森を彷徨う者にゃん
○帝国暦 二七三〇年〇八月二三日
○プリンキピウム街道 旧道 簡易宿泊所
「にゃおおお」
目が覚めるとオレの寝ていたハンモックに四人の猫耳が入り込んでいた。
「お館様、新記録達成にゃん」
ぎゅうぎゅう詰めのこの感触に本能的な安心感を覚えてしまうのは事実にゃん。オレがちっちゃいから可能なのだが、身体のどこもハンモックに触れてない。
「にゃお、四人は多すぎにゃん!」
ハンモックを揺らして猫耳四人を振るい落とした。
「「「にゃああああ!」」」
皆んなしっかり足から着地した。
「お館様、いきなり酷いにゃん!」
「にゃあ、酷いのはおまえらにゃん、優雅なハンモックの寝心地が何で毎朝ぎゅうぎゅう詰めになってるにゃん」
「それはウチらがお館様を大好きだからにゃん」
「そうにゃん、ウチらにはお館様をギュッとしながら寝る権利が有るにゃん!」
「にゃお、この前よりも内容が進んでるにゃん」
「気のせいにゃん」
「そうにゃん、気のせいにゃん」
「とにかくお館様をギュッとするにゃん!」
「にゃああああ!」
オレは朝から猫耳たちに捕まって揉みくちゃにされた。
○プリンキピウム街道 旧道
パカポコと馬車を進める。
既に街灯は猫耳たちによって設置済みで、また休憩所と宿泊所を作るだけの簡単なお仕事に戻った。
「今日もスケジュール通りにゃんね」
「にゃあ、ちょっと早いぐらいにゃん」
「流石に作り慣れたから、早くなるのは当然にゃん」
午前中の鍛錬を終えたチビたちはそろってお昼寝中。
「平和でいいにゃんね、マナが安定してないのを除けばだけど、それ以外は問題なしにゃん」
「プリンキピウム遺跡とは関係がないみたいにゃん、あちらは再起動したかと思ったら目立った動きはないにゃん」
地下から常時監視中だが、いまのところマナの濃度に変化は無く安定していた。
「お館様、急に獣の気配が減ったにゃん」
「そうにゃんね」
「特異種を含めて獣の気配は近くに全くないにゃん」
「にゃあ、嫌な予感がするにゃん、とにかく次の休憩地に急ぐにゃん!」
「了解にゃん」
嫌な感じがしたので馬車の速度を上げた。
「獣は何かから逃げたっぽいね」
リーリも周囲を見渡す。
「そうみたいにゃん」
正面に白い壁のような濃い霧が出ていた。
オレの予感が当たってるとしたらもう時間がない。
「にゃあ! ストップにゃん! 間に合わないにゃん! そこに地下壕を作って馬車ごと入れるにゃん」
オレは道路脇を指差した。
「一気に行くにゃんよ、偽装は気にしなくていいにゃん」
「「「にゃあ!」」」
道端の木々を切り倒して分解、そこに馬車が馬ごと全部乗る円盤状のプレートを作り上げる。
そのまま馬車を乗り入れた。
エレベーターの様にプレートが下がりオレたちが馬車に乗ったまま地下に降りた。
直ぐに天井が塞がれ照明が焚かれる。
○プリンキピウム街道 旧道脇 地下壕
「にゃあ、急ごしらえだけど間に合ったにゃん」
眠ったままのチビたちは猫耳たちが更に下の部屋に運び、残ったオレたちが地上の様子を伺った。
「霧とマナが濃くなってるにゃん」
何かが森の中を歩いている。
人間?
いや違う。
似ているが人間ではない。
あれはヤバいモノだ。
「お館様、マナが濃くなったのはウチらもわかるにゃん、でも何が危険なのかはわからないにゃん」
「にゃあ、ヤバいのは悪霊にゃん」
オレに代わって答えたのは猫耳ゴーレムになったギーゼルベルトだ。
「いまならおまえらにも気配が伝わって来たと思うにゃん」
「「「にゃお」」」
「いるにゃん、ヤバいのがいるにゃん」
「しかも複数にゃん」
「これはお館様が慌てるのも納得にゃん」
不気味な気配を感じ取って猫耳たちの尻尾が毛羽立った。
「にゃお、悪霊は悪霊でもオレが前に出くわしたのとかなり違ってるにゃん、以前に出会った犯罪奴隷の悪霊はもっとはっきりと探知出来たにゃんよ」
今回はほとんど勘によって検知したようなモノだ。
「すぐにわからなかったのは結界のせいにゃん、悪霊のまわりに認識阻害の結界が張られてるにゃん」
猫耳の一人が発見した。
「にゃ、まさか悪霊が認識阻害の結界を張るとは思わなかったにゃん」
魔法を使う悪霊とかオレの知らない亜種が存在するようだ。
「お館様、人間が強いマナに晒されると稀に生きた時の意識を残したまま半エーテル体になることがあるにゃん、たぶんそれにゃん」
ギーゼルベルトが解説してくれる。
「悪霊に意識があるにゃん?」
「にゃあ、意識と言っても記憶と知能のかなりの部分を失ってるので、身体が覚えてる範囲で生前の行動をなぞるにゃん」
「するとかなり強力な認識阻害の魔法が使える魔法使いがあの中にいるにゃんね」
「そうなるにゃん」
意識を集中して認識阻害の結界の中を視る。
「にゃあ、金ピカにゃん!」
近衛の騎士がいた。しかもひとりじゃない。それなら強力な認識阻害の結界を張れるのも納得だ。
「お館様、変な帽子もいるにゃん」
猫耳たちもオレに倣って結界の中を覗き見た。
「近衛軍は、身内からグールの次は悪霊を出したにゃんね、ヤツらは安全管理がなってないにゃん」
認識阻害の結界をレジストした結果、視界に現れたのは崩れかけた魔法馬に乗ってる近衛軍の騎士たちとフラフラと歩く兵士たちだ。今回は犯罪奴隷はいない。
「全員が防御結界で守られた近衛軍のキャンプにいたわけじゃないにゃんね」
「にゃあ、するとこいつらはキャンプの結界の外にいて悪霊になったにゃん?」
「たぶんそうにゃん、特異種の大部分が分解された瞬間マナの濃度が急激に上がったにゃん、一瞬だったけど運悪くそれにやられたみたいにゃん」
閃光と衝撃波の間だ。
「コンマ何秒でもやられるにゃんね」
「にゃあ、エーテル器官がやられたらそれまでにゃん、時間は関係ないにゃん」
「お館様、悪霊は全部で三〇体いるにゃん」
「にゃあ、ギーゼルベルト、あれはどうするのがいいにゃん?」
「放っておけばマナが枯渇して自然消滅するにゃん」
「人が襲われたりしないにゃん?」
「運悪く遭遇するとマナを吸い取られるにゃん、でも、森の中を彷徨ってるだけなら被害が出る可能性は低いにゃん」
「にゃあ、それなら今回は手間が掛からなくて良かったにゃん」
最初は焦ったけど距離さえ取ってしまえば危険は無さそうだ。
「お館様の知り合いがあの中にいるにゃんよ!」
「にゃ!?」
猫耳の言葉に目を凝らした。
「にゃお!」
悪霊たちの真ん中にいるのは州都の冒険者チャド・アシュだった。
「チャドにゃん、あいつは何をしてるにゃん?」
「捕まったみたいだね」
リーリもチャドを確認した。
「他の連中みたいに半エーテル体になったわけじゃ無さそうにゃん」
「悪霊にマナを吸い取られても死なないとは、ヤツは人間じゃないのかも知れないにゃん、怖いにゃん」
「お館様、魔法馬が結界を作って主人を守ってるみたいにゃん」
「にゃ!?」
チャドの乗ってるボロボロになった白い魔法馬は婆さんだった。
「ダメな男に引っ掛かってボロボロになるタイプにゃんね」
「にゃあ、もう時間の問題にゃん、婆さんが崩れたらチャドも死ぬにゃん、短い付き合いだったにゃん」
「「「お館様、助けないにゃん?」」」
「にゃ? にゃあ、そうだったにゃん、放置はマズいにゃんね」
「お館様、男には冷たいにゃん」
「にゃあ、違うにゃん、チャドなら自分で何とかすると思ったにゃん」
「本心はどうにゃん?」
「ああいうチャラいのは一度死んだ方がいいにゃん、でも人間に二度目は無かったにゃんね」
「お館様、助けるとなると厄介にゃんよ」
「チャドを取り囲んでる悪霊を取り除かないと助けられないにゃん」
「半エーテル体は天に送ったことがあるけど、魔法を使う悪霊は初めてにゃん」
「意思があるなら、死んでないんじゃない?」
リーリの指摘ももっともだ。
「にゃあ、でも半エーテル体の一種だから生きてるとも言えないにゃん」
ギーゼルベルトの意見も間違いではない。生者と死者の中間の存在だ。意思があるからやや生者寄りか。魂もしっかりある。
「にゃあ、あの悪霊どもを猫耳に変えてみるにゃん、いまはまだ肉体が完全に消えたわけじゃないしヤツらを囲んでる濃いマナを使えばイケるはずにゃん」
「「「にゃあ、ウチらも手伝うにゃん」」」
猫耳たちが手を挙げた。
「にゃお、おまえらはダメにゃん、近くにいるとマナを吸い取られるにゃん、そうなるとややこしくなるからここはオレに任せるにゃん」
「「「みゃあ」」」
「情けない声を出さなくても大丈夫にゃんよ、危なくなったらチャドは諦めて逃げるにゃん」
「この際、チャドのことは諦めていいと思うにゃん」
「「「にゃあ」」」
「やれるだけのことはやるにゃん、それにヤツが何で巻き込まれたのかも知る必要があるにゃん」
「バカだからと違うにゃん?」
「にゃあ、その可能性がいちばん高いけど、ちゃんと確かめるにゃん」
○プリンキピウム街道 旧道脇
オレは別に掘ったトンネルから地上に飛び出した。
「一気に決めるにゃん!」
そのまま聖魔石の馬を再生し、防御結界を厚く張って悪霊どもに接近する。濃霧が視界を遮るがオレにも馬にも関係ない。
木々を避けながら森を歩くヤツらとの間の距離を詰めた。
これまでただ歩いていた悪霊の兵士たちが顔を上げある者は剣を抜き、ある者は銃を構えた。近衛の騎士たちも馬上で剣を抜く。
「にゃあ、剣の扱いは身体が覚えてるにゃんね」
剣も銃も錆びついていた。
「いま、まとめて助けるにゃん」
オレは悪霊たち全員を個別に結界に封じ込めた。
チャドはちゃんと弾いてある。
「にゃあ、おまえらに新しい身体と心をやるにゃん」
濃厚なマナを使って半エーテル体を猫耳に作り変える。
ギーゼルベルトの場合は石全体がエーテル器官になっていたからゴーレムがやっとだったが、こいつらは意識の一部を残した元の生者寄りの半エーテル体だからこちら側に引き寄せられるはずだ。
「にゃあ!」
猫耳の半エーテル体が出来上がる。
周囲のマナがごっそり減った。
持ち出し無しでやりたかったが無理な相談らしい。
更に魂のない半エーテル体の猫耳の身体を作り上げ、魂の有る半エーテル体と融合させた。思考共有してる猫耳たちと繋がってるからできる荒業だ。
周囲一〇〇キロ圏内のマナの濃度が低下する。
人間や獣には影響ないが特異種は行動不能に陥ってることだろう。
燃費のいい作業ではないから仕方がない。
プリンキピウムの遺跡からもマナを吸い出せれば良かったのだが、結界に阻まれていくらも吸い取れなかった。
最終的にはオレの中に備蓄してるマナも使う。
「にゃあ、ここは何処にゃん?」
「森の中にゃん」
「にゃあ、この身体はどうなってるにゃん?」
「にゃお、猫耳とシッポにゃん!」
オレの前には三〇人の猫耳がいる。
「おまえら、オレのことはわかるにゃん?」
猫耳たちに声を掛けた。
「にゃあ! お館様にゃん!」
「可愛いにゃん」
「抱っこさせて欲しいにゃん」
「にゃあ、ウチもお館様を抱っこするにゃん」
新入りたちがオレに群がった。
「にゃあ、順番にゃん」
「そこ、新入りじゃないのまで並んじゃダメにゃん」
「バレたにゃん」
「思考共有は上手く働いてるみたいにゃんね」
「「「にゃあ!」」」
ギーゼルベルトの言葉通り、近衛軍の騎士と兵士の頃の記憶はすべて失われていた。
今回はそれが目的ではないので問題ない。
それに身体に刻み込んだ剣や魔法の技術はそのまま残されている。それだけでも十分な収獲だろう。
新入りの猫耳たちに抱っこされながらそんなことを考えた。
「猫耳は問題ないにゃんね、問題はこっちにゃん」
地面に転がしてあるチャド・アシュ。
いまは気持ち良さそうに眠ってる。
傍らに立っている婆さんこと白い魔法馬は、再度の修復を終えて元の美しい姿を取り戻している。
「にゃあ、チャドはいつまで寝てるつもりにゃん?」
つま先でチャドの身体を突いた。すでに治療も終えているので後は起こすだけだ。まぶたがピクッと動いて目を覚ました。
「ふあああ、あれ、マコトか、って、ここは何処だ!?」
チャドは、大きなあくびをしながら身体を起こす。とてもさっきまで死にそうだったとは見えない。
「プリンキピウムに行く旧道の近くにゃん」
「おお、そうか、それでオレは何で森の中で転がっていたんだ、もしかして落馬したのか?」
「落馬と言えば落馬にゃん」
悪霊が消えたら勝手に落ちたのだ。
「にゃあ、それでチャドはプリンキピウム遺跡に何しに行ったにゃん?」
「遺跡? オレはそんな場所なんか行ってねえぞ」
「にゃあ、とぼけても無駄にゃん、近くに行ったはずにゃん、そうじゃなかったら近衛の悪霊に捕まって森を彷徨ったりしないにゃん」
「近衛の悪霊?」
「そうにゃん、せっかく助けてやったんだから正直に答えるにゃん」
「そうか、ヤツらはオレを殺さなかったんだな」
「婆さんに感謝するにゃんね、身を挺してチャドを守ったにゃん」
婆さんが返事をするように頭を上下に動かした。
「婆さんもマコトが直してくれたのか?」
「そうにゃん、自壊寸前だったけど大丈夫にゃん、自動修復の能力を上げたからチャドさえしっかりしてれば壊れることは無いにゃん」
「言われなくても婆さんは大事にするさ」
婆さんはチャドの頭に鼻先をこすり付ける。
「それで、チャドは何処で近衛の連中と遭遇したにゃん?」
「場所は確かにプリンキピウムの遺跡の近くだ。近くと言っても婆さんを使っても一時間分は離れていたはずだぞ」
「にゃあ、チャドは何でそんな場所に行ったにゃん?」
「本当は秘密なんだがマコトには隠せないか、俺は先週プリンキピウムの遺跡で動きがあるって情報を掴んだんだよ。ネタによっては高く売れるからな。それでちょいと様子を見に来たってわけさ」
「にゃあ、チャドは何処でそんなヤバいネタを仕入れたにゃん?」
「ダチだよ、あの変な帽子のヤツら、非番になると州都に出て来るんだ」
「そうにゃん?」
「非番の時はあの帽子を被ってないし、ヤツらは身分を秘密にしてるから普通はまず気付かないぜ。オレはそいつらのうち何人かと飲み屋と娼館で仲良くなったのさ」
「チャドは気付いたにゃんね」
「ああ、ヤツらの言葉は軍隊訛があるんだ。しかも近衛のはちょっと独特だから直ぐにわかった」
「にゃあ、チャドは本当に冒険者にゃん?」
「州都の冒険者は獣を狩るだけが仕事じゃないんだぜ。それに俺よりマコトの方がずっと謎だぞ。冒険者は貴族になったりしないぜ」
「にゃあ、それはオレだって良くわからないにゃん」
「それもそうか、いくら魔法使いでも簡単に貴族にはなれないもんな」
「チャドは近衛の兵隊から情報を引き出したにゃんね?」
「引き出したと言うよりヤツらが勝手に喋ったんだ、いくら俺でも近衛絡みのネタなんか自分から聞いたりしないぜ」
「にゃあ、それでなんて言ったにゃん?」
「ヤツらは『来週になったら大きな仕事があるから、明日には帰らなくちゃならない』ってな」
「にゃあ、プリンキピウム遺跡での大きな仕事にゃんね、つまり近衛の兵士たちは、特異種の大発生が起こるのを知ってたにゃんね」
「いや、下っ端のヤツらだと何が起こるかまでは知らなかったんじゃないか?」
「特異種の大発生について何も言ってなかったにゃん?」
「いや、それっぽいことも言って無かったぞ」
「にゃあ、近衛の騎士まで巻き込まれたことを考えると具体的な危険は周知されて無かった可能性があるにゃんね」
「俺も知ってりゃ回避したんだが、遺跡に近付いたところで特異種の群れだ。大木の影に隠れて婆さんとやり過ごしたんだが、その最中にピカっと来て爆風に吹き飛ばされそうになって逃げ出したはいいが、近衛の連中に出くわして、気が付いたらマコトがいたってわけだ」
「結局、遺跡では何が有ったにゃん?」
「近衛の騎士と兵士が悪霊になったんなら事故だろう? そうじゃなきゃ騎士まで巻き込まれないだろう」
「そうにゃんね」
「悪霊はどうなった」
「送ったにゃん」
猫耳にしたことは秘密だ。
「そうか、騎士は知らないが、兵隊には割りといいヤツもいたからな、まあ今回の中に知り合いがいたかどうかはわからんが、ありがとうな」
「にゃあ」
仕事と人格は別ってことか。わかってるつもりだったが、オレはまだ理解が足りて無かった。
「これで俺が知ってることは全部話したぜ、身体もマコトのおかげで動くようだしこれから州都に帰るわ」
エーテル器官がヤバいことになっていたが、オレが治したからいまは大丈夫だ。
「マコトは何でこんな所にいたんだ?」
「オレは旧道に休憩所と宿泊所を作りながらプリンキピウムに帰る途中にゃん」
「休憩所と宿泊所? もちろんオレはただで使わせてくれるよな」
「図々しいヤツにゃんね、どっちも無料の施設があるからそれを使うといいにゃん」
「何だよ、無料の施設かよ」
六歳児にたかって不満そうな顔を浮かべる。
「にゃあ、遺跡に宮廷魔導師が来てるって本当にゃん?」
「宮廷の魔導師かどうかはわからないが、ヤツらは『気味の悪い仮面を付けた偉い魔導師が突然現れるので気が抜けない』って話をしてたな」
「突然、現れるにゃん?」
「ヤツらの話ではそうだったぜ、突然現れて突然消えるらしい」
「それでプリンキピウムの遺跡では何を掘ってるにゃん?」
「さあ、それはヤツらも知らないようだったぜ、余計な詮索をしてると思われただけで殺される環境だから、あえて見ないようにしてるんだろう」
「にゃあ、わかったにゃん、情報料代わりに有料施設も使える様にしたにゃん」
「おお、ありがとうな」
チャドは馬に跨った。
「そう言えば近衛のヤツらが掘り返してる遺跡、ここだけじゃないらしいぜ、他に何箇所もあるらしい」
「クーストース遺跡群のことにゃん?」
「そうそれだ、急に発掘が始まったらしいぜ、詳しい話は下っ端じゃわからないみたいだったけどな」
「にゃあ」
「じゃあ、またな」
チャドは手を振ると州都に向かって馬を走らせた。




