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ただいま攻略中にゃん

 青い鎧蛇との死闘から一〇分も進まない内に魔獣がオレの探査魔法に引っ掛かった。

「にゃお、魔獣発見にゃん! にゃお、オレたちも発見されてるみたいにゃん」

 反応はまっすぐこっちに向かってる。

 プロペラ機みたいな爆音を立てて飛んできたのは、某いちばん売れてるハイブリッド車ぐらいある銀色の甲虫だ。

 オレに向かって来る。

 早速、手に入れたばかりの氷柱つららを飛ばす魔法でぶっ刺した。

 あえなく墜落した甲虫を眺める。

「にゃあ、これも魔獣にゃん?」

「そうみたいだね」

 確認するとちっこいエーテル機関が有る。

 それにも氷柱を撃ち込んでトドメを刺して分解した。

「これ、乗れそうにゃんね」

「だったら乗っちゃう?」

 リーリは面白そうなことに目がなかった。オレもだけど。

 甲虫の躯を分解してゴーレムに作り変える。それから背中というか胸というか羽根の前に乗った。


「にゃああああ!」

「わああ!」

 ゴーレムに作り変えた甲虫の乗り心地はまるで絶叫マシーンだった!

「面白いね!」

「にゃおおお!」

 リーリは平気みたいだがぐるぐる錐揉み状態で飛ぶからオレは目が回りそう。

 それでもドラゴンゴーレムと違って、甲虫はまだ小さいから木々の間を飛べた。錐揉みしながら木々のすり抜けはスリル満点だ。

 トンネルを滑る魔法蟻に比べると信頼性と安定性に欠けるが、それでもひとりで飛翔を使うよりは防御力は高い。

「にゃあ、やっと慣れてきたにゃん」

 甲虫ゴーレムにも森の精霊の魔石を突っ込んで飛翔の魔法を教えたらやっと飛行が安定した。魔法馬よりも少し早いぐらいの速度で飛ぶ。

「にゃあ、これでまともになったにゃん」

「だけど面白みに欠けるかな、的にもなりやすいし」

 妖精は厳しい。

「にゃあ、的になりやすいのは同意にゃん」


 そう話してる側からいきなり防御結界の表面でドン!と爆発した。


「にゃわ! ミサイルにゃん!?」

 こちらに向かって飛んで来る黒い塊に向けて氷柱を飛ばして迎撃する!

 ミサイル?と氷柱が飛び交う中、大木を盾に甲虫をUターンさせた。

「にゃあ!」

 ミサイルを飛ばした奴にこちらから銃弾の連射をお見舞いする。

「にゃ、カエルにゃん?」

「カエルだね」

 ミサイルを撃ったのは、どこぞの第二夫人が好きそうなピンク色のカエルだった。全身が真っピンクだ。

 背中からミサイル、じゃなくてオタマジャクシを発射している!

「にゃお! 自分の子供を使って攻撃とは、なかなかのモンスターペアレンツにゃん」

 モンペのくせにオレの氷柱を舌で叩き落としやがった。

「だったら、これにゃん!」

 分解したオタマジャクシをまとめてモンペガエルの大きな口の中に再生した。


『ゲボン!』


 冴えない音がしてモンペガエルが大きくビクンとすると口から白い煙が上がり動きが完全に止まった。

 何か要らない感じがしたが分解して格納した。


 甲虫の操縦も慣れて来たおかげでカエルの後も順調に魔獣を倒して行く。銃も氷柱もビームもあるので無双状態だ。

 魔獣を複数倒すと大発生すると言う伝承があるが、短時間で一〇数匹倒したがそのような兆候は感じられない。

 伝承が間違ってる可能性もあるが、何かしらの経験がベースになってるとも考えられる。油断は禁物だ。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地 地下ロッジ


 お昼ごはんの時間になって地下壕型のロッジを魔獣の飛び地の中に造った。

 いつものロッジでも強度的には問題ないのだが、魔獣のウロチョロする場所で使うのは気分的に落ち着かない。

「物理装甲マシマシにしたにゃん」

 入口はエレベーターだ。

 リビングはロッジと同じ仕様にしてある。外の様子をガラスの壁に映し出す。無駄に凝りたがるお年頃にゃん。

 オレはハンバーガーを齧りながら飛び地にいる魔獣を一匹ずつすべてマーキングする。

「オレが確認できたのは三〇〇匹ちょっとにゃんね、にゃお、これってこの前から数が減ってないにゃん」

「これまでカウントされてなかったのもいたわけだし、前より実数に近くなったんじゃない?」

「にゃお、かなりの数が残ってることは間違いのない事実にゃんね」

「そうだね、でも狩り続ければ、いつかはいなくなるよ」

「なるほどにゃん、がんばればいつかはいなくなるにゃんね」

「うん、ガンバレ!」

「にゃあ、やるにゃん」


 探査魔法を撃ちまくりつつ格納空間で甲虫の仕上げをする。

 構成素材をもっと軽くて頑丈なのに完全に入れ替えて魔法馬と同じくマナを表に漏らさない仕様にした。

 これをやらないと魔獣の森の外に出せないし他の人を乗せられない。

 さらにエーテル機関を増設してドラゴンゴーレム並に魔力と知能を上げた。これで防御結界のレベルも上がる。

 どうせ魔獣をゴーレム化するならもっと強力な鎧蛇とかが本当はいいのだが、甲虫に比べると構造が生物寄りなので向いてないのだ。

 無理やりゴーレム化するとゾンビっぽくなるのでお勧めしないと図書館情報体にもあったりする。そのぐらいの読み物程度の情報なら魔獣に関するものもあるにはあった。少しは役に立つ。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地


 午後は改造した甲虫ゴーレムに乗ってペースを上げて魔獣を狩る。


「目に見えて魔獣たちの動きが鈍くなってるにゃん」

「マナが薄いからかな?」

 いまオレたちが甲虫を飛ばしてる場所は街中とそう変わらない濃度まで落ちていた。昨日と比べても明らかに違う。

「マナの濃度の影響を受けているにゃんね」

「この辺りにいるのはね」

「問題はこの先にゃんね」

 甲虫ゴーレムは外周を回りながら少しずつ飛び地の内側に軌道をずらす。

「にゃあ、さらに中心に近くなるほど濃いマナを必要とする魔獣が生息しているわけにゃんね」

「ヤツらも影響を受けて弱くなってるといいんだけどね」

「おれも期待してるにゃん」

 もし外周部の魔獣と同じ影響があるなら、マナの濃度を下げることは魔獣の森を解放する有効な手段になりえる。これは確認したい。


 動きの鈍い魔獣はろくに魔法を発動することなくオレの銃で一方的に狩られる。エーテル機関を破壊し躯を格納した。


「にゃあ、いくつもエーテル機関を手に入れて気付いたにゃん」

「何を?」

「同じものが二つとないにゃんね」

「似た感じの鎧蛇とかでも?」

 いま狩ってる魔獣は七割が鎧蛇の仲間だった。

「にゃあ、かなり似てる鎧蛇でもエーテル機関は違ってるにゃん」

「個体差は姿かたちだけじゃないんだね」

「にゃあ、そうなるにゃん、魔獣は中身まで個体差の激しい生き物みたいにゃん」

 なぜそうなのか皆目不明だ。

 魔獣関連が軍事情報で機密扱いなのはわかるが、図書館情報体にぐらいには残して欲しかった。

「にゃあ、小さな飛び地でこれだけの魔獣がいるんだから本当の魔獣の森にはどれだけの魔獣がいるかわからないにゃんね」

 人の天敵として生み出された人工生命体は、人間の生息地の数倍の大地を専有している。しかも増殖中だ。

 人類が何とかしないと魔獣はその使命を遠くない将来に全うすることになる。はたして人類に勝ち目があるのだろうか?


 午後は日が暮れるまで三〇匹の魔獣を狩った。いずれも動きと反応も鈍い状態だったので普通の狩りより簡単だった。

 それにマナが薄くなったのでちらほら普通の獣も見かけるようになった。たいがい魔獣に食べられていたけど。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地 地下ロッジ


 また地下壕型のロッジに潜り込んで夕ごはんを食べながら今日狩った魔獣のエーテル機関から一つずつ魔法式を読み出して解析する。

 魔法は結界重視系と攻撃重視系の二系統に大別できた。バランスよくとかの思想はないっぽい。

 いずれもオレの防御結界と攻撃魔法をバージョンアップする礎になってもらう。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地


 夕ごはんを済ませてからオレたちは夜の森に出た。

「今日のオレたちは働き者にゃん」

「うん、働き者だね」

 魔法馬を走らせながら銃を撃ちまくった。



 ○帝国暦 二七三〇年〇七月二一日


 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地前


 飛び地とは言え、魔獣の森の中で野営する気にはならず日付が変わる頃に領域の外に出た。

 マナが減ったおかげで境界はかなり曖昧になっていたが、月光草を植えた領域の向こうに陣取った。


『『『ブヒ!』』』


 そこはブタの特異種が群れを率いていたりするので危険度はどっこいどっこいだ。

 オレたちを食べようと突進してくるブタどもは電撃で一度に始末した。

 それから念の為に地下壕型のロッジにして潜り込んだ。オレは慎重なのだ。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地


 夜が明け朝もやの漂う地上に出たオレたちは、近くにいたゾウの特異種とそれが率いる群れを狩ってから甲虫に乗って昨日の地点に舞い戻った。

「にゃあ、ここから狩りの再開にゃん」

「もう来たみたいだよ!」

「にゃあ」

 近付く魔獣に向けて銃を撃った。姿を見ることなく一撃で仕留めた。


 午前中の内に魔獣を二〇〇匹にまで数を減らす事に成功した。

 魔獣の動きが鈍っているのとエーテル機関を三個ほど連結して威力と射程を伸ばした銃に依るところが大きい。

 効率よく魔獣のエーテル機関を破壊する。

 動きを止めた魔獣を回収しながら銃を撃った。

 朝飯も昼飯も甲虫の上で銃を撃ちながら食べた。


「にゃあ、テンションが上ってるにゃん!」


 暗くなる頃には魔獣は残り一〇〇匹を切っていた。

「にゃあ、流石にはしゃぎ過ぎたにゃん」



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地前 地下ロッジ


 飛び地の端まで戻って地下壕型のロッジに潜り込んだ。

 ジャグジーを設置してブクブクを楽しむ。

「手に入れたエーテル機関のチェックの方が時間が掛かるにゃん」

「それは仕方ないね」

「にゃあ、面白い魔法が手に入るからやらないわけにはいかないにゃんね」


 今日はもう夜の狩りはなしにした。


 ブタの特異種で作った生姜焼きの夕ごはんを食べながらゆっくりする。

「オレの探査魔法や探知結界に引っ掛からない魔獣も増えて来たにゃん」

「そうだね、本当はもっと強い魔獣も混ざっていたから、ここからはあわてないで進めた方がいいよ」

 リーリは生姜焼きにマヨネーズを掛ける。

「そうにゃんね、急ぐより月光草にマナをたっぷり吸わせてからがいいにゃんね」

 わざわざ状態のいい魔獣とやりあう必要はない。


 オレはのんびりお茶を飲みながらエーテル機関のチェックを続ける。こちらは銃をぶっ放すよりは時間が掛かった。

「もうちょっとイチゴを増やしてみようか?」

 リーリはゴーレムを使ってソフトクリームの新フレーバーの開発を行っている。


「にゃ?」

 深夜なのに二騎の魔法馬が魔獣の森の飛び地に近付いてる。

 プリンキピウムのある北側からでは無く西の方角からだ。

「こんな時間に森を魔法馬で走り回ると言ったら近衛軍の騎士にゃん?」

「遺跡のある方向だね」

「にゃあ、厄介な連中に見つかったら大変にゃん」

 近衛の騎士に月光草を見られると面倒なのでいまだけ発光を止めた。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地前


 オレたちは地下壕を出て近衛軍の騎士の様子をうかがう。

 ヤツらの到達地点は、距離にして飛び地の外周の四分の一分ほど離れた場所なので、飛び地をショートカットしても三〇キロ近く離れていた。

 甲虫じゃなくて、さっき作ったばかりのホバーボード(スケートボードの浮いて滑るヤツ)を出す。

 これなら走行音がしないので認識阻害を使わなくても気配が消せる。


 ヤツらは停まることなく魔獣の森の飛び地に向かってまっすぐ魔法馬を走らせる。

 オレも飛ばしているが、ヤツらの方が先に到着しそうだ。

 実はヤツらも魔獣を狩れるとか?

 それはそれで構わないのだが、わざわざ危険度五割増の夜に赴く意味がわからない。

「にゃあ、ヤツら飛び地の中に入り込んだにゃん」

 まだ距離にしてヤツらとオレとは七~八キロは離れていた。

 ヤツらの魔法馬は減速すること無く魔獣の森の飛び地に突っ込んだ。

 当たり前だがすぐに魔獣が反応した。

 数は三分の一以下に減ったが、動きが鈍ってるとはいえ強いヤツらが残ってるだけに魔獣の脅威は少しも減ってはいない。

 オレよりも魔獣が先にヤツらと接触しそうだ。

 近衛軍の騎士のお手並み拝見だ。


「にゃん?」


 魔獣との接触直後に二騎の反応が消えた。

「にゃあ、もしかして一撃で喰われたにゃん?」

「そうみたいだね」

 魔獣は用は済んだとばかりにその場でとぐろを巻く。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森 飛び地


 一〇分後オレが到着すると砕けた魔法馬が二頭分転がっていた。上等な馬だが、近衛軍の魔法馬かどうかはオレにはわからない。

 騎乗していた人間の姿は何処にもない。その代わりに鎧蛇がとぐろを巻いて食休み中だ。見た目は岩山だ。

 微かにマナを取り込むための呼吸をしている動きが見てとれる。

 改良を重ねた認識阻害の結界をまとったオレのことにはまったく気付いてなかった。

 これはヤルしかないだろう。

 エーテル機関の反応に近づき銃撃して砕いた。

 近衛の騎士を喰った鎧蛇は一休みのまま永眠して貰った。

 分解しようとして引っ掛かりを覚えた。

「どうしたの?」

「にゃあ、なんか生きてるみたいにゃん」

「エーテル機関を壊したのに?」

「にゃあ、違うにゃん、食べられた方が生きてるみたいにゃん」

「本当に?」

「にゃあ、近衛の騎士はオレたちが思ってる以上に頑丈みたいにゃん、面倒だけど見捨てるわけにもいかないにゃん」

 鎧蛇の腹から生存者を取り除かないと格納できないのだから仕方ない。

「開くにゃん」

 鎧蛇の腹を割くと見覚えのある金ピカの鎧がふたり分ほど流れ出て来た。状態からすると丸呑みされたらしいが、それなのに人体は見当たらない。

「どういうことにゃん?」

「消化されちゃったんじゃない?」

「にゃお、そんな感じもするにゃんね、反応があった生存者はもっと奥にゃんね」

 さらに魔獣の腹を切り開くとデロリと護送用の袋が転がり出た。

 護送袋は犯罪者を仮死状態で持ち運ぶ魔導具だ。

「これみたいだね」

「にゃあ、仮死状態にされてるけどまだ生きてるにゃん」

 護送袋の中身は防御結界を展開させていた。結界がなかったら先のふたりと同様に命はなかったはずだ。

「状況からすると護送袋は消化されたふたり組が運んで来たみたいにゃんね」

「うん、何日も魔獣のおなかに入ってるのって無理だと思う」

「にゃあ、そうにゃんね」

 消化されなかったら、外に出されるだろうからずっと入ってることはなさそうだ。

「何でこんな場所に連れて来られたんだろうね」

「にゃあ、魔獣の森の飛び地に護送袋だから、騎士のふたりがこっそり捨てに来たのは間違いないにゃんね」

「運んで来たふたりも一緒に食べられちゃったけどね」

「にゃあ、飛び地でも魔獣の森を甘く見るからそうなるにゃん」

 腹を割いた鎧蛇を消し去り、消化液にまみれてる護送袋をウォッシュする。

「大人の大きさじゃないにゃんね」

 この護送袋は大人には窮屈な大きさだった。

「マコトよりは大きいね」

「にゃあ、そうにゃんね、シャンテルぐらいにゃん」

 護送袋には一〇歳のシャンテルと同じぐらいの大きさの子供?が入ってるっぽい。

 まさか子供じゃなくて宇宙人とかじゃないよね?

「開けてみるにゃん」

 恐る恐る袋を開けた。

「にゃお」

 ウエーブの入ったきれいな金色の髪が見えた。その髪をかき分けると仮死状態の女の子の顔があった。

「トラブルの予感がするにゃん」

 どう見ても庶民の子供じゃなかった。第一印象は上位貴族の子供だ。

「状態も良くないにゃんね」

 仮死状態で生きながらえていたが、それもそう長くない感じだ。

 応急処置をしてからすぐにゴーレムと担架を再生して、その子を急いで飛び地の外に運び出した。


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