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迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
聖者としての時間
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故郷スーサ 病の原因 肆

本日4回目の投稿です3回目の投稿がうまくいってホッとしています。

「ムージ、ファリア殿は何処に行った。」

「今朝、用事があるからと山の方に出かけると言っていただ。だが夜には戻るとも言っていただよ。」

「もう、何で一緒について行かなかったのよ!ファリアさんこの辺の地理は知らないでしょ。もしかしたら迷子になっているかもしれないじゃない。」


マルクの問いにムージは今朝ファリアとの会話を思い出しながら答えた。それに不服だった妻のスミはムージを責め立てる。


「だが、そうなるとこの辺りを捜索する必要がある。一旦宴は中止してファリア殿を捜索する必要がある。幸い人手は足りている。ムージ皆を集めてくれ。」

「わ、判っただ村の男衆に声をかけてくるだ。」


マルクに言われムージは急ぎ男衆を集めに村の広場に向かった。


もうすぐ日が暮れる。宴は日が暮れてから行うとファリアに伝えてあるがこの時間になっても戻らないのは何かあったと考えるべきだ。この辺りの地形に詳しい者なら心配する必要はないがファリアはまだこのムーサに来て数日しか経っていない。山に行ったのなら何かあったと考えるべきだ。マルクは恩人に何かあったのではないかと気が気ではいられなかった。


ムージが呼びかけ村の広場には村の若い男衆が集められた。マルクは皆に集めた理由を話すと若い男衆だけでなく様子を伺っていた女、子供、老人達も皆参加すると言い始めた。ファリアはここ数日で村人達の信頼を得ていた。寄生虫の影響で苦しんでいた患者やその家族にとってファリアは聖人として扱われていた。


ファリアとマーサが見つけた治療方法で多くの命が助かった。しかもその薬を作る際に使用された材料の多くはファリアが所持していた物だ。薬の治療方法の手間賃と薬の材料費を本来なら払わなければならない。だがファリアはエドモスのから昔に受けた恩があるのでそれで清算したと言い金銭を全く受け取らなかった。ファリアとエドモスの間に何があったかは知らないが亡き知人の故郷のためにここまでしてくれるファリアを村人達は感謝していた。


マルクは意気込んでいる女、子供、老人達を何とか宥め最初は若い男衆達だけで山に入ることにした。それにもしファリアと行き違いになった時のことも考え伝令役に誰かは村に残るべきだとも説明した。その説明に居残り組の村人なんとか納得した。


そんなひと悶着が行われこれから山に入ろうとした時、ファリアが村の裏街道に姿を現したと報告が入った。報告を聞いたマルクは急いで街道をのんびり歩いてくるファリアの元に駆け付けた。


「ファリア殿、大丈夫ですか?」

「・・・!?。この通り無事ですが皆さんどうかしたのですか?」


ファリアはマルクが引き連れている大勢の男衆に目を見張り、遠くの村の入り口に目を向ければ何やら村人達が大勢集まっていた。


「ファリスさんが帰って来なかったから皆心配してたんだ。こんな時間までどこ行っていたのけ?」

「そうでしたか。それはご心配おかけしました。少し山の中を探索していたのです。理由はとりあえず村に戻ってからお話しします。」


ファリスはマルク達に謝罪し村に戻った。



ファリアを引き連れて村に戻ったマルクは村人にファルスが無事に戻ったことを伝え予定通り宴を開いた。宴は村の広場で行われ簡易的な机や椅子が置かれていた。机の上には村の女衆が作った料理が所狭しと並べられ飲み物の酒も用意されていた。


準備が終わったところでマルクが乾杯の挨拶をした。日頃の村人への労働の感謝と今回病を乗り切ったこと。残念なことに一人の犠牲者が出てしまったことへの追悼。そして病の治療方法を見つけたくれたファリアへの感謝を込めて宴を開始した。


宴が始まると大人達は酒を飲み始め子供達は料理に群がった。普段はあまり食べることが出来ないご馳走に子供達は我先にと料理を取り始めた。(に取り付き始めた)


ファリアの周りには多くの人が訪れていた。ここ数日で知り合ったマルクの始めその妻のネル。ムージに妻のスミ。マーサと息子夫婦など他に今回の病の関係した人々が次々にお礼を言いに酒を飲み交わしに来ていた。

そんな楽しい宴の中話題はどうしてもファリアが一人で山に向かったことについて話が出てきた。


「なんだって。あんた川の上流にある滝壺まで行ったのかい?」

「はい。そのせいで帰ってくるのが遅くなりました。」


ファリアの話しを聞いて皆驚いた。朝に山に行くとは言ったが皆はせいぜい入り口辺りで採れる薬草を摘みに行くものと思っていた。それなのにファリアが向かったのは山の奥にある滝壺だった。


このスーサ領の北側には山脈がそびえ立っている。山裾からには川が流れてきておりその川の水を使ってスーサ領では田畑や果樹を育てている。良質の水は山の多くの恵みを含んでおりこのスーサ領では無くてはならない物であった。


ファリアが向かった滝壺は山に慣れた者でも半日はかかる川の上流にある。村人でも滅多に行くことは無い所であった。そんな辺鄙な場所にファリアは一人で行き一体に何をしてきたのか皆疑問に思い、ファリアはそれに答えるように話しを続けた。


「今回病の原因は寄生虫が魔獣化したせいでした。本来魔獣化するのは猪や狼、時には鷹などと言った獣がなります。虫などが魔獣化した例はあまり聞きませんが全くないわけではありません。」

「確かに虫が魔獣化する話はあまり聞きませんが無い事は無いみたいです。王都から来る情報には他の国で虫が魔獣化して田畑が深刻な被害を受けたこともあったとありました。」


ファリアの話しにマルクも同意した。領主として王都から来る情報には様々なことが報告される。特に作物などに影響を与えることについてはスーサ領にとっても他人事ではないので覚えておくようにしていた。


「私は寄生虫が魔獣化するなら何か理由があると思いその原因を探っていました。治療している感染者の人に話しを聞くと川の傍で遊んでいたり、川で仕事をしていた人が多かったのでここの川に何か問題があると思っていました。」


ファリアはそう言うと鞄から南瓜ほどの大きさがある石を取り出しテーブルの上に置いた。


「これが原因だと思います。」「これが要因の一つだと思います。」

「これは魔鉱石ですか?」

「はい、皆さんが良く使う魔鉱石とは違う、B級品以上の代物です。」


スーサ領でも魔鉱石は使われる。だが大体使われるのは小さな火をつけたり、明かりを灯したりする最低品のF級かE級が殆どでマルクでもC級以上の物は見たことが無かった。

ファリアがテーブルに置いた物は少なくともB級品で大きさも通常の物よりも大きい。


「川の上流にある滝壺にこれが沈んでいました。この魔鉱石がどうしてそこにあったかは判りませんが恐らくこの魔鉱石の影響で寄生虫が魔獣化したと思います。魔鉱石はその名の通り多くの魔素を含んでいます。この魔鉱石から含まれている魔素が原因で寄生虫などが魔獣化したと思います。」

「では今後はこのようなことは起きないのですか?」


マルクの問いにファリアは静かに頷いた。このような希少な魔鉱石がどうして滝壺に落ちていたかはわからないが原因の可能性であることは予想できた。魔鉱石が取れるのは『塔』の内部かその周辺だけだ。自然界に魔鉱石は存在しない。


仮にあったとしてもトリスが見つけた魔鉱石のような質の良い物は今まで発見されたことは無い。普通に考えると何かの原因で滝壺に落ちてしまったと考えるのが普通だ。


「この魔鉱石はマルクさんにお渡しします。後何日かすれば王都からの調査団が来るはずです。その時に調査団の方に今回の寄生虫に件とこの魔鉱石のことを報告してください。」

「良いのですか?このような希少な物を譲って頂いて。」

「代わりに幾つかお願いがあります。」


ファリアの願いに周囲の緊張が走った。今まで薬の代金や治療費を請求されなかったファリアが出す願いとはいったい何なのかマルクを含む周囲の固唾を飲んでファリアの願いの内容を聞いた。




スーサ領はファリアが訪れ寄生虫の病から村人が回復してから三ヶ月、九十日が経過していた。スーサ領は既に秋が訪れおりもう直ぐ冬が来る。畑や果樹に実った作物は全て収穫し村の貯え以外は全て王都やダリスに出荷していた。


夏に起きた病を除けば今年も穏やかに過ごせた一年だった村人は日々の生活を振り返っていた。そんな中夏から今日まで村に滞在していたファリアは旅立つ準備をしていた。ファリアの旅立つことは既に決まっていたことであり、感謝の宴の際にファリアが出した願い事だった。


ファリアが言った願い事は三つ。

一つは冬が訪れる前まで逗留を許可して欲しいこと。

一つは逗留中はマーサから薬の作り方を学ばせて欲しいこと。

一つは恩人を墓に埋葬したい。できれば日が良く当たる場所がいいとのこと。


この三つをファリアは提示してきた。マルクやマーサはもちろん了承し、村人たちも大いに歓迎した。中には冬までと言わずこのスーサ領に骨を埋めて欲しいと懇願する者もいた。


ファリアはスーサ領にいる間は昔エドモスが住んでいた家で生活をしていた。管理はスミが行っていたが二十年間誰も住んでいなかったので至る所が痛んでいたがファリアは自分で直せるところは直し致命的な欠損部は村の大工に直してもらい生活をしていた。


家の問題が片付くとファリアは早速マーサのところに通い薬の調合について指導を受けていた。ファリアは薬の調合はできるが技術が拙かった。今まであまり薬を調合したことが無かったのでマーサに教えを受けながら薬の調合を一から学んでいた。特に病の薬に関することを重点的に教えを受け冬が来る前にはそれなりの腕にはなっていた。


マーサのところで薬を学ぶ以外にもファリアはスーサ領で仕事をしていた。子供でもできる単純な作業を村の子供達と行い、収穫期には力仕事が数多くあったのでファリアは率先して仕事をこなしていった。


スーサ領に王都からの調査団が来た時もファリアはマルクとマーサと共に調査団との会合にも参加した。調査団も最初はマルクとマーサの報告を聞き最初は半信半疑だった。寄生虫が魔獣化するなど前代未聞のことでさらにそれを解決したのがどこの馬の骨とも知らない旅人が解決したなどと報告されても調査団も虚偽報告だと疑った。しかし調査団の一人にマーサの血縁者のメアリーがいた。


メアリーは幼い頃からマーサに薬師として育てられ十五歳になると王都の学園に入学した。学園では田舎者と揶揄われない様必死に勉強しその甲斐があって王都の国が経営する機関に就職することが出来た。今回故郷の凶報を聞き自ら調査団の一員に加わり王都からスーサ領に来たのだ。


メアリーは若いながら優秀であり、そのメアリーに薬の知識を教えたマーサが虚偽報告などする筈が無いとメアリーは調査団に力説した。それに物証として提出された魔鉱石の存在も大きかった。地方の領主が所持しているには不相応な高品質な魔鉱石だ。これを提示した時は調査団も驚き報告の内容が正しいものだと信じた。


結果、調査団は今回のスーサ領で起きた疫病に関しては寄生虫が魔獣化したために起きた事故として王都に報告することになった。魔鉱石については証拠の品として調査団が王都に持っていくことになり、その代わり今回の疫病で被害などを考慮してスーサ領は今年と来年の税を例年の七割のみ納める事で合意することになった。


これについてはマルクは大いに驚き魔鉱石を発見したファリアに大いに感謝した。そうして穏やかで楽しい日々が過ぎ、収穫際の数日後ファリアはスーサ領を後にした。



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