表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/124

93話 男の子を名乗れないだろ?

 コメディタッチの練習を目的で『ネコ魔王に完堕ちした姫騎士』という話を更新してます。

 良かったら読んでみてね?

 ルナと美紅と別れてクリミア王女を拉致した奴等を追跡を続けると崖に辿りつく。


 俺の疑似未来予測が訴えるにはこのまま崖を突っ切った先で廻り込めると訴えていたが崖下を見ると夜というのもあるが、丁度、月が隠れて崖下が真っ暗で高さが分からない。


 しかし、崖を回避して廻り道をすれば間に合わないのはカンに頼らなくてとも分かりやすいぐらいの距離が崖下への道が伺えた。


「これがあったから追い付けるチャンスが生まれたみたいだけど……」


 拉致した奴等も廻り込んだ事で時間ロスが生まれて今、俺が追い付く目が生まれた。


 崖下を覗き込みながら俺は生唾を飲み込んだ後、諦めるように溜息を吐く。


「あ~あっ……尻を捲りたいけどルナと美紅に格好付けちまったからな」


 自分を奮い立たせるように口の端を上げながら俺は躊躇を見せずに崖下へと身を躍らせる。



 助けるって、俺はアイツ等に言った……俺はアイツ等には有言実行し続けないといけない。

 だって、俺は……



 そんな事を考えていると雲の切れ目から月が顔を出して、俺が滑降する先を優しく照らす。


 明らかに生を諦めた人が飛ぶ系の場所から飛び降りている事を正しく認識してしまった。


 その光景を見た俺の思考は一時停止させ、復帰と共に叫ぶ。


「や、やっぱり止めとけば良かったぁぁぁ!!!!」


 俺は涙だけでなく鼻水も垂らしながら、とりあえずお約束を叫んでおく事にした。


「おかあーちゃーん!!」


 きっと、この言葉は届かない。


 今頃、煎餅などを齧りながらテレビを見てケラケラと笑っていると俺は確信していたからであった。





 徹を見送ったルナと美紅は黒装束を1人ずつ撃破したところでルナが心ここに非ずといった様子だと美紅が気付く。


「ルナさん油断していたら不覚を取りかねませんよ!?」

「んっ……それは分かってるの……とっても嫌な予感がするの」


 しょんぼりと俯くルナであるが左右から挟撃してきた黒装束に対して、左の者の顔を蹴飛ばし、蹴った反動でオーバーヘッドキックをするように右の者の脳天を蹴りつけ地面に叩きつける。


 黒装束はそれに慌てず、ルナの担当の2人が空いた穴を埋めるように新しい黒装束が入る。


 ルナが何を気にしてるのか分からない美紅は眉を寄せ、目の前の黒装束を吹っ飛ばして問う。


「何を気にされてるのですか? まさかトオル君の身に!?」

「ううん、違うの……ねぇ、美紅。結界に徹が来た時の事、覚えてる?」


 こんな時に何を言い出すのやらと思いつつも思い出し始めると結界で膝を抱えて座る自分に笑みを浮かべて手を差し出す徹を思い出して、場違いな程に優しげな笑みを浮かべる。


 だが、すぐにその優しげな笑みは消えて顔色を悪くして真っ青な顔でルナを見つめる。


 ルナも月明かりの下で徹に抱き締められて泣いた夜を思い出して同じ結論に至っていた。


「ルナさん……私もとても嫌な予感が……いえ、確信のような気がします。引き付け役は私がしましょうか?」

「お願いなの! 私が問答無用な一撃で敵を殲滅する時間稼ぎをお願いなの!」


 美紅が剣を旋回させるように振ると風圧が生まれて黒装束達の足が止まると黒装束達が集まる中心に飛び込み、地面を叩き割るように剣を叩きつける。


 小さなクレーターが生まれると同時に足下を激しく揺らされた黒装束の動きが止まる。


 すぐに持ち直させた黒装束が散開しようと前を見た時、手で銃を作るような格好をしたルナが黒装束達を見つめていた。


「デュポーン!!」




 ルナ達が居た場所から天を劈くような竜巻というには可愛らしいものが発生しているのが遠目でも確認された。





 3人の黒装束達に簀巻きにされて担がれているクリミア王女は終わったと悲しそうに目を伏せていた。


 魔神の復活を止める為に立ち上がろうと城で協力者を集めに奔走した日々を思い出す。


 クリミア王女がいくら勇者の結界の機能不全を訴えても聞く耳を持って貰えずに悔しく思ったあの頃……


 唯一、賛同したのがあの馬鹿のシュナイダーだけ、賛同したと言っても意味を理解しているようには見えないし、王家との繋がりが欲しかったという名誉欲から着いてきたのは分かっていた。


 だから、今回の旅も王の密命だと言い含めている。


 モスの街に着いた頃にはそれは嘘だとバレるだろうが、その時には言い訳をしにいったところで信じては貰えない程度の頭は廻るだろうから嫌でも協力をするだろうという算段があった。


 宮内は駆け引きと騙し合いを制した者が全てが得れる世界。相手が相手だけに良心の呵責を覚えないという事に置いてはシュナイダーは有難い存在だとクリミア王女は思っていた。


 他の協力者も得ようと策略を練り、頭を巡らせてきた。


 しかし協力者は見つからず、自分は策略を練ってどうこうしようとするのは不向きであると苦々しく思い知らされた。


 中には私の言う意味を理解、いや、それ以上に情報を持っていた者もいた。


 それでも私に協力するとは言って貰えなかった。このままだと滅びが待っているだけ、エコ帝国は間違っていると分かっていながらもである。


 その者達に悲しそうに見つめられて背を向け続けられ、逃げるようにモスの街を目指して今、ここで連れ戻されようとしているとクリミア王女は自嘲する。


 殺さずに連れ戻す理由はクリミア王女も気付いていた。


 今後、魔神に関する何かをしたり、勇者の結界の不備が他国に漏れた時や国民の不満のはけ口に人身御供にするためだと。


 それが運良くなかったとしてクリミア王女は一生幽閉されて陽の当たる場所に出る事はない。


 美紅と再会した時は遂に自分にも運が廻ってきたと内心、拳を握りしめたのにな、とクリミア王女は宿屋で再会した時の事を思い出す。


 クリミア王女は美紅は覇気はなく内向的な子だから強く口説けば来てくれると踏んで迫った。


 しかし、結果は頑として首を縦に振らず、それでも食いつこうとすると少年、徹に意見を求める。


 徹越しでしか交渉が出来ず、徹も何を考えているか掴み切れずに交渉は終わってしまった。


 ただ、クリミア王女は徹のある言葉を聞いた時、激しく心が揺さぶられる言葉があった。



「俺がそうしたかったからとしか言えません」



 この言葉を聞いた時、激しく心を揺さぶられ……自分でも信じられないほどのドス黒い怒りの感情に支配された。


 何故、怒りの感情に襲われたかは分からない。


 しかし、魔神と戦う事になったかもしれないのに美紅を助けに向かい、英雄譚の主人公のように美紅を連れ出した徹なのに、国に仕える暗殺者だとはいえ、只の人に攫われているクリミア王女を助けに来ない徹に理不尽な怒りをぶつける。



 貴方が本物の英雄なら私ぐらい助けてみせなさい!!



 猿轡をされていたのでモゴモゴとしか言えなかったクリミア王女を担ぐ黒装束が苛立ちげな声で言ってくる。


「もうすぐ仲間との合流ポイントだ。おとなしくしろ」


 そう言われたクリミア王女は、やはり私はここで終わる、と思った瞬間、前方の木から転げ落ちるようにして着地した上も下も黒で統一された格好、黒装束達とは違う姿の少年が現れた。


「へっへへ、間に合ったぜ?」

「お前はクリミア王女の護衛に雇われた冒険者だな?」


 二刀を構える少年を見てクリミア王女は何かを呟くようにモゴモゴと口を動かす。誰の耳にも言葉を拾えなかったが言ったクリミア王女も無意識から漏れた言葉だった為、本人も理解はしてなさそうだ。


 簀巻きにされているが無事そうだと分かった少年が笑顔で手を振ってくる。


「すぐに助けるからもうちょっと我慢してな?」

「おい、どうやって追い付いたかは知らんし聞く気もない。そこまで無茶をしてまで助ける義理が冒険者のお前にあるのか?」


 黒装束が少年の破れが見える上着やズボンの汚れを指差して言ってくる。


 そう言われた少年はこいつは馬鹿か? と言いたげに大袈裟に溜息を吐く。


「俺が助けたかった、俺がそうしたかった以上の理由がいるのか?」


 少年の言葉を聞いたクリミア王女の背筋に電撃が走ったような衝撃を感じる。


 クリミア王女を担ぐ黒装束が残る2人に何やらサインを送り、少年を取り囲むように配置取りを始める。


「お前も気付いておろう。我らはエコ帝国の手の者。国を敵に廻してでも助ける価値があると言う理由がそれか?」


 そう黒装束が少年に言うがクリミア王女は思う。


 この者達はこの少年を何も分かっていない。この者達はほんの少し前の自分と同じだと。


「それがどうした?」

「なっ!?」


 何の気負いもない様子で返された黒装束は驚く。黒装束達の目から見ても少年は正気でまるで朝、起きて顔を洗ってはいけないのか? と問い返すぐらい当たり前の様子で言われ驚きを隠せなかった。


 理解に至ったクリミア王女は自分の事のように誇らしげに思う。


 魔神の存在でも考えを変えさせられない少年を国1つぐらいで考えを変えさせるのは無理な相談だと熱い視線で少年を見つめる。


 そして、もう1つ気付かされる。


 どうして、国に居た時に自分と同じ考えに至っていた者達を口説き落とせなかったのか。



 その交渉の席に本当の意味で自分がいなかったから信を得られなかった。自分の言葉で話せなかったクリミア王女を信じられなかったからだ。


 本当の言葉がどれだけ陳腐だろうが本物だから響く。


 そして、今、少年はきっと口にする。


 黒装束に漆黒の刀を突き付ける少年が威圧を発しながら告げてくる。


「そうしないと俺は男の子を名乗れないだろうが?」

「馬鹿な、そんな理由でか!」


 気圧されるように驚く黒装束を余所にクリミア王女は先程受けた背筋に走った電撃のような衝撃が甘い痺れに変化し、熱病に浮かされたように少年を見つめる。


 勇者である美紅が心を預ける少年、これがトオルと……


 クリミア王女は高鳴る胸にその名を刻み込んだ。

 感想や誤字がありましたら、気楽に感想欄にお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ