プロローグ
「な〜〜〜〜〜ん」
猫の声が響く。
ずっしりとした重みを体で感じながら目を覚ます。
今日は1日予定がないので昼まで寝てようと思った矢先にこれだ。
昨晩、数ヶ月ぶりに酒を飲んでしまったためか、頭も重い。
あまり良い目覚めとは言えない状況で1日が始まった。
猫とワンルームの生活はもう10年になる。
普段はライターの仕事をしているため、普段は在宅にて仕事を行なっている。
基本的には時間にとらわれない生活をしているため自由気ままではあるが、取材が入るとそうも言っていられない。
ここ1週間ずっと取材に追われていたため、やっと昼まで寝ていられる生活だと思った矢先、愛猫に起こされてしまったのだ。
冷蔵庫からコーヒーのペットボトルを出し、ベランダに出てタバコに火をつける。
これがなければ活動ができない。
朝のルーティーンといったところ。
窓際では猫が行儀よく座っている。
「ひでまる?」
窓越しに猫の名前を呼ぶと、首を傾げている。
この同居人は癒しであり、自分の子でもある。
そんなことを考えながら、煙を吐き出す。
「こんなはずじゃなかったなぁ・・・」
そんなことを呟くと、ブルーハーツの青空という曲と共に、ついつい昔を思い出してしまう。
「あっつっっっ!!!!」
いつの間にかタバコは灰になり、指を焦がしてしまった。
火の始末をして部屋に戻ると、足元にひでまるがついてくる。
猫とは気まぐれなもので、今はべったりだが気が済むと勝手に1人で寝てしまう。
そんな生き物だ。
ふと、高校生が使う歴史の教科書に目が写る。
「何年前になるかな・・・」
高校の教員として働いていた時代を思い返す。
「あんな時代もあったね」
そうひでまるに語りかける。
1982年、相良良介という人物は生まれた。
2005年大学卒業。
就職氷河期の最後の年と言われる時代だ。
就職氷河期とはバブル崩壊後から続く不況により、企業が新卒求人をほとんど出さなくなった時代である。
一般的には1993年から2005年卒業までの時代を就職氷河期と呼ぶ。
実に12年間も世の中の学生は就職に苦労していたのだ。
また、タチが悪いのは就職氷河期初期にはまだ余裕のある企業が新卒求人を出していたところもあった。
それが後半になると新卒は皆無。
中企業以上の採用枠は1人や2人の新卒求人と即戦力と呼ばれる中途採用で人事は回っていた。
そんな真っ只中に生きたのが良介だった。
彼の経歴を紹介すると、小学校からサッカーに汗を流しつつも高校は市で2番目の高校へ進学。
たまたまスポーツ推薦の話が舞い込み、そのまま大学はスポーツ入学した。
しかし親の意向もあり、教師を目指すこととなる。
「あの頃は何も知らなかったなぁ」
そんな一言を呟く40代半ばのおっさん。
とは言え何かを成し遂げたいというわけでもなく、絶望もしていないのが今の現状である。
『氷河期世代じゃなければ』『実家が太ければ』などと、叶わぬたらればを何年も繰り返してきた。
しかし、そんなこともとうに飽きてしまっていた。
ただ寿命が尽きるまで生きる。
それだけの日常を過ごす毎日である。
そんな相良良介の過去を振り返り、氷河期世代に生きた普通の人物について見ていこう。
編集を行う可能性があります。




