1話
季節は春
駅前のロータリーを抜け、改札口の券売機で東京行きのキップを購入した。
日本の中枢である東京はSP犯罪者の逮捕率や悪魔の出没率が非常に多いので治安がよくなく、非常にこれから住む街は安全なのか不安である。
……まったく。ある人の紹介で仕事が決まったけど、SPセキュリティーコンサルタントってどんな仕事するんだろうか……。あの人ちゃんと説明してくれてないし。
電車に乗りながら、最近まで連絡を寄越さなかった人に少し腹を立てた。
急に連絡が来たと思ったら、『やぁ!総一君!明後日入社式だから引っ越しの準備など早めにしといてくれよ!?バーイバーイ』って……。
まぁいつもの事で慣れたけど。
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最初は祖父が在籍していた軍隊に入るつもりだっけど、あまりにもSP軍事専門学校の時の先輩がしつこいので折れてしまった。
SP軍事専門学校の時に、チームを組んだり、色々とお世話になって頼れる人だったし、相談にものってもらっていてとても仲がよかった。
『ねぇー!私の会社に入りなよ〜。いいだろう??いいって言ってくれ!!私は総一君の実力買ってるんだよ!!頼むよー!!もう返事は、『YESか、はい』しか受付ない!』って……。
まぁ、はい。と言っちゃったんだけどね。
内心苦笑いである。
先輩こと、内波佳奈さんは二つ年上で23歳。艶のある黒髪の長いストレート、整った顔だち、自己主張の激しいボディ、後輩や仲間達に慕われていて、明るく活発的で頼りがいがある人。
得に印象的なのはあのパッチリとした目だ。くっきり二重で少し吊り上がっていて、キラキラしている。
けど、少し変わった部分や抜けてる所もあり数々の伝説を残している。
しかしそんな彼女はSP軍事専門学校のマドンナ的存在だった。
まぁ楽しい人である事は間違いないし、よく軍人時代に飲みに誘われ一緒にいった。その度に仲間の男達に陰湿なイジメを受けたが……。
まぁそんなこんなで指定された駅に着いたわけだが……。
ホームに降りたらすごい人の数。
ヒャ〜。
こりゃあ荷物抱えて歩くのは大変だな。
「あれ?いないなぁ?」
東口前に着いたのだが、先輩らしい人はおらず携帯をとりだして電話を掛けた。
プルルルー
「……。もし『おはよう!!総一君!!今日もイイ天気だねっ♪朝一番に私にラブコールだなんてそんなに我慢できなかったのかい??もうすぐ東口のロータリーに着くから待っててくれよぅ!?あっ!!ちなみに東口にあるベーカリーは私のオススメだからねっ!!ちなみに私が好きなのはミルキーフランスなんだよ!?あのパンの何とも言えない甘さが堪らないよね!?解るかい!?解るだろぅ!?よしよし!!えっ?何だって!?私の為に買ってきてくれるって?? そんな悪いよ〜!?別に催促してる訳じゃないんだよっ!?じゃっ!もうすぐ着くから待っててくれたまえー!!私のミーールキーーちゃーーん♪ブツ』……」
一方的に会話をされ電話を切れた。
……うん。
何だろ急なこの不安感。
顔を上にあげ東京の空を見て思った。
……婆ちゃん、爺ちゃん。家に帰りたいですと。
しかし、ここまで来てしまったのだから今更帰る訳にいかないので、先輩を待つことにする。
東口のベーカリーに行き、ちゃかりミルキーフランスを買って。
ま、まぁ何だかんだ先輩のお願い?を聞いてしまう俺。
取り敢えず、婆ちゃんに貰ったネックレスを弄りながら先輩の事を待っていた。
◇◆◇◆◇◆
俺、『春咲総一郎』は、今年の冬にSP軍事専門学校を無事に卒業でき、今年の春から社会人になった。
ここまで育ててくれた祖父母には物凄く感謝をしている。
小さい頃に母と父は離婚し、母は双子の姉を連れて姿を消してしまった。
数年後、日本に大量の悪魔が出没し、父は俺を守る為に悪魔と戦い、その時に致命傷を負ってしまい病院に運ばれたが死亡。
その時の記憶は今までも残っている。
病室には他の患者も大勢いてあちらこちらで、悲鳴や苦しそうに叫ぶ声が聞こえる。
血ヘドを吐きながら歎き苦しみ人。
全身火傷で皮膚が焼き爛れるてる人。
体の一部分がない人。
その時まだ小さかった俺はまるで地獄にいるような感覚でその光景を涙を流しながら震えていち。
怖かった、凄く怖かった。
でも後からきた祖父母に抱きしめられ、「大丈夫、大丈夫だよ。私達のお家に帰りましょう」と優しく声を掛けられ、抱きしめられながら祖父母の家に向かったのを覚えている。
それから一緒に暮らし始め、祖父には厳しく鍛えられ、祖母は優しく可愛がって貰った。
祖父、『春咲洋三』は元特殊部隊の隊長で『三段』のSPランク保持者。
祖父との訓練はとても厳しく、たびたび逃げだした俺は、愛と言う名のゲンコツを貰っていた。
今年で70歳っていう年齢にも関わらず今でも一緒に訓練し、「まだまだ若い者には負けん!」意気込んでいる。
元気のいい爺ちゃんだ。
祖母、『春咲美由紀』は
『一級』のSPランク保持者で、医療関係の仕事をしていた。
訓練で怪我した傷をよく婆ちゃんのSPで治してもらってた。
本当に優しくいつも俺に甘い祖母は、いつも祖父に怒られてる俺を庇ってくれり、逆ギレし祖父を逆に怒鳴ったり。
逆ギレされた時に、オロオロとした祖父表情は今でも忘れられない。
そんな優しい祖母でも一回揉めたことがあった。
俺はSPランクが中学生の時で、すでに『初段』で高校に進学しなくてもSP軍事訓練機関専門学校に入隊出来るので、するつもりだった。
しかしSPランクが『初段』以上の保持者は例え新米の隊員でも戦場に駆り出される事がある。そのぐらい、日本の治安が悪く、悪魔の出没率が多かった。
その時の俺は力に飢えていたのか、それとも無鉄砲だったのか解らないが早く戦場に立ちたかった。
しかし、祖母はどうしても許してくれず、言い争いになってしまい
「私は絶対に認めません!!争い事になんてまだまだ関わらなくていい!!わざわざ死に行くような真似をするなっ!!」
と初めて、物凄く怒られてしまい祖父に何とか宥めてもらい、話し合いの結果、高校卒業後に入隊する事になった。
その後、祖母の部屋に呼ばれ
「総一はまだまだ子供なの。そんなに焦らないでもっと命を大切に考えて頂戴。それに貴方の心はそこまで強くない」と涙を流しながら説得してくれた。
その時に俺は祖母からネックレスを貰い、お守りにしている。
確かに今考えたら昔の俺は馬鹿だったと思う。
時間とは、とても大切な物で高校生の3年間で本当に考え方が変わった。
高校でもSPやBFの訓練があるが、
祖父との訓練で命懸けの戦いとは何たるものかを、訓練しながら祖父から教えてもらった。
高校を卒業し、SP軍事専門学校に入隊して卒業までの3年間は本当に苦しかった。
厳しい訓練、SP犯罪者や悪魔との命懸けの戦い、さっきまで隣で笑い合ってた者が簡単に命を落とす。
そんな命のやり取りなんて14歳で堪えれるはずかない。
祖母か説得してくれた理由がこの時に解った。
◇◆◇◆◇◆
プップー
「そーいちくーん!!」
クラクションの音がなり思考を中断させ、ロータリーの方向にむくと、黒いセダンが一台停まっており助手席の窓から、先輩が素敵な笑顔振り撒きながら手ブンブンを振っていた。
多分これから始まる仕事も命懸けの仕事だとそんな予感がする。
沢山の血がながれ、沢山の人が亡くなる。
そんな悲しい現実を実現させたくない。
手を強く握り締め、先輩の元へと足を向けた。




