見えるあの場所……。

実績稼ぎの旅は、ここからさらに加速していきます。

果たして次の「美味しい獲物」は何なのか、ぜひお楽しみに!


「名古屋編の続きが気になる!」「実績達成まで応援したい!」と思って頂けましたら、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】からポイントを頂けると励みになります!

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