松平の撤退対応
「兄貴、武田が撤退していくぜ。別に劣勢って訳でもないのによお」
ここは甲斐(山梨)と駿河(静岡の東側)の国境。
互いに一万ほどの軍勢を連れながらも小競り合いが続くほど約二か月。突如武田軍が陣を引き払っていくのを和田輝人は兄の吉樹に報告する。
お忘れの読者も多いと思うので再説明するが、吉樹は徳川家康、輝人は本田忠勝として召喚された。
「訳はあると思うよ。例えば、西で織田軍と正面衝突を始めるとかね」
吉樹は淡々と分析を始める。もちろん、手に持っている枝豆を食べることにも一生懸命なのだが。
「吉樹、織田へ使者を出しとけよ。浅井との戦にもそろそろ決着が着いた頃合いだろ?」
和田兄弟の横に控えている榊原康政役の鈴木桜庭丸が助言をする。姉川の戦い以降、桜庭丸は吉樹の最も信頼のおける側近として活躍をしていた。
「そうだね。一度状況把握をしといたほうが良さそうだ。こちらも撤退準備をするとしよう。何事も、早めに行動しておかないとね」
「殿は俺に任せてくれ兄貴! 最後くらい仕事しないと気が済まねえんだ!」
「ま、輝人が満足できるほどの戦闘はなかったからね。構わないよ」
「よっしゃ! それじゃ、部隊まとめてくるねー!!!」
意気揚々と立ち去っていく輝人。元気がない彼の姿を見たことある者は皆無に等しい。
「さて、陳情書が溜まっているだろうね。桜庭丸、その辺の仕事は任せるよ」
「はいはい、分かりましたよ。政治はほったらかしの当主様。」
「まあ、その前に一汗かいてもらうけど。右を見てもらおうか?」
言われるがままに首を右に向ける桜庭丸。土煙が上がっているのが人目で分かる。
「武田って、奇襲はしないイメージだったけど。下原太一はその辺の事はお構い無しなんだね」
「で、俺に迎撃しろと。弟君に任せたいんだけどなあ、こういう作業は......」
文句を言いながらも、馬に股がる桜庭丸。自分が適役という自覚は一応持つようになったのだ。
「帰ったら、少しは休ませて貰うからな。サービス残業お断りで宜しく」
「了解了解。ちゃんと有休用意しとくよ」
「んじゃ、いってきます」
「気を付けてねー!」
出勤前の家族のような会話をする二人。
互いの信頼に、時間の長さは関係ないということだ。
雑ですが、松平組のほのぼの感を演出しました。
武田との戦闘シーンはどうするか考え中です。
里見レイ




