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94話 人形に興味はないな

 し、試験勉強がマジ大変(泣)

「そうしないと俺は男の子を名乗れないだろうが?」

「馬鹿な、そんな理由でか!」


 俺はカラスを突き付けてニヒルに笑ってみせるのに気圧されたように黒装束が怯むのを眺める。



 あ、危なかった……何度、死んだかと思ったでぇ!



 黒装束達に啖呵を切った俺であったが崖から飛び降りた後の事を思い出していた。


 最初は月が隠れていて地面が見えてなかったが月が現れた後に見た景色はバンジーでこの高さをチャレンジした事がある人はいないだろうと思われる高さでパラシュートがいるよね? という高さに身躍らせていた。


 確か、元の世界で最長バンジーは300m超えたぐらいだったと記憶しているがそれは超えてたと俺のカンが教えていた。


 勿論、そのまま落ちたら生きていられる訳ではなく、生活魔法の風の足場、薄氷の上に乗るような強度のモノを大量に使い、階段を降りるように走り抜けた。


 パリンパリンと割れる足場を駆け抜ける事に必死で方向転換が出来なかった俺は目の前に現れた大木を避ける事が出来ずに顔からぶつけてしまう。



 くそう……スラッと高かった俺の鼻が1cmは小さくなったはず……



 アオツキを持つ左手で鼻を抓むようにして引っ張る。



 うん、折れてはないようだが、俺が記憶してる鼻の高さより低くなってる……気がする。



 突き付けているカラスの先にいる黒装束達のリーダー格ぽい奴を目を細めて睨みつける。


「おとなしくクリミア王女を降ろして帰るなら良し、あくまで抵抗するというなら……今日の徹ちゃんはデンジャーですよ?」


 潰された鼻の恨みは大きいと思う俺であるが、回復魔法を受けても俺が記憶する高さまで戻る事はない事をいずれ知る。

 だが、今は知らない俺は黒装束達には謂れのない恨みだと言われそうな恨みが籠った視線を向ける、


 俺の怒気を感じたせいか後ずさるリーダーはクリミア王女の隣まで戻った事を知ると焦るように持ってたナイフをクリミア王女の喉元に添える。


「王女の命が惜しかったら武器を捨てろ!」


 添えられたナイフを少し押し込み、クリミア王女の喉元に薄らと血が滲むと顔を真っ青にしたクリミア王女が恐怖から体を震わせる。


「ああっ!?」


 クリミア王女の恐怖に歪んだ表情を見た瞬間に漏れる俺の言葉に反応するように左右に散っていた黒装束の男達が見えない何かに弾かれたように悲鳴を上げて吹き飛ばされる。


 俺の周りに燃える木の葉が舞うようにする中で見つめる先の最後に残ったリーダーに向かってゆっくりと歩いて近づいていく。


「お前、何やってんだ? お前等の目的は抹殺じゃなくて拉致だろう? それともなんだ……奪われるぐらいなら殺せと命令されてんのかよ!」

「ひぃ!」


 吹き飛ばされてどこにいったか分からなくなった部下達を捜すように辺りを見渡し、俺を見た瞬間に情けない悲鳴を上げる。


 俺の周りでチカチカと点灯と消灯を繰り返す火の粉が舞う中で俺はソッと指をリーダーに突き付ける。


 それだけでビクっとさせるリーダーのナイフを持つ右手の甲に5cm程の穴が開く。


「な、何をしたっ!」


 俺が突き付けた指から発射された生活魔法の水の高圧水に回転を加えたものが直撃して貫通させたがリーダーには暗闇で見えなかったのか、それとも常識が目に映ったモノを否定したのかどちらかは分からないが俺にとってはどうでもいい。


 脂汗を流すリーダーは開けられたショックではクリミア王女を落としはしなかったが、苦悶の表情を浮かべた後、抱えられなくなったのか落とすように手放す。


 明滅していた火の粉が急に形、炎の翼を作り、地面に叩きつけられそうになったクリミア王女を翼で巻き取るようにして掴まえる。


 炎の翼に掴まれたクリミア王女が一瞬で炎で包まれるが一瞬で消え、地面に下ろされると縛られていた縄も猿轡も無くなっていた。


「すぐに終わらせるから、そこでおとなしく待っててな?」


 炎に包まれたのにビックリした様子はあったが、俺にそう言われて素直にコクンと頷いてくるクリミア王女に俺は笑いかける。


 右手を押さえてジリジリ下がるリーダーは俺の様子を伺うようにして交渉してきた。


「本当に分かっているのか? 俺達に逆らうという事はエコ帝国を敵に廻すんだぞ。それだけの価値がクリミア王女にあるのか? 報酬か、名誉か、それとも女を使われたか?」


 ここで退くなら最大限融通すると言ってくるリーダーをチラッと見た後、背後にいるクリミア王女を見る。


 拳を握りしめ、一瞬、悔しそうにする素振りを見せ、俺が見てる事に気付くとジッと真っ直ぐな視線を向けられる。



 だよなぁ~



 俺は肩を竦めるようにした後、リーダーと向き合う。


「報酬も名誉も必要以上にいらねぇよ。可愛い女の子は魅力的ではあるな、男の子だからな」

「な、なら、お前の言う事を何でも聞いて、無条件に愛し続ける女を……」


 光明を見つけたように声が明るくなるリーダーのセリフを全部言う前に展開していた炎の翼が激しく輝き、広がりを見せてリーダーの退路を断つように円状に広がる。


 逃げ場を失ったリーダーが慌てふためくのを眺める俺は言ってやる。


「いくら可愛くてもそんな女はこちらから願い下げだ」


 炎の翼は更に燃え上がり、飛び越えるのも無理な高さまで炎が上がる。


 体をガタガタと震わせるリーダーが左手で落としたナイフを拾い上げる。


「おっぱいってのはな、揺れるのを眺めて照れられたり、触ろうとしたら攻撃されるのを潜り抜けるのがいいんだ。失敗したらタコ殴りにされ、成功したら幸せな気分で袋叩きに遭う。平等だろ?」

「ま、待て、落ち着け。そんな苦労をしなくてもイイ女を手に出来るんだぞ? 5人でいいか? 10人でもいいんだぞ?」


 俺は呆れるようにカラスとアオツキを持つ両腕を広げながら近づいていく。


 近づく分、下がるリーダーであったが炎の翼の壁が真後ろに迫る事に気付いてナイフを突き付けて全身を恐怖で震わせる。


 予備動作なしで飛び出す俺は呟くように口にするがその場にいたリーダーとクリミア王女の耳にしっかりと届く。


「何度も同じ事を言わせるな。そんな女の子は願い下げだ」


 飛び込んだ俺がリーダーと交差すると同時に炎の翼も掻き消える。


 俺の背後で棒立ちするリーダーの頭が転がるように落ちる。


 落ちたと同時にリーダーから噴き出す血と俺とルナが迎撃に出た辺りのルナと美紅がいると思われる場所から天を劈くような竜巻が起こった。


 カラスに付いた血糊を振り払う事で落として鞘に戻す。


「無条件に愛する女の子ね……俺は肉人形を愛でる趣味はない」


 振り返り背後にいるクリミア王女の下へと歩く。


 辿りついた俺を祈るように手を握り、潤んだ瞳で見上げるクリミア王女に安心させるように歯を見せる大きな笑みを浮かべて、助けに来た騎士を装うように恭しく手を差し出した。

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