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迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
関わる者としての時間
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日常 双剣と拳

前編を18時にアップしています。そちらを見ていない方は先にそちらを見て下さい。


「困ったことになったな」

「本当に困っていますか? 嬉しそうに見えるのは気のせいですか?」


 トリスとダグラスは商会にある中庭に移動していた。ギードの発した真剣勝負をするためだ。トリスとダグラスは中央から東側の場所に待機し、ギードとラウンツは反対の西側に待機していた。真剣勝負はあと少しで昼の鐘が鳴るのでそれを合図に行うことになった。


「まあ、死ななければ後で治療するから気楽にいこう」

「気楽と言いますが、私は一度ラウンツに負けています」

「だろうな、前のダグラスの実力なら負けて当然だ」

「ここ数ヶ月で筋力は戻りましたが実力は上がったと思っていません。『身体強化の魔術』を使えば勝てると思いますがそれで勝っても自分の実力ではない気がします」


『身体強化の魔術』を使えばダグラスはラウンツに勝てる自信があった。しかし、それでは実力で勝ったことにはならないとダグラスは思っていた。以前ラウンツに負けたことを気にしておりできればそれを乗り越えたいと思っていた。


「実戦なら手段を選ばず最善の手を使うのは普通のことだと思うが、純粋な実力で勝ちたいと思っているんだな?」

「はい。私的な理由で申し訳ないのですが……」

「気持ちは判るから俺から助言できることは一つだ。あの男は俺よりも弱い」


 トリスは一言だけダグラスに助言をし、後はダグラスの好きにさせることにした。


「義父様、このままでいいのですか?」

「どう言うことだ。お前が勝ってあの男の見る目のなさを証明する。それでいいだけだろう!」

「それは必然だよ。そうじゃなくて取り引きだよ。義父様が決めた取り引きを上手く利用しなくていいの? 僕が勝ったときに取り引きを有利になるように持ちかければ利益に繋がるでしょ」


 ラウンツはギードの義息子だけあって商売のことにも精通していた。ラウンツはトリスとギードの取り引きを詳しくは知らないが、一度ギードが承認した取り引きなら今後は利益になると読んでいた。だからこのまま白紙にするのは惜しいと思いギードに提案した。


「確かにあの取り引きは捨てがいた。勝負に勝ったらこちらに有利な条件で契約するか……」


 ギードが呟いたと同時に昼の鐘が鳴った。ギードは勝負を行う前に事前にそのことを組み込むことを決め中庭の中央へ向かった。


「勝負を始める前に確認することがある」

「何だ?」


 ラウンツとダグラスが対峙するとギードは勝負を始める前にトリスに事前確認を申しでた。


「この勝負で負った怪我に関しては自己責任とする。勿論死んだとしてもそれは事故として扱う。保障などは一斉しない。それでいいか?」

「問題ない。腕がなくなろうが、足が折れようが文句は言わない」

「潔いことだ。それと儂のラウンツが勝ったらある条件を飲んで貰う」

「条件?」

「ラウンツを侮ったことに対する謝罪として、時計の取り引きに関して儂が出す条件を全て飲んで貰う。いいな!」

「そんなことなら、ダグラスがもし負けたら時計の設計図と権利をくれてやる。好きにしろ!」

「はぁ、貴様正気か?」


 トリスはダグラスが負けたら時計の設計図や権利を全てギードに譲ると宣言した。トリスの決然とした態度をとりダグラスの勝利を疑っていなかった。トリスのその態度にギードは一抹の不安を覚えた。


「返事はどうした? 急に自信がなくなったのか?」

「…………いいだろうその条件を呑む。後悔するなよ」

「ならさっさと始めるぞ」


 トリスに促されダールはダグラスとラウンツに目を向けた。二人は既に準備ができており二十歩ほど離れて対峙していた。ダグラスは素手で構えを取り、ラウンツは双剣を構えていた。ラウンツは戦闘スタイルは細剣(レイピア)の二刀流だ。二本の細剣(レイピア)を巧みに操り、斬撃と刺突で相手を追い詰めていく。


「では、このコインが落ちたら勝負開始だ」


 ギードはコインを指で弾いた。コインは回転しながら空中を舞った。




 ダグラスは不思議な心境だった。対峙する前はあんなに緊張していたのに、ラウンツが双剣を構え対峙すると不思議と心が落ち着いた。目の前にいるラウンツが小さく見え、持っている双剣も脅威には感じなかった。無意識で『身体強化の魔術』を使用したかと思ったが魔術は発動していなかった。


(どうしてラウンツに脅威を感じない。あんなに強いと思っていたラウンツが弱く見える……)


 そう思ったところでダグラスはトリスの言葉を思い出した。『あの男は俺よりも弱い』この言葉が全てだった。ラウンツはトリスよりも弱い。トリスの腕力は桁違いで片手なのに両手持ちと同じ重さと速さの斬撃を繰り出す。突きも斬撃と同じで片手とは思えない威力だ。


 片手は両手持ちよりも攻撃回数は多くなるがその分威力が落ちる。それなのにトリスの二刀流はそれが不利がない。どんな身体構造をしているのか稽古をするたびに不思議に思っていた。


 そんな常人離れしたトリスと稽古一番行っているのはダグラス本人であった。そう考えるとラウンツは取るにたらない存在だ。斬撃も刺突も鈍く、軽く、トリスの実力の半分にも届いていない。そんな相手に後れを取るほどダグラスは弱くはなかった。


 ギードの投げたコインが地面に落ちる。先に仕掛けたのはラウンツだった。ラウンツは右手を振り上げダグラスの左肩に斬りつけた。ダグラスが右に除けようが後ろに避けようがすぐに左手の剣で追撃をする。ラウンツのもっとも得意な戦法だ。


 だが、ラウンツの予想は大きく外れた。


 ダグラスはラウンツの右側の斬撃を左拳で払った。ダグラスの拳はラウンツの剣の腹に当たり斬撃が逸れた。ダグラスは剣を払ったと同時に右足で踏み込み、ラウンツの左手首を右手で掴んだ。自分の攻撃が全て防がれたことにラウンツは動揺したがそれ以上の思考はすることができなかった。


 ダグラスはラウンツの左手を掴んだまま懐に入り込み、身体のバネを使ってラウンツを投げた。ラウンツは受け身も取れずそのまま地面に全身を打ち付けた。


「かはぁっ」


 ラウンツの口から短い悲鳴が漏れ、ラウンツはそのまま気を失った。まさに一瞬で勝負がついた。ギードは目の前の光景が信じられないのか、目を見開き口を大きく開けたままの状態で固まっていた。


「帰るぞ」


 勝負の決着がつきトリスはダグラスに声を掛けた。敗者に掛ける言葉はない。ダグラスはギードに軽く会釈をして何も言わずにトリスと中庭を後にした。




「ダグラス、困ったことが起きたぞ」


 中庭を出たところでトリスがダグラスに話しかけてきた。


「どうかされました?」

「以前、ベネットと買い物した際に選んだ贈り物が無駄になった。今日の取り引きに使う筈だったのに……」


 トリスの言葉を聞いてダグラスはあることを思いだした。ギードの愛娘がベネットと同じ年齢だったことを。トリスは今後の付き合いのために用意した物が無駄になったことと、せっかくベネットに選んで貰ったことが無駄になって困っていた。


「このまま捨てるのは勿体無い。かといって売るのもベネットに悪い気がする。クレア達に渡すのがいいのか、それとも次の取り引きに使うべきか…… どうしたらいいと思う?」

「くっくっく、あはははははぁ」


 トリスの悩みを聞いてダグラスは声を出して笑ってしまった。自分が仕える主人には本当に面白い。強大な財力と実力を持っているのに庶民のような考え方をする。使用人のことを大事に思ってくれる人に仕えることができて本当に良かった実感した。


「失礼しました。トリスさん、今回の取り引きは私の所為で失敗したことにしましょう。そして、ベネットには私から謝るので贈り物をみんなに渡して下さい。勿論料金は私が出します」

「料金は払って貰わなくてもいいが、ダグラスの所為にしていいのか?」

「ええ、構いません。それよりも何か食べに行きませんか? お腹が空いてきました」

「そうだな。何か食べて帰るか? 何か食べたい物があるか?」

「この先に美味しい料理を出す店があります。以前の職場の同僚から教えて貰ったところで何度か行ったことがあり味は保障します」

「そっか、ならそこへ行くか」

「はい!」


 ダグラスが案内で二人はその店に足を運び料理を堪能した。ダグラスの言葉は正しく二人は夕食が食べられなくなるまで料理を食べ大いに満足した。しかし、、せっかくフレイヤとローザが用意した夕食が食べられず二人は揃ってフレイヤとローザに怒られた。


今年最後の投稿を読んで頂きありがとうございます。


誤字脱字の指摘や感想などを頂けると嬉しいです。

評価やブックマークをして頂けると嬉しく励みになりますのでよろしくお願いします。


過去の投稿もちょくちょく修正を行っています。

設定などは変えずに誤字脱字と文章の校正を修正しています。


それでは良いお年を

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