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お引っ越しにゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇七月十九日


 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル ペントハウス


 全部で五匹の魔獣を狩って明け方にはホテルに帰った。

 最初の電気ナマズの後は全部蛇系の魔獣だった。どいつもこいつもデカいので蛇っぽいニョロニョロ感は皆無な連中だ。

 マナの濃度が薄くなったせいなのか目に見えて動きが鈍くなっていて、魔法で反撃されることもなくオレに一方的に狩られた。

「マナが薄くなった影響が想像以上に大きいみたいにゃん、これは一気に畳み掛けてもいいかもしれないにゃんね」

「慌てないほうがいいよ、今夜はたまたま弱いのが連続しただけかもしれないし」

「わかったにゃん、調子に乗らないように気をつけるにゃん」

 ジャグジーに入り朝焼けの空を眺めながらジュースを飲む。

「にゃあ、ジュースが美味しいにゃん」

「ソフトクリームも美味しいよ」

 リーリはまた冷たいのを食べていた。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル レストラン


 ホテルのレストランの朝食は今日からビュッフェスタイルに変更した。

 こっちの方が評判が良い。

「「「ネコちゃん!」」」

 ちっちゃい子たちがオレに群がる。

 こっちに来てからちっちゃい子にはモテモテだ。

「にゃあ、ちゃんとごはんを食べたにゃん?」

「「「食べた!」」」

「ミルクは飲んだにゃん?」

「「「ミルク?」」」

「これにゃん」

 ミルクを入れたポットを見せる。

「にゃあ、魔法牛から絞ったにゃん」

 コップに注いで皆んなに配った。

「「「美味しい!」」」

「にゃあ」

 それから子供たちをキッズルームに連れて行って担当のゴーレムたちにバトンタッチした。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 支配人室


 オレはノーラさんに呼ばれて支配人室に行った。

 ジジともうひとり四〇代ぐらいの女の人がいた。

「ジジの母のエルザ・ラングレです、この度は娘ともどもお世話いただきありがとうございます」

「にゃあ、マコト・アマノにゃん、こちらこそお世話になるにゃん、それで身体の具合はどうにゃん」

「はい、こちらに来てからはかなり楽になりました」

「にゃあ、ちょっと失礼するにゃん」

 エルザさんの手に触れた。

「にゃあ、肝臓に問題があるにゃんね」

「肝臓ですか?」

 ピンと来ないみたいだ。

「にゃあ、いま治すにゃんね」

「えっ?」

 治癒の光で包み込みエーテル器官に魔力を注ぎ込んだ。

 ダメージを受けてる臓器を修正する。

「にゃあ、これで治ったはずにゃん」

 エルザさんは自分の手のひらを見る。

「嘘みたいに身体が軽くなりました」

「お母さん、治ったの?」

 ジジが母親を見詰める。

「ええ、治ったみたい」

「にゃあ、まだ無理は禁物にゃんよ」

「ありがとうございます、このご恩は決して忘れません」

「にゃあ、エルザさんは州都の商会で働いていたそうにゃんね」

「ええ、まだ娘時代の話ですけど」

「にゃあ、それで十分にゃん、治療と同時に仕事の情報も送ったにゃん」

「えっ、ええ、わかります」

「にゃあ、エルザさんにはノーラさんのお手伝いをお願いしたいにゃん」

「私にですか?」

「ええ、マコトさんと相談して決めたんです」

 ノーラさんも頷く。

「にゃあ」

「私に務まるでしょうか?」

「にゃあ、問題ないにゃん」

「ええ、問題ありません」

 サービスの基本が一万年前に滅亡したオリエーンス神聖帝国がベースだけどな。

 それに関しては、アーヴィン様一行も問題は無かったようなのでこのまま進める。

 王都どころか州都のホテルにも泊まった事がないので、この国の高級なサービスは知りようが無いので仕方ない。


「にゃあ、予定どおり練習すれば普通にお客さんを泊めても良さそうにゃんね」

 ゴーレムもかなり最適化される。

 部屋自体も状態保存の魔法が掛かってるので魔導具を掻っ払おうとしてもできない。

 高位の魔導師が三日三晩やれば外れるかも知れないが、そこまでコストを掛けるなら買った方が安い。

「では、二五日に通常営業に切り替えましょう」

「にゃあ、よろしく頼むにゃん」

 魔法蟻に地面を掘らせる為に始めることになったホテルだが、お客が来るかどうかわからないが滑り出しは上々だ。

 お客なんかひとりも来なくてもホテルの地下に仕舞ってある猿蟲をたまに一匹ずつ売れば人件費も経費も賄えてお釣りが来る。

 従業員の生活はそれだけで一〇年単位で守れるだろう。それに金庫のお金も減るどころか増える一方だし。



 ○プリンキピウム 冒険者ギルド ロビー


 ランチの前にオレは冒険者ギルドに行った。

「あら、ネコちゃんいらっしゃい」

 セリアがカウンターからオレに声を掛けてくれた。

「今日のご用事はなにかしら?」

 カウンター越しにオレの頭を撫でる。

「にゃあ、また土地を買いたいにゃん」

「土地?」

「にゃあ、ホテルの周りの土地が欲しいにゃん」

「ホテルの周りね、ちょっと待ってね」

 台帳を引っ張り出して来る。

「ホテルの周りって、どのぐらいが希望なの?」

「そうにゃんね、後ろは城壁にぶち当たるまで欲しいにゃんね、両サイドは買えるだけにゃん」

「ホテルの周りは全部、山林になってるけどいいの?」

「いいにゃんよ」

「二束三文の土地だから、管理は冒険者ギルドになってるわね」

「にゃあ」

「譲渡金額はギルマスの決済になるから直接、交渉してね」

「わかったにゃん」



 ○プリンキピウム 冒険者ギルド ギルドマスター執務室


 セリアに手を引かれてギルマスことデリックのおっちゃんの執務室に連れて行かれた。

「ホテルの周りの土地が欲しいそうだな」

「にゃあ」

「もっとホテルを大きくするのか?」

「そうにゃん、ホテルの敷地を広げるのと、孤児院を持って来ようと思ってるにゃん」

「孤児院を?」

「にゃあ、いまの場所は何をするにも離れていて不便にゃん、ついでにチーズの工房も大きくするにゃん」

「孤児院にチーズか、そいつはいいかもしれん」

「にゃあ、それで幾らにゃん?」


 ホテルの周囲の林を買えるだけ買って大金貨三枚だった。

 これでホテルの敷地は一気に五倍になった。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル


「にゃあ、やるにゃんよ」

 まずは塀を敷地の境界線に移した。

 それから木々を間引き下草を刈り取って月光草を植えた。ここはそれほどマナの濃度は高くないのでほとんど芝生と変わらない。

 こいつらは勝手に伸びたり広がったり枯れたりしない。まるで人工芝みたいだがちゃんと生きている。

 遊歩道や東屋を造り、そしてちょっと離れた場所にコルムバの近くで貰った魔法使いの館の大公国バージョンのコピーを置いた。小麦の集積地の屋上に造った空中庭園に置いたあれだ。

 ホテルの離れだ。あちらと同じく専用の露天風呂も作る。

「次は孤児院にゃん」

 ホテルの裏側には孤児院の建物とチーズ工房をこしらえた。

 以前のものと違ってホテルの意匠に併せた建物にする。

 それから学校の校舎も作る。

 子どもたちを守る場所なので特に頑丈に造った。

 なぜ学校かというと孤児たちそれにシャンテルとベリルには勉強が必要だからだ。魔法で教えたがそれだけではちゃんと身に付かない。

 ビッキーとチャスには魔法の練習もさせる予定だ。他にも素養のある子が加わったら才能を伸ばす手助けをしたい。

 学校のグラウンド兼牧場には魔法牛たちを次々と再生する。

「こんな感じにゃんね」

 ホテルとの間は背の高い生け垣の迷路で仕切り、許可なき者は通り抜けを禁止した。孤児院と学校の出入り口も別に設ける。

 ゴーレムたちも再生してそれぞれの管理や作業を手伝わせる。

 それぞれを地下通路で繋いでチーズの出荷をスムーズにできるようにした。


「にゃあ、子供たちを連れて来るにゃん」

 ホテルの従業員たちに声を掛けた。

「あたしも行く!」

 リーリがオレの頭に飛び乗った。



 ○プリンキピウム 市街地


 オレは孤児院に向かって四頭立てのトレーラー付き馬車を走らせる。荷台もトレーラーを追加してるので一度に全員を運ぶ予定だ。

 プリンキピウムの街の道路はオレが直したので馬車は魔法を使わなくてもスムーズに走る。やはり道路はこうでなくちゃいけない。



 ○プリンキピウム 孤児院


「「「ネコちゃんだ!」」」

 孤児院の前に馬車を停めるとオレに気付いた子どもたちが飛び出して来た。

「にゃあ」

「ネコちゃん、いらっしゃい!」

「「「いらっしゃい!」」」

 ちっちゃい子たちがオレにくっついた。オレもちっちゃいけどな。

「「マコトさま!」」

 ビッキーとチャスもくっついた。

「にゃあ」

 皆んな元気いっぱいだ。

「アシュレイはいるにゃん」

「「「こっちだよ!」」」

 ちっちゃな子たちが手を引っ張ったり背中を押したりしてアシュレイのところに案内してくれた。


「マコトさん、いらっしゃいませ」

 アシュレイは台所にいた。

「にゃあ、いきなりで悪いけどこれから引っ越しするにゃん」

「引っ越しですか?」

「にゃあ、孤児院をオレのホテルの裏側に持って行くにゃん」

「持って行けるんですか?」

「問題ないにゃん」

「マコトのホテルって、冒険者ギルドの向かいにあるヤツか?」

 バーニーが外から戻って来た。

「そうにゃん」

「ここよりは便利かな?」

「門に近いしここより絶対いいって」

 ブレアとカラムも戻って来た。

「森に行くのもそうにゃんね、あっちなら何をするにも便利にゃん」

「わかりました、だったら荷物をまとめないと」

「にゃあ、荷物はまとめてオレが運んで行くから、皆んなは馬車に乗ればいいにゃん、すぐに出発にゃん」

「「「すぐ!?」」」

「にゃあ、いますぐ出発にゃん、皆んな馬車に乗るにゃん、ちっちゃい子を先に乗せてあげるにゃんよ」

「「「わかった!」」」

 ちっちゃい子がさらにちっちゃい子を運んで行く。大丈夫か?


 全員が馬車に乗ったところで孤児院のすべてを格納した。


「「「消えちゃった!」」」

「にゃあ、消えたんじゃないにゃんよ、仕舞っただけにゃん、出発にゃん!」

 馬車を出すとあまり馬車に乗ったことのない子供たちが歓声を上げた。

 気軽に遠足なんて環境じゃないから遊びで馬車に乗ることもないか。街の外に出るのは苦行だものな。



 ○プリンキピウム プリンキピウム寄宿学校


 子供たちを満載にして新しい孤児院に戻って来た。

「ここがあたらしいおうちなの?」

 メグが新しい孤児院を指差した。

「にゃあ、そうにゃん」

 馬車を停める。

「にゃあ、降りていいにゃんよ」

 荷物は新しい孤児院の建物に再生した。

「これからは孤児院じゃなくて寄宿舎と言ったほうが良さそうにゃん」

「「「寄宿舎?」」」

「にゃあ、子どもたちが一緒に生活する場にゃん」

「それだといままでと変わらなくないか?」

 バーニーが疑問を呈する。

「にゃあ、寄宿舎は学校の中にあるにゃん。生活の場であり学びの場でもあるにゃん」

「勉強する場所なんですね」

「にゃあ、アシュレイが正解にゃん。校舎も造ったことだしここはプリンキピウム寄宿学校と名付けても良さそうにゃんね」

「「「プリンキピウム寄宿学校?」」」

「そうにゃん、今日から全員が学校の生徒になるにゃん。制服も用意するにゃん」

「制服ですか?」

「「「……?」」」

 アシュレイを始め全員が首を傾げる。

「この学校の子が着るおそろいの服にゃん」

「軍服みたいなものか?」

「にゃあ、バーニーにしては良い質問にゃん、そうにゃん、この制服を着てればオレの保護下にある証でもあるにゃん」

「なんか引っ掛かるけどまあいいか」

「にゃあ、まずは学校を見て回るといいにゃん」

「「「わかった!」」」

 子どもたちが学校に散らばった。


「魔法牛がいっぱいいる!」

「にゃあ、オスが四頭でメスが二〇頭にゃん」

 いままでの倍の数を用意した。さっそく何人かは魔法牛の背中に乗った。

「ネコちゃん、ゴーレムもいっぱいいるよ!」

「にゃあ、増やしたにゃん」

「チーズの工房も前より大きい!」

「大きくしたにゃん」

「ネコちゃん、あっちにあるのはなあに?」

 小さな子たちも新しい発見を報告したり質問したりと忙しい。

「にゃあ、あっちにあるのは校舎にゃん」

「「「校舎ってなあに?」」」

「勉強をしたり遊んだり給食を食べたりするところにゃん」

「「「給食!?」」」

「ネコちゃん、給食ってなあに?」

「にゃあ、学校で食べる美味しいお昼ごはんのことにゃん」

「「「わあ!」」」

 子供たちは大喜びだった。

 それにホテルの厨房に行ったはずのリーリも。

「ビッキーとチャスも行っていいにゃんよ」

「「はい!」」

 久し振りにオレに張り付いていたふたりも皆んなの後を追って駆け出した。

 ちょっと寂しいにゃん。

「アシュレイ、バーニーたちと見て回って何か不具合が有ったら教えて欲しいにゃん」

「わかりました」

「おう、任せろ!」

「マコト、チーズ工房はどんな感じ?」

「にゃあ、大きくした分、ゴーレムも増えたからカラムたちの仕事は変わらないにゃんよ」

「マコトのホテルって貴族が泊まってるって本当なの?」

「ブレアは情報が早いにゃんね、でも、いまはいないにゃんよ」

「ふぅ、そうか」

「にゃあ、例え貴族が泊まっていてもこっちには来ないから怖くないにゃん」

「そうなんだ」

「にゃあ、そもそも貴族はプリンキピウムには来ないにゃん」

「そうなの?」

「前の町長は貴族じゃないのか?」

「にゃあ、あれは貴族じゃないにゃん」

「違うんだ」

「自称貴族の偽物にゃん」

「何か納得」


 日が沈むまで寄宿舎とチーズ工房、それに校舎の調整を行った。

「へえ、立派なのを作ったね」

「ここならチーズの納品も様子を見に来るのも簡単でいいね」

 セリアとデニスがやって来た。

「皆んな可愛い服を着てるね」

「にゃあ、プリンキピウム寄宿学校の制服にゃん」

「「プリンキピウム寄宿学校?」」

「孤児院から名称変更にゃん。ここは学び舎になったにゃん」

「学校か、ここまで立派なのは王都にしかないんじゃない?」

「少なくとも州都にもないわね」

「にゃあ、字はどこで教えてるにゃん?」

「親か奉公先ね。冒険者ギルドでも年に何回か講習会を開いて教えてるわよ」

「依頼票を読めないと商売にならないからね」

「ネコちゃんの作る制服はどれも可愛いわね」

「ホテルのシャンテルちゃんとベリルちゃんの制服も可愛いし」

「にゃあ、あの制服はオレが保護してる証にゃん。もし危害を加えたらオレが地獄の底まで追い掛けてぶちのめすにゃん」

「「おお」」

 学校の制服はモデルはオレの地元のお坊ちゃま&お嬢さま校のブレザーの制服がベースになってる。

 お風呂に入った後はジャージだけどな。チーズ工房に入る時は白い作業服で森に行くときは戦闘服になる。

 以前の着たきりのボロの面影はない。皆んないいところのお坊ちゃんお嬢ちゃんに見える。


 夕食のテーブルを孤児院の皆んなとで囲んだ。

 食事の準備をするゴーレムたちはホテルのゴーレムと情報を共有してるのでレパートリーもぐっと増えてる。

「「「美味しい!」」」

「にゃあ、明日からは勉強もするにゃんよ」

「勉強?」

 バーニーが首を傾げた。

「にゃあ、魔法であげた知識を身体に定着させるにゃん」

「「「……?」」」

 全員が首を傾げた。

「本を読んだり遊んだり計算したりするにゃん、楽しいにゃんよ。魔力が強い子には魔法も教えるにゃん」

 ビッキーとチャスほどの魔力を持つ者はいなかったが、生活魔法は上の子から順番に使えるようにしてあげてもいいかも。

「楽しいの?」

 小さい子が質問する。

「にゃあ、楽しいにゃん。それと全員に冒険者としての基礎も教えるにゃん」

「冒険者?」

 メグが目をパチクリさせる。

「にゃあ、辺境のプリンキピウムに住んでる以上、武器の取り扱いも知る必要があるにゃん、魔法馬にも乗れるようにするにゃん」

「「「魔法馬に乗っていいの?」」」

 狩りに出てる三人の男子が目を輝かす。

「にゃあ、あくまで乗り方を覚えるだけにゃん、おまえらの実力で深いところに入ったら五分で死ぬにゃん」

「そんなことはわかってるよ」

「にゃあ、わかってればいいにゃん、実力を過信すると死ぬから気を付けるにゃん」

「無茶はしないって」

 バーニーは唇を尖らせる。

「にゃあ、もちろん信用してるにゃん、でも臆病なぐらい慎重にならないと簡単に死ぬ世界だというのはわかって欲しいにゃん」

 オレの言葉に子どもたちはうなずいてくれた。


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