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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
転戦

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相互の情と信頼の件とは

「......ということになります」


「なるほど......ある程度は予想できていたが、やっぱり力による脅しか」


「典型的な暗殺手順ですね。村人を従わせ、やってきた大名を村人を使っておびき寄せる。悪人そのものなやり方です!」


 秀介暗殺未遂から数時間後、村人たちに聞き込みを終えた高虎の報告を村長の館で聞く秀介と三郎。秀介は自分が襲われたが意外にも冷静で、三郎の方が暗殺者に怒っている。


「ま、そんな方法で暗殺に成功したとしても民の心は浅井から離れんよ。で、物の怪っていうのは奴らの流した偽情報ってことで合っているか?」


「それが......」


 高虎は、一度言葉を濁らせる。


「本当なのか?」


「はい、目撃情報は暗殺集団が来る前から数回あったので。これが暗殺者なのかは確認できませんが」


「うーん。間もなくやって来る征伐部隊にはどう話そうか?」


「長政様が物の怪の先発隊を撃退したということにしませんか?」


「それが無難だな。兵達にもその様に伝えてくれ、高虎」


「畏まりました」


 深々と頭を下げる高虎。そのまま外へと去っていく。


「......物の怪、本物だとすればどうする?」


 高虎が見えなくなってから、秀介は三郎に問う。


「さあ、僕たちに太刀打ちできないかもしれませんね。ま、その時は死ぬだけですけど」


「黒木、少しは生きることを考えろ。死んでいった者たちに示しがつかんぞ」


「戸谷さんを救えなかった僕に、先輩と肩を並べることなんて......」


三郎の落ちこみ具合は相当だ。


「あのなあ、俺だって無力なんだよ。俺は全体を守れても一人一人は守れないと分かった。だから、せめて俺は民の為に戦いたい。家族など、無用だ」


 秀介は薄暗い目を三郎に向けてみじめな話を打ち切った。


「武具の手入れをしよう。物の怪にしろ成川たちにしろ、備えは必要だからな」


 そのまま秀介は立ち上がり、一人外へと向かった。三郎の返事など、影響しない。



「さすがに、武器の手入れには少しくらいか」


 秀介は少々適当な場所を探したが、灯りがなく良い場所が見つからない。

 仕方がなく夜空の星を眺める秀介。星々は、悲しいくらい美しかった。


「......あいつらを、織田に送る準備をしないとな。正直、もう限界だし」


「何が限界なのですか、秀介様?」


「! 叶。何しに来た? 城の監督を頼んだはずだぞ」


「それは家老たちと久政様に頼んでおきました。私はあなた様と共に居たかったので」


「で、征伐部隊まで置いてやって来たと。我は目障りなのだが? お前は我の戦闘の邪魔なのだぞ。一度命を救ったからって調子に乗らないでもらいたいな」


 城にいたときと同じく、秀介の対応はあくまで冷たい。


「秀介様、私たちは夫婦なのですよ。つらいことは二人で乗り越えるべきです」


「我は、お前ともう居たくない。我は民を守ることが仕事だ。他のことは雑事に過ぎない。その雑事をお前は強要してくる。こちらにとっては苦痛しかないのだぞ」


 叶による必死の訴えを聞き流し、辛辣な言葉を次々と並べる秀介。心底嫌そうな表情だ。


「秀介様。私がお兄ちゃんを救おうとしたのは事実です。しかし、秀介様がお兄ちゃんに命を奪われそうになった時も私は同じように叫び、あの魔法で発を犠牲にしていたでしょう。要するに、今の私にはあなたはお兄ちゃんと同様に失いたくない存在なんです。そこは、ご理解ください」


「......ま、確かに戦国の世では俺はあいつに拮抗しうる能力を備えているかもな。お前を含む皆が二十一世紀に帰るには、どちらも生かしておくことが最高効率。それは確かだ。敵対しなきゃな」


 秀介は、少々叶の訴えを受け入れたようだ。あくまで、理性的な部分でだが。


「秀介様、私は!」


 さらに続けて訴えようとする叶。しかし。


「殿、緊急の伝令が参りました!」


 その前に高虎が全速力でこちらにやって来た。


「小谷から? 何事だ?!」


 秀介は即座に少年から当主へとモードチェンジする。気迫が一気に戻ったのだ。


「浅井領に雑賀衆が侵攻! 領内で略奪を働いております!」


「紀伊の雑賀だと!? 織田の収める大和をわざわざ通過して攻めてきたというのか?」


「この知らせを受け、既に征伐隊は雑賀衆を迎え撃っています。どうか、殿もお戻りになり指揮を執ってくださいませ!!!」


「あい、分かった! 全員、小谷に緊急帰還だ。高虎、いち早く準備をしろ!」


「ははっ!!」


 来た時と同様の速度で高虎は戻っていく。


「叶、この話はしばらくお預けだ!今は浅井の当主とその妻として、当面の危機を脱するぞ!」


「......は、はい! 秀介様!!」


 秀介と叶は高虎を追いかけ全力で走り出す。

 いざというときは、互いは全面の信頼を置く間柄にはなっていたという訳だ。




大変長らくお待たせいたしました。とにかく頑張ります。

里見レイ

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