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大規模異変の正体にゃん

「にゃ!? いったい何が来たにゃん?」

 探査魔法に引っ掛かった動く反応は東から馬車が走るアルボラ街道へと移動している。

 ちょっと待て、こっちは森の中の一本道を突き進んでる最中だぞ。それなのに少しずつ距離が縮まっているって、どんだけ速く移動してるんだ?

 しかも一つ、二つと反応が増す。

 こいつらかなりの速度で森の中を移動しているが獣じゃないのか?

「二本足にゃん?」

 だが人間ではない。

 人間がオレの馬車より速いなんてことはない。それがこいつらは森の中を走って馬車より速い速度を出している。

「にゃあ、わかったにゃん」

 探査魔法の反応には覚えがある。以前に対峙したときと同じ感触だ。

「にゃお、これはグールにゃん」

 進行方向である北東方面にもグールの反応が出る。扇状に反応が広がりピガズィで遭遇した数を軽く越える一〇〇以上あった。

 それだけに収まらずさらに数が増す。迫り来る足音が地鳴りのように響き恐怖感を煽る。シッポがざわざわするぜ。

「にゃあ、カーナビが欲しいにゃんね!」



 ○アポリト州 州道


 馬車をドリフトさせ騎馬隊ともどもグールのいない西に抜ける小道に入り込む。グールどもはオレたちに狙いを定めてしっかり追ってくる。

「おおっと目が覚めたらいきなりスゴいことになってる!」

 リーリが胸元から出て来た。

「にゃあ、グールが大発生にゃん! 宮廷魔導師と魔法の撃ち合いかと思ったのに予想が外れたにゃん!」

「グールだと!?」

 ハリエットが飛び起きてオープンデッキからこっちに駆け寄る。オレも御者台から対面シートに戻った。

「「グール?」」

 ビッキーとチャスも目を覚ました。

「にゃあ、グールがいっぱいいるにゃん、これは囲まれるにゃんね」

 正面方向の西側からもグールの反応が現れた。

 もう囲まれるのは時間の問題だ。

「ここまでか、済まないマコトまで巻き込んでしまって」

 ハリエットが沈痛な表情を浮かべる。

「にゃあ、心配しなくてもグールはそんなに強くないにゃん、攻略法はすでに完成してるにゃん」

「えっ、グールでも強くないのか?」

「にゃあ、攻略法を知っていれば倒すのはそう難しくないにゃん」

 森が途切れ開けた場所に出た。

「にゃあ! ここで迎え撃つにゃん!」

『『『ニャア!』』』

 馬車を停めて猫耳ゴーレムが馬車を囲んで銃を構える。

 防御結界に電撃を這わせて広げた。

「「にゃあ!」」

 ビッキーとチャスも防御結界を張った。

 その掛け声はどうかと思うが。

 オレを中心にした半径五〇メートルに魔法馬と猫耳ゴーレムの防御結界が幾重にも張られる。

 猫耳ゴーレムの防御結界は強力だし、リーリ直伝のビッキーとチャスの精霊魔法の防御結界は人間には抜けない。


『『『グルルルル』』』』


 猛獣のような唸り声を上げながら姿を現すグールたち。オレたちも早着替え&ウオッシュでシャキッとする。

「グールって女もいるにゃんね」

「いるね」

 リーリも頷く。

「女のグールの方がおっかないにゃん」

 ゴリラみたいなシルエットは共通だが、顔が怖い。

「直ぐに襲って来ないのだな」

 初めてグールを見たハリエットは緊張が解けてない。グールに囲まれてリラックスとか普通は無理か。

「にゃあ、こいつらは完全にオレたちを囲んだら一気に来るつもりにゃん」

「私一人にこれだけのグールを揃えるとは随分と念が入ってる」

「にゃあ、いくら数を揃えたところで、ここにはオレたちがいるからハリエット様には指一本触れさせないにゃん」

「「はい!」」

 ビッキーとチャスもやる気まんまんだ。

 藪をかき分けてから次々とグールが姿を表す。

 馬車と騎馬隊を取り囲む。

「今回のグールは犯罪奴隷ではないにゃんね」

 額に奴隷の紋章はない。

「一般市民はかなりの数が州外に避難してるから、ここにいるのは賞金首の大公国の貴族か、火事場泥棒の盗賊か、賞金稼ぎあたりの成れの果てが濃厚にゃん」

「特異種とはいえ、ずいぶんと統率が取れてるようだが」

 ハリエットもグールを観察する。

「上位種が何匹か混ざってるにゃん、そいつらが指示を出してるにゃん」

「上位種?」

「にゃあ、首一つ大きくて目玉が六個以上あるのがそれにゃん」

 一匹の上位種が前に出た。


『ガアアアアアっ』


 雄叫びを上げてる途中でオレは奴のエーテル器官を銃で撃ち抜いた。

「やかましいにゃん」


『ガっ!?』


 あれ? そのタイミングですか、みたいな顔をして仰向けに倒れた。

「にゃあ! まずは上位種を殲滅にゃん!」

『『『ニャア!』』』

 探索範囲内にいた上位種に猫耳ゴーレムの弾丸が降り注いだ。


『『『ガァァァァァァァァァァッ!』』』


 次々と上位種が倒れるとグールたちは手近な隣の奴をぶん殴って乱闘が始まった。

 上位種がいないと統制が全く取れないみたいだ。

「しょせんはグールにゃんね」

 とりあえず強い奴から始末したのだが思った以上に効果があった。

『にゃあ、関係各位に通達するにゃん! アポリト州内でグールが大発生にゃん! グールはエーテル器官を潰すか首を落とさない限りほぼ不死身なので気を付けるにゃん!』

 念話が通じる相手に全員に情報を発信した。

「にゃあ、殴り合ってるけどどいつもこいつも頑丈だから乱闘が終わらないにゃんね」

 それでも弱った個体はあっという間に食い殺された。

 その辺りの獣より凶暴だ。

 少し数が減ったところで殲滅を開始する。

 組織だった動きのできないグールとエーテル器官を確実に撃ち抜く猫耳ゴーレムでは全く勝負にならなかった。


『『『ニャア!』』』


 すべてのグールを倒して猫耳ゴーレムが勝鬨を上げた。

「上位種が一〇匹で普通種が三〇〇匹にゃん」

 グールの死体はすべて聖魔法で天に還した。

「マコトは聖魔法も使うのだな」

「にゃあ、たしなみ程度にゃん」

「いや、これでたしなみなら聖魔法使いの立場がないぞ」

「マコトだからね! この程度どうってことないよ!」

 リーリの言うとおりどうってことはない。


 その間も念話で情報が集まって来る。


『マコト、アポリトの州都スプレームスが炎上している、こっちはグールじゃなくてオーガが大量に発生だ』

 大公国の大公陛下から念話が来た。

『にゃ、オーガにゃん!?』

『間違いない、オーガだ』

 オーガと言ったら鬼か。

 大公陛下からオーガのビジュアルが送られて来る。

 でけー!

 身長五メートルは有りそうだ。

 色は赤く角がオレのイメージする鬼よりでかくて目玉が四つ。

 夜、追い駆けられたら余裕で泣く自信がある。

『にゃあ、大公国側の結界はどうにゃん?』

『問題ない、ちゃんとオーガも弾いている』

「それは良かったにゃん」

『マコト、オーガの倒し方を知ってるか?』

 直ぐに情報を検索する。

 図書館情報体に有った。

『頭を潰すか首を刎ねるしかないにゃん、グールと違ってエーテル器官だけを潰しても直ぐに復活するにゃん』

 グールの上を行くデタラメさだ。

『助かる』

 直ぐに宮廷魔導師で迎撃するのだろう。

『アポリトの境界門にはグールだったよ、マコトの結界のお陰で損害はゼロだ、でもエーテル器官を撃ち抜くのは難しいみたいだね』

 カズキから念話が入った。

『にゃあ、どうせ狙うなら上位種から始末するのがいいにゃん、デカいから直ぐにわかるはずにゃん』

『了解した、魔導師を向かわせているから夜には何とかなる、と、いいな』

『にゃあ、とにかく数が多いから直接剣で切り結ぼうなんて考えちゃダメにゃんよ』

『そこまでの死にたがりはいないよ』

『にゃあ、他の状況は入ってないにゃん?』

『レークトゥス州の境界門で戦闘が始まってるらしい、あそこは防御結界がウチよりもしっかりしてるし、騎士団も強いから大丈夫だと思うよ』

『にゃあ、だったらこのまま突っ走って一気に行くのが良さそうにゃん、にゃ?』

『どうかした?』

『レークトゥスの方角からグールがスゴい数でこっちに迫ってるにゃん、にゃ、オーガも混ざってるにゃん!』

『コースを変えた方がいいんじゃないか?』

『行き先を変えるにゃん?』

『レークトゥス州がダメならクプレックス州に抜けるといいよ』

『にゃあ、クプレックス州にゃんね、了解にゃん!』

『また何かわかったら連絡するよ』

『にゃあ、お願いにゃん』

 クプレックス州はアポリト州の北西、大公国の北に位置する領地だ。

「にゃあ、とりあえずクプレックス州方面に逃げるにゃん!」

『『『ニャア』』』

 進行方向をクプレックス州の境界門がある北西に変え馬車を出す。

「クプレックス州に向かうのか?」

「にゃあ、レークトゥス州の方角からグールとオーガが一〇〇〇体以上来るにゃん」

「一〇〇〇体だと」

「にゃあ、切りがないからクプレックス州の境界門に行き先を変更するにゃん」

 他の馬車うんぬんの制約がないし敵がグールとオーガとわかったので、ここは鎧蛇の魔法で馬車と騎馬隊の魔法馬を浮かせて加速する。

 グールが追いつけない速度で森の中をかっ飛ばす。

「にゃあ、ハリエット様を倒すのにこれほど派手なことをやらかすとは思わなかったにゃん」

「いや、この規模はどう考えても私だけを狙ってるのではないだろう?」

『ニャア!』

「オーガにゃん!?」

 猫耳ゴーレムからオーガ接近の声が飛ぶ。

「いまオーガと言ったのか?」

「そうにゃん」

「猫耳ゴーレムの言葉はマコトしかわからないみたいだね」

「「わかるよ!」」

 ビッキーとチャスが手を挙げた。

『ニャア!』

「「右から!」」

 ビッキーとチャスの言葉どおり右側から重機で杭を打つような重い音が迫って来る。

「オーガが来たよ!」

 リーリも声を上げた。

 右側の木々の間から赤いその姿が見え隠れする。

「赤鬼にゃん」

 身長が五メートルを超えてるだけあってスゴくデカい。

 それに何故か魔獣よりも怖い。これが元人間とはとうてい思えない大きさだった。

「あれがオーガか、普通に出くわしたら死を覚悟するな」

 ハリエットも腰が引け気味だ。

「にゃあ、こいつ走るフォームがメチャクチャなのに速いにゃん」

 いまなら振り切れないことはないが、オーガを放置するわけにはいかない。

『ニャア!』

「近くに複数いるにゃんね、全員小銃にランチャーを追加にゃん!」

『『『ニャア!』』』

 銃身の下に筒状のランチャーが取り付けられる。

 別の重い音が今度は左側から迫る。

「両側から並走されてるのか」

 左右を走るオーガたちが幅を狭めてくる。

「にゃあ、心配いらないにゃん、すぐに仕留めるにゃん、ミサイル発射にゃん!」

『『『ニャア!』』』

 ランチャーから次々にオタマジャクシミサイルが発射される。

「なっ!?」

 オーガの頭が爆発して吹き飛ぶと身体は数歩走った後に転がって動かなくなる。

 並走していたオーガも次々と吹き飛んだ。

 オレたちを追い駆けてるオーガは全部で一〇匹いたがすべて片付いた。

「停車にゃん!」

 馬車を停め、オーガに変化させられた人たちの魂を聖魔法で送り死体も消した。空に舞う光の粒子に来世の幸福を祈る。

「にゃあ、ビッキーとチャスも良くやったにゃん」

 まだ緊張しているふたりの頭を撫でてやる。

「「マコト様」」

「もう、大丈夫にゃん」

「「ふぅ~」」

 ビッキーとチャスの身体から力が抜けた。


 新たな追っ手が来る前に騎馬隊と馬車を出す。朝焼けの空の下、また魔法を使って速度を上げる。

 カズキのアドバイスに従ってアポリト州の都市は避けながら北西方向にあるクプレックス州の境界門を目指す。

 街を結ぶ主要街道を通らず林道に毛の生えたようなルートを選んだ。

 狭い幅員のせいで馬車の両サイドを魔法馬が走るスペースが物理的になくなったので、騎馬隊は前後に一〇騎ずつの配置になった。

 引き続き魔法を使った走行だがハリエットが目を回すといけないから速度は抑え気味だ。それでも普通の馬車に比べたら驚きの速さだけどな。


「王国軍の迎えを断ったのは幸いだった。マコトの忠告のおかげで無駄な人死を出さずに済んだ、感謝する」

 朝の定時連絡を終えたハリエットが頭を下げた。

「数が多いから下手に入り込んでたらヤバかったにゃんね」

「数が少なくてもグールとオーガを王国軍だけで対処するとなると厄介なことになりそうだ」

「にゃあ、そうにゃんね、近衛の騎士ぐらいぶっ飛んでないと一対一で仕留めるのは難しそうにゃん」

「いや、一対一じゃなくていいのだが」

「だったら銃を撃ちまくるにゃん、頭を狙えば何とかなるにゃんよ」

「頭部を破壊するのだな、参考にさせて貰う」

「マコト、朝ごはんの時間だよ!」

 リーリにブレはない。


 朝食は走りながらサンドイッチを摘みジュースを飲む。

 オレは全方位に探査魔法を打ちながら警戒を続けるが、脅威となるのはグールとオーガだけのようだ。

 並行してオレはグールとオーガに絞って調査する。調査と言っても大公陛下とカズキに念話しただけだが。

 わかったのは、アポリト州では数年前からグールとオーガが出現する事件が各地で起こっていたということ。

 大量発生ではなかったが危険を感じ他領に移住する人間も少なくはなかったようだ。

 元々アポリト州が貧乏な上に治安が悪いので人口流出はいまに始まったことではなかったらしい。

 さらに死霊事件を契機に大公国が改革と避難民の受け入れを始めたので、かつてバカ貴族に国を追われた人々も故郷に戻った。

 大公陛下とカズキがふたりそろって『アポリト州にまともな領民は残ってないはずだ』と念話で話していたので、オレの推測通りグールやオーガになった者の大半が、賞金首の大公国の貴族か、火事場泥棒の盗賊か、賞金稼ぎあたりの成れの果ての推測は間違ってなかったようだ。


 朝食の後はビッキーとチャスの魔法の練習を兼ねて認識阻害の結界を張って貰った。

「にゃあ、馬車と騎馬隊が隠れれば十分にゃん」

「「はい」」

 精霊魔法の認識阻害はオレにも見つけるのが難しい。

 グールとオーガにも十分に効いてる。さっきまでならすぐに寄ってきたが、いまはまったく動かない。


 進路を偶然塞いでるグールやオーガを一方的に倒して前に進む。

「アポリト州の人々は人為的にグールにされたのだろうか?」

「そうだよ」

 ハリエットの疑問にリーリはあっさり解答した。

「そんなことが可能なのか?」

「人間なんてエーテル器官をちょこっと弄ればグールやオーガになるんじゃないの?」

「人間を死霊に変える魔法があるのだから、グールやオーガに変える魔法があってもおかしくないにゃんね」

「あったとしても禁呪だろう、まさかマコトは知っているのか?」

「知らないにゃん」

 グールやオーガのエーテル器官は人間のと大きな違いはない。

 真っ白に濁ってる以外は。

 これは死体のエーテル器官と同じだ。

 軽く解析してみる。

「にゃあ、これは特異種に変化する前に一度死んでるにゃんね」

「死んでる?」

「にゃあ、人間の死体と魂を材料に特異種が生み出されてるにゃん」

 死霊の作り方と似ている。あちらは魂のみで本当の肉体は使用しないけど。

「そんなことができるのか?」

「マナじゃなくて魂を使うところがいやらしいにゃん」

「どうなるんだ?」

「魂が削れていずれ無くなるにゃん」

 魂を削り魔力に近いものを生み出す。

「長くは生きないと言うことか」

「にゃあ、それでも二~三年は活動するにゃん」

「グールを一匹作るだけでも大変そうだな」

「にゃあ、グールを作るなんて罰当たりな仕事、オレはやりたくないにゃん」

「短時間に多くの人をグールにするなんて人間にできるのだろうか?」

「無理だと思うにゃん」

「そうだね、無理だね」

 一人ならともかく複数のグールを作り出すのは無理だ。

 ピガズィに現れたグールもどうやって作られたのか有耶無耶だったが、これも人間の仕業だったのだろうか?

「にゃあ、ハリエット様は六月二〇日にピガズィで起こったグールの大量発生事件は知ってるにゃん?」

「いや、その日に誘拐されてるから受けてない」

「にゃあ、上位種一匹に普通種が四〇以上いたにゃん」

「王国軍の出動案件だが、要請はなかったのではないか?」

「にゃあ、オパルスを出た時はそこまで多いと思ってなかったにゃん、討伐隊にグールと戦った冒険者がいなかったからちょっと舐めてたにゃんね」

 おバカなBランクの兄ちゃんたちとかいた。

「それで蓋を開けたら数の多さにびっくりな上に上位種が金ピカの鎧で更にびっくりだったにゃん」

「金ピカの鎧?」

「にゃあ、たぶん元は近衛の騎士にゃんね、普通種は全員が犯罪奴隷の入れ墨が入ってたにゃん」

 オレは額を指差した。

「そしてヤツらが現れたのがプリンキピウム遺跡のある方角だったにゃん」

「近衛の騎士と犯罪奴隷だったら決まりだな」

「にゃあ、終わったところに従者を連れた近衛の騎士が現れてグールの討伐証明と上位種の死体を回収して箝口令を敷いたにゃん」

「近衛軍はグールの大量発生について何かを知ってる可能性があるか」

「にゃあ、少なくとも無関係ではないにゃんね」

「近衛に話を聞くにしても、アポリトを生きて出られたらだな」

「にゃあ」


 馬車と騎馬隊は元は麦畑だったらしいかなり開けた平原に出た。

「停車するにゃん!」

 平原の入口で馬車と馬を停めた。

「グールにオーガもいるのか?」

 平原にはグールにオーガが混じった群れが集まっている。数万のグールに数千のオーガだ。待機状態なのかただ突っ立っている個体がほとんどだった。

 オレたちを待ち伏せていたわけではないのだろうが、行く手を塞いでることに変わりない。

「ちょっと多いにゃんね」

「多すぎだ」

 相手がこれだけ多いと認識阻害の効果も怪しくなる。

「行くしかないにゃんね」

「こんなにいるのに迂回しないのか?」

「にゃあ、遠回りするよりこのまま突っ切った方が安全にゃん」

 オレは馬車のロールバーに飛び乗りガトリングガンを再生した。

「にゃあ! ガトリングガン構えにゃん!」

『『『ニャア!』』』

 猫耳ゴーレムたちは魔法馬を消してホバーボードに乗り換えガトリングガンを構えた。

 陣形も変えて馬車を囲んで三角形の配置につく。

「にゃあ、一気に抜けるにゃん! 出発にゃん!」

 オレたちは平原を突っ切る道をトレースしながら加速を開始する。

 まだグールもオーガも気付いていない。

「撃ち方始めにゃん!」

 前方を塞ぐグールにオーガどもに向けてオレたちは一斉にガトリングガンのトリガーを引いた。


『『『ギャァァァァァァァァァァッ!』』』


 突然の襲撃に悲鳴の様な咆哮を上げ頭を吹き飛ばされるグールとオーガたち。

「にゃあ! ちゃんと送ってやるから天に還るにゃん!」

 同時に聖魔法も展開する。

 死体を積み上げても邪魔なだけなので出力を上げて天に送る。

 やっぱ飛び道具は強えわ。

 ガトリングガンの銃弾はまるでビームの様に繋がって軌跡が見える。

「マコト! 撃たれてないグールが昇天してるよ!」

 リーリが教えてくれて気付いた。

「にゃ?」

 聖魔法の出力を上げると森の精霊でも天に還る。

 グールには効いた。

「撃ち方ヤメにゃん! 停まるにゃん!」


『『『ウオオオオオオオオオオオオオオッ!』』』


 突然の攻撃に混乱するグールとオーガたち。上位種のコントロールも効かないのか殴り合いと共食いが始まった。

 混乱が全体に波及するのに時間は掛からなかった。オーガが暴れるとグールはひとたまりもなく引き裂かれて喰われた。

「阿鼻叫喚の地獄絵図にゃん」

「天に還してあげたら?」

 リーリにしては常識的な発言だ。

「もうすぐお昼だよ」

 さっさと片付けてお昼ごはんにしたいようだ。やはりブレない。

「もっと聖魔法の出力を上げたらオーガも送れるかもしれないにゃん」

「オーガまで送っちゃうの? やってみる価値はありそうだね」

 好奇心に目を輝かせるリーリ。

「にゃあ、やってみるにゃん!」

 平原にいるすべてのグールとオーガをマーキングした。

「にゃあああ!」

 出力を上げまくった聖魔法の青い光がグールとオーガを一体ずつ包み込む。


『『『……っ!』』』


 青い光の中でグールとオーガは形を失い魂の光が弾け乱舞する。

 意図したわけじゃないが派手なエフェクトバリバリにゃん。

『『『ニャア!』』』

 猫耳ゴーレムたちも力を貸してくれる。

「「にゃあ!」」

 ビッキーとチャスも協力してくれて更に聖魔法の出力が上がった。


 平原からすべてのグールとオーガの反応が消えた。


「にゃあ、全部送ったにゃん」

 しかも本来、残るはずのない魔石が手に入った。回収したその数、約三三〇〇〇個。

 オレは馬車のロールバーから降りた。

「青い魔石にゃん」

 聖魔法の青色をそのまま固めたみたいな綺麗な石だ。それを皆んなに見せた。

「マコト、それは聖魔石ではないか?」

「にゃあ、ハリエット様は知ってるにゃん?」

「ほとんど伝説と言っていい宝石だ」

「にゃあ、そうにゃん?」

「グールを生きたまま天に送るでもしないと手に入らないなら希少なのは当然だ」

 確かにハリエットの言葉どおりだ。

「オーガの魔石は、もうちょっと大きいにゃんね」

 色は同じだがオーガの聖魔石は二回りほど大きい。持ってるだけで魔除けになりそうにゃん。

 怨霊など防御結界に到達する前に逝ってしまうだろう。

「マコト、さっきの武器は何だ?」

「にゃ、ガトリングガンのことにゃん?」

「たぶんそれだ」

「にゃあ、ガトリングガンは銃の一種にゃん」

「あれが銃なのか?」

「にゃあ、弾がいっぱい出る銃にゃん、元は遺跡から発掘されたガラクタにゃん」

「魔獣にも効きそうな武器じゃないのか?」

「ある程度は効くと思うけど、でも普通の人間には扱えないにゃんよ」

「だろうな、それはわかる」

「にゃあ、次が来る前にさっさとずらかるにゃん」

『『『ニャア!』』』

 馬車を出した。猫耳ゴーレムたちはまた魔法馬に乗って馬車の前後を守る。


 お昼ごはんも馬車を走らせながらハンバーガーになった。


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