決別、そして遭遇
お待たせしました。
「発、帰るぞ。今は、俺たちの命を、優先しよう......」
槍を杖として使いながら、胸元に発を抱えた秀介。わき目も降らずに浅井の陣営へと戻っていく。
「井田、今のは何なの?」
「さあな、怒りに身を任せたら特殊能力が解放されたってとこだろう。出し方を知らないから、火事場の馬鹿力ってことだな」
「織田に、まだ戦いを挑むつもりなのか?」
「さあな、お前が家中を和睦にまとめるならこっちも会議を設けるよ。ただ、この感じでは織田の将たちは浅井を滅ぼそうとしているだろうけどな」
「......」
「んじゃ、成川。また今度な。こっちは時間がないのでね」
結局、秀介はリョウに顔を一切向けずに対応をしていた。友より娘を優先した結果である。
「井田! 和睦は確かに無理だろう。けど家臣、一門として浅井を厚遇することなら......」
「そんなんできてたら、こんな戦い起きてねえだろ! 分からず屋!!!」
ここまで来ても、秀介はリョウに顔を向けない。
「お前じゃなければ殺してたとこなんだぞ! 家中を碌にまとめられないとは思いもしなかった! つまりだな、お前は戦国をなめていたってことだろ!? 力と知恵でのし上がるのがこの時代なんだ。『競争せずに、みんな仲良く』なんて甘い考えじゃ何も守れないぞ! 特に織田信長は情けがない合理主義者、そのレールの上に立ったお前なら、その通りに織田を盛り立てて天下を収めろよ! 本能寺の変の前に戦国を終わらせろよ! お前ほどの天才なら、そんくらい出来るはずだろ! 大名としての覚悟がないのかよ!!?」
秀介は、リョウに背を向けながらこう叫ぶ。これが秀介の本音だ。
落雷を受けたような衝撃を受けるリョウ。今まで、友からここまでの批判を受けたことがないのだ。
「僕は、魔王になるべきなのかい? 後世の人にどんなに批判されても、戦国を終わらせるために非道じゃなきゃいけないのかい?」
「さあな。ただ、俺との戦いに手抜きはもうなしだ。自慢ではないが、浅井は史実よりも強くなっている。生半可な覚悟では勝てないぞ。戦場では、友も家族も敵なら容赦なしが鉄則だ。ま、俺自身お前が織田を和睦にもっていくと期待していた気がするがな。もはや過去の幻想だと認識している。んじゃ、またな」
最後まで振り返らずに秀介は会話を終了させる。沈黙が場を支配したのは、ほんの一瞬だった。
「ああ。うん、分かった。......ごめん、井田」
そうつぶやくや否や、リョウの表情が一気に暗くなる。
右手に構えた刀が一直線に秀介を狙い撃つ。
そう、遂にリョウも決断したのだ。当主として友を殺すと......
「まあ、これだけ言えばそう来るよな」
振り向きざま、発を庇いながら槍でリョウの攻撃を受け流す秀介。対応速度は尋常ではなかった。
「井田、君には死んでもらうよ。大変悔しい話だけど、多くの命を救うためにはそれしかない」
「賢明な判断だ。なら、俺も全力で相手をしよう。思ったより俺も発も傷が浅いようだしな」
「父上と一緒に、発も戦う!」
秀介に抱えられながら毒矢を準備する発。何かの治癒が施されたかのような回復ぶりだ。
「こっちが特殊能力を完全に習得するのが先か、お前が俺たちを殺しきるのが先か、だな」
「相変わらず、理性と闘争心が共存しているようだね。君は真の戦人なのか」
「はっ! お前に勝てればそう名乗ってもいいかもな」
友との決闘というのは、残酷であるが爽快でもある。どちらが勝とうと、互いに悔いはないだろう。
このままならば......
「秀介様! お兄ちゃん! なんで二人が殺し合っているの!!?」
『叶!? 何しに来た? 今すぐここから離れろ! さもないと、あいつに殺されるぞ!!!』
秀介とリョウは同時に同じことを叫んだ。
一方はこの時代での夫として。そして、もう一人は兄として。
すみません。なかなか文字に起こせずこんなに遅くなってしまいました。
頑張ります。
里見レイ




