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RUN! V/M  作者: でーじん
4/4

3. 当日

決して焦って約束をしてはならない。

――マハトマ・ガンジー

ついにきた。


草レース当日。


テレーザはタクシーから降りると、軽いステップを踏みながら集合場所へ向かった。


身体は今日も、刺激と報酬を求めている。


2日間の練習を経て、彼女はマシンの扱いも多少はマシになってきた。


集合場所は郊外の山頂だった。


駐車場には色んなマシンが集まっていたが、


やはり、火が吹いているのは先明のマシンだけだった。


その他は3rd Genしかない。


テレーザは先明の元に行った。


だが、


どうやら彼の顔色が悪い。


目元のくまがひどかった。


「おはよう。」


先明は引きつった笑顔で、元気のない挨拶をした。


テレーザは少し心配した口調で


「大丈夫……かい?ハプニングとかあった?」


「あ、ああ。大丈夫……夜は少し緊張して寝入りにくかった。」


「そう……」


「心配はいらない、マシンのコンディションはバッチリだ。来る前とさっきまで2度もチェックした。」


テレーザは少しリラックスした。


「ならよかったわ。マシンが途中で壊れたら大変だからね……ちょっとこの周りを散策してもいい?」


「もちろんさ。」


彼女はその場から去った。


しかし、先明は今、それより大事なことが残っていた。


(大丈夫……な訳がねぇッ!なぜ俺は『希望制』にしてしまったんだ。


もしその時、店長が払えない金額になったらどうすりゃあいいんだ。


チクショ……やっぱり『そうする』しか方法がないか。)


午前9時。


選手、スタッフ一同が広場に集まった。


中央には主催者が立っていた。


「皆さん、おはようございます!」


主催者の声が広場に響いた。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます! これより、年に一度の草レースを開催いたします!」


まばらな拍手が起こった。


「今回のレースは、市街地から離れた廃道と一時封鎖される公道をコースとして使用します。


全長40kmを1周する。途中には急旋回ポイントと、長い直線区間、そして障害物が設けられています……」


先明は腕を組み、参加者たちを眺めていた。


(……まあ、コース自体は問題ない。問題は……)


彼は少し離れた場所にいるテレーザに目を向けた。


彼女はというと、配布された資料を片手に、コースの説明をあくびしながら聞いていた。


(少しくらい緊張しろよ……)


「なお、レース中の危険行為は禁止です。ショートカット、または故意に他のマシンの走行を妨害する行為は即失格とします。参加者の皆さんは、規則を厳守してください!」


主催者は一呼吸置いた。


「それでは、各選手はこれよりマシンの最終確認を行ってください。レース開始は午前10時です!」


選手たちが一斉に動き出した。


先明もテレーザのもとへ向かう。


「おい、テレーザ。分からないところあるか?」


「ん? 別に。」


「……そうか」


先明は彼女の顔をじっと見た。


(報酬を誤魔化せたらなあ……)


「何よ?」


「いや……確認したい区間いくつかある。


前半、廃ビル群があるが、回っていかずに最短距離を狙って欲しい。


そして、その後狭いトンネルもあるが、資料とマシンを照らし合わせたところ、ギリギリ通れる。ミリ単位の勝負だが、そこは俺の計算を信じてくれ。


最後、ゴール直前に急なターンがあるから、焦ってスピード出しすぎないように……OK?」


「えー、大丈夫かな……」


「じゃないと、俺たちは勝てない。かなりこのマシンのパワー上げたが、基本的に3rd Genに直線で置いてかれると思ってくれ。ギリギリまで攻めて行くんだ。」


「……分かった、やってみるわ。」


(頑張れ、テレーザ。報酬はまた別問題だが、


勝たないと……


俺が『用済み』


になってしまうからな……)


午前10時になった。


約15台が並ぶレース。


今、ここで、始まる。


もちろん、テレーザのマシンが注目の的になっていた。


観客席から、ヒソヒソと疑問や批判の声が聞こえる。


「そこの、2nd Genだろ? 大丈夫かよ。ネタ枠か?」


「今更ジェットとか使うなんて……現実見た方がいいって……」


しかし、先明にはそれを気にしている暇もない。


額からひと粒の汗が落ちた。


「カウントダウン!10秒前!」


テレーザはレバーを握りしめる。


「5秒前……4、3、」


(シュイーーン……)


ジェット音が高くなる。


「2、1、」


(……ッ!)


テレーザは目を大きく見開いた。


「GOHHH!!」


アクセルを奥まで踏み込んだ!


マシンたちは一瞬で点と化した。


轟音が広がる。


だが、それはテレーザのマシンだけのものだった。


爆音が山々に反響した。


観戦用スクリーンに、1台だけ異様な動きを見せるマシンが映し出された。


もちろん、テレーザのV/Mだ。


後方に炎を撒き散らしながら、まるで何かに蹴飛ばされたかのように加速する。


「うおー!迫力がすごい!」


観客席から驚きの声が上がった。


だが、先明の表情は晴れない。


(まだだ……)


(スタートダッシュは、想定どおり。)


(問題は、この先だ。)


マシンたちが最初のコーナーへ差しかかる。


3rd Genたちは滑らかな軌道を描き、ほとんど減速せずに旋回していく。


対して、テレーザのマシンは大きく車体を傾けた。


「うっ、ちょっと……!」


視界が横へ流れる。


それでも、彼女はアクセルを緩めなかった。


目の前には、廃ビル群。


先明が指定した、最短ルートが現れる。


細長いビルが立ち並ぶ、その隙間。


「ここ!? マジ? 予想外に狭いんだけど」


「仕方ない……イッケー!」


テレーザのV/Mは、突然、集団から離れた。


「アイツ、正気か!?」


「何をするんだ!?」


観客だけでなく、他のドライバーたちも彼女の次の行動に度肝を抜かれた。


彼女はマシンを90度横向きにし、本来通るはずだった大きなコーナーを無視した。


一部の観客が怒り、主催者に問いかけた。


「ショートカットはダメって言ったんじゃないのか!?」


しかし、主催者側は冷静に答えた。


「いや、資料に書いてある。廃ビル群自体がコース内だ。障害物を避けながら走ることこそ、この区間のポイントだ。」


隙間から抜け、大通りに合流したとき、テレーザの順位は一瞬で13位から8位へと上がっていた。


「気持ちいいー!!」


彼女は思わず叫んだ。


「絶対勝ってみせるわ!」


その瞳の奥には、燃え上がる情熱が宿っていた。


[熱い戦い……続く……]

2nd Gen V/Mはどうやって操縦されているか(大体なイメージ):


右足アクセル、左はブレーキ(一瞬でジェットが逆向きになる)


両手それぞれでレバーを持ち、レバー両方にトリガーが付いている。


レバーで片側の方向をコントロールでき、トリガーはそれぞれのジェットのパワーの微調整用。

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