日常 犬と猫
この章は過去と日常を短く書いていく予定です。
先週は上手く書けず没にしたので投稿が遅れました。
ちなみに年末年始休暇に入りましたので投稿は少し早めにしていきたいと思っています。
買い出しの帰り道、クレアは一匹の犬を見かけた。道具屋で備蓄品を買い足し、帰ろうとしたところ弱々しい声が聞こえた。声が気になり周囲を探索したところ狭い路地に一匹の子犬がいた。
クレアが近づいても子犬はうずくまり小さく声を上げるだけで逃げ出すことはなかった。いや、逃げるほどの体力がないほど衰弱していた。クレアは子犬を抱き上げた。子犬は抵抗することなくクレアの腕の中で大人しくしている。抵抗する気力もないのだ。クレアはそんな子犬に同情したのか子犬を抱いたまま急いで家に帰った。
「それで家に連れて帰ったのか……」
犬の容態を診たヴァンが呆れた様子で子犬を拾った経緯をクレアから聞いた。ヴァンは村で狩猟をしていた漁師から動物の手当について学んだ経験がありその経験から子犬を手当てした。
子犬に大きな怪我はないが、栄養不足による衰弱が激しいので水に塩と砂糖を混ぜた物と消化の良い麦粥を与えた。このまま看病と栄養補給をすれば元気になると見込んでいる。
「だって見捨てることができなかったんだもん」
「だからって拾ってきても飼えないだろう? 捨てるにしても一度情が移ると捨てるときが辛いし、犬にも辛い思いをさせるだ」
「そうだけど…………」
ヴァンはクレアの軽率な行動を非難していた。クレアも自分のとった行動が軽率だと判っている。しかし、路地で弱々しく鳴いていた子犬を見つけたときはただ助けたいと思い、後先を考えずに連れてきてしまった。
「二人とも過ぎたことはそれくらいにして、それよりも子犬の今後を考えよう」
二人の言い争いをフェリスが止めに入った。フェリスもクレアの行動もヴァンの指摘も十分に理解し、過ぎてしまったことよりも今後について考えることを提案した。
「もう一度捨てるのは人道的にどうかと思うので、体力が回復するまでは面倒をみて里親を探そう。それまでこの家で面倒をみるので一度トリスさんの許可を貰おう」
「許可してくれるかな……」
「トリスさんって動物好きなのかな?」
フェリスの言葉にクレアとヴァンは不安を覚えた。動物を苦手とする人は少なからずいる。部屋や衣類の汚れを気にする人。幼少期に被害にあい毛嫌いする人。体質的に合わない人など様々な理由がある。この家の持ち主であるトリスがそれらに当てはまる場合は間違いなく許可はおりない。
「他の人も苦手だったりすると困るよね」
「ママとローザさん、ダグラスさんは大丈夫! 動物を飼いたいって話をしたことがあるから」
「ザックとロバートも大丈夫だ。動物を手懐けて使役する話をしていた」
「クレアとザックの話が本当ならやはりトリスさんがどう判断するかそれ次第だね」
結局トリスに話し判断を委ねることになった。今はこの家にはクレア達しかいない。トリスとザック、ロバートは朝から出掛け、フレイヤとローザ、ダグラスは夕食の買い出しに出掛けていた。唯一家にいたベネットは子犬をみるなり目を輝かせ、進んでヴァンの手伝いをしていた。
結局現状では答えがでないので皆が帰ってきたときに話し合いをすることになった。
「トリスさんが動物嫌いかどうかは知らないわ」
「私も知らない」
「残念ながら俺も知らない」
「右に同じく」
「聞いたことありません」
トリスを除く全員が帰宅したのでクレア達は皆に子犬の話をし、トリスが動物嫌いかを聞いたがフレイヤ、ローザ、ダグラス、ザック、ロバートの全員が知らなかった。
「それにしても子犬を拾ってくるなんて子供らしいと言えば子供らしいけど……」
「ローザ、攻めるようなことは言うな命を大切にして尊ぶことは大切だ」
「ダグラスの言うとおりだ。それにロバートが使役できるかもしれないし、そうなったら大手柄だ」
「ザックさんは無茶を言わないでください」
子犬を拾ってくるなんて子供らしいことをするクレアにローザ達はいろいろと言うが、やはり小さな子犬が可愛いのか特に叱責などはなかった。唯一気になるのは母親のフレイヤが何も言わずに子犬をずっと見つめていた。
「フレイヤ、子犬が気になるのかい?」
「――な、何でもないわローザ。それよりもこの子が回復するまで面倒をみるならトリスさんにお伺いをたてる必要があります。ザックさん、トリスさんはいつ帰って来るのですか?」
「今日は戻らないと思うよ。また、ガゼル様に捕まったので一晩飲み明かすと言っていたから」
「そうですか……」
ガゼルはこの都市に赴任するようになって妻のティナとともにトリスを引き連れて飲みに行くようになった。しかも貴族が使う高級店ではなく、庶民が使用する酒場に行くのだ。領主の頃は周りの目があるために控えていたがこの都市に移り住むようになり、娯楽の一つとして飲み仲間兼護衛としてトリスとともに都市の酒場を巡っていた。
「では、明日以降にトリスさんにお願いしましょう。子犬が体力が回復するまで飼わせていただけるようお願いしましょう」
フレイヤがそう言い子犬の今後についてはトリスの意向に従うこととなった。
翌日、クレアとヴァン、フェリスが交代で看病した甲斐があったのか子犬は立てるまで回復した。まだ歩くのはおぼつかないが自分の足で立ち食事をとることができた。このまま手当を続ければ無事に回復できると目処がたったと喜んでいるとトリスが帰ってきた。
「非常食用の備蓄か?」
クレアが子犬を抱えてトリスに許可を取ろうとすると、トリスから思わぬことを言われた。全員が揃っている場でとんでもない発言をするトリスに一同は引いた。
「大陸の北東では犬を使った料理があるがそれの食材か? それならもう少し肥え太らせた方がいいぞ」
「た、食べないよ。元気になるまでここに置いて欲しいの!」
「本気にするな、冗談だ」
トリスはそう言って子犬に手を当て、子犬に異常がないか魔術で確認した。
「衰弱しているだけだな。このまま水と消化のいい食べ物を与えれば元気になる」
「あ、ありがとう。元気になるまでここで飼っていい?」
「それは構わないがお前やフレイヤ、フェリスは平気なのか?」
「どう言うこと?」
クレアトリスに聞き返しフレイヤとフェリスも首を傾げた。
「お前達は平気なんだな。クレアの父親とフェリスの大伯父は犬が苦手だったんだ」
「「「「「「「えええっ!」」」」」」」
トリスの発言に全員が驚いた。まさかこの都市で伝説となっている人物達が犬が苦手だとは驚きであった。
「二人とも小さい頃に犬に追いかけられたらしくそれ以来犬が苦手だと言っていた。犬型の魔物を討伐するのは問題はないが愛玩動物として可愛がるのは抵抗があったみたいだ」
「意外な事実です」
「ダグラス、人間味も何もあいつらだって人の子さ。好きな物や嫌いな物くらいはあるさ。まあ、そのことは置いておいて。フレイヤは犬を飼っていいのか? 野良猫に餌をあげているだろ? 子犬と喧嘩しないか?」
「し、知っていたのですか?」
「ああ、鼠除けだと思っていたんだが、その様子だと愛玩だったのか?」
トリスは発言にフレイヤは顔はみるみる赤くなった。秘密にしていたことが実はトリスにバレていてしかも娘や同僚達の前で暴露された。
「ママっ、それ本当?」
「フレイヤ、あんたそんなことをしていたのかい」
「――出来心だったのです。はじめはお腹を空かせて迷い込んだ猫に餌を与えたんです。そしたら鼠を捕ってくれるのでつい……」
娘と同僚から呆れられフレイヤは小さくなった。クレアが犬を拾ってきたときに叱責もせずに子犬をみていたのは野良猫と喧嘩をしないか心配していたのだ。
「まあ、自分達で動物の世話ができるなら好きにすればいいさ。さすがに繁殖力の高い生き物は駄目だが犬や猫程度なら飼ってもいいぞ。勿論世話は各自に任せるのと下の躾はちゃんとするように」
「はいっ!」
「はい……」
娘は元気よく答えるが母親は恥ずかしく小さな声で返事をした。
その後クレアの献身的な介護で子犬は回復し名前をつけて飼うようになった。フレイヤが餌をあげていた猫も正式に飼うのが認められたので二人はそれぞれ名前をつけた。犬の名前はルイ。猫の名前はナン。新たな同居者がまたこうして増えた出来事だった。
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