州都弾丸行四日目にゃん
○帝国暦 二七三〇年〇六月〇三日
○州都オパルス 城壁門
翌日、心配していた傭兵団の追撃もなく朝の内に州都の城壁門に到着した。
「いらっしゃい」
州都オパルスの冒険者ギルドのギルマスであるフリーダが自らが出迎えてくれた。
門の傍らには縄でぐるぐる巻きにされた守備隊の男がふたり転がされている。
「プリンキピウムの冒険者ギルドより、荷物を運んで参りました!」
デニスがやや緊張気味に報告する。
「ご苦労様、詳しいことはあっちで聞くわ」
冒険者ギルドのある方向を指差す。
「それでこの馬車は何なの? 軍用だってこんなに立派じゃないわよ、それに今回は全員、馬に乗って出発したってデリック様から聞いていたけど」
「途中いろいろ有ったんだよ、なあ、マコト?」
「にゃあ、そうにゃん」
オレは幌の上からチャドの言葉に頷く。
「するとこの馬車はネコちゃんのなの?」
「にゃあ、荷物が増えたから仕方なく馬車を出したにゃん」
「いくら冒険者でも普通はここまで荷物は増えないわよ」
「今回は格納できない、かさばる荷物だから仕方ないにゃん」
「らしいわね、まずはギルドに行きましょう、私も乗せてね」
フリーダを乗せて馬車を出す。
「にゃあ、城壁門で捕まってた守備隊の人は何をやったにゃん?」
「ああ、あいつらは守備隊の偽者なの、門前であなたたちの荷物を奪うつもりだったみたいよ」
「それでフリーダが迎えに来てくれたにゃん」
「そういうこと」
「しつこいヤツらにゃんね」
「ネコちゃんたちがヤツらを追い込んだから仕方ないわ、まさか傭兵団を丸ごと生け捕りにされるなんて思ってなかったでしょうから」
傭兵団の情報を既にフリーダが知ってるのはデニスが通信の魔導具で連絡を入れていたからだ。
隠れて使っていたからオレも知らん振りをしていた。
「にゃあ、その傭兵団からの追撃はないにゃん?」
「既に領主様が話を付けてるから心配いらないわ」
「領主様も絡んでるにゃん?」
「王国法では、領主様に通達せずにその領内で傭兵団を活動させるとそれだけで犯罪行為になるの、いまごろ団長さんは頭を抱えてるんじゃない?」
「今回のことは、そいつらの自業自得にゃん、オレたちは降り掛かる火の粉を払っただけにゃん」
「そうよね、まずは荷物を受け取るからこのまま馬車を倉庫に回して」
「了解です」
チャドが馬車を操り冒険者ギルドの倉庫に向かった。
○州都オパルス 冒険者ギルド 倉庫
州都の冒険者ギルドの倉庫に直行して、まずは依頼を完了させるべく預かっていたコンテナを出した。
「はい、確認しました」
「ありがとうございます」
受領証をデニスがもらう。
これでオレたちには報酬が支払われる。
仕事が終わったのでオレたちは現地解散だが、明日の午前中にもう一度集まることにした。
犯罪奴隷の売上を分けるからだ。
「では、また明日まで、ごきげんよう」
「じゃあ、また明日ね」
今回もポーラは両親が身を寄せてる兄の家に行き、レベッカも泊めてもらうそうだ。
「明日な~」
チャドはまずは、早速、馴染みの飲み屋に行くらしい。
「私は数日こっちで仕事だわ」
ややゲンナリのデニスは冒険者ギルドの建物に入って行った。
オレはデニスと入れ替わりで出て来たラルフに先導されて別の倉庫へと馬車を移動させた。
フリーダも付いて来る。
「マコト、まずは盗賊と殺し屋を下ろしてくれ」
「にゃあ」
ラルフの指示に従って最初に捕まえた一〇人の盗賊と、昨日捕まえた八人の殺し屋の入った箱を魔法で下ろす。
装備品はギルドでは扱わないので、これも明日現物を皆んなで分けることにする。
「傭兵たちと魔法使いのおっさんもここに降ろしていいにゃん?」
「それはもう一つ隣の倉庫にお願いね」
フリーダが奥の扉を指差す。
金属製の大きな扉が開く。
「にゃあ、先にプリンキピウムで売れなかった獲物を出してもいいにゃん」
「コンテナの他にもまだ獲物があるの?」
「にゃあ、買い取り拒否されまくりだからいっぱいあるにゃん」
「マコトシフトでも対応できなかったからね」
リーリがプリンキピウムでのことをバラす。
「ネコちゃんの持ってくる量だと普通は対応できないわよ」
「マコト、それはこっちに頼む」
以前も納品に使った五メートル四方の磨き上げられた黒い石で出来た立方体だ。
「にゃあ、またこの魔導具に出せばいいにゃん?」
「この前と同じ要領だ」
オレの格納空間から魔導具の中にプリンキピウムで買い取り拒否だった獲物たちを直接放り込んだ。
「おお、これはスゴいな、買い取れるが精算は明日全部一緒でいいか?」
「にゃあ、構わないにゃん」
隣の倉庫に傭兵たちと魔法使いのおっさんの入った箱を全部下ろした。
「身代金の交渉は私に一任してもらっていいのかしら?」
「にゃあ、全部フリーダにお願いするにゃん」
「わかったわ、悪いようにはしないから任せて」
「にゃあ、助かるにゃん」
「気にしないで、ギルドの売上だって掛かってるんだから頑張るわよ」
「にゃあ、オレたちの運んで来た何が狙われたにゃん?」
「本当は秘密なんだけど、ネコちゃんも当事者の一人だから教えるわね」
「オレが当事者にゃん?」
「ネコちゃんがプリンキピウムで貴族の子供の遺骨を見つけたでしょう? 狙われたのはそれよ」
「にゃお」
元孤児院の院長だった悪党の婆さんの家に隠されていた遺骨だ。誘拐されて殺害されたと聞いてる。
「その遺骨が王都の上級貴族の犯罪の証明になるみたいね、だから必死に証拠隠滅を図ったみたい」
「それが盗賊に傭兵に魔法使いだったわけにゃんね」
「全部失敗に終わったから、問題の当主は近いうちに引退するんじゃない?」
「にゃあ、それで一件落着にゃん?」
「白黒はっきりさせないのがこの国の貴族のやり方なのよ、表側はね」
たぶん裏側が本番なのだろうが、オレは関わり合いになりたくないので聞かない。
面倒な交渉事は全部フリーダにぶん投げてオレたちは州都の冒険者ギルドを後にした。
○州都オパルス 市街地
早く着いた上に納品もスムーズだったのでまだ午前中だ。
「まずは市場にゃんね」
「市場?」
「にゃあ、プリンキピウムでは手に入らないモノがあるかもしれないにゃん」
「いいね、美味しいモノあるかな?」
「見てのお楽しみにゃん」
○州都オパルス 市場
リーリと一緒に州都の市場を訪れた。
活気のある市場の雰囲気は何処も同じだ。
「にゃあ、プリンキピウムの市場とは規模が全然違うにゃんね」
「うん、人がいっぱい!」
人の数が桁違いだ。
「見たことがない野菜がいっぱいあるにゃん」
ポレックス村で貰った野菜とも違っていた。
「どれも美味しそう!」
リーリのテンションが上がる。
オレも見たことのない野菜を片っ端から購入する。
「お嬢ちゃんはお使いかい?」
「にゃあ、そんなところにゃん」
「こんなに買って持てるのかい?」
「にゃあ、問題ないにゃん」
買った野菜の山を分解格納すると屋台のおっちゃんが目を丸くした。
逆に獣の肉はどれも生前の姿を知ってるモノばかりだった。
調味料の原料は売ってるが、それを加工した物は見当たらなかった。
無ければ自分で作るまでなのでまとめて買う。
「にゃあ、チーズが売ってるにゃん」
「本当だ!」
ヤギのミルクから出来てるらしい。
高価だが買ってみた。
市場を堪能した後は、州都で唯一の知り合いと言っていいアーチャー魔法馬商会に向かう。
○州都オパルス アーチャー魔法馬商会
「にゃあ、また来たにゃん」
「来たよ!」
「おお、子猫ちゃんと妖精さんか、良く来たな!」
ダリルが出迎えてくれた。
「子猫ちゃんか、待ってたぞ! 早速で悪いが魔法馬を何頭か譲ってくれないか?」
事務所からドナルドが飛び出して来た。
「にゃあ、いいにゃんよ」
「ドナルド、慌て過ぎだ」
「顧客にせっつかれてるんだ仕方ないだろう」
「にゃあ、大変にゃんね」
「それで子猫ちゃん、今回は何頭、譲ってもらえるんだ?」
「何頭欲しいにゃん?」
「最低で八頭、出来れば一五頭、いや二〇頭だ、それだけあればしばらくは大丈夫だ」
「色はどうするにゃん?」
「色も選べるのか?」
「にゃあ、色は変えられるにゃんよ」
「黒七、赤七、金七でどうだ」
「一頭増えてるにゃん」
「ダメか?」
「にゃあ、大丈夫にゃん、タイプは競走馬でいいにゃん?」
「子猫ちゃんみたいなのはダメか?」
「あれは制約付きだから、転売はできないにゃん」
「そこまで本格的じゃなくていい、競走馬よりがっしりしたのがいい」
「軍用にゃんね、オレのほどは大きくないけど、競走馬よりは一回り大きいのは売れるにゃんよ、防御結界付きだからちょっとお高いにゃん」
「一頭見せてくれるか?」
「了解にゃん」
見本に金色の準軍用魔法馬を出した。
「おお、これはヤバいぜ!」
「ああ、ヤバいな」
ダリルとドナルドが魔法馬を撫で回す。
「子猫ちゃん、一頭あたり大金貨三〇枚でどうだ?」
「にゃあ、いいにゃんよ」
店のガレージの中に馬を次々と出して行く。
「相変わらずすげえ格納魔法だな」
「ああ、まったくだ」
ふたりがオレと魔法馬を交互に見て感心してる。
「これで全部にゃんね」
「確かに二一頭だ」
それから書類にサインする。
「全部で大金貨六三〇枚だ、確認してくれ」
大金貨がどっさり入った皮袋を幾つも渡される。
ふたりが見ている前で金貨を数えた。
「にゃあ、確認したにゃん、ちゃんと有るにゃん」
これで魔法馬の売買は完了だ。
「子猫ちゃんのおかげで助かったぜ」
「にゃあ」
「子猫ちゃん、プリンキピウムから州都に移らないのか?」
「いまのところは予定してないにゃん」
「そうか、そいつは残念だ」
「にゃあ、オレに用事が有るなら、冒険者ギルド経由で連絡が付くはずにゃん」
「そういや子猫ちゃんは冒険者だったな」
「にゃあ、冒険者にプリンキピウムは最高の場所にゃん」
「話には聞くが、俺たちではプリンキピウムに行くだけで命懸けになりそうだ」
「ああ、あそこは素人が気軽に行ける場所じゃねえからな」
「プリンキピウムって州都ではそういう扱いにゃんね」
「おっ、親父が戻って来た」
「子猫ちゃんのお陰で、親父さん、俺が初めて会った頃より元気になってるぞ」
ドナルドが苦笑いを浮かべてるが嬉しそうだ。
「それは何よりにゃん」
「まあ、元気過ぎで毎日飛び歩いてるけどな」
ダリルが本物の苦笑いを浮かべた。
爺さんはご自慢の魔法馬に乗ってオレの前に来た。
「おお、子猫ちゃんと妖精さん来てたか!」
「にゃあ、お邪魔してるにゃん」
「久し振り!」
爺さんは以前と違ってやせ細っていた身体に肉が付き、まるで別人だ。
「にゃあ、元気そうにゃんね」
「ああ、おかげさまでお迎えはしばらく先のようだ」
「にゃあ、そうにゃんね」
「うん、まだまだ大丈夫だね」
「いろいろ世話になったお礼にプレゼントを用意したんだ、まずは見てくれないか?」
「にゃ?」
「おい、おまえらアレを持って来てくれ!」
爺さんに命じられた店の作業員が、四人がかりで長方形の木箱を二台の台車を使って運んで来た。
かなり重そうだぞ。
「それは何にゃん?」
「かなり前に手に入れた出土品だ。何処の遺跡かは不明だが、ちゃんとした購入許可の取れてる物だから問題ないぞ」
「ああこれか、親父のコレクションの中でも一番の珍品だな」
「珍品は嫌いじゃないにゃん」
「たぶん武器だと思うが、ワシも良くわからん」
木箱の蓋を開けて見せてくれた。
「にゃあ」
形はガトリングガンに似ていた。
いや、これって魔法を使ったガトリングガンそのものだ。でも、ざっと見た感じ動かないにゃんね。
「にゃあ、これは面白そうだからありがたく頂戴するにゃん」
木箱ごとガトリングガンを分解した。
それからまたジャンクの山を売ってもらう。
今回のは細々としたゴミと言うことで大銀貨三枚だった。
その後はあちこち見物したり買い食いしたりして、夕方に冒険者ギルドに戻った。
○州都オパルス 冒険者ギルド ロビー
「おっ、マコトと妖精さんか、どうした?」
ラルフが窓口にいた。
「にゃあ、今夜泊まるので裏庭を借りに来たにゃん」
「宿には泊まらないのか?」
「にゃあ、オレたちは気楽なキャンプが性に合ってるにゃん」
「マコトのご飯の方が美味しいからね」
「裏庭は空いてるから構わないぞ」
「にゃあ、手続きをお願いするにゃん」
冒険者カードを出す。
「マコト、おまえまだFランクなのか!?」
ラルフが驚きの声を上げる。
「にゃあ、オレはFランクの依頼を受けてないから仕方ないにゃん」
「今回の護衛は違うのか?」
「特例のランク外の仕事なのでランクアップのポイントにはならないはずにゃん」
「マコト、そりゃ高ランクのパーティにくっついて行った時の話だろう? 依頼の中心になって働いたら別だ」
「そうにゃん?」
「マコトの場合、ランクはあまり関係ないか」
「そうにゃんね、それでキャンプ代はいくらにゃん?」
「Fランクの冒険者なら無料だ」
「にゃあ、正規の料金を払ってもいいにゃんよ」
「いや、規則は規則だ」
「にゃあ、だったらありがたく使わせてもらうにゃん」
○州都オパルス 冒険者ギルド 野営地 ロッジ
今回もただで借りられた裏庭は、またしてもオレたちだけみたいだ。
ロッジを出してリビングのソファーにもたれる。
微炭酸の蜂蜜レモンをリーリと一緒に飲む。
「にゃ~」
「美味しいね」
ひとまず用事は済んだので、明日の朝まで爺さんにもらったガトリングガンと細々としたジャンク品の再生を楽しむとしよう。
コンコン!と表の入口をノックする音がした。
「にゃあ、カティにゃん」
「そうだね」
入口のガラスを開けるとBランクの魔法使いカティ・ビーソンが入って来た。
十八歳ぐらいのはずだが、見た目は相変わらず中学生だ。
「ラルフさんにマコトさんたちが来てるって聞いたものですから」
「にゃあ、依頼を受けて州都に荷物を運んで来たにゃん」
「他にもいろいろね」
「盗賊をいっぱい捕まえたとか」
「にゃあ、電撃で気絶させたにゃん、カティは危ないから真似しちゃダメにゃんよ」
「危ないんですか?」
「にゃあ、盗賊のお持ち帰りは骨にゃん、カティは手早くぶっ殺すのがお勧めにゃん」
「そうですね、盗賊は殲滅が基本ですから、でも魔法使いは普通、襲われないですよ」
「そうにゃん?」
「盗賊は命懸けで襲って来たりしませんから」
「盗賊のくせに慎重にゃんね」
「盗賊だからこそですよ、後のない人たちですから無理なことはしません」
「にゃあ、それもそうだったにゃん」
下手を打てば殺されるし、捕まったら犯罪奴隷だ。
犯罪奴隷は使い潰される運命に有る。
罪状に依って差はあるようだが、盗賊なら処刑と大きくは変わらない。
今回のヤツらは荷物を狙っていたので、傭兵たちの雇い主にいいように踊らされていたのだろう。
盗賊たちが荷物を奪い取ったところを五〇人の傭兵団で始末するのが本来のシナリオだったのかも。
カティにも夕食を付き合ってもらった。
州都での冒険者事情を聞いたが依頼を受けての討伐が多いらしい。
護衛は傭兵が当たるそうだ。
「対人戦闘は冒険者の専門じゃないですから」
「にゃあ、そうにゃんね」
「賞金稼ぎも普通の冒険者じゃないので異質な存在ですね、怖い人たちばかりですし」
「にゃあ、オレも近付きたくないにゃん」
賞金稼ぎは、生きたまま捕らえる武装商人と違って文字通り賞金首を狩る。
「目付きが違うので直ぐにわかるにゃん」
「ですよね」
「にゃあ、悪いヤツが居なくならない限りは必要な仕事にゃんね」
カティが帰った後は、オレとリーリは地下の工房に降りて馬屋の爺さんから貰った木箱を取り出した。
デカくて重いガトリングガンみたいなブツ。
改めてじっくりサーチする。
「マコトはわかるの?」
「にゃあ、オレの知ってる武器に似てるにゃん」
「魔力の流れからすると完成には至らなかった未完成品だね」
「にゃあ、全部を刻印だけでどうにかしようとして失敗したみたいにゃん」
かなり高度な技をぶっ込んであるが、エーテル機関ほどの出力は出せなかったのが敗因らしい。
「にゃあ、オレが作り直すにゃん」
格納空間に入れたガトリングガンの刻印の一部をエーテル機関と入れ替える。
材質を魔獣由来のモノに入れ替えてオレの身体でも扱える様に魔法を掛けた。
再生してガトリングガンを持つ。
「にゃあ、いい感じにゃん」
「おお、スゴい!」
魔法のおかげでショルダーベルトを使えば自分より大きいこいつを何とか振り回せる。
「これがあれば魔獣の森に突っ込んでも何とかなりそうにゃん」
大銀貨三枚で買ったジャンクの山からは、銃が一〇丁、剣が二〇本、魔法馬が五頭、馬車が三台、魔法車が一台出て来た。
魔法車は州都で見たのと同じく自動車黎明期の物に似ていて、実用品と言うより趣味の逸品ぽい。
エーテル機関をぶっこんで各所を強化すれば普段使いはできそうだ。
これはこれで趣があっていい感じだった。
『にゃあ、オレにゃん』
『リーリだよ!』
『わっ、マコトと誰!?』
『リーリは妖精にゃん』
『『妖精!?』』
『そうだよ!』
オレがキャリーとベルに念話を入れたらリーリが割り込んで来た。妖精の力はスゴいにゃん。
『にゃあ、いま大丈夫にゃん?』
『びっくりしたけど、大丈夫なのです』
『にゃあ、ふたりに教えて欲しいことがあるにゃん』
『私たちでわかることだったらいいよ』
『にゃあ、ブラッドフィールド傭兵団に付いて何か知ってたら教えて欲しいにゃん』
『ブラッドフィールド傭兵団とは随分と大物なのです』
『にゃあ、ちょっとトラブったにゃん』
『何で!?』
『殺しに来たので生け捕りにして現在、身代金の交渉中にゃん』
『マコトのお小遣いになる予定だよ』
『ブラッドフィールド傭兵団をお小遣いにするとは流石なのです』
『冒険者だと舐めて掛かるから足元をすくわれるにゃん』
『そんなに微妙な連中では無かった筈なのです』
『にゃあ、ふたりはブラッドフィールド傭兵団を良く知ってるにゃん?』
『それほどでもないよ』
『ブラッドフィールド傭兵団は謎の多い組織なのです』
『構成員も三〇〇〇人とも六〇〇〇人とも言われてるし』
『王国軍、近衛軍に継ぐ第三の軍隊なのです』
『第三の軍隊にゃん?』
『金次第で何でもやるって噂だけど、実態は良くわからないのが本当かな?』
『危ないヤツらには近付かないのが一番なのです』
『もう手遅れだったね』
『にゃあ、あっちから来たにゃん』
『あいつらしつこいって噂だから気を付けた方がいいのです』
『にゃあ、わかったにゃん』
領主様が話を付けてくれるとは言え、聞き分けのいい連中かどうかは不明だ。
ロッジの防御結界を更に強化する。
もちろん外からはわからないように。




