幕間・特別事案対策室議事録
会長隷下特別事案対策室 定期報告会議
四月●日
出席者 石動シズマ、フェイ・ヤオ、石上トウカ、山城ドウケン
「ほんなら、いまんとこの状況やけど。英国の後始末には誰行かせる?」
「エリオットが適任ではないか?協会に顔が効くし、何よりフィアナ騎士団のパトロンとも面識が有った筈だ。フォルグ氏の事も含めて悪くは扱われまい」
「賛成、頭下げるのは腹黒狐に似合い。たまには臍を噛む思いをすればいい」
「それでいいだろ。異議ナーシ」
「決まりやな。次、鷹野上級執行官から申請があった、今回の騒動に乗じての治安改善計画についてニヴルヘイム警備局の局長、久我クンから手が足りんて応援要請が有ったそうやわ」
「却下、特務の仕事ではない」
「同じく却下。責任者がやる前から泣き言とか、仕事しろ無能」
「それチー。あと、俺も却下、単純に面倒」
「まあ仕方ないな、後始末くらいはその管轄でやってもらわないかんて。まあ上級執行官の顔立てて、追加予算の申請だけは上に通しとく」
「おし、それポン」
「鳴きは安なるぞ。ほんなら本題、会長から直々の命令やけど。例のオーガスタ嬢に一人、ウチから護衛を出す事になったわ。派遣期間はちょっと分からんが、長くなるかもしれん。誰がええやろか」
「特務から?要人警護ならばそれこそ警備局の管轄ではないのか」
「自分は無理、子守りなんて出来ない。間が持たない」
「護衛任務が得意な奴、って考えたらメイかネイトだが、室長の意見はどうなんだ?長期の任務になるなら今後も考えて人選は限られるだろ」
「一応事前に確認しといたけど、対象は今後、バルドル資本の学校に通うらしいから穂高クンが適任やないかて。彼女、教員免許持ってるらしいし」
「穂高か。確かに適正は問題ないだろうが、狙撃手が民間に潜入とはな」
「ポン、俺は案外似合ってると思うぜ。異議ナーシ」
「お前、さっきから鳴きばっかやないかい」
「明らかに萬子の染め手。見え見え単細胞。単細坊主」
「よっし、ロン!手前の方が単細胞だったなぁ!」
「お前それ、白のみて。しょっぱ」
「親流された負け犬の遠吠えが気持ちいいぜ」
「受け取れクソ坊主」
「あぶねぇな!点棒は小柄じゃねえぞ!」
「ふざけている場合か。それで、室長補佐としてはどうだ石動」
「会長からは珍しく人選は慎重に、って事やから、室長の推薦どおりで穂高クンなら無難にやれるやろ。メンバーの中でも一番真面目やし、そろそろイリヤとオリヴァも外から帰ってくる頃やから、一人分の穴なら何とか回せるわ」
「しかし、連盟との会談を控えてこの人員配置とは。これも例の人物絡みの会長の差配なのだろう?以前から気にはなっていたが、そのニヴルヘイムの探偵、ベオとは何者なのだ?先日のあの様子では、何時もの気まぐれという様子とも、少し違うという印象だが」
「普通に変異者のごろつきにしか見えなかったけどな、威勢が良くて俺は気に入ったけど」
「二人とも、眼が節穴。節穴鬼畜眼鏡、節穴クソ坊主」
「んだとコラぁ!」
「ふむ、ならば巫女殿。君の見鬼にはアレがどう映ったというのだ?」
「孔」
「あん?」
「孔。暗い孔」
「なんだと?」
「暗くて深い、底なしの孔。正直、似たものは見た事が無いから、どういう系統のソレかは良く分からない。けど、あんな禍々しいものがまともなわけない。絶対に近づきたくない。あんなのにご執心の会長は馬鹿。馬鹿会長、バ会長」
「んだよそれ」
「・・・」
「はいはい、本人の意向もあるが、穂高クンにはこの件を受けてもらう方向で話進めとくわ。次、お前が親やろフェイ。はよ牌引かんかい!」
本会議における決定事項
相馬エリオットの英国派遣
ニヴルヘイム治安改善計画、追加予算案稟議承認
穂高サダヨ、無期限のニヴルヘイム要人護衛任務に配置
一位フェイ・ヤオ、二位石動シズマ、三位石上トウカ、四位山城ドウケン
六月●日
出席者 メイ・ヤオ、ネイト、石上トウカ、イリヤ・ジブリール
「遂にこの時が来ましたネ!室長と補佐の関係にドラスティックな変化をもたらす大イベントですヨ、これワ!」
「あらあら、あの二人にもようやく春が来たのねぇ」
「ゴリラも年貢の納め時。補佐ゴリラが主夫ゴリラに出世」
「サダヨもこの場に居れなくて残念だろうなぁ、こういう話大好物なのに」
「とにかくこの火種をどうにかして大火事にしないト。誰か良い案は有りませんカ?」
「普通に見守るのはどうかしら?事を急いては良くないわ」
「駄目に決まってる。此処にフェイから託されたゴリラ遺言コピーが有る。これを社内イントラに流出させるべき。これでゴリラは袋のゴリラ。袋ゴリラ、詰め放題ゴリラ」
「面白いじゃん、やろうやろう!」
「流石兄さン!直ぐに拡散ですネ!」
「ちょっと大胆ねぇ。けれど、シズマくん、というよりシオンちゃんにはこれくらいしないといけないかしら」
「テストアカウントでログイン、会長室を経由して拡散、完了。これで痕跡も辿れない、ばれても会長の仕業と思われる。つまり大勝利、飯うま」
「いやっほう、祝杯だぁ!」
「室長のウエディングドレス楽しみでス!」
「小柄な室長なら白無垢も似合いそうで良いわぁ」
「ふん、最近は連盟との折衝でストレス溜まりまくり。宴会で解消しないとやってられない」
「いやしかしさ、それしか方法が無いからって、騎士修道会連盟の総代が敵地に一人でやって来るもんかね。まあ実際、本物を目の前にするとゲロ吐きそうになったけど。ありゃ~ダース単位で聖騎士が返り討ちにされる訳だわ、うん。古巣の事とはいえ、竜殺しの誉なんてもんにこだわってちゃあ東欧派も先が無いな」
「思い出させないで下さイ。私、眼が合った瞬間首無くなっタと思いましタ」
「言い方は悪いけれど、人のカタチをしている化け物だわ彼。本当に敵対しなくて良かったわねぇ」
「無理無理無理無理。亜竜は斬った事あるけど、真竜は絶対無理」
「あー止め止め、余計な事言ったアタシが悪かったよ。ああ、そういや本題だ。会談後の調整で室長と補佐がてんてこまいだから、ニザヴェリルの現地調査にこの場の四人内、二人向かってほしいってさ」
「例のスリュム・レギオンと呼ばれるオートマトンの生産プラント、未だに発見できないんですってネ。加賀美博士が潜伏していた研究所跡地は確保できたけド、施設と残っていた資材から計算して、その規模じゃあ明らかに最終的な総体が合わないっテ」
「そういう事なら分析官として一人は私で決定ね。メイちゃんは雑務が立て込んでるし、イリヤちゃんは帰ってきたばかりだから、護衛をトウカちゃん頼めるかしら?」
「了承、リゾート地で心を癒す。腹も」
「決まりだな。あ、解散前にもう一つ。保安部の教導に一人派遣してほしいって。ニヴルヘイム支部だったかな」
「本社ではなく支部の教導という事なラ、兄さんかマクスウェル氏がよろしいのでハ?」
「手加減が上手な人が良いわ。形式だけでしょうし、ねぇ」
「時間の無駄だってハッキリ言えば良い。むーだむだ」
「それが結構気合入ってるのが居るらしくてさ。自分も含めて、特務レベルの戦闘技術を肌で感じたいって、ナントカって中隊長が申請してきたらしいぞ」
「へェ」
「あら~」
「ふん」
「面白いだろ?だからさ、アタシ行くわ」
「えェ、大丈夫でス?」
「イリヤちゃんが一番手加減下手なのに~」
「合掌、みなごろし決定」
「お前ら、アタシを何だと思ってんだよ!」
「虎でス」
「う~ん。可愛らしい、ジャッカル?」
「鈴鹿御前、巴御前?」
「酷いな!?」
「お前らあぁぁぁぁぁああ!何してくれとんじゃあぁぁぁああああああ!?」
「阿、こレ。遺言のコピーを流出させたノ、補佐にばれましたヨ」
「この音は駄目ね、シズマくん本気で怒ってるわ。今すぐ撤退よぉ~」
「ふん、冗談の通じないゴリラ。この機に乗じられないとは、やはりヘタレメンヘラゴリラ」
「お説教は勘弁だ!逃げるぞ、散れ散れ!」
本会議における決定事項
ニザヴェリル現地調査員としてネイト、石上トウカを派遣。
ニヴルヘイム保安部特別教導員として、イリヤ・ジブリールを派遣。
機密情報漏洩によりメイ・ヤオ、ネイト、石上トウカ、イリヤ・ジブリール、以上四名の訓告処分。
七月●日
出席者 御影シオン、石動シズマ、相馬エリオット、オリヴァ・マクスウェル
「てんほーです」
「あー、はい。点棒です」
「何度目ですか!?これだから室長と卓を囲むの嫌なんですよ!」
「上がりの殆ど天和か地和というのは。しかも今度は、役が四暗刻ですか」
「ごめんなさい」
「室長、貴女が気に病む事ではありませんよ。おどれら、自分のツキの無さを人のせいにしとんちゃうぞ!」
「言いますがねぇ補佐、今日だけの負けで、もう借金がボーナスを超えましたよ?」
「管理職がこうも一方的に部下から搾取するというのもなぁ」
「だいじょうぶ。いつものように、わたしはおかねいりません。かわりににんむをひきうけてもらえれば」
「おう、室長の寛大な処置に感謝せい!」
「いやどちらかと言えば、こちらのほうが酷いのでは?」
「下手を言うなエリオット。それで室長、今回は何をすればよろしいので?」
「では、そうまさん。もういちどえいこくへいってもらえますか?たいこうさまとのちょうせいをおねがいしたいのです。しょうさいはこちらに」
「ひぃ!またあの伏魔殿に出向けと!?僕が何をしたって言うんです!しかも資料も用意しているとか準備良いし!」
「つぎにまくすうぇるさん。かしまきかんに、かいちょうのみょうだいとしてあいさつにいってほしいのです。れんめいにくわえて、こんごはそちらともていきてきにかいだんをおこないたいとのことで」
「使節ということならいきなり殺し合いという事でもないでしょうし、先代に比べて今の代表は幾分話も通じるという事ですからな。伺いましょう」
「だいじょうぶです。ずいこういんとして、うろきさんがどうこうしますからとってもあんしん」
「前言撤回、私に死ねと?」
「あはははは!貧乏くじはそちらだったようですねぇ!」
「うろきさん、おもしろくていいひとですよ?」
「個人としてはともかく、問題なのはあの女の能力ですぞ!侵攻にしろ退避にしろ、鹿島の本拠地に抜け穴を作ろうとしているなど知られたら確実に大事となります!それに私は、神道系の伝承保持者の特性の多くに知識不足が否めぬところが、それこそシズマ、お前が赴けばいいではないか!」
「俺は、別件で外せん。我慢せい」
「殺生な!?」
「ちなみに出発は二人とも今からやぞ。エリオット、旅券と必要書類はこれや。荷造りはお前んとこのメイドに伝えとるから、今すぐ社宅へ戻って合流したら出発せぇ」
「あぁ、朝から何かゴソゴソと準備していると思ったら、そういう事だったのですね・・・」
「オリヴァ、スケジュールは端末に転送しとく。ああそれと、ターミナルで待っとる洞木にこいつを渡しといてくれ」
「これは何だ?」
「会長が渡しといてくれて、今回のボーナスらしいわ。お前の分ちゃうぞ」
「くっ、恨むぞシズマ・・・!」
「用件は以上や、解散!」
「いってらっしゃい。ごっどすぴーど、です」
「ああ、後片づけは僕がしておきますので。室長はどうぞ、先にお戻りください」
「いいえ、まだおわって、いませんよ?」
「まだ、何か案件が?」
「しずまくんにも、なにかしてもらわないと。ふたりにふこうへい、ですから」
「へ?そ、それは、そうですけれど」
「このまえは、ふたりきりのときはおたがいをなまえでよぶ。でしたから、ふふ、なにをしてもらおうかなぁ」
「あ、あの、室長?」
「だめですよ、しずまくん。やくそく、まもってくれないとだめです」
「あ、あー、シオン、さん?」
「ふふ、わたし、さいきんなんだかへんなんです。このまえ、しずまくんがにざうぇりるからおくってくれたでんごんをきいてから、とってもへん」
「あー、あの。その、えっと、なんと言えばええのか」
「あ、それです。いまからふたりきりのときは、みんなとおなじようにせっしてくれませんか?」
「あー、その。あー、うん」
「はい」
「・・・これでええやろか、シオン」
「ふふ、おっけーです、よ」
本会議における決定事項
相馬エリオット、再度の英国派遣
オリヴァ・マクスウェル、会長の名代として洞木上級執行官を随行し鹿島機関へ派遣
一件、個人的な案件につき、議事録より削除
四章は早ければGW明け、遅くとも中旬までには投稿を始められればと思います。よろしくお願いします。




